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第八話
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エリヴィラはそれからどうやって寮に帰ったのか覚えていない。気付いたら寮の自分の部屋にいた。
彼女自身はフィクトルのことを何とも思っていない。しかし、フィクトルの好きな人なのが自分だと分かった時どうしようもなく胸が高鳴った。ドキドキしたし、なんなら今もドキドキしている。
こんなのおかしい。おかしすぎて、フィクトルが言ったことは冗談じゃないと分かっているのに、冗談のはずだと思いたい自分がいる。
「何をそんなに悩んでいるの?」
「う~」と唸りながら悩んでいると、後ろからセナの声がしたので何も考えずに答える。
「何って、フィクトルが私のこと好きみたいで、そんなの全然知らなかったし、恋愛感情なんてないはずなのにドキドキしちゃっておかs……ってなんでセナがここに?」
普通に答えてからガバッと後ろを振り向く。ここはエリヴィラの部屋だから、セナがいるのはおかしい。それに自分は今セナに何と言った?悩み事を全部白状してしまって恥ずかしい!とエリヴィラの頭の中は軽くパニックに陥った。
「夕食はいつも一緒に食べるのに、エリヴィラが食堂にいないから何かあったのかなって思ってここに来たのよ。ノックしても返事がないから、こそっと中を覗いたら様子がおかしいエリヴィラがいたから声をかけたの」
「様子がおかしいって何よ?!」
「言い方が悪かったわね。謝るわ」
セナが口元に手を当ててお上品に微笑む。
「それと、気になることがあるのだけれど。あなた、もしかしてフィクトルさんに告白されたの?」
「え、えっと、それは……」
実質、告白されたようなものだろうか?とエリヴィラが悩んでいたら、セナは彼女の手を取って言った。
「まずは食事をとりましょう。その後、詳しく話を聞かせてもらえる?」
「う、うん」
セナはエリヴィラの返答に頷き、二人で食堂へ向かった。
夕食を終えた二人は、エリヴィラの部屋に戻った。
「ちょっと紅茶淹れてくるね」
そう言ってエリヴィラは給湯室で紅茶を淹れに行った。各フロアに給湯室があり、そこにある茶葉やコーヒー豆、マグカップは自由に使っていいことになっている。マグカップは使用済みのカゴに入れておけば、寮母が魔法で洗ってくれるのだ。
エリヴィラは二人分の紅茶を淹れて自分の部屋に戻り、マグカップをセナに渡した。
ベッドに座って、エリヴィラは今日フィクトルの手帳を拾ったこと、その手帳から落ちた写真にエリヴィラが写っていたこと、その写真をフィクトルが「好きな人の写真」と言ったことを全部話した。
「フィクトルが『好きな人の写真』と言った時、私、ドキドキしたの。恋愛感情なんて抱いてないはずなのに!おかしいよね?」
エリヴィラが情けない顔で言った。そんな彼女を見て、セナは優しくエリヴィラの小さな背中を撫でる。
「ドキドキするのはおかしいことじゃないと思うわ。私も幼馴染に告白されたらドキッとするかもしれないし……」
「そうなの?」
「ええ。私はそう思うわ。そのドキドキがずっと続くなら恋かもしれないけれど」
「恋?!」
「エリヴィラって今はフィクトルのことで頭がいっぱいなのよね?もしかしたら、エリヴィラが気付いてないだけでフィクトルに恋をしているんじゃないの?」
セナがからかうような口調で言った。
「からかうのはやめて!私は別にフィクトルのこと好きじゃないって!」
「はいはい。ごめんなさいね。でも、そんなに悩む必要はないと思うわよ」
エリヴィラに対し、セナが謝って慰めの言葉をかけた。
「うん。そうだね。今回のことはもう考えないようにするよ。考えたところで、私はフィクトルのこと好きじゃないし」
「そうね」
その後、エリヴィラとセナは紅茶を飲み終えるまで他愛のない話をした。
彼女自身はフィクトルのことを何とも思っていない。しかし、フィクトルの好きな人なのが自分だと分かった時どうしようもなく胸が高鳴った。ドキドキしたし、なんなら今もドキドキしている。
こんなのおかしい。おかしすぎて、フィクトルが言ったことは冗談じゃないと分かっているのに、冗談のはずだと思いたい自分がいる。
「何をそんなに悩んでいるの?」
「う~」と唸りながら悩んでいると、後ろからセナの声がしたので何も考えずに答える。
「何って、フィクトルが私のこと好きみたいで、そんなの全然知らなかったし、恋愛感情なんてないはずなのにドキドキしちゃっておかs……ってなんでセナがここに?」
普通に答えてからガバッと後ろを振り向く。ここはエリヴィラの部屋だから、セナがいるのはおかしい。それに自分は今セナに何と言った?悩み事を全部白状してしまって恥ずかしい!とエリヴィラの頭の中は軽くパニックに陥った。
「夕食はいつも一緒に食べるのに、エリヴィラが食堂にいないから何かあったのかなって思ってここに来たのよ。ノックしても返事がないから、こそっと中を覗いたら様子がおかしいエリヴィラがいたから声をかけたの」
「様子がおかしいって何よ?!」
「言い方が悪かったわね。謝るわ」
セナが口元に手を当ててお上品に微笑む。
「それと、気になることがあるのだけれど。あなた、もしかしてフィクトルさんに告白されたの?」
「え、えっと、それは……」
実質、告白されたようなものだろうか?とエリヴィラが悩んでいたら、セナは彼女の手を取って言った。
「まずは食事をとりましょう。その後、詳しく話を聞かせてもらえる?」
「う、うん」
セナはエリヴィラの返答に頷き、二人で食堂へ向かった。
夕食を終えた二人は、エリヴィラの部屋に戻った。
「ちょっと紅茶淹れてくるね」
そう言ってエリヴィラは給湯室で紅茶を淹れに行った。各フロアに給湯室があり、そこにある茶葉やコーヒー豆、マグカップは自由に使っていいことになっている。マグカップは使用済みのカゴに入れておけば、寮母が魔法で洗ってくれるのだ。
エリヴィラは二人分の紅茶を淹れて自分の部屋に戻り、マグカップをセナに渡した。
ベッドに座って、エリヴィラは今日フィクトルの手帳を拾ったこと、その手帳から落ちた写真にエリヴィラが写っていたこと、その写真をフィクトルが「好きな人の写真」と言ったことを全部話した。
「フィクトルが『好きな人の写真』と言った時、私、ドキドキしたの。恋愛感情なんて抱いてないはずなのに!おかしいよね?」
エリヴィラが情けない顔で言った。そんな彼女を見て、セナは優しくエリヴィラの小さな背中を撫でる。
「ドキドキするのはおかしいことじゃないと思うわ。私も幼馴染に告白されたらドキッとするかもしれないし……」
「そうなの?」
「ええ。私はそう思うわ。そのドキドキがずっと続くなら恋かもしれないけれど」
「恋?!」
「エリヴィラって今はフィクトルのことで頭がいっぱいなのよね?もしかしたら、エリヴィラが気付いてないだけでフィクトルに恋をしているんじゃないの?」
セナがからかうような口調で言った。
「からかうのはやめて!私は別にフィクトルのこと好きじゃないって!」
「はいはい。ごめんなさいね。でも、そんなに悩む必要はないと思うわよ」
エリヴィラに対し、セナが謝って慰めの言葉をかけた。
「うん。そうだね。今回のことはもう考えないようにするよ。考えたところで、私はフィクトルのこと好きじゃないし」
「そうね」
その後、エリヴィラとセナは紅茶を飲み終えるまで他愛のない話をした。
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