最強暗殺者は落ちこぼれ学園生

りう

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ニ話

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「よぉし、いくか!」
そう言って、自分を鼓舞するレアン。
レアンの部屋は寮の最下階にある。ハンナを含め、レアンの実力を知っている者は、最上階にしたかったようだが、「わざわざ下に行くのが面倒だから」と、無理を言ったのだ。
寮のなかで、上下関係は決まってしまう。なぜなら、寮のどの階に住んでいるかで強いか決まってしまうからだ。
最下階に済んでいる人はいわゆる、「劣等生」。
最上階に住んでいる人はいわゆる、「優等生」。
そう決まっている。
ちなみに部屋の広さも変わってくる。上の階はとても広く、下の部屋はその半分しかないのだ。
レアンの部屋は他の落ちこぼれたちより少しだけ広い。だが優等生たちには負けていた。
だからハンナたちはレオンの部屋を最上階にしようとしていた。
昨日の生徒たちはみんな最上階に住む「優等生」。
そして彼らにとってレアンは落ちこぼれなのだ。
レアンと同じ階に住む人たちもまた然り。「優等生」のいじめの対象なのだ。
レアンはいつも早く登校する。
唯一の親友と待ち合わせをしているからだ。
「おーい!レアン!」
そう大きく手を振っているのは、レアンの親友のディラン・ラミレス。同じ落ちこぼれ仲間。
「おはよう」
「おはよ。聞いたぜ~昨日タイラーたちにやられたんだって?」
「まぁ……」
「返り討ちにしたか?」
「してないよ!」
はあ、とため息をつく。
「でもお前は一番の魔術師だろ?タイラーくらい余裕だろ?『闇の暗殺者』さん?」
そしてディランにはレアンの秘密がばれている。……というか弱みを握られている。
「あのさ、その、『闇の暗殺者』ってやめてくれな
い?……恥ずかしい……」
「いいじゃん!カッコいいじゃないか!この学園にいるほとんどの生徒はお前を目指しているんだぜ?」
「そんなことないって。……はぁ、なんでそんな不本意な異名がついたんだろう……」
「かっこいいじゃん!俺も欲しいなあ、異名……」
「頑張ればもらえるよ」
するとディランは嬉しそうに笑って、「よし、頑張ろう!」といった。


そして教室についた。レアンたちのクラスは高等部一年C組。まだ誰も登校していない。
そしてお互いの席につくとディランが言った。 
「よし!レアン!やるぞ!」
「わかった」
するとディランが立ち上がり、手先に魔力を集め始めた。
「……どうだ?」
「うーん……確かに一定量に魔力は出てる、でも魔力量は少ないかな……もう少し出せる?」
「お、おう!」
そして魔力を出すが、安定はしていない。
「ディランの課題はやっぱり、魔力量の増加だね。魔力が増えると、どうしても魔力操作ができなくなっちゃう」
「……はあ、やっぱりか……」
肩を落とすディランにレアンは言った。
「頑張れ、ディラン」
するとクラスメイトがだんだん登校してきた。
「おはよー、やっぱり早いね、二人とも」
そういったのは、フローラ・パウエル。美人で長い
薄茶の髪を持っている。レアンやディランとは違い、最上階に住んでいる優等生。
「おはよー、フローラ」
「おはよう、パウエルさん」
するとフローラはニコリと笑う。
「何してたの?」
「魔法の練習」
「へえ、いいなあ、明日から私も混ぜて!」
するとディランは言いよどんだ。ディランがレアンに教えてもらっているのは、レアンの実力を知っているからだ。ここでレアンの本当の実力がばれてしまうのは避けたい。
ディランがお断りの返事をしようとすると、レアンがきっぱり言った。
「いいよ」
「は?」
思わずそう言ってしまったが、フローラは気づかなかったようだ。
「ほんと?やった!」
「じゃあ、明日、七時半、寮前に」
「うん!」
そして上機嫌に席につくフローラ。フローラは優等生の中でもまれな、「実力で人を見ない人」なのだ。
ディアンはこっそり前の席のレアンに聞いた。
「いいのか?」
「ああ。バレなきゃいいんだから」
「俺の心配を棚に上げてお前は……」
そう言うと同時に先生が来た。
レアンはディランにごめん、と手を合わせた。
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