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3話 ギルドの活用法
3話②
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その後、仲間の断末魔を聞いて更に興奮を増した獣たち2匹を、おっかなびっくりとはいいつつ同じようにして順番に吊った。3匹の死体を一ヶ所にまとめ、首の罠を外してから手足と尻尾を先ほど集めた別の蔓で縛る。これで万が一生きていたとしても暴れることはかなうまい。血抜きのことも考えたが、実行する気にはなれなかった。
ギルドから借りた籠には到底収まりきらなかったので、1メートルくらいの枝を拾い、しなり具合を見てから尻尾を縛った蔓に括り付け、背負う形で持ち上げる。
(これでも学生時代は居酒屋でビールケース運んだりもしてたからな)
基礎的な筋肉は残っていたのだろう、余裕とまではいかないがふらつくこともなくしっかりとした足取りで、申し訳程度に薬草と毒草を摘み、ツコの実を拾う。それらを籠にしまってから、籠を前方に持ってきてまったく釣り合いの取れない天秤状態で担ぎながら森を後にした。
ラキシオンのデータには食用に向かない、とあった。女一人で3匹抱えられる程度の重量なので、1匹から取れる肉の量に期待はできないのであろう。牙はどうだろうと一応口腔を改めてみたが、尖った歯の中に細い犬歯が申し訳程度に生えている程度のものだった。残りの素材になるものは毛皮と骨。元の世界でも狐は毛皮素材として売買されていたので理解が早かったが、骨というのはどういうことか。小型の動物の骨というのは短く細いものだろうので、加工して装飾品にでもなるのだろうか。
(パープさんは襲われたら逃げろって言ってた気がするけど……この程度ならイケるのでは?)
武器を持たぬ女ゆえにそう言われた可能性もある。これで兎海が剣だの斧だのを扱えるようになれば、ばっさばっさと切り伏せていくのも難しくなさそうだ。ひとまずギルドに戻って報告しよう、と気軽に考えながら、昼間出てきた時と同じ二人の門番に手を振って挨拶をする。
が、門を潜ろうとしたところで盛大に引き止められた
「いやいやお嬢さん、そのまま街に入るのは感心しねぇよ!?」
「せめて布を被せるなりしたほうがいい!」
なるほど、討伐した魔物とはいえ剥き出しで持ち込むのは体裁が悪いか。そこまで考えが至らなかったことに反省しつつ項垂れると、一人の門番が傍の小屋から大きめ麻袋を二枚引き抜いて戻ってきた。土嚢を詰めるのに使うらしいが、繰り返し使うと破れたり解れたりして使えなくなるものがあるらしい。ちょうど駄目になったものがあったので、無料で譲ってくれた。
兎海は二人の手を借りてラキシオンを麻袋で簀巻きにすると、深々と腰を曲げてお礼をした。
「ありがとうございます、あまりこういった手合いをしたことがございませんでしたので」
「だろうなぁ、どう見ても冒険者じゃねぇし」
「ええ、今朝ギルドに加入したばかりですわ」
発行したばかりのギルド証を見せれば、門番二人は物珍しげにそれを覗き込んでくる。
「ラビさんっていうのか。俺はラッツ、こいつはデュー」
「あらあら、名乗りもせず失礼致しました」
気にしないでくれ、とデューと呼ばれた門番が、笑いながら短く刈り込んだ金髪をガリガリと掻いた。そういえば昨日の二人にもお互い自己紹介はしなかったなと今更ながらに思い出す。
「昨日この街に入る際に身分証明などしませんでしたが、大丈夫でしたか?」
「ああ、街の門にはだいたい簡単にだけど結界が張ってあるんだ」
「余程の罪人には反応するが、冒険者や一般市民は素通りできるものでな」
へえ、と兎海は素直に感嘆の声を漏らす。どうやらこの街だけではなく、この国の、この世界のありとあらゆる街の門にはそういった結界が張られているらしい。罪人を街に入れない、街から出さないほか、奴隷の逃亡にも一役買うのだそうだ。居るのか、奴隷。
「ラビさんのいた街には馴染みがなかった?」
「あったのでしょうけれど、良い意味で機能していなかったということでしょう」
危ない危ない。どこの街にもあるというなら、まったく知らないというわけにもいかない。前の街に長く住んでいたから顔パスで出てこれたのではないか、と暗に示しながら言葉を紡いでいく。まだまだパープに教わることがあるな、と兎海は心の中で決意した。
「ではそろそろ、ギルドに納品して参りますのでこの辺で」
「長話しちゃって済まなかったな」
「いえいえ、ではまた」
兎海は簀巻きにした獣を背負い直し、フレンドリーに手を振ってくる門番に挨拶をして門を後にする。夕焼けの空を仰ぎ見ながら、納品にどれだけ時間がかかるのだろうとぼんやり考えながらギルドに向けて足を動かした。
商業ギルドに赴くと、カウンターには朝のハーフリングではない、特に耳元が尖ったりしていない普通の人間らしい女性が書類整備をしていた。キョロキョロと辺りを見回して赤毛のハーフリングの姿を探したが見つからなかった。
───
次回 10/19 12:00 3話③ 更新予定
ギルドから借りた籠には到底収まりきらなかったので、1メートルくらいの枝を拾い、しなり具合を見てから尻尾を縛った蔓に括り付け、背負う形で持ち上げる。
(これでも学生時代は居酒屋でビールケース運んだりもしてたからな)
基礎的な筋肉は残っていたのだろう、余裕とまではいかないがふらつくこともなくしっかりとした足取りで、申し訳程度に薬草と毒草を摘み、ツコの実を拾う。それらを籠にしまってから、籠を前方に持ってきてまったく釣り合いの取れない天秤状態で担ぎながら森を後にした。
ラキシオンのデータには食用に向かない、とあった。女一人で3匹抱えられる程度の重量なので、1匹から取れる肉の量に期待はできないのであろう。牙はどうだろうと一応口腔を改めてみたが、尖った歯の中に細い犬歯が申し訳程度に生えている程度のものだった。残りの素材になるものは毛皮と骨。元の世界でも狐は毛皮素材として売買されていたので理解が早かったが、骨というのはどういうことか。小型の動物の骨というのは短く細いものだろうので、加工して装飾品にでもなるのだろうか。
(パープさんは襲われたら逃げろって言ってた気がするけど……この程度ならイケるのでは?)
武器を持たぬ女ゆえにそう言われた可能性もある。これで兎海が剣だの斧だのを扱えるようになれば、ばっさばっさと切り伏せていくのも難しくなさそうだ。ひとまずギルドに戻って報告しよう、と気軽に考えながら、昼間出てきた時と同じ二人の門番に手を振って挨拶をする。
が、門を潜ろうとしたところで盛大に引き止められた
「いやいやお嬢さん、そのまま街に入るのは感心しねぇよ!?」
「せめて布を被せるなりしたほうがいい!」
なるほど、討伐した魔物とはいえ剥き出しで持ち込むのは体裁が悪いか。そこまで考えが至らなかったことに反省しつつ項垂れると、一人の門番が傍の小屋から大きめ麻袋を二枚引き抜いて戻ってきた。土嚢を詰めるのに使うらしいが、繰り返し使うと破れたり解れたりして使えなくなるものがあるらしい。ちょうど駄目になったものがあったので、無料で譲ってくれた。
兎海は二人の手を借りてラキシオンを麻袋で簀巻きにすると、深々と腰を曲げてお礼をした。
「ありがとうございます、あまりこういった手合いをしたことがございませんでしたので」
「だろうなぁ、どう見ても冒険者じゃねぇし」
「ええ、今朝ギルドに加入したばかりですわ」
発行したばかりのギルド証を見せれば、門番二人は物珍しげにそれを覗き込んでくる。
「ラビさんっていうのか。俺はラッツ、こいつはデュー」
「あらあら、名乗りもせず失礼致しました」
気にしないでくれ、とデューと呼ばれた門番が、笑いながら短く刈り込んだ金髪をガリガリと掻いた。そういえば昨日の二人にもお互い自己紹介はしなかったなと今更ながらに思い出す。
「昨日この街に入る際に身分証明などしませんでしたが、大丈夫でしたか?」
「ああ、街の門にはだいたい簡単にだけど結界が張ってあるんだ」
「余程の罪人には反応するが、冒険者や一般市民は素通りできるものでな」
へえ、と兎海は素直に感嘆の声を漏らす。どうやらこの街だけではなく、この国の、この世界のありとあらゆる街の門にはそういった結界が張られているらしい。罪人を街に入れない、街から出さないほか、奴隷の逃亡にも一役買うのだそうだ。居るのか、奴隷。
「ラビさんのいた街には馴染みがなかった?」
「あったのでしょうけれど、良い意味で機能していなかったということでしょう」
危ない危ない。どこの街にもあるというなら、まったく知らないというわけにもいかない。前の街に長く住んでいたから顔パスで出てこれたのではないか、と暗に示しながら言葉を紡いでいく。まだまだパープに教わることがあるな、と兎海は心の中で決意した。
「ではそろそろ、ギルドに納品して参りますのでこの辺で」
「長話しちゃって済まなかったな」
「いえいえ、ではまた」
兎海は簀巻きにした獣を背負い直し、フレンドリーに手を振ってくる門番に挨拶をして門を後にする。夕焼けの空を仰ぎ見ながら、納品にどれだけ時間がかかるのだろうとぼんやり考えながらギルドに向けて足を動かした。
商業ギルドに赴くと、カウンターには朝のハーフリングではない、特に耳元が尖ったりしていない普通の人間らしい女性が書類整備をしていた。キョロキョロと辺りを見回して赤毛のハーフリングの姿を探したが見つからなかった。
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