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3話 ギルドの活用法
3話③
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「済みません、換金をお願いしたいのですけれど」
「はぁい、少々待ちくださぁい」
カウンターに歩み寄り、事務作業をする受付嬢に声をかけると、間延びした声で返事があった。波打つブランドをポニーテールにした、豊満な体つきの女性。空よりも明るい青い目をした彼女は、ぷっくりとした艶やかな唇を開き、ほっそりとした指で一枚の書類を差し出してきた。
「こちらにぃ、お持ちになった素材をご記入くださぁい。ギルドカードはこちらでぇ」
レジのコイントレーのようなものをサッと差し出す。なんとなく病院で診察券を出すときに似ているななどと考えながら、ポケットにしまったギルド証をトレーの上に載せる。担いでいた枝を肩から外し、採集籠と簀巻きにされた獣を床に置いてから、羽ペンを借りて羊皮紙の書類にペンを走らせた。
「えぇとぉ、ラビさんが本日お持ちになったのはぁ、薬草系と、果実とぉ……ラキシオン3匹、でお間違いないですかぁ?」
「はい、相違ありませんわ」
ペンを置いて書類を返すと、受付嬢はその内容を反復するように読み上げた。その間に、兎海は床に横たえた獣の遺体をよいしょと持ち上げた。担いでいた時も肩にずしりときたが、抱えるとまた余計に重く感じた。50キロくらいあるだろうか。
カウンターに置くことを許可されたので、書類の置かれていない場所にどさりと乗せる。受付嬢は麻袋からちょっぴりはみ出していた尻尾を確認すると、少々お待ちくださぁい、とやはり間延びした声で言い残してからカウンターの奥の部屋に消えていった。その間に、採集籠もカウンターに乗せておく。
(あ、もしかして素材で持ってこないといけなかったかな)
アニメや漫画で仕入れた知識では、冒険者は牙や耳といった証拠部位をギルドに納品していた気がする。手持ち無沙汰に周りを見ると、いくつかの冒険者らしきグループが兎海を遠巻きに見ていることに気付いた。彼らの囁く会話は聞き取れなかったが、ギルドに獣を丸ごと納品するどころか、メイド服を着た女がいることは相当に珍しいことだろうと思い至ったので気にしないことにした。もし換金額がよければ明日辺り新しい服を見に行っても良いかもしれない。
「お待たせ致しましたぁ、こちらへどうぞぉ。お荷物お運びしますねぇ」
台車を持って戻ってきた受付嬢は、カウンターの横にある通路へ手を伸ばして指し示した。今朝と同じく、奥の応接室に案内されるらしい。台車に簀巻きの獣を乗せるのを手伝ってから、籠を腕に提げて受付嬢の案内を受ける。
今朝の部屋とはまた別の部屋だったが、作りはおおよそ同じであった。台車を置いた受付嬢が一旦扉の向こうに消えていったが、恐らくパープがしたように茶を汲んで戻ってくるのだろう。採集カゴをローテーブルに乗せてから、台車を扉の開閉や入退室の邪魔にならぬよう壁際から部屋の中央に移動させ、ソファに腰を下ろす。皮張りのソファはとても座り心地が良く、メイドリフレの店で使っていた安物とは大違いだった。
「お待たせ致しましたぁ」
数回のノックの後、受付嬢が茶を持って入ってくる。その奥にもう一人、別の人影があった。受付嬢は後ろに妖艶な女性を侍らせている。妖艶な女性は暗い色のドレスを見に纏い、大きな透明の水晶の嵌まった木の杖を手にしており、いわゆるゲームの女魔術師のような風貌である。褐色の肌に長い銀の髪が落ち、まるでダークエルフのようだと思った。
「初めまして、ギルド副所長のキサラと申します」
「は、初めまして。ラビでございます」
キサラの気品高い物腰にあてられ、兎海はシュバッと勢い良く立ち上がって腰を折った。少々語弊はあるがメイド達に囲まれて暮らしていた兎海としては可愛い女の子は好きだし、綺麗なお姉さんも大好きなのである。恭しく挨拶を交わすと、キサラが着席を促すので大人しくそれに従った。
「ラキシオンを捕まえていらしたのですって?」
「捕獲というより、狩猟の方が近いかと」
「お一人で?」
「はい」
あらあら、とキサラは頬に手を当て、長い睫毛を伏せる。髪色と同じ銀の眉は弧を描いていたので、困っている様子ではなさそうだ。であればやはり、持ち込んだ状態が悪いのだろう。先に解体をしてくれる場所を聞いておけばよかったな、と今更後悔する。香り高い紅茶を堪能しているように見せているが、今から何を言われるのだろうと兎海は気が気でなかった。
「ラビさんはぁ、商業ギルドの登録をなさっていますがぁ、良ければ冒険者ギルドにもぉ、登録されると良いかもしれませんねぇ」
「冒険者ギルド、ですか」
───
次回 10/21 12:00 3話④ 更新予定
「はぁい、少々待ちくださぁい」
カウンターに歩み寄り、事務作業をする受付嬢に声をかけると、間延びした声で返事があった。波打つブランドをポニーテールにした、豊満な体つきの女性。空よりも明るい青い目をした彼女は、ぷっくりとした艶やかな唇を開き、ほっそりとした指で一枚の書類を差し出してきた。
「こちらにぃ、お持ちになった素材をご記入くださぁい。ギルドカードはこちらでぇ」
レジのコイントレーのようなものをサッと差し出す。なんとなく病院で診察券を出すときに似ているななどと考えながら、ポケットにしまったギルド証をトレーの上に載せる。担いでいた枝を肩から外し、採集籠と簀巻きにされた獣を床に置いてから、羽ペンを借りて羊皮紙の書類にペンを走らせた。
「えぇとぉ、ラビさんが本日お持ちになったのはぁ、薬草系と、果実とぉ……ラキシオン3匹、でお間違いないですかぁ?」
「はい、相違ありませんわ」
ペンを置いて書類を返すと、受付嬢はその内容を反復するように読み上げた。その間に、兎海は床に横たえた獣の遺体をよいしょと持ち上げた。担いでいた時も肩にずしりときたが、抱えるとまた余計に重く感じた。50キロくらいあるだろうか。
カウンターに置くことを許可されたので、書類の置かれていない場所にどさりと乗せる。受付嬢は麻袋からちょっぴりはみ出していた尻尾を確認すると、少々お待ちくださぁい、とやはり間延びした声で言い残してからカウンターの奥の部屋に消えていった。その間に、採集籠もカウンターに乗せておく。
(あ、もしかして素材で持ってこないといけなかったかな)
アニメや漫画で仕入れた知識では、冒険者は牙や耳といった証拠部位をギルドに納品していた気がする。手持ち無沙汰に周りを見ると、いくつかの冒険者らしきグループが兎海を遠巻きに見ていることに気付いた。彼らの囁く会話は聞き取れなかったが、ギルドに獣を丸ごと納品するどころか、メイド服を着た女がいることは相当に珍しいことだろうと思い至ったので気にしないことにした。もし換金額がよければ明日辺り新しい服を見に行っても良いかもしれない。
「お待たせ致しましたぁ、こちらへどうぞぉ。お荷物お運びしますねぇ」
台車を持って戻ってきた受付嬢は、カウンターの横にある通路へ手を伸ばして指し示した。今朝と同じく、奥の応接室に案内されるらしい。台車に簀巻きの獣を乗せるのを手伝ってから、籠を腕に提げて受付嬢の案内を受ける。
今朝の部屋とはまた別の部屋だったが、作りはおおよそ同じであった。台車を置いた受付嬢が一旦扉の向こうに消えていったが、恐らくパープがしたように茶を汲んで戻ってくるのだろう。採集カゴをローテーブルに乗せてから、台車を扉の開閉や入退室の邪魔にならぬよう壁際から部屋の中央に移動させ、ソファに腰を下ろす。皮張りのソファはとても座り心地が良く、メイドリフレの店で使っていた安物とは大違いだった。
「お待たせ致しましたぁ」
数回のノックの後、受付嬢が茶を持って入ってくる。その奥にもう一人、別の人影があった。受付嬢は後ろに妖艶な女性を侍らせている。妖艶な女性は暗い色のドレスを見に纏い、大きな透明の水晶の嵌まった木の杖を手にしており、いわゆるゲームの女魔術師のような風貌である。褐色の肌に長い銀の髪が落ち、まるでダークエルフのようだと思った。
「初めまして、ギルド副所長のキサラと申します」
「は、初めまして。ラビでございます」
キサラの気品高い物腰にあてられ、兎海はシュバッと勢い良く立ち上がって腰を折った。少々語弊はあるがメイド達に囲まれて暮らしていた兎海としては可愛い女の子は好きだし、綺麗なお姉さんも大好きなのである。恭しく挨拶を交わすと、キサラが着席を促すので大人しくそれに従った。
「ラキシオンを捕まえていらしたのですって?」
「捕獲というより、狩猟の方が近いかと」
「お一人で?」
「はい」
あらあら、とキサラは頬に手を当て、長い睫毛を伏せる。髪色と同じ銀の眉は弧を描いていたので、困っている様子ではなさそうだ。であればやはり、持ち込んだ状態が悪いのだろう。先に解体をしてくれる場所を聞いておけばよかったな、と今更後悔する。香り高い紅茶を堪能しているように見せているが、今から何を言われるのだろうと兎海は気が気でなかった。
「ラビさんはぁ、商業ギルドの登録をなさっていますがぁ、良ければ冒険者ギルドにもぉ、登録されると良いかもしれませんねぇ」
「冒険者ギルド、ですか」
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