【完結】【R18】女騎士はクールな団長のお役に立ちたい!

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「さて、どこから話そうか……。そうだ、そもそもひとくちに媚薬といっても「ピンからキリまで」というほど薬効に幅がある。体が熱くなる程度の代物から、異性と交わるまで治まらないレベルまである。効果は三十分から数時間とこれも幅が広い。ただ、今までの媚薬は最悪の場合、薬を飲ませて当て身で落として眠らせている間に何とかできる代物だったんだ」

 アマーリエは隣のアンナと顔を見合わせる。

「ねえ、アレク。薬って何? そういうことしていいの?」
「医師か家族などの看護人の立会いによるという前提だけど、睡眠薬と安定剤で丸一日眠らせて、その間に薬効時間を経過させる。それで治めてきた」
「なんというか……力技ですね」
「うん。そう。でも、これなら女の子は傷つかないから」

 ヨハネスが困惑したようにいうと、アレックスも少し苦笑いを浮かべる。

「後遺症とかないの?」
「寝続けたことによってぼんやりするとか体が痛いとかだるいとかそのくらいだけど、三日か四日で治まるから」

 アマーリエの質問にアレックスは後遺症は軽微であると説明する。
 それはそれで大変だが、未婚の女性にとって異性と交わらなくてはいけないというのは辛いものだ。
  貴族でも庶民でも、未婚の女性の純潔や既婚女性の貞操というのは尊ばれている。以前よりも脅迫じみた貞操観念は緩和されてきているとはいえ、純潔や貞操は守られるべきだという考え方が基本だ。

「薔薇の雫って言うのは薬効が強くて長い間効くから困る。三日間異性としたくてたまらないって困るだろう?」
「そんなに長いこと効くんだ……。でも、アレク。さっきの方法では何とかならないの?」
「安定剤と睡眠薬も使えて一日半だけど、もともと強めの睡眠薬なり安定剤なり使わないといけないのに、薔薇の雫の場合は量も必要なんだ。そうなると精神的に後々まで影響がでるから……その……」

 少し言いにくそうに言葉を濁すがアレックスは続ける。

「使っても、一番薬効の強い時間を異性と過ごしたあとに使って時間稼ぎする手もあるけど、しばらくだるいとかぼーっとするとかあるから、基本的に推奨していない。一番薬効の強い時間を異性と過ごしたあと、睡眠剤単体で使って時間稼ぎ……が一番リスクは少ないと俺の知る限りではされていた」
「じゃあ、薔薇の雫自体には後遺症はないの?」

 アマーリエはそこが気になる。フリードリッヒに何もないと直接聞けないから、せめて薬そのものの影響はないと確認したい。

「ああ。今のところ後遺症は否定されている」

 アレックスの返事にほっとする。ちょっとだけ肩から力が抜ける。

「ねえ、アレックス。個人差もあると思うけど、薬効でどんなものがあるの? あとね、薬効が現れるまでどのくらいかかるものなの? すぐに効果が出てくるの? それとも数時間後ということもあるの?」
「まず薬効に関してだけど、最初には体が熱くなって少しぼんやりする……しんどくない発熱のようなものだって資料には表現されてた。段々時間の経過とともにぼんやり感が進んであまり深く考えられなくなる。おそらく剣を握るのも億劫になるほど気だるい感じになってくる。その代りのように異性に触れたくて堪らなくなる。今のところやたら赤い顔してぼんやりしてる人に声かけると、三割くらいは被害者だって言われてる」
「残りは?」
「酔っぱらいだよ、アンナ。アンナもアマーリエ嬢も見かけても自分で声かけちゃだめだよ。酔っぱらいの相手なんて女の子がしちゃいけない」

 アレックスにやんわりと釘を刺される。アンナは「男の酔っぱらいには声かけないわよ」と不満げだ。
  酔っぱらいは酔っぱらいで何とかしなくてはいけない気がするが、見かけたら他の男性騎士を呼ぶことにすればよいかと結論付ける。

「酔っぱらいも暴行犯も被害者も庭の片隅や茂みの陰にいることが多いから……ヨハン、外回りの警備の時気にして見るといいよ」
「わかりました」

 男性騎士は外周と呼ばれる外か中庭などの人気の少ないところを回ることが多い。

「それで時間についてだけど、薬効は三十分くらいで現れると言われている。飲まされた人間が飲食して薬効が出始めたと思われるころまで大体三十分くらいと言われているけど、人によっては多少早かったり遅かったりするかもしれない。一度目より二度目の方が効きやすいと言われてるが、さほど時間差はないとされている。現れたらできるだけ早急に対応しないとあとがしんどいというか……ぶっちゃけると、理性が無くなっちゃって暴走してしまうので、我に返った時に居たたまれなくそうだよ」
「そうなのね……」

 フリードリッヒが飲まされたときの状況はわからないが、フリードリッヒは飲まされてからしばらくたっていたのだろうか。
  あの日、アマーリエにキスするのをやめられなかった様子だった。アマーリエは訳も分からずされるがままだったが、マティアスに引き離されてフリードリッヒは我に返ったような様子を見せていた。

「アレクさん。質問ですが、薔薇の雫の特徴は甘いことと薔薇の匂い以外にありませんか? 無色なんですよね?」
「特徴はそれ以外だと……少なくとも俺の見た原液はとろっとしていた。少し温めた蜂蜜みたいな感じの少しとろっとした感じ。聞いたところによると、蜂蜜というより砂糖の甘さってことらしいから結構甘みは強いようだ」
「ちなみに一回量はどのくらいで流通しているんでしょうか? この量以下なら薬効が少ないとかあるんでしょうか?」
「確定情報じゃないけど……紅茶を飲む時にティーカップ八分目までいれるだろう? それの半分くらいが一回量らしい。薬効もこの量以下なら……っていう量はまだわからないけど、少ない方が効きは弱いだろうね」
「一回量ってそんなに少ないの?」

 アンナが驚く。一口でも飲める量だ。

「ああ、だから飲んでしまったと思ったら即座に吐き出すのが対処として正しいんだけど、少ないから一口でほぼ飲んでしまった場合もある。何かに混ぜられた場合は甘い割にはスープに混ぜられてても意外に気づきにくい。……で、気づいたときには薬効が出て……ってなる。舐めた程度では多分薬効はほぼ問題なく、従来の薬を使った方法でも何でもできる」

 一回量の少ないということは携帯しやすいということだ。さらに保管もさして場所を取らないということだ。

「だいたいどこで使われたのかしら? 最初昨シーズンの夜会で使用されて、下町でも流行ったって新聞とか通達で見たのだけど」
「ああ、大体そういう感じ。団で把握している限りでは値段は一回量あたり金貨数枚。庶民が手を出すには高いと思う。ただ金貨数枚って貴族には手が出せないわけではないでしょ。百本持つのは躊躇われても、数本くらいなら躊躇いなく手を出せる範囲だ」

 確かに貴族の収入を考えたらちょっとした装飾品程度の値段だ。大量に購入するのでなければそこまで負担でもない。伝手さえあればアマーリエにだって買える程度の値段だ。

「ただ、流通経路とか詳しい話は分かっていない。捕まえた輩はホント酒場で貰ったとか興味本位で夜会で噂を探ったら金貨数枚だから買ったって話だけど」
「そこから先はわからないんですか?」
「購入元の貴族はどうも偽名だったらしくてそれ以上はたどれなかった。だから団の調査方針としては、当面は通常の夜会の警護だけじゃなく、夜会の抜き打ち見回りと女性王族と女性騎士が飲まないようにするための対応強化することになった。軍では下町で精製工場とか倉庫がないか調べてる」

 精製するにも多少なりとも設備は必要だ。薬から薔薇の匂いがするということは――製品自体に匂いをつけているのかはっきりしないが――制作時にも匂いはするはずだ。匂いを悟られない地下か、手を入れられにくい貴族の屋敷か、下町の奥まったところか、いずれにしろ探す範囲が広い。

「たぶん旗振り役がいて、そいつがうまく情報を統制してたり、在庫の管理と薔薇の雫をばらまいているんだと思う。杳として胴元も工場も在庫置き場もわからない。でも何となく広まってきているという、どうしようもない状態だよ。被害者も口を噤んでいる場合がほとんどだし。話を聞けたのは本当に限られてて、ほとんど表ざたになっていない。だから、新聞にも噂レベルの話がほとんどだと思う。……と、そんなところかな?」
「ええ、ありがとう、アレックス」

 アマーリエはアレックスに礼を言う。
  まだわかっていることはすくないようだが、詳しく知れて良かった。

(じゃあ、どうしたらいいのかしら)

 目的を達するにはどうすればいいのか。
 掴みどころがまだない。切っ掛けを掴むためにアマーリエは何をしたらいいのか思案する。

(とりあえずできそうなことと言えば、思いつく方法は一つしかないわ……)

 アマーリエは思案しながら、茶菓子にと用意してくれたチョコレートを口に放り込んだ。
  

  
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