【完結】【R18】女騎士はクールな団長のお役に立ちたい!

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本編

提案 ●

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 心底安心したように穏やかに告げたが「ああそうだ」と今思いついたようにギュンターはフリードリッヒに提案する。



「アマーリエと行動をともにしていたヨハネス・ディーゼルの件だ。今回のことで何かしらの罰を与えるなら是非うちに預けて欲しい。アマーリエを守れん腑抜けを叩き潰す」

「潰すな。ヨハンは若手の有望株だぞ。甘さもあるが伸びしろもある。いずれ役職にと期待もしている」

「ヨハンは近衛志望って本人からきいたよ。騎士になったのは近衛にあこがれたからだってさ」

「なら、なおさらじっくり育てたい」



 ラーヴェルシュタイン王国では騎士団でキャリアを積んだ騎士が近衛になる仕組みだ。現在は特に王族が多いため近衛の人数が多い。

 数年後には国王が代替わりするだろうから、体制に多少の変化は起きるだろうが、王族それぞれに騎士がつくという基本は変わらない。王と王太子には五十人~七十人強つくのが慣例であるが、国王を退いたからといって騎士の人数が極端には減らない。

 王と王太子以外には三十人程度がつくのが慣例であるが、例外的にルートヴィッヒのような一人しかつけていない王族もたまにいる。ルートヴィッヒは自身が騎士だからと一貫して断ってきた。

 どの王族につくにしろ、現場の判断で王族を守らなければいけない。単に騎士としての技量だけが問われるものではない。きちんとそのつもりで育ててやらなければいけない。



「穏やかな声で物騒なことを言うな」

「何を言っているんだ。アマーリエ愛する妹を守れない男は潰しておくのが兄の務めだよ?」

「そんな務めはしらん。常識のように語るな。うちの有望株を潰すな。ヨハンはアマーリエと仲がいい。潰したら嫌われるぞ」

「……そうなのですか?」



 嫌われるという単語に反応して不安げにアレックスに聞く。アレックスは視線をさまよわせる。



「ええ……まあ……」

「どうした? 歯切れが悪いが……」

「いや……実はヨハンはアマーリエ嬢のこと密かに好きで、でもアマーリエ嬢には友達としか思われてなくて、しかもアマーリエ嬢が好きなのは尊敬するフリードリッヒだから、フリードリッヒに託して影ながらアマーリエ嬢の幸せを見守ろうとしてるらしいんだ。……ってアンナに聞いてからヨハンを見るのが辛いぃ」



 アレックスは「ああああ」と言いながら頭を抱える。



「今回のこともアマーリエ嬢が自分を頼ってくれたのが嬉しくて、アマーリエ嬢の為に自分ができることをって思っていたけど、アマーリエ嬢のピンチを助けてあげられなかったって今すごく凹んでいるらしい」

「……だ、そうだ」



 アマーリエとヨハネスは仲がいいとは思っていた。アンナを除けば一番仲が良さそうに見えた。同期なので一緒にいることはおかしくはないし、フェミニストではないにしろ、穏やかな質のヨハネスが女性に親切なのはおかしいことではない。ヨハネスがアマーリエにやけに甘いなと思いつつも、自分よりも踏み込んだ位置にいられるヨハネスは同期ならではの距離感だなと二人の上司としてマティアスと話をしていた。

 ただ、ヨハネスがアマーリエを好きと聞いて、目の前で誘ってしまったのは酷く申し訳なさを感じた。



(いや、誰かに譲るわけにもいかないし、放置するわけにもいかない)



 親戚だからと部屋まで用意してもらった。処置としては適切だったが、上司としても人としても配慮がなかった。



(感情任せで動くとろくなことがない)



 その点ヨハネスは、内心はさておき行動は冷静だ。薔薇の雫の薬効がでた状態なら移動時間は少ないほうがいい。

 近衛には冷静さと、主が我が儘を言ってもうんうんと聞き流して最終的にいうことを聞かせる能力が必要だ。

 そういう意味では近衛向きかもしれない。



「アマーリエを大切に思ってくれているという点においては評価はできるが、守り切れなかった理由が離れていたからというのは詰めが甘すぎる。近衛になるならそういう甘さを改めないとね」

「十年かけて私が鍛えるから、お前は手を出すな。それよりも、お前は愛する妹のことのほうが重要だろう? アマーリエは……またするだろうな」



 きっとあきらめてはいない。少し頑固で突っ走るところがあるというのはフリードリッヒも感じていた。溺愛してやまないギュンターにすら「すこし頑固なところもある」と感じさせている。ギュンターはそこも愛らしいと感じているし、フリードリッヒ自身もギュンターとは違う意味で可愛いと、アマーリエらしいと感じていた。

 しかし、今はそれを危ういと感じている。今回突っ走った結果薔薇の雫を飲まされてしまった。未遂だったからよいものの、あんな下種に触れさせてしまった結果、アマーリエを傷つけてしまった。フリードリッヒは止められなかったことを後悔している。

 だがアマーリエは口でやめなさいと言ったところでやめるタイプではない。納得しないと多分止まらない。ヴェッケンベルグが「退くにも一定の理由がいる」ということはフリードリッヒも実感していることだ。



「うん、だろうねぇ」



 ギュンターはあっさり頷いて口の端を引き上げる。挑戦的な笑みだ。



「どうする? 我が友フリードリッヒ」

「また考えるさ。落ち着いたら一度ヴェッケンベルグ家に返す。しばらく休養するように指示するので、見張っていてくれ」



 ギュンターの青い目を見据えて頼むとギュンターは頷きつつも頬を緩ませる。



「いつまでも大人しくはしてないよ?」

「手筈を整えたら連絡する」

「わかったよ。愛する妹をそっと見守るのは兄の務めだからね」



 やや自慢げに微笑んだギュンターに微苦笑を返した。



(さて……どうするか……)



 アマーリエを守りつつも、やめさせるだけの手はずをフリードリッヒは整えなければいけない。

 フリードリッヒは冷めた紅茶を一口飲んだ。





 
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