僕の隣の日本悪魔

雑賀草

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【8話】スキー教室

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 橋爪は泳げない男だった。確かに、見たことはないものの悪魔の世界ではプールなどやらなさそうだ。それならスキーはどうだろう? スキー教室を目前にしてふと思った。彼のことだから、スキー場の雪をすべてかき氷にして食べてしまうのではなかろうか。そして翌日腹を壊すのではないだろうか。
 ただ、いくら彼のことを知ったと思って次を予測しても裏切られる。次も何かしらの手口で裏切ってくるのではないだろうか。逆にスキーが実は得意という場合もある。スキー教室の宿泊先で着替える時、ふと橋爪に目をやる。着替える手は進んでいない。彼はわかりやすい男だから、得意ならさっさと着替え終えているはずだ。苦手だということはわかった。
 彼は水をガブガブ飲みながら着替えていた。やるしかないと腹を括ったはいいが緊張している、といった状況だろうか。そのうち橋爪はいそいそとトイレにいった。しかし一向にトイレから戻ってこない。集合時間が近づいていたので、仕方なく先にその場に行っていることにした。
 集合時間ギリギリに彼は現れた。汗だくである。走ってきたのだろう。と思いきや、汗を飛ばすかのように彼はその場で回転しだした。友達の汗であろうとかぶりたくない僕たち生徒はとりあえず逃げるために室内に入った。それからというもの一部始終を見ていたが彼は回転を止めずにあちこち動き回る。大量の汗が飛び、晴れという天気も手伝って、一部の雪が解けた。僕は頭を抱えた。これが狙いか。雪を溶かせばいいと考えて汗を出すために水を大量の水を飲み、汗をかくためにトイレで大量のカイロを張り付けてきたのだろう。細かいところは違うかもしれないが、大方、こんなもんだ。
 でも、彼の計画は失敗に終わった。いくら悪魔と言えど、汗のスプリンクラーにはなれないらしい。そしてそんな量では山全体の雪を溶かしきるなぞ無理なことである。大量の汗で体が冷え、青ざめながら初めてのスキーを頑張った彼は賞賛に値すると陰ながら思った。
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