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本編
楽しい休暇の過ごし方
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ヴァンルートス第三王子殿下が白蝶貝城に滞在をはじめてから、一週間が経過した。
ナナセが直接彼に関わることはないが、ディンメル王国の王子王女と順調に交流しているようだ。
ヴァンルートスを迎える準備で駆けずり回る日々は終わったが、現在は彼が不自由なく過ごせるよう奔走している状況だった。それなりに責任のある中堅の立場は辛い。
今日は、久しぶりの休日だ。
たまたま休みが一致したリオルディスに誘われ、食事に行く予定だった。
透き通るほど青い空には、柔らかな白い雲とくるくる旋回するトンビの影。日差しも強すぎず弱すぎず、歩いて街に向かうにはちょうどいい気候だ。
温暖な風に甘い花の香りが混じっている。
休日にリオルディスと会える喜びも相まって、ナナセの足取りは自然と軽くなった。
――リオルディス様って本当に優しいな。
数える程度しか街に下りたことのないナナセを気遣い、案内を申し出てくれたのだ。
単にナナセが出不精をしていただけで、機会がなかったわけではないのだが。
――ただの悪あがき、なんだけどね。馴染みすぎるのが怖いっていうか。
もちろん仕事は楽しい。
けれどプライベートまで充実させてはいけないという、漠然とした不安があった。
まだ希望は捨てたくない。
好きなもの、大切な場所、特別な人。
手放せないものが増えるほど、いざ日本に帰れるとなった時に躊躇するだろう。
何より、この世界で生きることを受け入れてしまったようで――。
「ナナセ?」
穏やかに名を呼ばれ、ハッと我に返る。
いつの間にか待ち合わせをしていた城門前に到着していたようで、リオルディスが不思議そうに覗き込んでいた。
「すみません。少し、仕事のことを考えていました。こんにちは、リオルディス様」
嘘をつく罪悪感が、チクリと胸を刺す。
彼は疑うことなく苦笑した。
「こんにちは、ナナセ。休日にも頭をいっぱいにするほど、仕事が好きなんだね」
からかいまじりの言葉に、肩の力も強ばっていた心もほぐれていく。
街に下りるのが怖くても、リオルディスの誘いに頷いたことは後悔していない。
貴重な休日を使ってまで思いやってくれる彼を、拒絶することなどできないのだから。
「今日は、全力でお休みを楽しもうと思っております。どうぞよろしくご指導ください」
「じゃあまず、肩の力を抜こうか。全力で楽しむために、敬語もできる限りなしで」
しかつめらしい態度を装ったリオルディスが、いかにもそれっぽいことを言う。
お酒も入っていないのに敬語を崩せるだろうかと考えつつ、ナナセは頷いた。
城門を出ると、穏やかな田舎道が平坦に続いている。申し訳程度に舗装された石畳は、あちこちひび割れていた。
道の両脇に咲いた春の花達のおかげで、歩く距離は気にならなかった。隣にリオルディスがいるからかもしれない。
「そういえば、あの絵画は撤去させたから」
リオルディスから切り出され、ナナセは不気味な生首の絵画に思い当たった。
「確か、国王陛下のお気に入りって言ってませんでした? よく許可が下りましたね」
「いやまあ、お気に入りというか、ね……」
なぜか彼は言葉を濁す。
ナナセは首を傾げながら続きを待った。
「実はあれには、いわくがあるんだ」
いわく、と言うわりに、リオルディスの口角は微妙に上がっている。
「十年ほど前、陛下はある女性と親しくなった。王妃陛下とご成婚されたばかりだというのに、秘密裏に逢瀬を重ねていたんだ」
「それはまた、何とも……」
一国の王にこんなことは言いたくないが、結婚直後に火遊びなんてあまりに軽率だ。
「まだ誰にも気付かれていないと油断していたある日、あの絵画を王妃陛下から贈られたそうだよ」
「うわぁ。王妃陛下って強者ですねぇ……」
絵画の中には、男の生首を愛おしげに捧げ持つ美女。
陛下は、心底肝を冷やしたらしい。
それ以来、己への戒めとして絵画を飾り続けていたのだという。
今では国民中に知られるおしどり夫婦に、そんな過去があったなんて知らなかった。
「リオルディス様、よくそんな裏話知ってましたね。というか、そういうのって私に話しちゃっていいんですか?」
「いいんだよ、王妃陛下に知られているなら隠しだてなんて無意味だしね。詳しいのは、うちの団長が陛下のご学友ってやつだから。悪い方のね」
「あぁ、悪友ってやつですか」
リオルディスも年が近いから、学生時代は引っ張り回されてかなり苦労したらしい。何とも不遇だ。
街が近付くと、ちらほら人も増えてくる。
素朴な草木染めのスカートや、エプロンドレス。生成りのシャツやボトム。
どれも優しい色合いだが、それぞれの髪や瞳の色が明るいためか地味な印象はない。
同じような格好をしていても、ナナセはどうしても暗い雰囲気になりがちだ。こういう時、せめて茶色い髪であればと思う。
逆にリオルディスは注目の的だった。
今日は騎士の制服ではなく、街の人々と似たような格好をしている。けれど上背があるためか端整な顔立ちのためか、誰もが目で追ってしまうようだ。
平凡な服を着ていても、端々に洗練された雰囲気がにじみ出ている。ふと目が合えば優しく微笑んでくれるのだから、見るなと言う方が無茶だった。
誰もが憧れてやまないリオルディス。
だからこそ、こっそり憧れるくらいならと自分を許せるのかもしれない。
まずはおいしいと評判のパン屋に行った。
ナナセがいつでもパンに感動しているから、お勧めの店を紹介してくれたのだろう。
今まで出会ったバタールやバケットだけじゃなく、カリカリに焦がした砂糖で表面を覆われた甘いパンや、食パンに目玉焼きがのった惣菜パンのようなものもあった。
「ここで買いものをして、座ってゆっくり食べようかと思っているんだけど……」
「買い食い! 最高ですね!」
「……もし抵抗があれば近くに行きつけのお店もあるから、って言おうとしていたんだけれど、気の回しすぎだったみたいだね」
灰青の瞳を瞬かせていたリオルディスが、おかしそうに噴き出した。
「君なら、こういうのも嫌がらないだろうなって、何となく思ってた」
言われてみれば、彼は貴族だ。
彼の方こそ買い食いに抵抗があるのではと思ったが、リオルディスがあまりに快活に笑うから気遣うタイミングを逸してしまった。
ナナセはハムとチーズが挟んであるパンと、黒すぐりのジャムがこれでもかとのったパンを選んだ。
リオルディスはサンドイッチを三つとバタールを一本丸ごと買っていたが、意外とよく食べることは知っていたので驚きはしない。
パン屋の店先には幾つかテーブルセットがあり、内一つが空いていた。
そこを確保すると、リオルディスは飲みものを買いに行った。すぐに戻ってきた彼の手にあったのはエールで、思わず半眼になる。
「好きですよね、お酒……」
「もちろん好きだけれど、君と一緒に飲むからこそ楽しいんだよ」
「どうせ質の悪い酔い方ですよ」
高確率で絡み酒になってしまうことを揶揄されているとしか思えない。
けれどリオルディスは、対面に腰を下ろしながら首を振った。
「違うよ。ナナセが作ってる壁がなくなった気がするから、嬉しくなるんだ」
ニコニコ嬉しそうに笑う彼には、他意などないのかもしれない。
それでもナナセの肩が少し揺れてしまったのは、自分の中の葛藤を見透かされたような心地がしたからだ。
迷って、何年経っても中途半端。
帰りたい気持ちが、未練がましく心の底にこびりついているみたいだった。
本当は分かっているのだ。
今選択を迫られても、迷わず帰還を選ぶことなんて、もうきっとできない。
リオルディスが街に誘ったのは、意図的だったのだろうか。優しい笑顔からは真意を読み取れない。
ナナセは大きく息をつくと、少し結露したカップを受け取った。
「……乾杯」
「乾杯。今日のよき日に」
カチリと金属製のグラスを合わせ、エールを一息にあおる。
冷たいのど越しと、口内に残る苦い余韻。
ナナセは雑踏を眺めた。
楽しそうな若者や、泣く子をあやす夫婦。
世界は違っても人々の営みは変わらない。
苦しいことや悲しいことがあっても、前を向いて生きていく。それは、大切な何かと出会うためなのかもしれない。
「よし。こうなったら、リオルディス様には責任をとってもらおう」
「婚姻ならいつでも大歓迎だよ」
「そういう責任の取り方古いですよ」
「冷たいなぁ」
「お酒飲ましたのあなたの方でしょ」
ナナセはグラスを置くと、楽しげに微笑むリオルディスを睨むように見返した。
「……仕事が落ち着いた時にでも、やけ酒に付き合ってください。もちろんおごりで」
彼は僅かに目を見開いたあと、くつくつと忍び笑いを漏らした。
柔らかく細められた瞳は、どこか包み込むような温度を持っている。
「じゃあ、ヴァンルートス殿下がお帰りになってからになるかな? 滞りなく交流が終わればいいよね」
「そうですね」
それがどれほど楽観的な考えであったか、ナナセはすぐに思い知ることになる。
この日から三日後の晩、王子が忽然と姿を消してしまったからだ。
ナナセが直接彼に関わることはないが、ディンメル王国の王子王女と順調に交流しているようだ。
ヴァンルートスを迎える準備で駆けずり回る日々は終わったが、現在は彼が不自由なく過ごせるよう奔走している状況だった。それなりに責任のある中堅の立場は辛い。
今日は、久しぶりの休日だ。
たまたま休みが一致したリオルディスに誘われ、食事に行く予定だった。
透き通るほど青い空には、柔らかな白い雲とくるくる旋回するトンビの影。日差しも強すぎず弱すぎず、歩いて街に向かうにはちょうどいい気候だ。
温暖な風に甘い花の香りが混じっている。
休日にリオルディスと会える喜びも相まって、ナナセの足取りは自然と軽くなった。
――リオルディス様って本当に優しいな。
数える程度しか街に下りたことのないナナセを気遣い、案内を申し出てくれたのだ。
単にナナセが出不精をしていただけで、機会がなかったわけではないのだが。
――ただの悪あがき、なんだけどね。馴染みすぎるのが怖いっていうか。
もちろん仕事は楽しい。
けれどプライベートまで充実させてはいけないという、漠然とした不安があった。
まだ希望は捨てたくない。
好きなもの、大切な場所、特別な人。
手放せないものが増えるほど、いざ日本に帰れるとなった時に躊躇するだろう。
何より、この世界で生きることを受け入れてしまったようで――。
「ナナセ?」
穏やかに名を呼ばれ、ハッと我に返る。
いつの間にか待ち合わせをしていた城門前に到着していたようで、リオルディスが不思議そうに覗き込んでいた。
「すみません。少し、仕事のことを考えていました。こんにちは、リオルディス様」
嘘をつく罪悪感が、チクリと胸を刺す。
彼は疑うことなく苦笑した。
「こんにちは、ナナセ。休日にも頭をいっぱいにするほど、仕事が好きなんだね」
からかいまじりの言葉に、肩の力も強ばっていた心もほぐれていく。
街に下りるのが怖くても、リオルディスの誘いに頷いたことは後悔していない。
貴重な休日を使ってまで思いやってくれる彼を、拒絶することなどできないのだから。
「今日は、全力でお休みを楽しもうと思っております。どうぞよろしくご指導ください」
「じゃあまず、肩の力を抜こうか。全力で楽しむために、敬語もできる限りなしで」
しかつめらしい態度を装ったリオルディスが、いかにもそれっぽいことを言う。
お酒も入っていないのに敬語を崩せるだろうかと考えつつ、ナナセは頷いた。
城門を出ると、穏やかな田舎道が平坦に続いている。申し訳程度に舗装された石畳は、あちこちひび割れていた。
道の両脇に咲いた春の花達のおかげで、歩く距離は気にならなかった。隣にリオルディスがいるからかもしれない。
「そういえば、あの絵画は撤去させたから」
リオルディスから切り出され、ナナセは不気味な生首の絵画に思い当たった。
「確か、国王陛下のお気に入りって言ってませんでした? よく許可が下りましたね」
「いやまあ、お気に入りというか、ね……」
なぜか彼は言葉を濁す。
ナナセは首を傾げながら続きを待った。
「実はあれには、いわくがあるんだ」
いわく、と言うわりに、リオルディスの口角は微妙に上がっている。
「十年ほど前、陛下はある女性と親しくなった。王妃陛下とご成婚されたばかりだというのに、秘密裏に逢瀬を重ねていたんだ」
「それはまた、何とも……」
一国の王にこんなことは言いたくないが、結婚直後に火遊びなんてあまりに軽率だ。
「まだ誰にも気付かれていないと油断していたある日、あの絵画を王妃陛下から贈られたそうだよ」
「うわぁ。王妃陛下って強者ですねぇ……」
絵画の中には、男の生首を愛おしげに捧げ持つ美女。
陛下は、心底肝を冷やしたらしい。
それ以来、己への戒めとして絵画を飾り続けていたのだという。
今では国民中に知られるおしどり夫婦に、そんな過去があったなんて知らなかった。
「リオルディス様、よくそんな裏話知ってましたね。というか、そういうのって私に話しちゃっていいんですか?」
「いいんだよ、王妃陛下に知られているなら隠しだてなんて無意味だしね。詳しいのは、うちの団長が陛下のご学友ってやつだから。悪い方のね」
「あぁ、悪友ってやつですか」
リオルディスも年が近いから、学生時代は引っ張り回されてかなり苦労したらしい。何とも不遇だ。
街が近付くと、ちらほら人も増えてくる。
素朴な草木染めのスカートや、エプロンドレス。生成りのシャツやボトム。
どれも優しい色合いだが、それぞれの髪や瞳の色が明るいためか地味な印象はない。
同じような格好をしていても、ナナセはどうしても暗い雰囲気になりがちだ。こういう時、せめて茶色い髪であればと思う。
逆にリオルディスは注目の的だった。
今日は騎士の制服ではなく、街の人々と似たような格好をしている。けれど上背があるためか端整な顔立ちのためか、誰もが目で追ってしまうようだ。
平凡な服を着ていても、端々に洗練された雰囲気がにじみ出ている。ふと目が合えば優しく微笑んでくれるのだから、見るなと言う方が無茶だった。
誰もが憧れてやまないリオルディス。
だからこそ、こっそり憧れるくらいならと自分を許せるのかもしれない。
まずはおいしいと評判のパン屋に行った。
ナナセがいつでもパンに感動しているから、お勧めの店を紹介してくれたのだろう。
今まで出会ったバタールやバケットだけじゃなく、カリカリに焦がした砂糖で表面を覆われた甘いパンや、食パンに目玉焼きがのった惣菜パンのようなものもあった。
「ここで買いものをして、座ってゆっくり食べようかと思っているんだけど……」
「買い食い! 最高ですね!」
「……もし抵抗があれば近くに行きつけのお店もあるから、って言おうとしていたんだけれど、気の回しすぎだったみたいだね」
灰青の瞳を瞬かせていたリオルディスが、おかしそうに噴き出した。
「君なら、こういうのも嫌がらないだろうなって、何となく思ってた」
言われてみれば、彼は貴族だ。
彼の方こそ買い食いに抵抗があるのではと思ったが、リオルディスがあまりに快活に笑うから気遣うタイミングを逸してしまった。
ナナセはハムとチーズが挟んであるパンと、黒すぐりのジャムがこれでもかとのったパンを選んだ。
リオルディスはサンドイッチを三つとバタールを一本丸ごと買っていたが、意外とよく食べることは知っていたので驚きはしない。
パン屋の店先には幾つかテーブルセットがあり、内一つが空いていた。
そこを確保すると、リオルディスは飲みものを買いに行った。すぐに戻ってきた彼の手にあったのはエールで、思わず半眼になる。
「好きですよね、お酒……」
「もちろん好きだけれど、君と一緒に飲むからこそ楽しいんだよ」
「どうせ質の悪い酔い方ですよ」
高確率で絡み酒になってしまうことを揶揄されているとしか思えない。
けれどリオルディスは、対面に腰を下ろしながら首を振った。
「違うよ。ナナセが作ってる壁がなくなった気がするから、嬉しくなるんだ」
ニコニコ嬉しそうに笑う彼には、他意などないのかもしれない。
それでもナナセの肩が少し揺れてしまったのは、自分の中の葛藤を見透かされたような心地がしたからだ。
迷って、何年経っても中途半端。
帰りたい気持ちが、未練がましく心の底にこびりついているみたいだった。
本当は分かっているのだ。
今選択を迫られても、迷わず帰還を選ぶことなんて、もうきっとできない。
リオルディスが街に誘ったのは、意図的だったのだろうか。優しい笑顔からは真意を読み取れない。
ナナセは大きく息をつくと、少し結露したカップを受け取った。
「……乾杯」
「乾杯。今日のよき日に」
カチリと金属製のグラスを合わせ、エールを一息にあおる。
冷たいのど越しと、口内に残る苦い余韻。
ナナセは雑踏を眺めた。
楽しそうな若者や、泣く子をあやす夫婦。
世界は違っても人々の営みは変わらない。
苦しいことや悲しいことがあっても、前を向いて生きていく。それは、大切な何かと出会うためなのかもしれない。
「よし。こうなったら、リオルディス様には責任をとってもらおう」
「婚姻ならいつでも大歓迎だよ」
「そういう責任の取り方古いですよ」
「冷たいなぁ」
「お酒飲ましたのあなたの方でしょ」
ナナセはグラスを置くと、楽しげに微笑むリオルディスを睨むように見返した。
「……仕事が落ち着いた時にでも、やけ酒に付き合ってください。もちろんおごりで」
彼は僅かに目を見開いたあと、くつくつと忍び笑いを漏らした。
柔らかく細められた瞳は、どこか包み込むような温度を持っている。
「じゃあ、ヴァンルートス殿下がお帰りになってからになるかな? 滞りなく交流が終わればいいよね」
「そうですね」
それがどれほど楽観的な考えであったか、ナナセはすぐに思い知ることになる。
この日から三日後の晩、王子が忽然と姿を消してしまったからだ。
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