今日から、契約家族はじめます

浅名ゆうな

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番外編

楓if ー幸せな夜とありがとうー

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 中学二年生の時に出会った着ぐるみが、楓だと知った。
 てっきり年上だと思っていたから驚いたが、言われてみれば似ている点が多いことに気付かされる。
 どこかからかうような笑い方。首筋を撫でる仕草。気まずいことを話す時、やけに明るい声になるところ――――。


「ボーッとしてると手ぇ切るぞ」
「ヒャアッ!?」
 夕ご飯の料理中。上の空で思い浮かべていた本人が耳元で囁くものだから、ひなこは飛び上がった。
「か、楓君……おかえり、帰ってたんだ」
「ただいま。つーか何回も言ったからな」
「うぅ、ごめん」
 楓がスッと離れていったので、ひなこは慌てて玉ねぎのみじん切りを再開する。
 思考に没頭していたためか手が遅くなっていたようで、まだ丸のままの玉ねぎが山のように転がっていた。
 今日のメインはハンバーグ。
 ひなこは粗めのみじん切りにしたたっぷりの玉ねぎを、そのまま種に混ぜて調理するのが好きだった。飴色になるまで炒める手間もかからないし、程よく火の通った玉ねぎの食感と辛味がおいしいのだ。
 楓が洗面所で手を洗っている気配がする。
 ――そもそも、さっきのは近すぎるよ。
 叫んでしまっても仕方がない距離だった。咄嗟に謝ったものの何だか理不尽な気がして、釈然としない思いを玉ねぎにぶつけた。
 そういえば、楓と二人きりになるのは二年前のことを打ち明けられて以来だ。
 間の悪いことに、今日に限ってみんな外出している。変に意識したくないのに、本当に間が悪すぎる。
 洗面所から楓が出てくる。黙り込んでいるのも気まずくて、ひなこは口を開いた。
「今日はどこに行ってたの?」
「昔ながらっぽい喫茶店。純喫茶っていうやつ? コーヒーがうまいんだよ」
 楓はそう言いながら、キッチンに入ってインスタントコーヒーを淹れ始める。
 喫茶店にいたのに、なぜ家でコーヒーを飲もうとしているのだろう。流れるように作業する彼をぼんやりと眺めた。
「うまいけど、何杯も飲んでたら金がなくなるだろ。節約で一杯までって決めてんだよ」
 視線に気付いた楓が、照れくさそうに言い訳をする。
 我慢していたため、今は何でもいいから飲みたい気分らしい。ひなこの分も用意するか訊かれたが、これから種を捏ねなければならないので断った。
「最近また帰ってくるのが遅かったのって、喫茶店に行ってたからなの?」
「あぁ。そこで変わったオッサンと知り合ったんだよ。話すのが面白くて、つい長居しちまってな」
「え? そうなの?」
 楓の答えが意外すぎて、思わず手を止めまじまじと見つめてしまう。
 すると彼は半眼になり、ひくりと頬を引きつらせた。
「あんた、女遊び復活、とか思ってただろ」
「…………ご、ごめんなさい」
 遊んでいたとは思っていなかった。本命の彼女ができたのだろうと思ったのだ。
 ピタリと収まっていた夜遊びが数日に一度の頻度に変わったのも、一人に絞ったのではという予想に現実味を添えていた。取り巻き軍団を解散させたのもそのため、とか。
「それって嫉妬か?」
「へっ?」
「……違うのかよ。何だ」
 コーヒーの粉を棚に戻しながら、楓が肩を落とす。
 突拍子もない言葉が飛び出したことに喫驚の声を上げてしまっただけで、今のは決して返事ではない。
『嫉妬』という言葉に胸がざわついた気がしたのは、なぜなんだろう? 楓はなぜ、そんな質問をするのだろう?
 ――嫉妬じゃないと、落ち込んで見えるのは、何で?
 訊きたいけれど、言葉にならない。
 何も言えずただ楓を見つめた。彼も静かに見つめ返すばかりだ。
 ゆっくりと動き出したのは、楓だった。
 玉ねぎがごろりと積まれたボールの側に手を付く。また、距離が近い。彼の体が覆い被さってきそうだ。
 緊張で呼吸もできなかった。楓の息が髪にかかる。こんな近ければ、自分の息遣いも彼に知られてしまうだろう。
「――何であんた、親父のものなの?」
 熱を抱いた瞳が、悲しげに揺らぐ。
 様々な感情がせめぎあっている、そんな複雑な光。それでいて呑み込まれそうなほど強いのだ。
 体の表面がなぜかひどく熱くて、ひなこはぎゅっと目を閉じた。
 今年の文化祭、裏庭で二人きりになった時のことを不意に思い出す。射抜くような眼差しで、真剣な声音で、『欲しいものがある』と言った彼を。
 楓の気配がゆっくりと離れていく。恐るおそる開いた瞳の端に、廊下の向こうへ消えていく背中が映った。
「……でも俺、諦めねーから」
 残された言葉に、膝から力が抜けていく。ひなこは座り込んで呆然とした。
 
『だから俺は変わらなくちゃいけない。今のままじゃダメなんだ。変わらなくちゃ、手に入らない。求める資格もない』

 ……もしかしたら、と思うこともあった。
 けれど自意識過剰だと否定していた。
 ――楓君が寄り道せず帰って来るようになったのって。取り巻き軍団を解散させたのって、つまり……。誠実に、なろうとした?
 楓の言動を思い起こすたび、態度を思い出すたび、たった一つの結論にたどり着く。
 ――よく、分からないけど。何か、何か、それって……。
 結局その日の夕食は、ミートソースのスパゲッティになった。缶詰のソースを使って、何の工夫もなく。
 挽き肉を一生懸命捏ねて、一つ一つ成型して。そんな作業が手に付かなくなってしまったのだ。

  ◇ ◆ ◇

 バレンタインの夜。
 柊も茜も譲葉も既に寝ている。雪人は残業で遅かったけれど、先ほどチョコレートを渡したところだ。
 静まり返ったリビングで、ひなこは一人待っていた。
 好きな人のことを考えながら。どんな顔でチョコレートを受け取ってくれるのか、想像しながら。
 寝静まる家族を気遣うように、そっと玄関のドアが開く音がした。ゆっくりと足音が近付いてくる。楓が歩いてくる姿を想像する。しんとして、胸の鳴る時間。
「――ただいま」
「……おかえりなさい、楓君」
 夕飯を準備し終えてから聞くと、どうやらチョコレートを持った女子に今まで追いかけ回され続けていたらしい。ひなこは絶句してしまった。
「……もう、チョコなんていらないかな」
 ひなこは、ダイニングテーブルの隅に用意していた生チョコレートに視線を移す。
 必死で逃げ回った話を聞かされれば、気まずく感じずにいられない。
「いや。……あんたのは欲しい」
 楓の言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。
「よ、よかった。あのね、楓君の好きなホワイトチョコで作ってみたんだ」
 特別に扱ってもらえることが、家族だからではないということに、ひなこは気付き始めていた。それを、嬉しいと感じる自分にも。
 ――家族になりたいって、ずっと思ってたのに。私、もっと欲張りになってる……。
 チョコレートを食べるためにと、急いで食器を片付ける楓の背中を見つめた。二人きりの今なら、ずっと聞きたかったことを聞けるかもしれない。
「楓君……二年前、初めて会った時のこと、聞いてもいい?」
 話がしやすいようにと、ひなこはソファへ移動した。
 真っ直ぐ見つめると、楓も静かに見返してくる。色々な話をした当時が甦ってくるようだった。
 首筋を撫でる仕草、話しづらいことは、やけに明るく話そうとするところ――。
 楓はポツリポツリと話してくれた。
 雪人の制服を借りて学園に忍び込んだこと。当時、家族とあまりいい関係ではなかったこと。ひなこに着ぐるみの正体を明かさなかったのは、気付いてほしいという気持ちがあったからだとも。
 家族に気を遣って、なるべく抑えた声で。けれど暗くならないよう、笑いながら。
「あんたが親父の結婚相手だって知った時は、驚いたな。親父に取られるまでに何で行動しなかったんだって、ずっと後悔してた。――いや、今もか」
「そういえば、この間も私のこと、雪人さんのものだって言ってたけど……どうゆう意味なの?」
 楓の回想が最近の話題に移って、ひなこは口を挟んだ。
「私、雪人さんのものじゃないよ? 契約結婚のことは楓君だって知ってるでしょう? なのに何で……」
 楓はしばらく、不機嫌そうに口を噤んでいた。けれどひなこが我慢強く待ち続けると、言いたくなさそうに口を開いた。
「あんた、親父が好きなんだろ?」
「――へ?」
「……違うのか?」
 楓は意外そうに目を瞬かせているけれど、それはお互い様だった。
 なぜ雪人を好きなどという発想になるのか全く分からない。
 重ねて否定しようとするひなこを、楓が遮った。ぎゅうっと抱き締められて、喋れなくなってしまったのだ。
「違う、のか……」
 楓の胸から直接声が響く。力強い腕、体温。自分が置かれている状況に一拍遅れて気付き、一気に熱くなった。
 抗議しようにも顔が近すぎて上を向くのが怖い。せめてもと背中をこぶしで叩く。
「ちょ、楓く、」
「――――好きだ、ひなこ」
 ひなこの手が、止まった。
「ずっと好きだった。二年前から、ずっと。あんたが辛い時、何で俺が助けてやれなかったんだって、何度も後悔した。親父と結婚するって聞いた時、メチャクチャ苦しかった」
 先ほど聞いた回想と、ほとんど内容は同じ。けれど楓はまるでやり直すみたいに、取り戻すみたいに繰り返す。
 辛そうで、心が抉られるような声だった。
「もう嫌だ。これ以上後悔なんてしたくない。俺はどうしようもない男で、あんたみたいな綺麗な女を好きなんて言うこと自体、間違ってるって分かってる。でも、どうしてもあんた以外に考えられない。――心が、動かないんだ」
「ああああああの! あの! あのね!」
 ひなこは力を振り絞って体を引き剥がした。ようやくまともに呼吸ができて、今自分は色んな意味で顔が真っ赤だろう。
 綺麗じゃない。ひなこは全く微塵も綺麗じゃない。
 頭にはそんな言葉がぐるぐる巡っていたが、そんな否定よりもまず伝えなければいけないことがあった。
「あ、あのね、好きって言われたからみたいで恥ずかしいんだけど、いや違わないんだけど、おかげで気付けたんだけど」
 頬がどんどん熱くなっていくし、声が震える。緊張で涙まで出てきた。
 けれどひなこは、溢れる想いを少しでも伝えたくて、真っ直ぐに楓を見つめた。
「……私も、楓君が、好き。私のこと好きになってくれて、ありがとう」
 楓が呆然と固まる。そのまま全然動かなくなってしまったので、とりあえずじっと見守ってみた。
 感情が失せたようだった表情が、不意に泣きそうに揺らぐ。
「楓く――」
 驚いた途端、また抱きすくめられる。
 顔を上げようとすると、頭を胸に押し付けられた。これは、もしや――。
「……もしかして、泣いてる?」
「泣いてねぇ」
 すぐに否定されたが、やはり顔を上げてほしくないらしい。頭がガッチリとホールドされたままだ。
 しばらくはドキドキというより、心配が強かった。けれど楓が至近距離で目を合わせてきたので、また緊張がぶり返してくる。
「だ、大丈夫、楓君?」
「たから泣いてねぇって」
 空気を和らげようと軽口を叩いてみたが、楓はもう照れたりしなかった。熱い瞳でじっとひなこを見つめる。
 彼の腕の中にいることを改めて意識する。
 身じろいで抜け出そうとすると、腕の力がさらに強くなった。顔もぐっと近付く。
 もしかしたら、そういう流れなのだろうか。経験がなさすぎて分からない。
 反対に彼は経験豊富らしく、やはり手慣れている気がした。
 経験豊富、と想像して、少しモヤッとする。今まではそれほど意識していなかった彼の過去が、今さら気になった。
 ――気にしたって、仕方がないのは分かってるけど……。
 俯いていた顎に指がかかる。楓の眼差しは切なそうに潤み、まるで焦がれるようだった。頬もほのかに赤い。
「――――」
 それだけで、彼がこんなふうに見つめる女の子は自分だけだと、なぜか自信を持てた。
 むしろ親しい友人や家族だって、こんな表情は知らないだろうと。
 付き合いたて特有の勘違いかもしれないけれど、だとしても構わない。今、こうして想いが通じ合った、それが全て。
 ――そうか。私達、付き合うんだ。
 関係が突然変わるというのは何だか不思議な気がしてまた考え込んでいると、再び顎を持ち上げられた。
「ひなこ……愛してる」
 想いを込めて呟いた楓の睫毛が、ゆっくりと下がる。
 初めてのキスは、ひなこを怖がらせないためにか、触れるだけの優しいもの。
 もう一度、今度は少し長く。唇を柔らかく吸われ、間近で見つめ合う。
 ふつり。彼の瞳の奥で、理性が焼き切れる音がした。
「!?」
 突然キスが、息もできないほど荒々しいものに変わる。噛み付くように何度も、何度も。食べられてしまいそうだと思った。
「ふっ……」
「ハァ……夢じゃねーよな、これ……」
 荒い息の合間、自分に言い聞かすみたいに楓が呟く。幼い子どものようで愛しさに胸が詰まる。
 深く、角度を変えながら唇が重なる。何だか段々触れ方が激しくなっている気がした。
 唇を甘噛みされ、舌で柔らかくなぞられたところで、さすがに体に力がこもる。
「んんっ……」
 楓は慌てて体を離した。
「悪い!」
「だ、大丈夫……」
「いや、ダメだろ怖がらせちゃ。しかも何だよこの体勢。ホント悪い」
 ひなこはいつの間にか、ソファに仰向けになっていた。
 焦りながら退く楓に、ようやくどんな格好になっていたのか気付いて恥ずかしくなる。
「ゴメン。歯止めが効かなかった。……ずっと、こうしたかったから」
 顔を押さえて謝る彼は熟れたように真っ赤で、形になりつつあった恐怖が一瞬で霧散していく。――怖くない。
「あの、ね。大丈夫だよ。びっくりしたけど、怖くはないの。楓君にされることなら、全部、怖くないよ……」
 言った途端、楓は頭を抱えて座り込んだ。
「……あんた、俺の理性を試してんの?」
「え、えぇ? そんなつもりは、」
「俺以外の男に、そんな隙見せんなよ」
 ジロリと恨みがましい目で睨まれ、ひなこは訳が分からないながらもコクコクと頷き返したのだった。

  ◇ ◆ ◇

 次の日。ひなこは楓と登校していた。
 これからは堂々と一緒にいればいいからと、彼に誘われたのだ。
「とりあえず、家族には早く報告しなきゃだな。特に親父」
 何について話しているのか理解できず首を傾げかけたが、付き合う件に決まっていた。
 ひなこは赤くなった頬をマフラーで隠しながら、それでも疑問を口にした。
「何で、特に雪人さん?」
「言っとかねーと、あのセクハラ野郎はやたらあんたに触ったりするだろ」
 ひなこはハッとした。これはもしや、ヤキモチという奴ではないだろうか。
 微妙に嬉しく思ってしまったことを悟られないよう、慌てて真面目に頷き返した。
「そ、そっか! これからは楓君の、かか、彼女になる訳だから、家族と言えど異性にベタベタ触れられるのはよくないもんね!」
 こぶしを握って力説するひなこを、楓は呆れて見下ろした。
「……あんなふうに仕掛けられて、あくまで家族の触れ合いだと思ってるあんたがスゲーよ。つか、彼女でドモんな。テレる」
「ご、ごめんなさい。なんか、嬉しくて緊張しちゃって」
「……オイ、まだ朝だぞ。煽んなよ」
 不穏な発言をして立ち止まる楓から、ひなこは慌てて距離を取った。
「何一つ煽ってないよ!? 楓君は、何でそう発言がいちいちヤラシイの!」
「そっちが可愛い顔するから悪い」
 早朝から破廉恥なのは楓の方だ。翻弄される身にもなってほしい。
 プルプルと羞恥心に震えていたひなこは悔し紛れに、ぶにゅっと両頬を押さえてタコ顔を作った。ブス面のお見舞いだ。
「可愛い顔なんてしてませんっ」
「……」
 数秒間の沈黙のあと、唇に柔らかい感触が重なる。
 ひなこは慌てて目を開いて後退った。
 いつの間にか距離を詰めていた楓が、意地悪そうに片頬を吊り上げて笑っている。
「なっ……ここ、外……!」
「ん? じゃあ、どっか適当なとこ入ってから、ゆっくりする?」
「楓君!」
 楓が無邪気な子どものように、ご機嫌で笑った。彼の明るい笑い声が晴れた空に吸い込まれていく。
 ――この笑顔を守っていきたいな。
 ひなこがするりと楓の手に触れると、彼は驚いて赤くなった。手を繋ぐと、そっぽを向きながらもぎこちなく握り返してくれる。
 それが嬉しくて、確かな愛情を実感できて、ひなこも無邪気に笑い返した。

                                  おしまい。 
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