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番外編
新婚旅行へ行こう 5
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何だかんだ騒ぎながらも、アフリカンチキンを食べてみることになった。
雑然とした賑わいをみせる店内でおしゃべりしていると、それはすぐに運ばれてきた。
大ぶりの骨付き肉はしっかりした味付けを予感させる香ばしい色で、漂う匂いも堪らない。スパイシーで、どこか親しみのある香りが食欲を刺激する。
ひなこはようやく対面できた本場のアフリカンチキンに瞳を輝かせた。
「いただきますっ」
早速一口かじると、じゅわりと肉汁が溢れ出す。口一杯に広がるのは、ミートソースのような照り焼きのような、濃厚で複雑な味。
「ミートソース、みたいな……?」
譲葉も同じように感じたのか、咀嚼しながら難しい顔で首をひねる。
「醤油っぽい味もしねぇか?」
「複雑な味だね。赤パプリカとか入ってるのかな? でも、とにかくおいしいね」
「結局全部『おいしい』で片付けるよな、ひなこって」
瞳を輝かせながら笑い返すと、柊が呆れ顔でからかった。
年下からの恥ずかしい評価に、ひなこは決まり悪げに頬を赤らめる。けれど食べ進める手を休めない辺り、正当な認識とも言えた。
「次はどこに行こうか?」
譲葉の質問に答えたのは、食欲旺盛なひなこ達を呆気に取られながら眺めていた茜だ。
「……マカオタワー、行く? バンジージャンプとか、スカイウォークも楽しめるみたいだけど」
「え。バンジージャンプってどこから?」
「確か、ほぼ頂上だよね。二三三メートルの高さから飛び降りるんだって」
頬を引きつらせる柊に、ひなこが捕捉する。ガイドブックから得た知識だ。
「茜君、よく知ってたね」
マカオタワーは有名でも、そこでどんな体験ができるかは調べなければ分からない。きっとひなこと同じように、旅行前に勉強したのだろう。
茜は恥ずかしそうにモゴモゴと答えた。
「……みんなでの旅行、楽しみだったから」
次男の微笑ましい姿に、一同はキュンとした。ほんわかとした雰囲気に包まれる。
「行こう! バンジーは怖いからしないけど、絶対行こうね!」
茜の手をぎゅっと握りながら笑うと、彼はますます恥ずかしそうに身をよじった。
「……ひ、ひなこさんは、行きたいところ、ないの?」
「私? 私は一応、お土産屋さんを覗いておきたいかな」
ひなこの返答に顔をしかめたのは、アフリカンチキンを食べ終えた柊だった。
「土産って。明日見ればいいじゃん」
「明日は、香港経由で帰るでしょ? マカオのお土産が買えるのは今日だけなんだよ」
午前中にはフェリーに乗って、香港へ行くことになっている。
少し香港観光をしてから帰る予定なので、ひなことしては何とか時間を作ってマカオの土産店を見ておきたいところだ。
同じく完食した譲葉が口を開いた。
「じゃあ今日の予定は、土産を見がてらマカオタワーに行くって感じかな?」
「――ちょっと、いいかな」
話がまとまりかけたところで声を上げたのは、雪人だった。
「申し訳ないんだけれど、次に行くところは、僕が決めてもいい?」
ひなこ達は目を瞬かせた。彼がこういった時に決定権を主張するのは珍しい。
「いいですけど、どこに行きたいんですか? 世界遺産の聖ポール先主聖堂とか?」
雪人が好みそうな場所は、事前にチェックしてあった。
聖ポール先主聖堂は有名な世界遺産で、夜もライトアップされている観光名所だ。
他にもモンテの砦ということもあり得る。これも世界遺産で、進行してくるオランダ軍をポルトガル軍が大砲で撃退したという場所だ。大きな大砲が残っているから、きっと柊も楽しめるだろう。
色々な可能性を頭に浮かべていると、雪人はいたずらっ子のようにニッコリ笑った。
「それは、着いてからのお楽しみだよ」
食事を終え、ひなこ達はひとまず土産店に入った。雪人の行きたい場所には、買い物を終えたあとに向かう予定だ。
「わぁ……」
ところ狭しと土産品を並べられた店内には、カラフルな民芸品が多い。ひなこはフラフラと心の赴くままに足を進めた。
地元でしか味わえない食品も多い。
ポルトガル文化が色濃く残るゆえか、コーヒー豆の種類が充実していた。ブラジル産やポルトガル産の他に、香港産やマカオ産の豆まである。
――お土産品ばかりじゃなくて、地元の食品も結構扱ってるんだな……。
ひなこは店内をさ迷い歩いた末、優香や大学の友人用には薬膳スープのセットを選んだ。一番それっぽくて無難だと思ったのだ。
缶詰も数多く並んでいる。日本のものとは違いパッケージがお洒落で、お土産に喜ばれそうだ。ただ、字が全く読めないため中身が分からない。
「これは……ニシンかな?」
日本でも馴染みのあるツナ缶や、珍しいオリーブの缶詰もある。
値段の安さも手伝い、ひなこは自分用のお土産にと次々確保していった。せっかくだからと豊富なスパイスにも手を出し、すぐに荷物で一杯になってしまう。
カゴはないかとキョロキョロしていると、背後から目当てのものを差し出された。
「――楓君」
振り向いた先には、楓が立っていた。
「どうした? 土産モン見てるわりに、テンション低いじゃん」
彼はさりげなくカゴを引き受けてくれる。大丈夫だと言いかけたところで質問をされ、ひなこはそちらに気を取られた。
「うぅん、大したことじゃないんだけどね。雪人さんがどこに行く気なのか、考えると気もそぞろになっちゃって」
「そのわりには、メチャメチャ買い込んでんじゃねぇかよ」
どっさり買い込んだスパイスと缶詰を見下ろす楓に、ばつが悪くなって苦笑いを返す。
それでも彼はひなこの買い物に付き合ってくれた。買い物カゴの中身が増えるたびにいちいちツッコミを入れるが、否定はしない。
ひなこは不意に、名古屋旅行でもこんなふうにスーパーを回ったことを思い出した。
「……名古屋の時を、思い出すな」
同じことを考えていたのか、楓が呟く。
「あの時のあんたは、スゲー勢いだった。見てて面白かったな」
面白かったと言うわりに、楓の懐かしむ表情に笑みはない。
この旅行中、楓はずっとこの調子だった。弟妹達が心配していることに、彼は気付いているのだろうか。
ひなこは神妙な、どこか張り詰めた横顔を見つめる。そこに、決意にも似たものが宿っている気がした。何かを惜しむような、手放すような――――。
「楓君、どうしたの? 最近、ずっと元気がないよね」
勇気を出して放り投げた質問に、楓はそっと視線を逃がした。
「……親父がどこに行くつもりなのか、知ってるからな。嫌でも無口になる」
何と彼は、次の行き先を知っているらしい。そしてそこは彼にとって、あまり歓迎できない場所のようだ。
一体どんなところに連れていかれるのか、にわかに不安になる。
けれど楓は、ふと表情を笑顔に変えた。
「でもおかげで俺も、本当の意味でようやく踏ん切りがつきそうだ」
意味深な言葉も、吹っ切れたような笑みの意味も、ひなこには分からなかった。
買ったお土産は梱包し、一足先に日本へと送る。海外から荷物が送れるのは素晴らしく便利なことだと思うが、送料が気になって仕方なかった。
毎度のことながら、雪人にいつの間にか流されてしまう自分が情けない。
身軽な状態に戻ると、ひなこ達はバスに乗り込んだ。雪人の行きたいところへは、バスを利用するらしい。
のんびり構えていたひなこだったが、結構乗車時間が長い。
バスはどんどん進み、マカオ島と地続きになっているタイパ島に入った。
雪人に言われるがままバスを降りる。バス停付近には、特に目に付く建物はない。
「ここには、何があるんですか?」
思わず問いかけたひなこに、雪人は楽しそうに微笑むばかりだ。
「そうだね。確かタイパ市政花園という庭園があって、綺麗な花が見られるらしいよ」
「花、ですか?」
確かに花は盛りだろうが、わざわざ見に来るほど綺麗な庭園なのだろうか。
ひなこは少し不思議に思いながらも口を閉じた。散々自分の我が儘で振り回したのだから、今度は雪人に付き合う番だろう。
バスを降りて進んだ先には、小さな建物があった。クリーム色の壁と、尖塔にはベルが見える。
「……教会、ですか?」
「カルモ教会というんだよ」
小ぢんまりとしているが、厳粛というよりは温かみのある建物でとても可愛らしい。階段を登りながら、ひなこは笑みをこぼした。
「素敵なところですね」
「あなたが気に入ってくれて、よかった」
何だか不思議な口振りだ。
目を瞬かせながら顔を上げると、雪人はとんでもないことを言い放った。
「ひなこさん――――結婚式をしよう」
雑然とした賑わいをみせる店内でおしゃべりしていると、それはすぐに運ばれてきた。
大ぶりの骨付き肉はしっかりした味付けを予感させる香ばしい色で、漂う匂いも堪らない。スパイシーで、どこか親しみのある香りが食欲を刺激する。
ひなこはようやく対面できた本場のアフリカンチキンに瞳を輝かせた。
「いただきますっ」
早速一口かじると、じゅわりと肉汁が溢れ出す。口一杯に広がるのは、ミートソースのような照り焼きのような、濃厚で複雑な味。
「ミートソース、みたいな……?」
譲葉も同じように感じたのか、咀嚼しながら難しい顔で首をひねる。
「醤油っぽい味もしねぇか?」
「複雑な味だね。赤パプリカとか入ってるのかな? でも、とにかくおいしいね」
「結局全部『おいしい』で片付けるよな、ひなこって」
瞳を輝かせながら笑い返すと、柊が呆れ顔でからかった。
年下からの恥ずかしい評価に、ひなこは決まり悪げに頬を赤らめる。けれど食べ進める手を休めない辺り、正当な認識とも言えた。
「次はどこに行こうか?」
譲葉の質問に答えたのは、食欲旺盛なひなこ達を呆気に取られながら眺めていた茜だ。
「……マカオタワー、行く? バンジージャンプとか、スカイウォークも楽しめるみたいだけど」
「え。バンジージャンプってどこから?」
「確か、ほぼ頂上だよね。二三三メートルの高さから飛び降りるんだって」
頬を引きつらせる柊に、ひなこが捕捉する。ガイドブックから得た知識だ。
「茜君、よく知ってたね」
マカオタワーは有名でも、そこでどんな体験ができるかは調べなければ分からない。きっとひなこと同じように、旅行前に勉強したのだろう。
茜は恥ずかしそうにモゴモゴと答えた。
「……みんなでの旅行、楽しみだったから」
次男の微笑ましい姿に、一同はキュンとした。ほんわかとした雰囲気に包まれる。
「行こう! バンジーは怖いからしないけど、絶対行こうね!」
茜の手をぎゅっと握りながら笑うと、彼はますます恥ずかしそうに身をよじった。
「……ひ、ひなこさんは、行きたいところ、ないの?」
「私? 私は一応、お土産屋さんを覗いておきたいかな」
ひなこの返答に顔をしかめたのは、アフリカンチキンを食べ終えた柊だった。
「土産って。明日見ればいいじゃん」
「明日は、香港経由で帰るでしょ? マカオのお土産が買えるのは今日だけなんだよ」
午前中にはフェリーに乗って、香港へ行くことになっている。
少し香港観光をしてから帰る予定なので、ひなことしては何とか時間を作ってマカオの土産店を見ておきたいところだ。
同じく完食した譲葉が口を開いた。
「じゃあ今日の予定は、土産を見がてらマカオタワーに行くって感じかな?」
「――ちょっと、いいかな」
話がまとまりかけたところで声を上げたのは、雪人だった。
「申し訳ないんだけれど、次に行くところは、僕が決めてもいい?」
ひなこ達は目を瞬かせた。彼がこういった時に決定権を主張するのは珍しい。
「いいですけど、どこに行きたいんですか? 世界遺産の聖ポール先主聖堂とか?」
雪人が好みそうな場所は、事前にチェックしてあった。
聖ポール先主聖堂は有名な世界遺産で、夜もライトアップされている観光名所だ。
他にもモンテの砦ということもあり得る。これも世界遺産で、進行してくるオランダ軍をポルトガル軍が大砲で撃退したという場所だ。大きな大砲が残っているから、きっと柊も楽しめるだろう。
色々な可能性を頭に浮かべていると、雪人はいたずらっ子のようにニッコリ笑った。
「それは、着いてからのお楽しみだよ」
食事を終え、ひなこ達はひとまず土産店に入った。雪人の行きたい場所には、買い物を終えたあとに向かう予定だ。
「わぁ……」
ところ狭しと土産品を並べられた店内には、カラフルな民芸品が多い。ひなこはフラフラと心の赴くままに足を進めた。
地元でしか味わえない食品も多い。
ポルトガル文化が色濃く残るゆえか、コーヒー豆の種類が充実していた。ブラジル産やポルトガル産の他に、香港産やマカオ産の豆まである。
――お土産品ばかりじゃなくて、地元の食品も結構扱ってるんだな……。
ひなこは店内をさ迷い歩いた末、優香や大学の友人用には薬膳スープのセットを選んだ。一番それっぽくて無難だと思ったのだ。
缶詰も数多く並んでいる。日本のものとは違いパッケージがお洒落で、お土産に喜ばれそうだ。ただ、字が全く読めないため中身が分からない。
「これは……ニシンかな?」
日本でも馴染みのあるツナ缶や、珍しいオリーブの缶詰もある。
値段の安さも手伝い、ひなこは自分用のお土産にと次々確保していった。せっかくだからと豊富なスパイスにも手を出し、すぐに荷物で一杯になってしまう。
カゴはないかとキョロキョロしていると、背後から目当てのものを差し出された。
「――楓君」
振り向いた先には、楓が立っていた。
「どうした? 土産モン見てるわりに、テンション低いじゃん」
彼はさりげなくカゴを引き受けてくれる。大丈夫だと言いかけたところで質問をされ、ひなこはそちらに気を取られた。
「うぅん、大したことじゃないんだけどね。雪人さんがどこに行く気なのか、考えると気もそぞろになっちゃって」
「そのわりには、メチャメチャ買い込んでんじゃねぇかよ」
どっさり買い込んだスパイスと缶詰を見下ろす楓に、ばつが悪くなって苦笑いを返す。
それでも彼はひなこの買い物に付き合ってくれた。買い物カゴの中身が増えるたびにいちいちツッコミを入れるが、否定はしない。
ひなこは不意に、名古屋旅行でもこんなふうにスーパーを回ったことを思い出した。
「……名古屋の時を、思い出すな」
同じことを考えていたのか、楓が呟く。
「あの時のあんたは、スゲー勢いだった。見てて面白かったな」
面白かったと言うわりに、楓の懐かしむ表情に笑みはない。
この旅行中、楓はずっとこの調子だった。弟妹達が心配していることに、彼は気付いているのだろうか。
ひなこは神妙な、どこか張り詰めた横顔を見つめる。そこに、決意にも似たものが宿っている気がした。何かを惜しむような、手放すような――――。
「楓君、どうしたの? 最近、ずっと元気がないよね」
勇気を出して放り投げた質問に、楓はそっと視線を逃がした。
「……親父がどこに行くつもりなのか、知ってるからな。嫌でも無口になる」
何と彼は、次の行き先を知っているらしい。そしてそこは彼にとって、あまり歓迎できない場所のようだ。
一体どんなところに連れていかれるのか、にわかに不安になる。
けれど楓は、ふと表情を笑顔に変えた。
「でもおかげで俺も、本当の意味でようやく踏ん切りがつきそうだ」
意味深な言葉も、吹っ切れたような笑みの意味も、ひなこには分からなかった。
買ったお土産は梱包し、一足先に日本へと送る。海外から荷物が送れるのは素晴らしく便利なことだと思うが、送料が気になって仕方なかった。
毎度のことながら、雪人にいつの間にか流されてしまう自分が情けない。
身軽な状態に戻ると、ひなこ達はバスに乗り込んだ。雪人の行きたいところへは、バスを利用するらしい。
のんびり構えていたひなこだったが、結構乗車時間が長い。
バスはどんどん進み、マカオ島と地続きになっているタイパ島に入った。
雪人に言われるがままバスを降りる。バス停付近には、特に目に付く建物はない。
「ここには、何があるんですか?」
思わず問いかけたひなこに、雪人は楽しそうに微笑むばかりだ。
「そうだね。確かタイパ市政花園という庭園があって、綺麗な花が見られるらしいよ」
「花、ですか?」
確かに花は盛りだろうが、わざわざ見に来るほど綺麗な庭園なのだろうか。
ひなこは少し不思議に思いながらも口を閉じた。散々自分の我が儘で振り回したのだから、今度は雪人に付き合う番だろう。
バスを降りて進んだ先には、小さな建物があった。クリーム色の壁と、尖塔にはベルが見える。
「……教会、ですか?」
「カルモ教会というんだよ」
小ぢんまりとしているが、厳粛というよりは温かみのある建物でとても可愛らしい。階段を登りながら、ひなこは笑みをこぼした。
「素敵なところですね」
「あなたが気に入ってくれて、よかった」
何だか不思議な口振りだ。
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