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2巻
2-3
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荒れ狂っていた優香だったが、なぜか機嫌が直ったようだ。
彼女は楓と葵に視線を移すと、ニッコリ華麗に微笑む。
「でもあんた達は別よ。このあと問答無用でおごってもらうから」
まさに悪魔の微笑みといったところで、彼らは無念そうに頷く他なかった。
四人は冷えた体を温めるため、穏やかな雰囲気のカフェに入った。
そこかしこに観葉植物が配置された癒しの空間だが、考えることは皆同じ、店内は非常に混雑していた。
かろうじて空いていた四人掛けのテーブルを確保し、カウンターで注文をする。
ひなこと葵はコーヒーだけだったが、楓と優香はパニーニも頼んでいた。
数種類あるがどれも捨てがたく、結局お互いのものを半分ずつ食べるという結論で落ち着いたらしい。前世の因縁でもあるのかと思うくらい相容れなかった二人なので、初対面の頃を知るひなことしては感慨深いものがあった。
鉄板の焼き目がついた香ばしいパンに、ハムととろけたチーズが挟んである定番のパニーニと、テリヤキチキンとマヨネーズ、レタスの入った変わり種のパニーニ。
どちらもおいしそうだが、おせちを食べすぎたひなこには手が出せない。羨ましいと眺めるばかりだ。
「おせちを食べたあとって、こういうジャンクフードが食べたくなるよな」
パクつく楓の言葉に、いっそ感心する。おせちを勢いよく食べていた筆頭が彼だったのだ。気持ちはとても分かるが、本当によく入る。
「おせちはひなこが作ったのよね?」
優香の問いにひなこは頷いた。
「毎年作ってたから、やっぱり作りたくなっちゃうんだよね」
「あんた栗きんとんまで作るもんね。何回も裏ごししたり、スッゴい手間なのに」
「手間がかかるからやりがいがあるんだよ。市販のものより色が悪くなっちゃうのが難点だけどね。でも芋あんを使わないで、百パーセント栗だけで作ったんだ」
比較的安価な栗きんとんに芋が使用されるのは、手っ取り早く鮮やかな黄色を出すためだ。一昔前のように着色料を使っていない分ずっといいのだが、せっかく手作りするなら栗にこだわりたい。
シナモン入りのカプチーノを飲んでいた葵が、熱く語るひなこを見つめて呟いた。
「そういえば僕だけ、お前の料理を食べたことがないんだな」
「そう? 文化祭のロールケーキ、葵君にも食べてもらったよ?」
葵は文化祭を楽しむタイプに見えなかったので、彼のクラスを訪れた時に手土産として持って行ったのだ。
けれど葵は不服そうだ。
「あれは複数で作ったから、お前の手作りとは言えない。今度作ってくれないか?」
「そんな、特別すごいものでもないのに」
ひなこが作るのは、いたって平凡な家庭料理だ。
特別な工夫をしているわけでもなにかを極めているわけでもないので、期待されると逆に困ってしまう。
たじろぐひなこを覗き込むように、葵は身を乗り出した。
間近で見ると、彼の瞳が実は灰色がかっていると分かる。もしかしたら外国の血が入っているのかもしれない。
「僕が食べてみたいんだ。ひなこの手料理が、食べたい」
力強く、はっきりとした意思を持つ声。綺麗な灰色の瞳。硬質な美貌に魅入られたように、視線が逸らせない。
見つめ合うひなこと葵を物理的に遮ったのは、楓の手だった。
「外崎、周りの皆さんの視線も少しは気にしろよ?」
楓の言葉で隣のテーブルを見ると、女性客二人がニヤニヤしていた。すぐに目を逸らされるも、こちらを見ていたことは明白だ。
葵との距離の近さに遅ればせながら顔が熱くなり、ひなこは慌てて離れた。
三人の気まずさをよそに、優香はニヤリと意地悪げに笑う。
「『努力すべし』だけど、ついでに伏兵にも気を付けた方がいいかもねー。天然ってある意味最強だから」
謎の言葉にひなこと葵は揃って首を傾げ、楓は疲れたように項垂れた。
連休明けに葵のお弁当も作ると約束させられた、帰り道。
優香達と別れ、並んで歩いていた楓がおもむろに口を開いた。
「取り巻きをしてたやつら、全員と話ついたから。あいつらがお前になにか仕掛けてきたとしても、俺が責任をもって守る」
楓の言葉の意味を吟味し、ひなこは盛大に眉根を寄せた。
「……んん? なんで私が狙われる前提なの? もしかして、私の名前を出した?」
言い訳に利用されていたのなら大問題だ。
逆恨みになにをされるか分かったものじゃない。
「出してない! マジで出してないから!」
楓は激しく否定するも、すぐに気まずげに頭を掻いた。
「でもほら、ミスコンの時によ」
「あぁ……楓君が花束贈呈で、ふざけてやったやつね」
「そこではっきりふざけたと断定されるのも複雑だな……」
異国の騎士かプロポーズをする恋人のように跪く楓を思い出す。
確かにあれでは、彼を好きな者から顰蹙を買うだろう。
「まぁ、もしかしたらあんたとの仲を誤解した奴もいるかもしれないし、俺の方でも警戒しとくってことだ」
「分かった。私も気を付けるね」
しっかり頷いてはみたが、ひなこはこの時、具体的にどう気を付ければいいのか考えていなかった。それを、休み明けに後悔することとなる。
◇ ◆ ◇
冬期休暇明けの学院は、どこかピリピリとしていた。
単純に、共通テストが間近に控えているからだろうと思っていた。当然その理由が大半だろうが、どうやらそれだけではなかったらしい。
その事実にひなこが気付いたのは、お昼休みになってからだ。
葵との約束を果たすため、初詣に行った面子で昼食を食べることになっていた。
通いのハウスキーパーが楓にお弁当を作っていたら不自然すぎると思い至ったのは、今朝のこと。
普段から違うお弁当に見えるよう気を付けているものの、一緒に食べるわけではないのでアレンジを加える程度だった。けれど今回に限っては、全く別のお弁当を二種類用意しなければならない。
楓にはハンバーグがメインの洋食、葵には焼き鮭がメインの和食を作ったが、ひなこはここでずいぶん手間暇をかけてしまった。
自分のお弁当を準備していないことに気付いたのは遅刻ギリギリの時間になってからで、慌てて冷蔵庫の残りものを詰め込むしかなかった。
よく考えれば葵と同じお弁当でよかったのだから、無駄すぎる二度手間だ。
そんな苦労の結晶である焼き鮭弁当と、世にも寂しい常備菜だらけのお弁当を提げながら、優香と共に待ち合わせをしている学食に向かう途中――ひなこは突然、楓の取り巻き軍団に囲まれた。
朝からのピリピリした雰囲気はこれだったのかと、遅まきながら気付く。
不穏な空気を漂わせ、周囲の視線も気にせずひなこを睨み付ける女子達。
腕を組んだり腰に手を当てたりと、威圧感満載だ。中でも、右端の金髪の生徒には覚えがあった。文化祭の日、楓と裏庭で口論をしていた子だ。
楓との仲は完全に誤解だが、彼女の修羅場を盗み見てしまったのは事実だし、謝るべきことは謝ろう。ひなこはそう心に決め、周囲がざわつく中しっかりと相対する。
「あんたが楓をたぶらかしたわけ?」
「今まで避けられることなんてなかったのに!」
「黙ってないでなんか言えよ!」
勢いよくぶつけられる悪意に圧倒されていると、先頭の女生徒が彼女達を制した。
「――あんたが噂の、有賀ひなこね」
気の強そうな整った顔立ちと、刺々しい雰囲気。
思わず目を逸らしたくなるけれど、彼女の発言には聞き逃せないものがあった。
「あの、う、噂って……?」
恐る恐る聞くと、彼女の背後にいた女子達の方が色めき立った。
「楓君が有賀ひなこを好きだって噂よ!」
「あの楓君が、冗談でも誰かに跪くなんてあり得ないんだから! 文化祭で私達に見せつけて、さぞいい気分だったでしょうね!」
「なによ、知らないふりしちゃって! マジうざいんだけど!」
ひなこは背中に冷や汗を感じた。
そんな噂が流れているとも知らずのこのこと登校して、気まずいことこの上ない。知っていたら恐ろしすぎて登校拒否になっている。
フラリとよろけた背中に優香の肩が当たり、ハッとした。一人じゃないと、彼女の存在に励まされる。
「あ、ありがとう優香。巻き込んでごめんね」
「私のことはいいから、思う存分やっちゃいなさい」
「いや、穏便に話し合うだけだから……」
「あら、そうなの? いくらでも加勢するつもりだったのに」
彼女が凄みのある笑みを向ければ、怯んだ女子達が一斉に押し黙る。
これでは話し合いにならないと、ひなこは威嚇を続ける親友をなんとか宥めた。
「結局あんたは、楓とどういう関係なのよ?」
彼女らのリーダー的存在なのだろうか、先頭のきつめ美人が再び口を開く。
ひなこは誤解を解くチャンスとばかりに、一気に説明した。
「あの、私、夏に母が亡くなってから、遠縁の三嶋家でハウスキーパーとして雇ってもらっているんです。そのせいで少し親しく見えただけで、楓君と私は特別な関係じゃありません。本当です」
主張を終えると、彼女の眉がピクリと動いた。
「母が亡くなってって……父親は?」
「父のことは、顔も覚えていません。私が子どもの頃に亡くなったとだけ」
ひなこの言葉に取り巻き軍団の表情が、どこか固いものに変わった。
「……それで私立の御園学院に入るの、大変だったんじゃ」
「ええと、奨学金でなんとか。頭がよくないので勉強で苦労してますが、母に将来、ちょっとでも楽をさせてあげたかったから……」
今となっては叶わぬ夢だが、これからはひなこを支えてくれる人達のために頑張りたい。もちろん死んだ母のためにも。
「子どもの頃から家のことをしていたおかげで、家事が好きになりました。だからこそ今こうして、三嶋家で雇っていただけています。私は本当に運がいいし、幸せ者です」
しっかりと相手の目を見て微笑むと、先頭の美人がお弁当に視線を落とした。
「――その弁当も、あんたが?」
「はい」
「見せてみなさいよ」
「えっ? ここで?」
丁重に断ろうとしたが、相手は一歩も引かない構えだ。見せないことには納得しないだろうと諦め、ひなこはお弁当を差し出した。
一つは彩りも栄養バランスも考えた、葵用に作ってきたお弁当。そしてもう一つが問題だった。
「あ、あはは、残りものばかりで恥ずかしいのですが」
ひなこは常備菜として、幾つかの副菜を冷蔵庫にストックしている。それの余りを全て入れたので、壮絶に地味で茶色いお弁当となっていた。
きんぴらごぼう、ひじきの五目煮、ほうれん草のすりごま和え、こんにゃくの甘辛煮、モヤシとキムチのナムル、玉子焼きだ。
しばらくじっとそれを眺めていたリーダー格の女子は、おもむろにあるものを差し出してきた。ハムサンドだ。
それに続くように色々なものが腕の中に落とされていく。コンビニの唐揚げやコロッケなど、おいしそうなおかずばかり。
「えっと」
「これでも食べて元気出しなさいよ」
「つーか、楓の家はあんたにそんなものしか食べさせてくれないわけ?」
「とんでもない! 本当によくしてもらってますよ!」
「いいわよ、無理しないで。今日のところはもう勘弁してあげるから。……また困ったことがあったら言いなさいよ」
「え? え? っと、あの!」
踵を返す元取り巻き軍団の一人を、ひなこは引き止めた。あの金髪の生徒だ。
「先日は、大変失礼しました。デリカシーに欠けていました。本当にすみません」
公衆の面前で詳しいことも言えないので、ずいぶん曖昧な謝罪になってしまった。
それでも誠意が少しでも伝わればと、深く頭を下げる。足を止め振り返っていた相手は、なにも言わずにそのまま去っていった。
嵐のような一団が去っていくのを、息をつきながら見送る。
周囲の生徒らは色々噂しているが、ひなこは一応の解決をみて安堵していた。
もちろん納得した人ばかりではないだろうが、最終的にあからさまな敵意を向けられることはなくなった。それで十分だ。
「ごめん優香、お腹空いちゃったよね。早く食堂に……」
背後を振り返ると、彼女の姿がない。
いつの間にと辺りを見回したら、少し離れたところで手を振っていた。隣には楓もいるが、なぜか項垂れているため表情は窺えない。
歩み寄ると、優香は呆れた声を上げた。
「まさか、味方に引き込んじゃうとは思わなかったわ」
「へ? そんなつもりじゃ」
「いやどう見ても気に入られてるでしょ。しかもリーダー格に。意外と人情派だったのは驚いたけど、やっぱりギャルって熱いのね」
ひなこは相槌代わりに笑うと、楓に視線を向けた。
「ところで楓君はどうしたの?」
「喧嘩に割って入ろうとしてたから止めたのよ。こいつが乱入したら話がややこしくなりそうだったから」
「すごく落ち込んでるのは、どうして?」
「さぁね。自分のあまりの不甲斐なさに言葉もないんじゃない?」
気にしなくていいと優香が腕を引くので、そのまま学食に行った。そこには既に葵がいて、四人分の席を確保していた。優香はその足で食事を選びに行く。
ひなこの料理をいつも喜んでくれる彼女だが、今回は葵に便乗しなかった。人数分の材料費を考え遠慮したのだろう。
萎れた野菜のようなままの楓を訝りながらも、葵はひなこを見た。
「そういえばお前、ミスコンの優勝商品はどうしたんだ?」
彼の言う通り、ミスコンの景品は学食の年間フリーパスだった。
「あれね、クラスの人にあげたんだ」
あげた相手は、クラスメイトの海原湊太郎だ。
以前から兄弟が多く食費が馬鹿にならないという話を聞いていたので、事情は違えど生活に困っている者同士の戦友めいた共感があった。少しでも助けになればという気持ちで譲ったのだが、大げさなほど喜んでくれたので正解だったと思っている。
優香がスピードメニューのカレーライスを手に戻ってきた。葵はお弁当を喜び、手放しで褒めてくれた。
元取り巻き軍団に恵んでもらった食べきれない量のおかずは、残しても申し訳ないのでみんなで分け合う。
賑やかで話も弾み、たまには食堂もいいなと実感するひと時だった。
しかしその間もずっと、楓は沈没し続けていた。
家に帰ると、早くに帰宅していた譲葉が荷づくりに勤しんでいた。
彼女の学校の修学旅行が目前に迫っており、今は念のためにとタオルを何枚かトランクケースにしまっているところだった。
ひなこはその側で、夕食の下ごしらえをする。
今日のおかずはチキンの照り焼き。初詣の日に友人らが食べていたのを、ずっと忘れられなかったのだ。
あっさりムネ肉派とがっつりモモ肉派がいるので両方を用意し、何度もフォークで刺す。こうすることで肉の繊維が切れてお肉が柔らかくなるし、次に行う水に漬け込む過程でもより浸透しやすくなる。
甘めの照り焼きのタレも完成しているので、皮目をパリパリに焼いた鶏肉にこれをさっとからめれば完成。この作業は食べる直前にすればいい。
チキンの照り具合を想像すると胸が躍った。何切れか残し、フランスパンに挟んで明日のお弁当にしてもいいかもしれない。
付け合わせのブロッコリーも塩茹でを終え、あとは家族の帰りを待つばかりだ。
ひなこは手を洗いながらも、昼間の楓の不自然な態度について話す。
譲葉は、なんとも言えない苦笑を漏らした。
「そっか。それは楓としても、肩透かしを食らった気分になったかもね」
全てを見通すかのような口振りに、ひなこは首を傾げる。
「肩透かし?」
「今、足掻いてる最中だろうから」
そう呟く譲葉は、とても優しい顔をしていた。茜や柊へ送る眼差しに似ている。
「楓があんなふうに変わるなんて思わなかったな。両親が離婚した時なんて、本当に夜遊びがひどかったし」
前妻の話を彼女の口から聞くのは、初めてかもしれない。
雪人からも詳しく語られていないので、嫌な気分にさせるかもと思いつつ、問わずにいられなかった。
「楓君の夜遊びがはじまったのって、前の奥さんと離婚してからなの?」
「うん。あの頃は、家の中が今よりもずっと殺伐としてたなぁ」
柊はストレスからか誰彼構わず敵意を撒き散らすようになり、茜の元々少ない口数はさらに減ったという。
「どうにか家族をまとめたかったけど、私にはなにもできなかった。だからこそ仕事に逃げる父さんにも、悪い先輩と付き合うようになって家に寄り付かなくなった楓にも、ひどく腹が立ってね」
当時、譲葉はまだ九歳だったはずだ。
正義感が強く真っ直ぐな彼女は、壊れていく家庭をどうすることもできず、無力さに落ち込むばかりだったかもしれない。
側にいられたら、ほんの少しでも力になれただろうか。
華奢な背中を見ていると胸が痛んで、なにかせずにいられなかった。ひなこは譲葉に歩み寄ると、彼女の手をそっと握る。
気付いた譲葉は、ふと空気を緩めて微笑んだ。
「もう昔のことだから、ひなちゃんが気にしなくていいのに」
「九歳の譲葉ちゃんを抱き締めてあげたい……」
「あれ、今の私じゃ不満があると?」
彼女は振り返ると両腕を広げた。
いたずらっぽい笑みの意図を察すると、ひなこは迷わずその腕に飛び込んだ。
細身に見えても鍛えているからか、難なく受け止められる。シャンプーの瑞々しい香りを感じながら、つい笑いが込み上げた。
「フフ、これじゃあ私が甘えてるみたい」
「お望みなら蕩けるほど甘やかしてあげようか?」
「こらこら、王子様が過ぎるよ」
ひなこが王子様キャラに惹かれないことを確信しているからこそのからかいだろうが、間近で甘く微笑まれると威力がすごい。
「でも実際、甘やかされてるのは私達の方。ひなちゃんがいてくれなかったら、きっと家族はバラバラになってた。あの頃の父さんは、子どもを全員引き取ることになってずいぶん無理してたんだろうなって、今なら分かるよ。家族の前でも張り詰めていたしね」
「張り詰めてる雪人さん?」
家族を大切に思い、いつも穏やかに微笑んでいる雪人。張り詰めている姿など、とても想像できない。
「ひどかったよ。有賀さんに出会う前もそうだったけど、亡くなってからは特に。私も部活やめなきゃって、何度か考えたくらいには」
母が亡くなり負担が一気に増したということだろうが、違う意味にもとれた。有賀香織が、雪人の心の支えだったというように。
「もしかして雪人さんって、私のお母さんのことが好きだったの?」
「……どうしてそんな結論になるのかが分からない」
結構真剣に言ったつもりなのに、譲葉は呆れたような半眼になってしまった。
彼女は楓と葵に視線を移すと、ニッコリ華麗に微笑む。
「でもあんた達は別よ。このあと問答無用でおごってもらうから」
まさに悪魔の微笑みといったところで、彼らは無念そうに頷く他なかった。
四人は冷えた体を温めるため、穏やかな雰囲気のカフェに入った。
そこかしこに観葉植物が配置された癒しの空間だが、考えることは皆同じ、店内は非常に混雑していた。
かろうじて空いていた四人掛けのテーブルを確保し、カウンターで注文をする。
ひなこと葵はコーヒーだけだったが、楓と優香はパニーニも頼んでいた。
数種類あるがどれも捨てがたく、結局お互いのものを半分ずつ食べるという結論で落ち着いたらしい。前世の因縁でもあるのかと思うくらい相容れなかった二人なので、初対面の頃を知るひなことしては感慨深いものがあった。
鉄板の焼き目がついた香ばしいパンに、ハムととろけたチーズが挟んである定番のパニーニと、テリヤキチキンとマヨネーズ、レタスの入った変わり種のパニーニ。
どちらもおいしそうだが、おせちを食べすぎたひなこには手が出せない。羨ましいと眺めるばかりだ。
「おせちを食べたあとって、こういうジャンクフードが食べたくなるよな」
パクつく楓の言葉に、いっそ感心する。おせちを勢いよく食べていた筆頭が彼だったのだ。気持ちはとても分かるが、本当によく入る。
「おせちはひなこが作ったのよね?」
優香の問いにひなこは頷いた。
「毎年作ってたから、やっぱり作りたくなっちゃうんだよね」
「あんた栗きんとんまで作るもんね。何回も裏ごししたり、スッゴい手間なのに」
「手間がかかるからやりがいがあるんだよ。市販のものより色が悪くなっちゃうのが難点だけどね。でも芋あんを使わないで、百パーセント栗だけで作ったんだ」
比較的安価な栗きんとんに芋が使用されるのは、手っ取り早く鮮やかな黄色を出すためだ。一昔前のように着色料を使っていない分ずっといいのだが、せっかく手作りするなら栗にこだわりたい。
シナモン入りのカプチーノを飲んでいた葵が、熱く語るひなこを見つめて呟いた。
「そういえば僕だけ、お前の料理を食べたことがないんだな」
「そう? 文化祭のロールケーキ、葵君にも食べてもらったよ?」
葵は文化祭を楽しむタイプに見えなかったので、彼のクラスを訪れた時に手土産として持って行ったのだ。
けれど葵は不服そうだ。
「あれは複数で作ったから、お前の手作りとは言えない。今度作ってくれないか?」
「そんな、特別すごいものでもないのに」
ひなこが作るのは、いたって平凡な家庭料理だ。
特別な工夫をしているわけでもなにかを極めているわけでもないので、期待されると逆に困ってしまう。
たじろぐひなこを覗き込むように、葵は身を乗り出した。
間近で見ると、彼の瞳が実は灰色がかっていると分かる。もしかしたら外国の血が入っているのかもしれない。
「僕が食べてみたいんだ。ひなこの手料理が、食べたい」
力強く、はっきりとした意思を持つ声。綺麗な灰色の瞳。硬質な美貌に魅入られたように、視線が逸らせない。
見つめ合うひなこと葵を物理的に遮ったのは、楓の手だった。
「外崎、周りの皆さんの視線も少しは気にしろよ?」
楓の言葉で隣のテーブルを見ると、女性客二人がニヤニヤしていた。すぐに目を逸らされるも、こちらを見ていたことは明白だ。
葵との距離の近さに遅ればせながら顔が熱くなり、ひなこは慌てて離れた。
三人の気まずさをよそに、優香はニヤリと意地悪げに笑う。
「『努力すべし』だけど、ついでに伏兵にも気を付けた方がいいかもねー。天然ってある意味最強だから」
謎の言葉にひなこと葵は揃って首を傾げ、楓は疲れたように項垂れた。
連休明けに葵のお弁当も作ると約束させられた、帰り道。
優香達と別れ、並んで歩いていた楓がおもむろに口を開いた。
「取り巻きをしてたやつら、全員と話ついたから。あいつらがお前になにか仕掛けてきたとしても、俺が責任をもって守る」
楓の言葉の意味を吟味し、ひなこは盛大に眉根を寄せた。
「……んん? なんで私が狙われる前提なの? もしかして、私の名前を出した?」
言い訳に利用されていたのなら大問題だ。
逆恨みになにをされるか分かったものじゃない。
「出してない! マジで出してないから!」
楓は激しく否定するも、すぐに気まずげに頭を掻いた。
「でもほら、ミスコンの時によ」
「あぁ……楓君が花束贈呈で、ふざけてやったやつね」
「そこではっきりふざけたと断定されるのも複雑だな……」
異国の騎士かプロポーズをする恋人のように跪く楓を思い出す。
確かにあれでは、彼を好きな者から顰蹙を買うだろう。
「まぁ、もしかしたらあんたとの仲を誤解した奴もいるかもしれないし、俺の方でも警戒しとくってことだ」
「分かった。私も気を付けるね」
しっかり頷いてはみたが、ひなこはこの時、具体的にどう気を付ければいいのか考えていなかった。それを、休み明けに後悔することとなる。
◇ ◆ ◇
冬期休暇明けの学院は、どこかピリピリとしていた。
単純に、共通テストが間近に控えているからだろうと思っていた。当然その理由が大半だろうが、どうやらそれだけではなかったらしい。
その事実にひなこが気付いたのは、お昼休みになってからだ。
葵との約束を果たすため、初詣に行った面子で昼食を食べることになっていた。
通いのハウスキーパーが楓にお弁当を作っていたら不自然すぎると思い至ったのは、今朝のこと。
普段から違うお弁当に見えるよう気を付けているものの、一緒に食べるわけではないのでアレンジを加える程度だった。けれど今回に限っては、全く別のお弁当を二種類用意しなければならない。
楓にはハンバーグがメインの洋食、葵には焼き鮭がメインの和食を作ったが、ひなこはここでずいぶん手間暇をかけてしまった。
自分のお弁当を準備していないことに気付いたのは遅刻ギリギリの時間になってからで、慌てて冷蔵庫の残りものを詰め込むしかなかった。
よく考えれば葵と同じお弁当でよかったのだから、無駄すぎる二度手間だ。
そんな苦労の結晶である焼き鮭弁当と、世にも寂しい常備菜だらけのお弁当を提げながら、優香と共に待ち合わせをしている学食に向かう途中――ひなこは突然、楓の取り巻き軍団に囲まれた。
朝からのピリピリした雰囲気はこれだったのかと、遅まきながら気付く。
不穏な空気を漂わせ、周囲の視線も気にせずひなこを睨み付ける女子達。
腕を組んだり腰に手を当てたりと、威圧感満載だ。中でも、右端の金髪の生徒には覚えがあった。文化祭の日、楓と裏庭で口論をしていた子だ。
楓との仲は完全に誤解だが、彼女の修羅場を盗み見てしまったのは事実だし、謝るべきことは謝ろう。ひなこはそう心に決め、周囲がざわつく中しっかりと相対する。
「あんたが楓をたぶらかしたわけ?」
「今まで避けられることなんてなかったのに!」
「黙ってないでなんか言えよ!」
勢いよくぶつけられる悪意に圧倒されていると、先頭の女生徒が彼女達を制した。
「――あんたが噂の、有賀ひなこね」
気の強そうな整った顔立ちと、刺々しい雰囲気。
思わず目を逸らしたくなるけれど、彼女の発言には聞き逃せないものがあった。
「あの、う、噂って……?」
恐る恐る聞くと、彼女の背後にいた女子達の方が色めき立った。
「楓君が有賀ひなこを好きだって噂よ!」
「あの楓君が、冗談でも誰かに跪くなんてあり得ないんだから! 文化祭で私達に見せつけて、さぞいい気分だったでしょうね!」
「なによ、知らないふりしちゃって! マジうざいんだけど!」
ひなこは背中に冷や汗を感じた。
そんな噂が流れているとも知らずのこのこと登校して、気まずいことこの上ない。知っていたら恐ろしすぎて登校拒否になっている。
フラリとよろけた背中に優香の肩が当たり、ハッとした。一人じゃないと、彼女の存在に励まされる。
「あ、ありがとう優香。巻き込んでごめんね」
「私のことはいいから、思う存分やっちゃいなさい」
「いや、穏便に話し合うだけだから……」
「あら、そうなの? いくらでも加勢するつもりだったのに」
彼女が凄みのある笑みを向ければ、怯んだ女子達が一斉に押し黙る。
これでは話し合いにならないと、ひなこは威嚇を続ける親友をなんとか宥めた。
「結局あんたは、楓とどういう関係なのよ?」
彼女らのリーダー的存在なのだろうか、先頭のきつめ美人が再び口を開く。
ひなこは誤解を解くチャンスとばかりに、一気に説明した。
「あの、私、夏に母が亡くなってから、遠縁の三嶋家でハウスキーパーとして雇ってもらっているんです。そのせいで少し親しく見えただけで、楓君と私は特別な関係じゃありません。本当です」
主張を終えると、彼女の眉がピクリと動いた。
「母が亡くなってって……父親は?」
「父のことは、顔も覚えていません。私が子どもの頃に亡くなったとだけ」
ひなこの言葉に取り巻き軍団の表情が、どこか固いものに変わった。
「……それで私立の御園学院に入るの、大変だったんじゃ」
「ええと、奨学金でなんとか。頭がよくないので勉強で苦労してますが、母に将来、ちょっとでも楽をさせてあげたかったから……」
今となっては叶わぬ夢だが、これからはひなこを支えてくれる人達のために頑張りたい。もちろん死んだ母のためにも。
「子どもの頃から家のことをしていたおかげで、家事が好きになりました。だからこそ今こうして、三嶋家で雇っていただけています。私は本当に運がいいし、幸せ者です」
しっかりと相手の目を見て微笑むと、先頭の美人がお弁当に視線を落とした。
「――その弁当も、あんたが?」
「はい」
「見せてみなさいよ」
「えっ? ここで?」
丁重に断ろうとしたが、相手は一歩も引かない構えだ。見せないことには納得しないだろうと諦め、ひなこはお弁当を差し出した。
一つは彩りも栄養バランスも考えた、葵用に作ってきたお弁当。そしてもう一つが問題だった。
「あ、あはは、残りものばかりで恥ずかしいのですが」
ひなこは常備菜として、幾つかの副菜を冷蔵庫にストックしている。それの余りを全て入れたので、壮絶に地味で茶色いお弁当となっていた。
きんぴらごぼう、ひじきの五目煮、ほうれん草のすりごま和え、こんにゃくの甘辛煮、モヤシとキムチのナムル、玉子焼きだ。
しばらくじっとそれを眺めていたリーダー格の女子は、おもむろにあるものを差し出してきた。ハムサンドだ。
それに続くように色々なものが腕の中に落とされていく。コンビニの唐揚げやコロッケなど、おいしそうなおかずばかり。
「えっと」
「これでも食べて元気出しなさいよ」
「つーか、楓の家はあんたにそんなものしか食べさせてくれないわけ?」
「とんでもない! 本当によくしてもらってますよ!」
「いいわよ、無理しないで。今日のところはもう勘弁してあげるから。……また困ったことがあったら言いなさいよ」
「え? え? っと、あの!」
踵を返す元取り巻き軍団の一人を、ひなこは引き止めた。あの金髪の生徒だ。
「先日は、大変失礼しました。デリカシーに欠けていました。本当にすみません」
公衆の面前で詳しいことも言えないので、ずいぶん曖昧な謝罪になってしまった。
それでも誠意が少しでも伝わればと、深く頭を下げる。足を止め振り返っていた相手は、なにも言わずにそのまま去っていった。
嵐のような一団が去っていくのを、息をつきながら見送る。
周囲の生徒らは色々噂しているが、ひなこは一応の解決をみて安堵していた。
もちろん納得した人ばかりではないだろうが、最終的にあからさまな敵意を向けられることはなくなった。それで十分だ。
「ごめん優香、お腹空いちゃったよね。早く食堂に……」
背後を振り返ると、彼女の姿がない。
いつの間にと辺りを見回したら、少し離れたところで手を振っていた。隣には楓もいるが、なぜか項垂れているため表情は窺えない。
歩み寄ると、優香は呆れた声を上げた。
「まさか、味方に引き込んじゃうとは思わなかったわ」
「へ? そんなつもりじゃ」
「いやどう見ても気に入られてるでしょ。しかもリーダー格に。意外と人情派だったのは驚いたけど、やっぱりギャルって熱いのね」
ひなこは相槌代わりに笑うと、楓に視線を向けた。
「ところで楓君はどうしたの?」
「喧嘩に割って入ろうとしてたから止めたのよ。こいつが乱入したら話がややこしくなりそうだったから」
「すごく落ち込んでるのは、どうして?」
「さぁね。自分のあまりの不甲斐なさに言葉もないんじゃない?」
気にしなくていいと優香が腕を引くので、そのまま学食に行った。そこには既に葵がいて、四人分の席を確保していた。優香はその足で食事を選びに行く。
ひなこの料理をいつも喜んでくれる彼女だが、今回は葵に便乗しなかった。人数分の材料費を考え遠慮したのだろう。
萎れた野菜のようなままの楓を訝りながらも、葵はひなこを見た。
「そういえばお前、ミスコンの優勝商品はどうしたんだ?」
彼の言う通り、ミスコンの景品は学食の年間フリーパスだった。
「あれね、クラスの人にあげたんだ」
あげた相手は、クラスメイトの海原湊太郎だ。
以前から兄弟が多く食費が馬鹿にならないという話を聞いていたので、事情は違えど生活に困っている者同士の戦友めいた共感があった。少しでも助けになればという気持ちで譲ったのだが、大げさなほど喜んでくれたので正解だったと思っている。
優香がスピードメニューのカレーライスを手に戻ってきた。葵はお弁当を喜び、手放しで褒めてくれた。
元取り巻き軍団に恵んでもらった食べきれない量のおかずは、残しても申し訳ないのでみんなで分け合う。
賑やかで話も弾み、たまには食堂もいいなと実感するひと時だった。
しかしその間もずっと、楓は沈没し続けていた。
家に帰ると、早くに帰宅していた譲葉が荷づくりに勤しんでいた。
彼女の学校の修学旅行が目前に迫っており、今は念のためにとタオルを何枚かトランクケースにしまっているところだった。
ひなこはその側で、夕食の下ごしらえをする。
今日のおかずはチキンの照り焼き。初詣の日に友人らが食べていたのを、ずっと忘れられなかったのだ。
あっさりムネ肉派とがっつりモモ肉派がいるので両方を用意し、何度もフォークで刺す。こうすることで肉の繊維が切れてお肉が柔らかくなるし、次に行う水に漬け込む過程でもより浸透しやすくなる。
甘めの照り焼きのタレも完成しているので、皮目をパリパリに焼いた鶏肉にこれをさっとからめれば完成。この作業は食べる直前にすればいい。
チキンの照り具合を想像すると胸が躍った。何切れか残し、フランスパンに挟んで明日のお弁当にしてもいいかもしれない。
付け合わせのブロッコリーも塩茹でを終え、あとは家族の帰りを待つばかりだ。
ひなこは手を洗いながらも、昼間の楓の不自然な態度について話す。
譲葉は、なんとも言えない苦笑を漏らした。
「そっか。それは楓としても、肩透かしを食らった気分になったかもね」
全てを見通すかのような口振りに、ひなこは首を傾げる。
「肩透かし?」
「今、足掻いてる最中だろうから」
そう呟く譲葉は、とても優しい顔をしていた。茜や柊へ送る眼差しに似ている。
「楓があんなふうに変わるなんて思わなかったな。両親が離婚した時なんて、本当に夜遊びがひどかったし」
前妻の話を彼女の口から聞くのは、初めてかもしれない。
雪人からも詳しく語られていないので、嫌な気分にさせるかもと思いつつ、問わずにいられなかった。
「楓君の夜遊びがはじまったのって、前の奥さんと離婚してからなの?」
「うん。あの頃は、家の中が今よりもずっと殺伐としてたなぁ」
柊はストレスからか誰彼構わず敵意を撒き散らすようになり、茜の元々少ない口数はさらに減ったという。
「どうにか家族をまとめたかったけど、私にはなにもできなかった。だからこそ仕事に逃げる父さんにも、悪い先輩と付き合うようになって家に寄り付かなくなった楓にも、ひどく腹が立ってね」
当時、譲葉はまだ九歳だったはずだ。
正義感が強く真っ直ぐな彼女は、壊れていく家庭をどうすることもできず、無力さに落ち込むばかりだったかもしれない。
側にいられたら、ほんの少しでも力になれただろうか。
華奢な背中を見ていると胸が痛んで、なにかせずにいられなかった。ひなこは譲葉に歩み寄ると、彼女の手をそっと握る。
気付いた譲葉は、ふと空気を緩めて微笑んだ。
「もう昔のことだから、ひなちゃんが気にしなくていいのに」
「九歳の譲葉ちゃんを抱き締めてあげたい……」
「あれ、今の私じゃ不満があると?」
彼女は振り返ると両腕を広げた。
いたずらっぽい笑みの意図を察すると、ひなこは迷わずその腕に飛び込んだ。
細身に見えても鍛えているからか、難なく受け止められる。シャンプーの瑞々しい香りを感じながら、つい笑いが込み上げた。
「フフ、これじゃあ私が甘えてるみたい」
「お望みなら蕩けるほど甘やかしてあげようか?」
「こらこら、王子様が過ぎるよ」
ひなこが王子様キャラに惹かれないことを確信しているからこそのからかいだろうが、間近で甘く微笑まれると威力がすごい。
「でも実際、甘やかされてるのは私達の方。ひなちゃんがいてくれなかったら、きっと家族はバラバラになってた。あの頃の父さんは、子どもを全員引き取ることになってずいぶん無理してたんだろうなって、今なら分かるよ。家族の前でも張り詰めていたしね」
「張り詰めてる雪人さん?」
家族を大切に思い、いつも穏やかに微笑んでいる雪人。張り詰めている姿など、とても想像できない。
「ひどかったよ。有賀さんに出会う前もそうだったけど、亡くなってからは特に。私も部活やめなきゃって、何度か考えたくらいには」
母が亡くなり負担が一気に増したということだろうが、違う意味にもとれた。有賀香織が、雪人の心の支えだったというように。
「もしかして雪人さんって、私のお母さんのことが好きだったの?」
「……どうしてそんな結論になるのかが分からない」
結構真剣に言ったつもりなのに、譲葉は呆れたような半眼になってしまった。
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