今日から、契約家族はじめます

浅名ゆうな

文字の大きさ
36 / 52
!コミカライズ発売記念!

◇コミカライズ2巻◇リクエスト楓ifクリスマス

しおりを挟む
※こちらは以前読者様よりリクエストをいただいた、楓if(付き合ってしばらく経ったいちゃラブイベントVer)となります!
コミカライズ記念とはいえ本編とは全く関係のないお話ですのでご了承くださいませ!


 今年は暖冬ということで、ほとんど雪が降っていない。
 ひなこは少しの不満を込めて、薄曇りの空を見上げた。
 大学生になって初めてのクリスマス。
 今年は受験もないし、せっかくだから思いきり遊ぼうと言ったのは楓だった。
 提案されたのはスノースポーツ。
 何と彼はスノーボードまで嗜むらしい。頭もいいし彼氏が完璧すぎる。
 初心者のひなこだが、楓が教えてくれるならと乗り気になっていた。白銀の雪山を背景に、格好いいウェアを着こなし格好よく滑走する彼の幻さえ見えていた。
 それなのに、暖冬。
 十二月も半ばになった頃、ひなこ達はやむなく計画を中止していた。
 ひなこは地元関東の、楓は関西の大学に進学している。
 会おうと思えば会える距離だが、思い立ってすぐに会える距離でもない。
 連絡はこまめに取り合っていたけれど、お互い大学生活に馴染むのに精一杯だったし、会う頻度は多くなかった。
 だからこそ、今回の旅行に思いきり期待していたのに。
 ――せっかくのクリスマスだし、いっぱい色んなことしたかったな……話したり、いっぱいくっついたり、いっぱいその、キスとかしちゃったり……。
 頭に浮かんだものが雪山でなくてもできることばかりで、自分の邪念がひどい。
 ひなこは熱くなった頬を冷ますために、歩きながらブンブン首を振った。
 大学から一人暮らししているアパートに帰ると、ため息と共にドアを開く。
「まぁ、明日になったら会えるんだし我慢しないとだよね……」
「あんた独り言デカくて不気味だな」
 独り言に嫌みを返され、ひなこは慌てて顔を上げた。
 ワンルームのリビングへと続く短い廊下に、楓が当たり前のように立っている。
「え……え、えぇ!?」
 脳の処理が追いつかない。
 いや。頭の片隅では、合鍵を使っただろうことや彼の授業が早く終わったこと、旅行が中止になって落ち込むひなこのため急いで駆けつけてくれたのだということを理解している。楓は無愛想だが優しい。
 けれど、明日の午前中に材料を買い込み、冷凍の丸鶏やアクアパッツァ、ミートパイやブッシュドノエルなどのクリスマス料理を作る予定だったのに。
「ま、待って! 急いでごはん作る! あんまり材料揃ってないけど、せめてローストチキンとかリースサラダとか!」
 仕方がない、計画変更。
 廊下に作りつけられた簡素なキッチンに、ひなこは焦って立ち向かう。頭の中では目まぐるしく調理の算段をしていた。
 けれど楓は、おもむろに両腕を広げそれを阻止する。
「俺は料理よりも、あんたと早くいちゃつきたいんだけど?」
 ひなこは音を立てて固まった。
 それは当然、ひなこだって一刻も早くいちゃいちゃしたい。したいけれど。
「~っ、でもでも、やっぱりちゃんと料理したい! せっかく楓君と二人だけで、初めてのクリスマスを過ごすんだから!」
 彼は照れくさそうに顔をしかめながらも、それ以上否定しなかった。
「仕方ねぇ。なら、俺も手伝う」
「え?」
「こっちも一人暮らしだから、一応料理くらいしてる。一緒に作った方が早ぇし、その分近くにいられるだろ」
 二人で過ごすクリスマスを特別な日にしたい、というひなこの我が儘。
 楓はそれを受け止めてくれた。
 ひなこに合わせて、料理の腕まで振るってくれるという。
 ――また、計画変更だ……。
 けれど今回は全然嫌じゃない。
 むしろ胸がドキドキして、ソワソワして、自然に顔が綻んでしまう。
「その代わり、ちょいちょいお触りするのは許せよ」
「包丁を持つ者として、キッチンでの不用意な行動は固くお断りいたします」
 料理人魂を発揮し真面目に返答すると、楓が楽しそうに噴き出した。
「ひなこのそういうとこ、ホント好き」
 柔らかく細まった明るい色の瞳が、ひなこを離さない。
 十分すぎるほど愛情を伝えてくれる、楓の眼差しが好きだ。
 ひなこは魅入られ頬を赤くしながらも、たどたどしく思いに応えた。
「え。えっと、わ、私も……すごく好き」
 じっと見つめ合う二人の顔が、徐々に近付いていく。
 久しぶりに交わしたキスは、とんでもなく温かくて甘い。



「思い出作りっつーなら、あんたのミニスカサンタのコスプレとか見てぇな」
「楓君って……結構変態っぽいこと、平気で言うよね……」
「彼氏に向かってひでぇ。高校生の時、あんた学園祭でコスプレしてたじゃん。あれ、すげー似合ってたからいいなって」
「じ、時間差攻撃だ……」
「いや、攻撃はしてねーけど」

 ……結局、存分にいちゃいちゃしたせいで料理をはじめるのが遅くなってしまったのは、余談だ。


              
               end
しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

三回目の人生も「君を愛することはない」と言われたので、今度は私も拒否します

冬野月子
恋愛
「君を愛することは、決してない」 結婚式を挙げたその夜、夫は私にそう告げた。 私には過去二回、別の人生を生きた記憶がある。 そうして毎回同じように言われてきた。 逃げた一回目、我慢した二回目。いずれも上手くいかなかった。 だから今回は。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。