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第1章・アイドルへの道
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***
「…………」
活気のある城下町は、散策しているだけで楽しい。
しかし
「ビクトリア騎士団長だ!」
「きゃー!騎士団長様~」
「騎士様~お店に寄ってって~」
「サービスするわ~!」
「ビクトリア様~」
城下町を進むにつれ、フルールの眉間にシワが寄る。
「……(これ……僕がフード被る意味ある?)」
「騎士」という職業は、民の憧れの職業だ。
平民出身でも実力さえあれば、富と名声を得られる唯一の職業である。
その為、騎士は何処へ行っても羨望の眼差しを集め、歓声が沸き起こる。
特に、団長であるビクトリアの人気は凄まじい。
男女問わず、あからさまな「夜」のお誘いがとまらない。
それもその筈
ビクトリアこそ、平民出身の騎士だった。
ビクトリアは、たゆまぬ努力の末「知識・剣術・武術・魔術・乗馬」と、あらゆる分野で王国一の実力を得て、今の地位を手に入れた。
「あの」ウルティムスですら一目置いた存在であり、絶大な信頼を寄せられた騎士だ。
その上、恵まれた容姿と色気たっぷりのフェロモンの持ち主。求められて、答えない者はいないだろう。
まさに「ベルヴァ王国の英雄」なのであった。
そんな騎士達に囲まれ歩くフルールは、必然的に民の噂の的になっていた。
「あのフードを被っている方は、王族の方かしら?」
「王妃様…だったりして…」
「王妃様は、まだ人化も出来ない子供のはず…」
「1度、お顔を拝見してみたいわ…」
「………(バレてる。すっごいバレてるよ…)」
ヒソヒソと小声で話す民。
しかし、豚は「聴覚」と「嗅覚」に優れた動物なので、フルールには全て筒抜けだった。
黄色い声援を受け、鼻の下が伸びた、だらしない顔の騎士達を見ていると、怒りがふつふつと沸いてくるフルール。
「…っ(もう!フードなんか取ってやる!!!)」
怒りに任せ、フルールがフードに手をかけようとした瞬間
べちゃっ
「…………えっ…」
フルールは右頬から胸元にかけ、軽い衝撃を感じた。
冷たくて、トロッ…とした「何か」が、フルールのポンチョを茶色く汚していた。
「王妃様!!大丈夫ですか!?」
騎士の一人がフルールに駆け寄り、王妃と呼んだ事で、辺りは騒然とした。
フルールは視界に、子犬の獣人が顔を青くし、震えているのを捉えた。
どうやら友人達と「泥遊び」をしていた様で、偶々近くを通ったフルールに、泥が掛かってしまったのだった。
騒ぎを聞き、駆けつけた子犬の母親は
「息子が大変申し訳ございません!!必ずや弁償させていただきます!どうかお許しください!」
と、土下座をしながら、フルールに許しを乞う。
「…っ……王妃様!」
「これは、護衛がしっかり出来ていなかった我々、騎士の責任であり、団長である私の責任です!」
「処罰なら、この私が…」
「(最悪だ…王妃様が身に付けている物を、平民が弁償出来る訳がない!一生掛かっても無理だ!)」
ビクトリアは子犬の母親を庇うように、自分の非をフルールに訴えた。
ビクトリアの言う通り、フルールの着ているポンチョは、平民が弁償出来る金額の品物ではない。
子孫の代まで借金が続くか、最悪は「奴隷」になるしかない。
最悪の結末を想像した子犬の母親は、恐怖で体が震え、ずっと地面に頭を擦り付けていた。
民からの「同情の視線」がその場に集中し、異様な雰囲気に、子供達は泣き出してしまう。
そんな中、バッと、フルールは豪快にポンチョを脱ぎ捨て、美しすぎるフルールの姿が現になった。
整いすぎたその顔にも泥が付いており、その場が騒然とする。
フルールはそんな中でも堂々としており、優しく、子犬の母親を立たせてあげた。
「弁償する必要なんてない。洗えばいいよ!」
「服は汚れるものなんだから!」
そう言い、屈託のない笑みを浮かべるフルールを、民は「天使様…」と、頬を染め、感動するのだった。
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「…………」
活気のある城下町は、散策しているだけで楽しい。
しかし
「ビクトリア騎士団長だ!」
「きゃー!騎士団長様~」
「騎士様~お店に寄ってって~」
「サービスするわ~!」
「ビクトリア様~」
城下町を進むにつれ、フルールの眉間にシワが寄る。
「……(これ……僕がフード被る意味ある?)」
「騎士」という職業は、民の憧れの職業だ。
平民出身でも実力さえあれば、富と名声を得られる唯一の職業である。
その為、騎士は何処へ行っても羨望の眼差しを集め、歓声が沸き起こる。
特に、団長であるビクトリアの人気は凄まじい。
男女問わず、あからさまな「夜」のお誘いがとまらない。
それもその筈
ビクトリアこそ、平民出身の騎士だった。
ビクトリアは、たゆまぬ努力の末「知識・剣術・武術・魔術・乗馬」と、あらゆる分野で王国一の実力を得て、今の地位を手に入れた。
「あの」ウルティムスですら一目置いた存在であり、絶大な信頼を寄せられた騎士だ。
その上、恵まれた容姿と色気たっぷりのフェロモンの持ち主。求められて、答えない者はいないだろう。
まさに「ベルヴァ王国の英雄」なのであった。
そんな騎士達に囲まれ歩くフルールは、必然的に民の噂の的になっていた。
「あのフードを被っている方は、王族の方かしら?」
「王妃様…だったりして…」
「王妃様は、まだ人化も出来ない子供のはず…」
「1度、お顔を拝見してみたいわ…」
「………(バレてる。すっごいバレてるよ…)」
ヒソヒソと小声で話す民。
しかし、豚は「聴覚」と「嗅覚」に優れた動物なので、フルールには全て筒抜けだった。
黄色い声援を受け、鼻の下が伸びた、だらしない顔の騎士達を見ていると、怒りがふつふつと沸いてくるフルール。
「…っ(もう!フードなんか取ってやる!!!)」
怒りに任せ、フルールがフードに手をかけようとした瞬間
べちゃっ
「…………えっ…」
フルールは右頬から胸元にかけ、軽い衝撃を感じた。
冷たくて、トロッ…とした「何か」が、フルールのポンチョを茶色く汚していた。
「王妃様!!大丈夫ですか!?」
騎士の一人がフルールに駆け寄り、王妃と呼んだ事で、辺りは騒然とした。
フルールは視界に、子犬の獣人が顔を青くし、震えているのを捉えた。
どうやら友人達と「泥遊び」をしていた様で、偶々近くを通ったフルールに、泥が掛かってしまったのだった。
騒ぎを聞き、駆けつけた子犬の母親は
「息子が大変申し訳ございません!!必ずや弁償させていただきます!どうかお許しください!」
と、土下座をしながら、フルールに許しを乞う。
「…っ……王妃様!」
「これは、護衛がしっかり出来ていなかった我々、騎士の責任であり、団長である私の責任です!」
「処罰なら、この私が…」
「(最悪だ…王妃様が身に付けている物を、平民が弁償出来る訳がない!一生掛かっても無理だ!)」
ビクトリアは子犬の母親を庇うように、自分の非をフルールに訴えた。
ビクトリアの言う通り、フルールの着ているポンチョは、平民が弁償出来る金額の品物ではない。
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「弁償する必要なんてない。洗えばいいよ!」
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