【完結】売れっ子アイドル、転生したら嫌われ子豚だった!~アイドル魂で子豚人生満喫中です~

赤井たまご

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第3章・アイドルの恋愛事情

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***

-ベルヴァ王国・国王執務室-

マーレの荒れ狂う空模様とは打って変わり、ベルヴァは雲ひとつない青空が広がっていた。

暖かな陽の光が降り注ぐ王宮の一室。

ウルティムスは険しい表情で、部下から提出された報告書に目を通していた。

すると

コンコンッ…ガチャッ

「失礼します」

許可を得ず、秒で扉を開けて入室してくるウィズダムに

「……バダクから連絡は?」

毎度のことながら「ノックの意味…」と、ウルティムスは思いつつも、咎めることはせず、書類に視線を向けたままウィズダムに問う。

「ありません」
「何度かこちらからアクションを起こしてはいますが、全て応答なしです」

「はっ、だろうな」
「マーレ以外の2大国は、ベルヴァに「関心」がねぇーからな…」

「ふっ…だが」

険しかったウルティムスの表情が和らぎ、張り詰めた雰囲気も優しくなる。

「そこは俺様の「番」がやってくれるだろうよ、あ"ぁ"っ」

「番」のことを語るウルティムスの表情は、いつだって優しく、柔らかいものだった。

ウィズダムは「無自覚…なんでしょうね…」と、そんな主の「良い変化」を嬉しく思った。

しかし

「ウーたぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!」

「…チッ!」

スノーの大きな声が窓の外から聞こえた瞬間、ウルティムスの表情は一変し、苦虫を噛み潰したような顔をする。

「…式の準備は…?」

「そちらは順調に進んでいます」

眉間にシワを寄せたウルティムスがソッ…と、窓の外を覗き見る。するとそこには、スノーとその母、ネージュがお茶会をしていた。

澄ました顔をするネージュに、ウルティムスは

「ティグリス大公夫人は、よく「こんなこと」を思い付いたな…」

ネージュの利口さに驚嘆した。

「…亡き夫と義兄の夢を叶えたいのでしょう…」
「お三方はとても仲が良かったと聞きました」

「……あぁ…」

ウィズダムの言葉に、幼き日の思い出がウルティムスの脳裏に甦る。その瞳には微かに、懐かしさが滲んでいた。

「…ベルヴァの罪…呪われた1000年間…」

ウルティムスは拳を固く握り締め、意を決するように口を開いた。

「いい加減、終わりにしようじゃねーか」

「この俺様が、再び「4大国を1つ」にする!」
「これからの、命あるものの「未来」の為に…」

「…………」

断固たる決意を露わにするウルティムスの背中を、ウィズダムは黙って見つめた。

すると

「んふっ、その為には「運命の番」すらも、谷に蹴落とす…と」

「あ"ぁ"っ?………レオンか」

ウルティムスの影から、ヌルッ…と、レオンが顔を出す。

「んふっ、只今、戻りました」
「我が国王…」

タイミングを見計らったように、レオンが帰還。。したのだった。

***

「マーレ国王の様子はどうだ?」

帰還したレオンに、マーレで得た「情報」を「報告」させるウルティムス。

レオンは「ある目的」の為にウルティムスと協力し、マーレ王国に「潜入」していたのだった。

「んふっ、もう荒れ放題で大変ですよ」
「従者達に当たり散らすは、部屋はぐちゃぐちゃだわ…」

「はっ、ヒステリックの女か」

「まぁ、同じようなもんですよ、元々「地雷系」なんで…」

レオンは両手を挙げ、降参ポーズをしながら苦々しく笑う。

「…母上は何故、そんな「彼」をいつまでも待っているのでしょうね…」

レオンの弱々しい呟きが、執務室に大きく響いた。

「……「愛」…なんじゃねぇーの…」

「「………………」」

予想外の者からの予想外の発言に、二人は目を見開き固まる。

「あ"ぁ"っ!?…なんだよ!!」

「いえ…王の口から「愛」という単語を聞く日が来るとは…」

「…んふっ、王妃様効果絶大ですね…ですが」
「…王妃様がこのまま戻らなかったら、どうするおつもりで?」

自分の発言にいたたまれなくなり、顔を覆ったウルティムスに、レオンは問いかける。 

「はっ、俺様は「あいつ」を、谷に蹴落としたんじゃねー」

「???」

レオンの問いにウルティムスは、鼻で笑って答えた。

「…「あいつがいる」から、俺様は「この作戦」を実行しようと思ったんだ」

ウルティムスはドカッ…と、豪快に椅子に座り、長い足を組んだ。

「1000年の間、生まれてこなかった聖歌人ヒムが生まれて来た」

「それも、ベルヴァ国王俺様の「運命の番」として…」

「きっと「今」が変わる時なんだ」

ウルティムスは決意のこもった眼差しを二人に向ける。

「全てに気付いた時、あいつは「必ず」俺様の元に戻ってくる」

「それまでに、最高の「ステージ」を用意しておくぜ!」

「頼むぜ、野郎ども!」

最も信頼する優秀な部下に、ウルティムスはニタリと笑って見せた。

窓の外はいつの間にか茜色に染まっており

「…ちゃんと戻ってこいよ……ルル」

沈みかける夕日に、ウルティムスはそう語りかけるのだった。

***

パチンッ!

「ブヒッ…!」

薄暗い部屋の中、鼻提灯の割れる音で目を覚したフルール。

ふかふかのベッドの上。

カーテンの隙間から漏れる夕陽が、眠たい目をこするフルールを優しく照らす。

「……ティム…」

フルールは寝起きのかすれた声で、最愛の番の名を口にするのだった…。

***
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