【完結】売れっ子アイドル、転生したら嫌われ子豚だった!~アイドル魂で子豚人生満喫中です~

赤井たまご

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第3章・アイドルの恋愛事情

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***

-バダク王国・闘技場-

ざわざわ…ざわざわ…

「…あい…どる…って、何だ?」
「よく分からないけど…戦争はしないのか?」
聖歌人ヒム様は「無国籍」になるってこと?」
「そんな…あり得ないわ…」
「でも、いつでも聖歌人ヒム様の歌声を聴けるって事だろう?」
「それなら……」

フルールの突然の「宣言」に、民は困惑を隠せず、辺りには不穏な空気が漂い始めた。

すると

ザリッ…

「うむ、よいではないか」

砂を蹴る乾いた足音と、艶を含んだ低い声が辺りに響き渡る。

声の主であるバロンが、毅然とした態度でステージ上に姿を現したのだった。

その瞬間

バダクの民は一斉にバロンに向かって頭を下げた。

「うむ、顔を上げよ」

バロンの威風堂々とした立ち振舞いに、フルールは尊敬の眼差しを向ける。

そんなフルールにバロンは優しく笑いかけ、フルールの前で片膝をついた。

その行動に、周囲は騒然とする。

バロンはソッ…と、フルールの手を優しく掴み

「我、バダク王国現国王、バロン・バダクは…」

聖歌人ヒムの「願い」を聞き入れると、今此処で「約束」しよう」

民の前で「約束」を誓うのだった。

決して取り消すことの出来ない環境での「誓い」に、フルールは目を見開く。

立ち上がったバロンは、民に向けて語りかけた。

「民よ!聖歌人ヒムの言う通り」
「後ろを見ていては、前は見えぬ」

「過去に囚われるの止めて、未来を見ようではないか!」

「その為にも!」

バロンの演説をみんなが固唾を呑んで聞いていた。

「まずは「友好の証」とし、我は「ベルヴァ」に赴こう!」

「ベルヴァの王よ、そなたに会える事を楽しみにしておるぞ!」

テレビの向こう側にいるウルティムスに、バロンは力強く訴えかけたのだった。

「ニハハハハハ!」と、子供のように大きな声で笑うバロンの姿に、民は自然と笑顔になる。

「あんな美人と番なんて、ベルヴァ王が羨ましいな…」
「ベルヴァ国王って、どんな人かしら?」
「確か、狼獣人だったよな?」
「ちょっと行ってみたいかも…」

不穏な空気を一瞬で変えてしまったバロンは、まさに「王国の太陽」だと、フルールは思うのだった。

「ベルヴァは、とっても素敵な国だよ!」
「いつでも遊びに来て!」

「勿論、マーレの民もね!」

フルールは愛らしい笑顔で、カメラにウインクする。

「さぁ、みんな!まだまだ全力で歌っちゃうよ!」

「もっと、もっと楽しんで行ってね!」

わぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

満天の星久がきらめき、月の光がフルールを照らすその時まで

フルールの「歌声」が、世界中の民の心を動かすのだった。

***

-マーレ王国-

「……上手く行きましたね」

ウィズダムはバロンの発言に「作戦が成功した」事を、ウルティムスと確認し合う。

「…あぁ…想像以上の収穫だ!」
「よくやったぞ!ルル!」

ウルティムスはテレビ越しの「番」に、称賛の言葉を述べ、満足気に微笑んだ。

しかし

「…あり得ぬ…実に、あり得ぬ…」

ソヌスは頭を抱え、怒りで体を震わせる。

「こんな放送は止めろ!」

「こんなのは、ソヌスの民は納得しない!」
「貴様の……ベルヴァの運命の番など!!!」

ソヌスはウルティムスに食って掛かるも

「民を説得するのが、あんた国王の仕事だろう」

ウルティムスは自分の二の腕を叩き、ニヤリと、笑った。

だが

「黙れ!黙れ!黙れぇぇぇぇ!!!」

聖歌人ヒムは、我のものだ!」

激情したソヌスは、ウルティムスに「攻撃魔法」を向ける。

「王!!!」
「国王!!!!」

ウィズダムとビクトリアが、悲痛な叫び声を上げるも

ドゴーンッ!!!

大きな衝撃が辺りに走り、一瞬にして爆風の嵐に呑み込まれる。


「…(…!…ティム…?)」

フルールは妙な胸騒ぎを感じ、青く晴れた空をソッ…と、見上げたのだった…。

***
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