【完結】売れっ子アイドル、転生したら嫌われ子豚だった!~アイドル魂で子豚人生満喫中です~

赤井たまご

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最終章・アイドルの幸せ

song.52

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***

-バダク王国・闘技場-

暗い夜空に明かりを灯すかのように、小さくもキラキラと輝く星々。

圧倒的な存在感を放つ満月の光は、辺りを明るく照らす。

「この歌は「番」のことを思って作りました…」

「…どうか、この歌が「彼」に届きますように…」

フルールの白い金色の髪は、まるで宝石を散りばめたかの様にキラキラと輝き揺れていた。

その姿はとても神秘的で、後に「月の女神」のようであったと、民は語る。

すると

しっとりとしたメロディが闘技場に流れだし、フルールはスゥー…と、息を吸い込む。

薄く開かれたフルールの瞳は、切なげに揺れていたのだった。

***

♪~♪♪~♪~♪

『-暗闇に浮かぶ「月」は まるで「君」のようだね?-
 -そう問いかけても 返ってくる「聲」はない-

 -野に咲く「花」は いつか君へと辿り着くだろうか?-
 -そう呟いても 答えてくれる「聲」はない-
 
 -それでも僕は 今日も唄う-

 -寂しさを 「勇気」に変えて-
 -愛おしいは 「涙」に変える-

 -流した涙に「方舟」を浮かべ -
 
 -「月」が浮かぶ空の向こう いつか漕ぎ出せると信じてる-

 -嵐は去り 虹が架かる-

 -伝う涙はそのままに いま「方舟」を漕ぎ出す-

 -「月」を探してる-

 -暗闇に浮かぶ「月」だけが 「花」を咲かすのだから-』

♪~♪♪~♪~♪……

***

フルールの切ない歌声にみなが心を奪われ、闘技場は静寂に包まれる。

次第に拍手と歓声の波が広がって行き、やがて割れんばかりの声援がフルールに送られた。

フルールの大きな瞳には涙が溜まるも

「みんな!!今日はありがとう!!」

「また、会おうね!!」

大きく手を降って、笑顔で声援に答えたのだった。

***

-マーレ王国・王宮-

「………」

「「「「「「「………………………………」」」」」」」

公共の電波を使って「自分へのラブソング」を披露するフルールに、ウルティムスは固まっていた。

お供たちはそんなウルティムスをジィ…と、願望と心配の混じった眼差しで見つめる。

すると

「…っ…っ…っ…////////」

顔がみるみるうちに真っ赤に染まり、やがて声にならない叫びをあげた。

咄嗟にウルティムスはその場にしゃがみ込み、体を震わせる。

「…此処で「それ」爆発させないで下さいね、気持ちは分かりますが」

見かねたウィズダムは、ウルティムスにそう問いかけるも
 
「……もう、した…のに、戻んねぇー…」

想像。。していた通りのウルティムスの返答に、ウィズダムは眉間を押さえた。

そんな主の姿に、ビクトリアをはじめ騎士達は「今夜」を考え、同情するのだった。

その後

「んふっ、おやおや…ベルヴァの王が、何とも情けないお姿で…」

ソヌスをイーリスの元へと送り届けたレオンが、ヌルッ…と、ウルティムスの「影」から姿を現わした。

「まぁ、仕方ありませんか…最近は「ご無沙汰」ですもんね?」
「すぐにお部屋に案内致しますので、どうぞ思う存分…」

「「発散」させて下さい、ご自分で!んふふふふふっ」

ニタニタと気持ちの悪い笑みを浮かべるレオンに、ウルティムスは殺意が沸く。

だが、一刻も早くこの「熱」を「解放」させたいウルティムスは

「…さっさと、連れてけ」

これ以上、部下達の前で醜態を晒す前に…と、弱々しい声でレオンに命令したのだった。

***

翌日

げっそりとしたウルティムスの姿に、マーレの従者達は驚愕する。

昨夜「欲」を「吐き出すだけ吐き出した」ウルティムスだが、全くスッキリ出来ず。

寧ろ「欲求不満」と「フルールに会いたい」という気持ちに「油」を注ぐ結果となり

「ウィズ!…バダクに向かう準備をしろ!!」

「………承知致しました」

ウィズダムは「憔悴した主の姿」を不憫に思い、大人しく命令に従ったのだった…。

***
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