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第七話(後半) 新たなる脅威
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「おっす、桐崎」
「おはよー、桐崎さん」
「……おはよう」
火乃華と燐は、登校のバスに乗ってきた直刃に挨拶をした。
「あれ? オメェ……」
火乃華が、驚いたように声を上げた。直刃に、白竜が付き添っている。正体を晒して大丈夫なのだろうか、と燐も思った。
[[心配無用だ。空間に〈サダメ〉による処置を施している。今はボクの姿はスグハとホノカとリンにしか見えないし、会話も聞かれない]]
「……そんなことができんのかよ。便利だな」
「白竜から、重要な話があるとのことだ。早い時間のほうがいいらしいので、連れてきた」
「おゥ……。何だ? あのハンマー女のことか?」
[[そうだ。先日のアヤメという〈修繕者〉狩りだが――昨晩、他の〈修繕者〉たちが始末した]]
「なっ……!」
火乃華がギョッとして白竜に詰め寄った。
「始末って……殺したのか!?」
直刃も、息を呑んで白竜を見つめている。
[[いや、違う。〈修繕者の原石〉を回収したんだ]]
火乃華が、ホッと息を吐いた。燐はまだ心臓がドキドキしているが、少しずつ落ち着いてきた。
「なんだ……物騒な言い方しやがって」
[[すまない。人間は邪魔者を排除するときに『殺す』という手段が選択肢に入るらしいな。ボクたちからすればそれは発想にないのだ]]
「……そりゃ人間が悪ィよ。こっちこそ疑って悪かったな」
火乃華が気まずそうに頭をかいた。
「それで、彼女は今どうしている?」
直刃が尋ねると、白竜は答えた。
[[〈修繕者の原石〉を失うと、自分が〈修繕者〉だったことに関する記憶が抹消される。今日からは普通の日常生活に戻るだろう。キミたちのことも、すべて忘れているはずだ]]
「……そうか。倒さなくて良くなったのは吉と捉えるか」
直刃は複雑な表情を抱えたまま俯き、火乃華は舌打ちをした。
「チッ……リベンジする前に片付けられちまったか。アイツとは、アタシが決着つけたかったな」
[[放置するわけにはいかなかった。チャンスがあったのですぐに対処したのだ]]
「分かってる。しょうがねェよ」
火乃華は歯痒そうに拳を握り締めている。
――勝てなかった相手に逃げられたみたいで、悔しいんだろな。
「しかしアイツは、何だって〈修繕者〉狩りなんてしてたんだ? 石を集めて、何がしたかったんだよ」
[[それについては、まだ完全には解明できていない。だが、伝えなければならない情報が二つある]]
「なんだ? それは」
[[一つは、アヤメの仲間。〈修繕者〉としてのパートナーだ。その者は取り逃がしてしまった。また、襲われる可能性があるので注意が必要だ]]
「……歴とした〈修繕者〉のペアだったということか。白竜のような、サポートする存在はいないのか?」
[[それも不明だ。心当たりがないわけではないが、まだそれは話せない]]
白竜は、言えないことがある場合は『言えない』と正直に言う。責めても仕方がない。
「そっか、他にも敵の〈修繕者〉がいたんだな」
そう言った火乃華の声は、少し弾んでいた。直刃と燐がジトーッと見る。
「なんだよ?」
「ホノっち、戦いたいと思ってるでしょ」
「悪ィか」
「いや? やる気満々って顔、分かりやすいなーって」
「まったくだ……喧嘩馬鹿め」
二人で言いたい放題言ってやったが、火乃華は気にしていない。
[[もう一つの問題だ。こちらの方が深刻度が高い]]
白竜が水晶玉を掲げると、以前のように空中に映像が映し出された。
灰色の亀裂――〈ホコロビ〉が、街の上空に無数に発生している光景だった。
「うわ……何これ、いっぱい……」
燐は思わず声を上げた。直刃も、信じられないという表情で映像を見つめている。
[[これは、予測イメージ映像だ。〈ホコロビ〉が同時多発的に発生し、〈修繕者〉たちが対処しきれなくなる。一日で百を超える〈ホコロビ〉が発生するという予測もある]]
「百!? そんなの、どうやって修繕すんだよ……」
[[〈ホコロビ〉は放置すれば膨らんでいき、〈ホロビ〉に至る。そうなれば、世界は崩壊する。この現象の名前は――〈ホロビノリュウ〉]]
「ホロビの、リュウ……」
火乃華と燐、直刃はそれぞれにその言葉を繰り返した。
[[ボクたちオーダードラゴンを統括する〈上役〉にも相談しているところだ。確証は持てないが近々この現象が発生する可能性がある。〈ホコロビ〉の発生頻度が上がっているのは、事実だ。キミたちも感じているだろう?]]
確かに、ここ一週間で既に五回出動していると火乃華が言っていた。増えているのは、間違いないようだ。
[[アヤメが〈修繕者〉狩りをしていたことと、関連があるのかもしれない。〈ホロビノリュウ〉対策は、スピードが命だ。当番ではなくとも、常にいつでも出動できるように構えてもらいたい。この街には、キミたち以外にも〈修繕者〉のペアがいる。危機的な状況になれば、皆で出動することになるだろう]]
「そいつらも、強ェんだろ。あのハンマー女を倒したってんだからな」
火乃華がニヤリと笑った。
[[ああ。それぞれに優れた〈修繕者〉だ。お互いの正体は明かさないため、会うことは避けるのが原則だが、緊急事態だ。そのときは協力して立ち向かってくれ]]
「……どちらにしろ、わたしも早く特殊性能を掴まなければならないな。相手が人間でないのなら、わたしも遠慮なく戦える」
「おゥ、相手が〈ハザマの存在〉なら、オメェの本領発揮だ」
「分かっている。偉そうに言うんじゃない」
[[頼もしい限りだ。だが、油断はするな。〈ホロビノリュウ〉が本当に発生したとき、どうなるか……ボクにも分からない]]
「上等だ。来るなら来やがれ」
火乃華と直刃がそれぞれに決意を固めるのを、燐は見守った。
自分にできることは少ないが、この二人ならきっと大丈夫。火乃華が、やる気に満ちた顔で燐に向かって頷いた。
「おはよー、桐崎さん」
「……おはよう」
火乃華と燐は、登校のバスに乗ってきた直刃に挨拶をした。
「あれ? オメェ……」
火乃華が、驚いたように声を上げた。直刃に、白竜が付き添っている。正体を晒して大丈夫なのだろうか、と燐も思った。
[[心配無用だ。空間に〈サダメ〉による処置を施している。今はボクの姿はスグハとホノカとリンにしか見えないし、会話も聞かれない]]
「……そんなことができんのかよ。便利だな」
「白竜から、重要な話があるとのことだ。早い時間のほうがいいらしいので、連れてきた」
「おゥ……。何だ? あのハンマー女のことか?」
[[そうだ。先日のアヤメという〈修繕者〉狩りだが――昨晩、他の〈修繕者〉たちが始末した]]
「なっ……!」
火乃華がギョッとして白竜に詰め寄った。
「始末って……殺したのか!?」
直刃も、息を呑んで白竜を見つめている。
[[いや、違う。〈修繕者の原石〉を回収したんだ]]
火乃華が、ホッと息を吐いた。燐はまだ心臓がドキドキしているが、少しずつ落ち着いてきた。
「なんだ……物騒な言い方しやがって」
[[すまない。人間は邪魔者を排除するときに『殺す』という手段が選択肢に入るらしいな。ボクたちからすればそれは発想にないのだ]]
「……そりゃ人間が悪ィよ。こっちこそ疑って悪かったな」
火乃華が気まずそうに頭をかいた。
「それで、彼女は今どうしている?」
直刃が尋ねると、白竜は答えた。
[[〈修繕者の原石〉を失うと、自分が〈修繕者〉だったことに関する記憶が抹消される。今日からは普通の日常生活に戻るだろう。キミたちのことも、すべて忘れているはずだ]]
「……そうか。倒さなくて良くなったのは吉と捉えるか」
直刃は複雑な表情を抱えたまま俯き、火乃華は舌打ちをした。
「チッ……リベンジする前に片付けられちまったか。アイツとは、アタシが決着つけたかったな」
[[放置するわけにはいかなかった。チャンスがあったのですぐに対処したのだ]]
「分かってる。しょうがねェよ」
火乃華は歯痒そうに拳を握り締めている。
――勝てなかった相手に逃げられたみたいで、悔しいんだろな。
「しかしアイツは、何だって〈修繕者〉狩りなんてしてたんだ? 石を集めて、何がしたかったんだよ」
[[それについては、まだ完全には解明できていない。だが、伝えなければならない情報が二つある]]
「なんだ? それは」
[[一つは、アヤメの仲間。〈修繕者〉としてのパートナーだ。その者は取り逃がしてしまった。また、襲われる可能性があるので注意が必要だ]]
「……歴とした〈修繕者〉のペアだったということか。白竜のような、サポートする存在はいないのか?」
[[それも不明だ。心当たりがないわけではないが、まだそれは話せない]]
白竜は、言えないことがある場合は『言えない』と正直に言う。責めても仕方がない。
「そっか、他にも敵の〈修繕者〉がいたんだな」
そう言った火乃華の声は、少し弾んでいた。直刃と燐がジトーッと見る。
「なんだよ?」
「ホノっち、戦いたいと思ってるでしょ」
「悪ィか」
「いや? やる気満々って顔、分かりやすいなーって」
「まったくだ……喧嘩馬鹿め」
二人で言いたい放題言ってやったが、火乃華は気にしていない。
[[もう一つの問題だ。こちらの方が深刻度が高い]]
白竜が水晶玉を掲げると、以前のように空中に映像が映し出された。
灰色の亀裂――〈ホコロビ〉が、街の上空に無数に発生している光景だった。
「うわ……何これ、いっぱい……」
燐は思わず声を上げた。直刃も、信じられないという表情で映像を見つめている。
[[これは、予測イメージ映像だ。〈ホコロビ〉が同時多発的に発生し、〈修繕者〉たちが対処しきれなくなる。一日で百を超える〈ホコロビ〉が発生するという予測もある]]
「百!? そんなの、どうやって修繕すんだよ……」
[[〈ホコロビ〉は放置すれば膨らんでいき、〈ホロビ〉に至る。そうなれば、世界は崩壊する。この現象の名前は――〈ホロビノリュウ〉]]
「ホロビの、リュウ……」
火乃華と燐、直刃はそれぞれにその言葉を繰り返した。
[[ボクたちオーダードラゴンを統括する〈上役〉にも相談しているところだ。確証は持てないが近々この現象が発生する可能性がある。〈ホコロビ〉の発生頻度が上がっているのは、事実だ。キミたちも感じているだろう?]]
確かに、ここ一週間で既に五回出動していると火乃華が言っていた。増えているのは、間違いないようだ。
[[アヤメが〈修繕者〉狩りをしていたことと、関連があるのかもしれない。〈ホロビノリュウ〉対策は、スピードが命だ。当番ではなくとも、常にいつでも出動できるように構えてもらいたい。この街には、キミたち以外にも〈修繕者〉のペアがいる。危機的な状況になれば、皆で出動することになるだろう]]
「そいつらも、強ェんだろ。あのハンマー女を倒したってんだからな」
火乃華がニヤリと笑った。
[[ああ。それぞれに優れた〈修繕者〉だ。お互いの正体は明かさないため、会うことは避けるのが原則だが、緊急事態だ。そのときは協力して立ち向かってくれ]]
「……どちらにしろ、わたしも早く特殊性能を掴まなければならないな。相手が人間でないのなら、わたしも遠慮なく戦える」
「おゥ、相手が〈ハザマの存在〉なら、オメェの本領発揮だ」
「分かっている。偉そうに言うんじゃない」
[[頼もしい限りだ。だが、油断はするな。〈ホロビノリュウ〉が本当に発生したとき、どうなるか……ボクにも分からない]]
「上等だ。来るなら来やがれ」
火乃華と直刃がそれぞれに決意を固めるのを、燐は見守った。
自分にできることは少ないが、この二人ならきっと大丈夫。火乃華が、やる気に満ちた顔で燐に向かって頷いた。
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