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門入り
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▼△▼△▼△▼△
自分の仕事が出来る場所は当初の予定よりは遠くなく、首都から少し離れた政令指定都市にあった
その業種一本に絞り、面接を受けて行く
数々のお祈りを乗り越え、遂に採用
…学業でもないのに採用通知が“サクラ サク”なのは気にはなったが本社に確認するとちゃんと内定が出ているとの事なので大丈夫であろう
すぐさま最寄り駅近くに拠点を構え、不動産屋とスマホで空き家を検索するも、新社会人共が多数いる為一向に捗らないので気分転換をする事にした
こういう時は散歩に限る
受験勉強や先の就活においても効果を発揮したので栄治なりの験担ぎだ
あてもなく知らない街をぷらぷらと歩く
雑貨屋を見つけてはひやかし
露天を見つければ腹を慰める
どれくらい歩いただろうか?
ふと、見つけた木造アパートに強く惹かれ
吸い寄せられるかのように足を向ける
吹けば飛ぶようなとはよく言った物で、見れば見るほどにボロい。うんボロい(確認)
恐らくこのアパートの持ち主は次男で、何処からか転がり込んできた長男と身を寄せ合って倒壊の危機に震えていると予想される
苦手な物は狼に違いない、俺だって怖い
そんな失礼な事を考えているとアパートの敷地のすぐ前まで来ていた
庭、というよりも共同の物干しスペースだろうか
アパートの前には車が5台ほど入るスペースがあり、物干し竿がそこを我が物顔で陣取っている
その姿は己の職務を全うするのだと言わんばかりに真っ直ぐだった
アパートと庭を囲むように小さな塀があり、入り口とわかりやすくする為であろう門のようなものが向こうに見える
「門って言うよりは鳥居っぽいけど」
誰に言うわけでもなく独りごちているのに気が付き、調子狂うな…と頭の中で呟く
「んにゃ、その両方さ」
そんな時、いきなり背後から声がしたので
驚いて振り向いた
「住む所を捜しているのかい?」
振り向いた視線の少し下から、見るからに怪しいお婆さんが栄治に話しかけてくる
「はい、実はこのアパートが気になって…」
「おやそうかい」
愉快そうに笑うお婆さんと
微笑み返しながらも混乱している栄治である
栄治は不動産で探す時も、ネットでだって間取りやら立地やら施設設備などを天秤にかけて吟味していた
その時は情報を見ただけで即弾いていたであろう物件のはずなのに
今はこのボロアパートを完全に受け入れてしまっている
この物件がひどく魅力的に見えるのである
「一番下の右端っこが空いてる、扉が違うからすぐわかるはずさ」
「え?」
「察しが悪いねぇ、私ゃこのオンボロアパートの大家だよ!そうさね…テン婆さんとでも呼びな!」
「は、はぁ…」
「家賃は4万ぽっきり電気と水道は2カ月事に請求がいくからね」
「へ??」
あれよあれよと説明が進み
「間取りは6畳半から、りふぉーむは好きにしな、はいこれが鍵」
「あ、はい。」
自然な流れで栄治は鍵を受け取った
受け取ってしまった
「ほい!これにて契約は成った、久しく見ない自由な者よ、逞しき楔を持つ青年よ、其方の旅路に幸多からん事を!」
そう一息に言い切ったあと、夕闇に消えて行くお婆さんを見送った栄治は
大家さん…お婆さんだから次女かな?
などと少々ズレた感想を持つつ
このどう見ても訳有りなボロアパートに移り住み
生活準備を整えた後
案の定数奇な運命を辿る事となる。
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自分の仕事が出来る場所は当初の予定よりは遠くなく、首都から少し離れた政令指定都市にあった
その業種一本に絞り、面接を受けて行く
数々のお祈りを乗り越え、遂に採用
…学業でもないのに採用通知が“サクラ サク”なのは気にはなったが本社に確認するとちゃんと内定が出ているとの事なので大丈夫であろう
すぐさま最寄り駅近くに拠点を構え、不動産屋とスマホで空き家を検索するも、新社会人共が多数いる為一向に捗らないので気分転換をする事にした
こういう時は散歩に限る
受験勉強や先の就活においても効果を発揮したので栄治なりの験担ぎだ
あてもなく知らない街をぷらぷらと歩く
雑貨屋を見つけてはひやかし
露天を見つければ腹を慰める
どれくらい歩いただろうか?
ふと、見つけた木造アパートに強く惹かれ
吸い寄せられるかのように足を向ける
吹けば飛ぶようなとはよく言った物で、見れば見るほどにボロい。うんボロい(確認)
恐らくこのアパートの持ち主は次男で、何処からか転がり込んできた長男と身を寄せ合って倒壊の危機に震えていると予想される
苦手な物は狼に違いない、俺だって怖い
そんな失礼な事を考えているとアパートの敷地のすぐ前まで来ていた
庭、というよりも共同の物干しスペースだろうか
アパートの前には車が5台ほど入るスペースがあり、物干し竿がそこを我が物顔で陣取っている
その姿は己の職務を全うするのだと言わんばかりに真っ直ぐだった
アパートと庭を囲むように小さな塀があり、入り口とわかりやすくする為であろう門のようなものが向こうに見える
「門って言うよりは鳥居っぽいけど」
誰に言うわけでもなく独りごちているのに気が付き、調子狂うな…と頭の中で呟く
「んにゃ、その両方さ」
そんな時、いきなり背後から声がしたので
驚いて振り向いた
「住む所を捜しているのかい?」
振り向いた視線の少し下から、見るからに怪しいお婆さんが栄治に話しかけてくる
「はい、実はこのアパートが気になって…」
「おやそうかい」
愉快そうに笑うお婆さんと
微笑み返しながらも混乱している栄治である
栄治は不動産で探す時も、ネットでだって間取りやら立地やら施設設備などを天秤にかけて吟味していた
その時は情報を見ただけで即弾いていたであろう物件のはずなのに
今はこのボロアパートを完全に受け入れてしまっている
この物件がひどく魅力的に見えるのである
「一番下の右端っこが空いてる、扉が違うからすぐわかるはずさ」
「え?」
「察しが悪いねぇ、私ゃこのオンボロアパートの大家だよ!そうさね…テン婆さんとでも呼びな!」
「は、はぁ…」
「家賃は4万ぽっきり電気と水道は2カ月事に請求がいくからね」
「へ??」
あれよあれよと説明が進み
「間取りは6畳半から、りふぉーむは好きにしな、はいこれが鍵」
「あ、はい。」
自然な流れで栄治は鍵を受け取った
受け取ってしまった
「ほい!これにて契約は成った、久しく見ない自由な者よ、逞しき楔を持つ青年よ、其方の旅路に幸多からん事を!」
そう一息に言い切ったあと、夕闇に消えて行くお婆さんを見送った栄治は
大家さん…お婆さんだから次女かな?
などと少々ズレた感想を持つつ
このどう見ても訳有りなボロアパートに移り住み
生活準備を整えた後
案の定数奇な運命を辿る事となる。
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