異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

文字の大きさ
17 / 76
プロローグ

札束ビンタでお買い物

しおりを挟む
 サッカートークで盛り上がっていたら、気がつけば日が落ち始めていた。
 今日は時間があれば買い物をする予定だったけど、ガイアは日没前にほとんどの店が閉まるらしい。
 開いてるのは酒場や宿の飯屋くらい。
 まぁ、当然だなって思う。
 日が落ちると街は一気に暗くなる。
 一応魔力を流すと明るくなる魔石を利用した電球のような物が一般家庭レベルで普及しているけど、明かりがあるのはあくまで室内の話。
 屋外には明かりは当然ない。
 外に設置しても、誰が魔力を流してくれるんだって話だよね。
 というわけで、買い物は明日にすることにして夕食をとることにした。
 先に厩舎に行って百段たちに果物をあげてから、宿の食堂スペースに向かった。

 食堂に入ると、魔女と聖女とモンスターの異質トリオは注目を浴びまくった。
 さすがに居辛くなったので、食事を部屋に持ってきてもらうことにした。
「いや~、参ったね~」
「あんなに注目されると話もできないねー」
「まぁ、食事を部屋に持ってきてくれたし、逆に良かったんじゃない?」
「そうかもね~」
「明日は買い物をしたいんだけどさ。
 ジズー、今日の狩りのお金も使わせてもらってもいい?」
「え、もちろんいいよ?
 てか俺お金なんて使えないし、澪たちに全部使ってもらったほうがいいよ」
「ありがとう、ほんと助かるよ。
 あ、ちなみにジズーは必要な物とか欲しい物ないの?」
「必要な物に欲しい物かぁ。
 うーん……。
 あ、そうだ。
 俺サイズのボディバッグとかショルダーバッグのような物がほしいんだけど、オーダーメイドとかって時間かかるかな?」
「オーダーメイドかー、どうだろうね。
 明日店で聞いてみよう。
 何か持ち歩きたい物とかあるの?」
「ほら、今は雫のリュックに入れてもらってるけど、女神像は俺が持ち歩けるならそのほうがいいなって。
 あとはまぁ、バッグはあると便利だろうし?」
「女神像か、それもそうだね。
 他にも何か欲しい物あったらその都度言ってね」
「わかったー」
「私たちは何が必要かな~」
 街を出たら買い物なんてできない。
 買い忘れとかないように、澪と雫はご飯を食べながら買い物リストを作っていった。



 翌日、俺たちはこの街で一番大きい店に来ている。
 いろいろな物を取り扱っているらしく、ここでまとめ買いをすればお金がおつりでかさばらずに済む。
 まずは俺のボディバッグのオーダーメイドを頼んだ。
 急ぎなので今日中でと頼んだらムリだと言われたけど、金貨十枚依頼料として渡したら喜んで受けてくれた。
 それから澪と雫は服を見始めた。
 女性の服選びは長いって前世で聞いたから、俺は適当に周りを見てみる。
 いろんな商品があるけど、全体的にめっちゃ高いなって思った。
 そういえば日本と比べると物価がかなり違うって言ってたっけ。
 この店の値段が普通なら、かなり物価が高いなぁ。
 まぁ、物が溢れる現代とは違うんだし、当然か。

 うーん、猫だと買い物なんてできないから暇だなぁ。
 暇だと眠くなる、ふあっ。
 昨日は夜、薫子さんにサッカーのオフサイドについて説明してちょっと夜更かしして睡眠不足だ。
 昨日のサッカートークの様子を神界で見ていた薫子さん。
 サッカーに興味を持ったらしく、まずはルールを教えるところから。
 俺の説明が下手なのかもしれないけど、何も知らない人にオフサイドの説明をするのは難しかった。
 最終的にはわかったって言ってたけど、ほんとにちゃんと理解したのかなぁ。
 あやしい。

 しばらくすると、澪と雫は馬車を見ていた。
 馬車については今朝、事前に百段たちに確認をした。
 百段たちに馬車をひいてもらうことは可能なのか聞くと、問題ないとのこと。
 むしろ、大きめの馬車に人と荷を一杯積んでも百段1頭で余裕だと言っていた。
 頼もしいなと思ったけど、桜と椿の前だし強がってる可能性もある。
 ちゃんと三頭でひいてもらうことにした。
 百段は不満そうだったけど。
 馬車を買うから、野営は森の中ではなく街道脇の森の入口ですることにした。
 馬車で森の中には行けないからね。
 森の外で野営をするので人の目につきやすくなるけど、明日髪を染めるし服も普通の旅人っぽい物にするので大丈夫かなという判断だ。
 いざとなったら馬車を盾にして戦うこともできるしね。
 それにしても……。
 澪と雫が馬車コーナーで店員さんとすごく話し込んでる。
 まだまだ時間かかりそうだなぁ。

 特に見るものとかないので、店の端っこでおとなしく座っていたら店員さんが声をかけてきた。
「従魔様、よろしければこちらをお使い下さい」
 そう言って俺にクッションを差し出してきた。
 え、なに?
 俺クッション使っていいの?
 え、ていうかガイアで初めて人間に優しくされた!
 もちろん澪と雫以外で。
 従魔様とか呼ばれちゃったし。
 何この人、超いい人!
 かわいいし、俺好きになっちゃうかも!
 てか好き!
 しゃべるわけにもいかないから、「にゃー」とだけ鳴いてクッションの上で丸まった。
 すると店員さんは行ってしまったけど、俺はしばらくその店員さんを目で追い続けた。
 モンスター扱いしかされなくて絶望しかけてたけど、こういう人もいるんだなぁ。
 夢の飼い猫ライフも、もしかしたら希望が出てきたかも!
 
 昼頃、一旦お昼ご飯にすることにした。
 どこか適当な飲食店に――と思ったが、開いている飲食店がなかなかない。
 澪曰く、ニーゲン王国は朝と夜の一日二食が一般的らしい。
 なので飲食店はほとんど開いてない。
 というわけで、宿の食堂で食べることにした。
「結局馬車のところで店員さんとずっと話してたけど、何か問題でもあったの?」
「ううん、そういうんじゃないよ。
 ほんとなら馬車もオーダーメイドにしたかったんだけど、私たち時間がないからさ。
 既成品を少しいじってもらおうと思ってね」
「なるほど。
 既成品って使いにくいの?」
「んー、どうなんだろ?
 ただ私たちは商人とかみたいに、荷物をたくさん運ぶのが目的じゃないからね。
 私たちにとって使いやすく、あとは百段たちの負担を減らすような仕様にしてもらうの」
「急ぎのオーダーメイドとか手直しとかなのに、よくやってもらえたね。
 たまたまそれ系の仕事がはいってなかったのかな?」
「そうじゃないよ。
 紙幣じゃないからちょっと違うけど、いわゆる札束ビンタでお願いしたって感じ?
 こんなブルジョワな買い物初めてだよ。
 ちょっと癖になりそうだし!」
「あー、なるほどねー。
 札束ビンタかぁ……、確かに庶民の憧れではあるね」
「ふと思ったんだけど、ジズーちゃんは服いらないの~?
 日本でも服着てる猫ちゃん普通にいるよ~?」
「えっ?
 考えたこともなかった……。
 うーん、でも動きにくそうだし別にいいかなー」
「えぇぇ~?
 ジズーちゃんの服考えたかったんだけどな~……、残念」
 あっぶねー、着せ替え人形にされるところだったか!
「この後も買い物だよね?」
「うん、あとは旅グッズとか消耗品とか細々したものかなー」
「そっかそっか、じゃあそれも二人に任せてもいい?
 百段たち、ずっと厩舎で退屈だろうし厩舎にいようかなーって」
「おっけー。
 じゃあ、欲しい物とか思いついたら店に来てねー」

 ご飯を食べた後、厩舎へと向かう。
 暇そうにしてるだろうなぁと思いながら厩舎に入ると、百段はイチャついていた。
 桜と椿とイチャついていた。
 まじかー、まじかー。
 普段すましてるくせにデレデレじゃんか。
 うわー、見たくなかったわー。
 リア充――いや、リア獣め。
 周りの馬も心なしかイラついてる感じだね。
 まぁ、すっかり三頭の世界に入ってる彼らは気づく気配もないけど。
 はぁ……。
 俺は気づかれる前にそっと厩舎を出た。

 さーて、何しようかな。
 いきなりやることなくなっちゃった。
 うーん。
 猫の俺にやることなんてないな……。
 寝るか!
 宿に戻って適当にゴロゴロしよう!
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。 だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。 それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。 世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。 快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。 ●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...