異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第二章 野望のはじまり

聖女の日本滞在

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 私の名前は佐藤雫。
 一度ガイアという星に強制召喚されたことがある日本人だ。
 今は日本に戻ってきている。
 とはいえ、またすぐにガイアに行く予定だ。
 そもそも私は日本に戻らずガイアで生きてくと、散々悩んだ末に決めていた。
 澪ちゃんもそうだった。
 でも、世界樹で女神様……薫子ちゃんに「できる範囲であれば、あなた方の願いを叶えたい」と言われた。
 願いと言われてもすぐには思いつかないな~と思っていたら、澪ちゃんが私と薫子ちゃんを少し離れた所に引っ張っていった。
 そして澪ちゃんは薫子ちゃんにこう言った。
「日本に戻った私たちを、もう一度ガイアに呼ぶことはできますか?」
 私も澪ちゃんも、日本には帰らずここに残る、そう決意していた。
 だからなんでこんなこと聞いてるんだろうと思った。
 それが表情に出てたのか、澪ちゃんが説明してくれた。
 まず一つ目、私たちがガイアに来て三ヶ月くらい経ってて、日本では私たちは三ヶ月行方不明ってことになる。
 家族や友達とか心配してくれてる人もいるだろうから、まず安心させたい。
 そして、もう二度と会えなくなることをちゃんと伝えてからガイアに戻る。
 要するに、身辺整理をするために一度日本へ戻るということだ。
 二つ目、ガイアで少しでも快適な生活を送るために、地球の技術や情報や物などをガイアに持ち込みたい。
 澪ちゃんとジズーちゃんとの逃避行の旅は、正直楽しかった。
 だけど、あれをもう一度やれと言われたらNOと言うと思う。
 やっぱり平和で快適な生活が理想だ。
 そのための技術や情報や物を持ち込むために一度日本へ戻る。
 三つ目、ある意味異常な状況下と言えるガイアでの逃避行中に決意した残るという意志。
 これが日本に戻った後にも揺らがないかどうかを確かめる。
 ここで揺らぐようなら、ガイアに残った場合きっと後悔することになると思うって澪ちゃんは言う。
 なるほどと思った。
 日本に戻って元の生活に戻って、それでもガイアに戻りたいかどうか。
 さすがは澪ちゃんだなって思う。
 ガイアでもすごく澪ちゃんに助けられたし、ほんと頭が上がらない。
 せっかく澪ちゃんが用意してくれたこの時間、しっかりと考えようと思った。

 日本に戻ってきてから数日、すでに私はガイアに戻ることしか頭になかった。
 日本では、私たちの失踪は事件としてマスコミに取り上げられていた。
 行方不明になった六人全員が佐藤という名字で全員が二十二歳。
 いろんな憶測が飛んだようだ。
 そして三ヶ月後に二人だけが見つかる。
 マスコミは食いついた。
 私たちは常にマスコミに追われ、囲まれた。
 すごいねあれは、リンチみたいなものじゃん。
 あの人たちの血は何色なんだろう。
 それも三日ほどですっかりなくなった。
 澪ちゃんがキレたからだ。
 キレた澪ちゃんは、私たちに向けるマイクやカメラやスマホを雷魔法で壊していった。
 魔法なんて存在しないという考えが当たり前の日本では、澪ちゃんの仕業だなんて誰も思わない。
 でも、不気味には思うし、特にカメラは高い物だ。
 私たちの周りで「電気で電子機器が壊れる現象」が二日も続くと、マスコミは周りから消えた。
 私はその時、地球でも魔法が使えることに驚いたけど。
 今ではたまに私たちにスマホを向ける一般人がいるくらいだけど、それもその都度澪ちゃんがスマホを壊す。
 一般人のスマホまでは壊さなくてもいいんじゃないかなと思ったけど、澪ちゃん曰く「無自覚の悪意ほど質の悪いものはない」らしい。
 なんとなくわかる気もする。
 警察にもいろいろ聞かれた。
 それ自体はしょうがないことだとは思う。
 私たちが犯人かのような扱いも受けたけど、可能性としてはないとは言えないのも理解はできるから我慢はする。
 だけど、気分がいいものではないのは確かだ。
 早くガイアに戻りたい。

 家族にはガイアに召喚されたことと、ガイアで生きていきたいということだけを伝えた。
 当然信じてもらえる話ではなかったけど、魔法を見せて信じさせた。
 海外移住するようなものだと言って最終的には納得させた。
 お父さんお母さん、今までありがとうございました。
 私はジズーちゃんの元へ向かいます。
 猫だけど……。
 友人にも海外移住ってことでお別れをした。
 会社にも辞表を出した。
 これで身辺整理は無事済ませることができた。

 残るはガイアに何を持っていくか。
 薫子ちゃんが言うには、私たちを転移させるにはたくさんの神気が必要で、日本に戻した後神気の回復に一ヶ月かかるとのこと。
 一ヶ月後に迎えに来るねと言っていた。
 タイムリミットは一ヶ月、何を持っていくか澪ちゃんとすっごく考えた。
 そして思いつく有用そうなものを時間の許す限り集めた。
 もう二度と日本に戻ることはないから、貯金も全部つぎ込んだ。
 澪ちゃんはサッカーのルールブックも持っていくみたいだ。
 チャンスがあれば、ガイアでサッカーを広めたいらしい。
 なんて志が高いんだろう!
 私はサッカーボールを持っていくぐらいしか思いつかなかった。
 ボールは友達だから連れて行かないとだからね!
 そういえばジズーちゃんは、ガイアでサッカーチームを作ることが夢だと言っていたっけ。
 コーチの教本的なものも持っていこうかな。



 そして一ヶ月経った。
 今私と澪ちゃんは、夢の中で薫子ちゃんと会っている。
「これが最後の確認だよ。
 二人とも、ガイアに行く?ここに残る?」
「「早く連れて行ってよー!」」
「ええぇぇ?」
 薫子ちゃんはすごく驚いていた。
 でもしょうがないよ。
 今の私たちにとって、日本はすごく住みにくい所だ。
 さっさとガイアに戻りたい。

 翌日、私たちは薫子ちゃんの転移魔法でガイアへと戻ってきた。
 まず目に入ってきたのがとても大きな世界樹。
 私たちはここを目指して旅をした。
 すごく懐かしい。
 そして視線を移すと馬車があった。
 私たちが使っていた馬車だ。
 放置されている感じはなく、今も誰かが使っているような気がする。
 やっぱりジズーちゃんは世界樹に残ったままだった。
 私たちを日本に戻した後、ジズーちゃんはどこかに行ってしまうのではないか。
 薫子ちゃんはそう心配していたけど、私たちは全く心配してなかった。
 あの人はきっと、薫子ちゃんを世界樹で待つんだろうなって思った。
 それだけの絆が二人にはあると思う。
 ジズーちゃん、私たちはあなたが人の姿になれることを知っているんだよ?
 温泉で薫子ちゃんと入ってるところをたまたま見ちゃったからね。
 私たちはジズーちゃんから、人の姿になれることを教えてもらっていない。
 たまたま言い忘れていたのか、秘密を打ち明ける相手にまだなれていないのかはわからない。
 でも、いつかジズーちゃんから教えてもらえるようになりたい。
 そしてその時は……、女の戦いが始まっちゃうのかも?
 そうなっちゃったらがんばるぞ~!
 気合を入れていると、後ろから何かが近づいてくる気配がした。
 慌てて振り返ると、そこには百段ちゃんと桜ちゃんと椿ちゃんがいた。
 あなたたちも残っていたんだね。
 また会えてほんとに嬉しいな~。
 特に私に懐いてくれていた椿ちゃんが私のもとに来る。
 思わず私は椿ちゃんに抱きついた。
 横を見ると澪ちゃんも桜ちゃんに抱きついている。
 そして百段ちゃんが慈愛溢れるような目で桜ちゃんと椿ちゃんを見てる気がする。
 相変わらず仲は良さそうだ。
 百段ちゃんが馬車の方を見る。
 ジズーちゃんは馬車の中にいる、百段ちゃんがそう言っている気がする。
 そっか、あそこにいるんだね。
 じゃあそろそろジズーちゃんとご対面といきますか!

 ただいま、ガイア。
 そして。
 ただいま、ジズーちゃん。
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