異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第二章 野望のはじまり

ボールは友達

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「ジズー!ジズー!
 見て欲しいのだ!」
 昼食後、なんとなく畑を見て回っていた俺にバハムルが興奮した様子で話しかけてきた。
「どしたの?」
「そこで見てて欲しいのだ!
 いくぞ!
 えいっ!」
 バハムルが気合を入れると、パーッとバハムルが光ったかと思うと、六歳ぐらいの人の姿になっていた。
「おおおお!
 バハムルなんだよね?
 とうとう人化できたんだね!」
「そうなのだ!
 ついにボクはやったぞ!」
「おめでとう!
 がんばったな!」
「うん、がんばったのだ!
 これでボクも大人に一歩近づいたぞ!」
 そこで俺はふと思った。
 これは時が来たんじゃないか、と。
 好奇心旺盛で、異世界のことに興味津々。
 そんなバハムルが人の姿になったのなら、サッカーを教えてみるべき時じゃないか?
 バハムルがサッカーを始めたら、バハムルの相手をするためにドラゴンスリートップもサッカーを覚えるはず。
 バハムルたちがサッカーを気に入ったら、俺たち異世界組とも一緒にサッカーで遊ぶようにもなる。
 そうなると、当然薫子さんだって一緒にサッカーをすると思う。
 みんながサッカーで遊んでるのを見たら、なんだかんだで寂しがり屋なフランも絶対に加わってくるだろう。
 これはサッカー普及への第一歩となるはずだ。
「ねえバハムル。
 バハムルが人化できるようになったら教えようと思ってた異世界の遊びがあるんだけど、やってみない?」
「異世界の遊び!?
 やりたいのだ!」
「だよな!
 じゃあちょっと待ってね。
 澪~!雫~!ちょっと来てもらえないかな?」
「なになにどうしたの?」
「な~に~?」
「まずは、バハムルが人化の魔法に成功しました!」
「え?あ、この子バハムルくんなの?」
「かわいいね~!
 バハムルちゃんなんだ~」
「うん、ボクだぞ!」
「で、無事、人の姿になることができたバハムルに、俺はサッカーを教えてみたいと思います!
 一緒にお願いしていい?
 俺猫の体だからうまく伝わんないかもしれないから」
「あー、なるほど、おっけー」
「もちもち。
 待ってて、サッカーボール持ってくるよ~」
「ありがとー」
「そっかー、いよいよ普及への第一歩ってことね」
「うん、今こそ好機!」
「なあなあ!
 サッカーっていう遊びなのか?
 ショーギとは違うんだよな?」
「うん、将棋と違って体を動かす系の遊びだよ。
 俺も澪も雫も、異世界にいる時に一番好きな遊びがサッカー!」
「おおー!そうなのか!
 すごく楽しみだぞ!」
「おまたせ~、持ってきたよ~」
「その丸いのを使って遊ぶのか?」
「うん、これはボールっていって、サッカーをする時に使うボールだからサッカーボールっていうんだよ」
 まずは手を使ってはいけないというルールだけ教えて、リフティングや四人でパス回し、一対一でボールの奪い合いなんかで遊んでみた。
 バハムルはすごく楽しそうに遊んでくれた。

 翌日、午前の畑の世話が終わると、バハムルがサッカーボールを持ち出して、遊ぼうと言ってきた。
 薫子さんも興味を持ったので一緒に遊んだ。
 ここで薫子さんのセンスの良さが炸裂。
 俺たちは基本的に、身体強化の魔法を受けていたり、英雄継承の儀を受けていたり、ドラゴンだったりと、基本的に身体能力は高い。
 でも薫子さんはそれに加え、ボールの扱い方とか蹴り方や受け方等がとてもうまかった。
 俺も澪も雫もサッカーが大好きだけど、観る専だったので、ただの素人だ。
 上手さで言ったら、すでに俺たちよりもバハムルのほうが上手い。
 そのバハムルよりも薫子さんのほうがすでに上手い。
 別に異世界でサッカーで無双したかったわけじゃないからいいんだけど、やっぱりちょっと悔しい。
 遊んでいたら、今日はクリスとレオとロナも加わってきた。
 バハムルと一緒に遊ぶために自分たちも知っておく必要があるとのこと。
 この流れは予想通りだった。
 やはりこのスリートップはサッカーをする運命にあるってことだろう。
 きっとこの三人もサッカーに夢中になる……はずだ。
 人数も増えたので、今日は四対四もやった。
 余った木材でゴールポストを作ってPK戦もやってみた。
 俺はキーパーをやってみたけど、みんなのシュートが強すぎてびびったよ。
 地球のトップアスリートよりも身体能力が高いから、普通のサッカーボールを使うと、シュートに当たると一般人は死んでしまうかもしれないなぁ。
 ボールに関してはちょっと考える必要がありそうだ。
 地球だと、ゴールの右上もしくは左上のギリギリを狙うとキーパー関係なくほぼゴールになることがほとんどだけど、ガイアは違う。
 どんなにエグいコースを狙っても逆を突いても、身体能力が勝る。
 これに関してもちょっと考えないとだめそうだ。
 もしかしたらキーパーなしぐらいのほうがガイアではいいのかも。
 ちなみにフランも誘ったけど、興味ないから寝ると言って断られた。

 また翌日、みんなで四対四をしていたらフランが来た。
 寂しくなったらしい。
 これもまぁ、予想通りだった。
 俺を除いた八人で四対四をやってもらって、俺はゴールを守る役をした。
 フランはなんだかんだで昨日一昨日と俺たちを見ていたようで、すでに要領を得ていた。
 そしてなんだかんだで、フランも楽しそうだ。
 うん、よかった。

 それから一週間。
 バハムルたちのサッカー熱は上がる一方だ。
 なので、サッカーのちゃんとしたルールを教えて、点を競い合うスポーツだということを教えた。
 そして、俺たちはサッカーをガイアに広めようとしてることをみんなに伝えた。
「こんな熱くなれるものは絶対ここでも広めるべきだし!
 ていうか試合ってのをやってみたいし!
 広めるしかないっしょ!」
 すっかりサッカーに染まったフランが熱くなっている。
「俺も試合でシュートを決めてーっす!
 俺がガイアで一番シュート決めるっす!」
 クリスはすでにガイアのナンバーワンを目指しているようだ。
「みんなも乗り気みたいでよかったよ。
 で、ガイアで広めるにはまずどうすればいいかってことなんだけど。
 なにはともあれ、知ってもらわないことにはどうしようもないよね?」
「まぁ、そうだよね~」
「森から近いし、ケモッセオの街の子供にまずは広めていくのが無難かなーと思うし。
 他の種族よりも体を動かすのが好きな種族だから広まりやすいかもしれないし」
「そうだね、それがいいかも」
「近い内に、澪と雫を連れてケモッセオに行きたいなって思ってたから、ちょうどいいかも」
「何か用事でもあったの?」
「用事っていうか、冒険者ギルドと商人ギルドに、黒猫商会の従業員ですって感じで二人をギルドマスターに紹介しておきたいなって思って」
「え、ジズーってギルドマスターと繋がり持ってたの?
 てか商会なんて持ってたの?」
「そういえばジズーちゃん、ずいぶんとお金持ってたもんね~。
 しっかりしてるな~」
「必要だったからってだけだよ。
 とりあえず、二人も街に行くこともそのうちあるだろうし、商会の従業員ってことにしておけばいろいろ融通きくこともあると思うよ。
 だからギルドマスターに紹介だけしとくね」
「そういうことなら了解ー」
「わかった、おっけ~!」
「じゃあ、近い内にケモッセオの街にみんなで行って、サッカーを広めよう!」
「「「「おー!!」」」」
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