異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第二章 野望のはじまり

みんなで街へ行こう

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 龍の巣は森の中心に近ければ近いほど、深く険しくなる。
 そして中心に近ければ近いほど、モンスターは強く、植物や鉱石等の素材の質が高くなる。
 森の中心は世界樹があり、世界樹の周りにはモンスターも寄り付かないセーフティエリアがある。
 つまり、世界樹から外側に向かって進み、セーフティエリアを出た所が、龍の巣で一番ホットなエリアになる。
 今俺たちは、ケモッセオで売るための獲物を、このホットなエリアで探している。
 今回のターゲットは鰐だ。
 今まで何度かケモッセオの商人ギルドと取引したけど、いつも肉を卸していた。
 龍の巣産の高級肉なので、毎回肉でも喜ばれてはいる。
 でも、一応商会を名乗っている以上、肉だけしか扱っていないというのは格好がつかない。
 なので今回は革を卸そうと思った。
 高級な革ってなんだろうって思ったけど、俺はクロコダイルしか思い浮かばなかった。
 澪と雫に聞いてみると、やはりクロコダイルという答えだった。
 フランにも聞いてみると、ガイアでもクロコダイルはいて、そして高級革らしい。
 そういえば鰐がいる川があったなーと思い、クリスとレオとフランの三人と一緒にそこに向かっている。
「そういえばジズーさん。
 バハムート様にダンジョンのこと報告したっすけど、竜族もダンジョンには手を出さないということになったそうっすよ。
 念の為、しばらくダンジョンの入り口を監視するらしいっす」
「天界も同じ感じだし。
 相手が魔神なら絶対に刺激するなってことらしいし」
「お、そうなんだ。
 よかったよかった。
 それなら魔神さんが何かしない限りは平和ってことだよね」
「でも魔神ってどんなやつなんですかね。
 俺、魔神なんて今まで見たことないっすよ」
「どんな人だろねー。
 セクシーなお姉さんとかだったら、デリ肉(俺たちはデリシャスミートのことをそう呼ぶようになった)持ってご挨拶に行きたいなー」
「魔神相手にそういう発想ができるのがすげーっす。
 俺は超禍々しい化物みたいなのイメージしてましたよ」
「セクシーお姉さん系は勘弁だし。
 あっしとキャラかぶるっしょ。
 空いてる枠は幼女とか地味系とか男っぽい系とかがあるし」
「フランが……セクシーお姉さん……っすか?」
「はぁ!?
 あっしがセクシーじゃなかったらなんだって話だし!」
 フランの格好は、チューブトップにホットパンツという感じで、確かに露出がとても多くてセクシーと言える。
 でも……。
「いっつもゴロゴロ寝転がってるからねぇ……。
 セクシーとか思ったことないや」
「っすよね。
 俺の中ではフランは怠け者の姉ちゃんって感じっすよ」
「同じくっす」
「はぁっ!?
 お前らマジありえないし。
 かわいそうに、お前らその若さで枯れてるだけっしょ」
「失礼な!
 現役っすよ!」
 ギャーギャー騒ぎながら歩いてたら川が見えてきた。
 お、鰐もちゃんといるね。
「鰐の種類なんてわかんないんだけど、あれでいいんかな?」
「あれでいいと言うか、あれがいいと言うか。
 あのデカイ鰐はエンシェントクロコダイルっていうんだけど、革の質、希少価値、鰐の強さ、どれも最高だから一番価値があるし」
「うっし、それならよかった。
 確かにでかいねー、キマイラよりちょいでかい感じかな」
「普通、竜族と天使族以外がこんなのに遭遇したらなりふり構わず逃げるもんなんすけどね。
 って、ああもう。
 もう倒しちゃってる……」
「え、何かまずかった?」
 とりあえず暴れられる前に、革を傷つけないよう気をつけながら、いつものように首をコキッとした。
「いえ、なんでもないっす……」
「そう?
 じゃあ悪いんだけど、運ぶのお願いしていい?」
「もちろんっす!
 そのためについてきたんすから」
「お任せ下さい!」

 世界樹に戻ると、薫子さんたちが馬車の中を片付けたり出かける支度をしていた。
「薫子さんただいまー、大物ゲットしたよー」
「おかえり、随分大きなのをとってきたねー。
 馬車に入らないけど、クリスくんたちが運ぶの?」
「はい、俺たちに任せて下さい!」
「そっか、ありがとね」
「そっちの支度はどう?」
「もういつでも行けるかな。
 澪と雫とバハムルくんが畑を見に行ってるよ」
「じゃあ戻ってきたら出発かな?」
「うん、楽しみだなー。
 あ、そうそう。
 澪に正体がばれるとまずいからこれつけろって言われたんだけど、こんな感じでいいの?」
 そう言って薫子さんがつけたのは大きめのサングラスと大きめのマスクと帽子だった。
「うわー……、ちょっと自意識過剰すぎる芸能人みたいだ……」
「え、なにそれどういうことなの?
 ゲイノウジンってなんなのー!?」
「いや、ばれないようにっていう点では全然問題ないよ!」
「なになに、すごく不安になる言い方やめてよー!」
「ごめんごめん、大丈夫だから。
 それなら絶対女神だってばれないよ!」
「そう?それならいいんだけど……。
 でもこれつけると視界が暗くなって見えにくいのよね」
「あー、それはそういうものだからね。
 帽子とマスクがあれば十分ばれないだろうし、サングラスはつけなくても大丈夫かも」
「じゃあこれははずしてようかな」
「あ、ジズーおかえりー」
 澪たちが畑の方から戻ってきた。
「なんだこれ!?
 すっごくでっかいな!」
 バハムルが鰐を見てはしゃぐ。
「クロコダイルって言ってたから地球の鰐のサイズを想像してたけど、これはびびるよ~」
「エンシェントクロコダイルとかいったっけ?
 たぶん最高級の革らしいよ」
「日本にいた頃は手の届かなかったクロコダイルなのに、ここではこんなに簡単に……。
 こういうのが、たまに価値観こんがらがるのよね~」
「いやいや、全然簡単ではないでしょ。
 どうせジズーのワンパンでしょ?
 あれ全然普通じゃないから!」
「あ、そういえばそうだっけ~。
 規格外の人と一緒にいると価値観狂っちゃうね~」
「澪と雫だって、十分規格外じゃん。
 てか、ここにいるの全員規格外だよね」
「そうは言っても私と雫はこの中じゃ一般人みたいなものだよ。
 ドラゴンとか天使とかと人間が張り合えないって」
「そんなことはないのだ!
 クリスが言ってたのだ!
 澪は怒ると怖いから逆らっちゃダメだって!」
「ほー?
 クリスくーん?そんな風に思ってたの?」
「ちょ!いや、全然!
 澪さんがステキすぎるから逆らう気が起きないって言ってただけっす!」
「あー、でもわかる気もするし。
 澪ってなんかボスって感じするし」
「フラン、あんた今度ステーキおかわり禁止ね」
「はあっ!?
 なんであっしになるし!
 クリス!あんたのせいだからステーキ全部よこせし!」
「嫌に決まってるわ!」
「はいはい、騒いでないでそろそろ出発するよー。
 私、外界の街に行くのすっごく楽しみだったんだから!」
「そうだね、んじゃ行こうか。
 百段、今回は俺と薫子さんを乗せてもらえる?」
「ヒヒーン。(任せろ)」
「ありがとう。
 よし、じゃあ行こう!」
 俺と薫子さんは百段に、澪は桜に、雫は椿に乗る。
 ドラゴンの四人は全員ドラゴンの姿になる。
 クリスとレオがクロコダイルを運び、ロナが馬車を運ぶ。
 バハムルとフランはそのまま飛ぶ。
 ケモッセオはけっこう近いのでわりとすぐに着いたけど、薫子さんはすごく楽しそうだった。
 初めてケモッセオに行ったときのバハムルのようだ。
 でも、街の中ではちょっと気をつけないとな。
 薫子さんが女神だとばれると面倒なことになりそうだし。
 ほんと、何も起こりませんように……。
 俺は祈りながら街に入った。
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