異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第二章 野望のはじまり

薫子さんのガイアデビュー

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 俺たちはケモッセオの城門前に降りた。
 今日も城門には冒険者や商人たちがたくさんいた。
 いきなり巨大な鰐を持ったドラゴンや馬車を持ったドラゴンや天使やペガサスやらが降りてきて、周囲は騒然としかけた。
 でも、「あぁ、ドラゴンと天使のいる商会か」と、俺たちのことを知っている人も少しいたおかげでパニックにはならなかった。
 フランに言われた通り、ちゃんと見てみると獣人以外の人も普通にたくさんいた。
 そして、エルフと思われる耳が尖っている人たちは、ビジュアル偏差値がずばぬけている。
 ガイアも例外なく、エルフは見目麗しいようだ。
「やっぱり上から見るのと現地で直接みるのとでは全然違うねー。
 城門って大きいなー」
 帽子とマスクで顔を隠している薫子さんが感動している。
 まさに、純度百パーセントの観光客だ。
 とりあえず列に並ぼうとしたその時、城門の方から門番の人が走ってきた。
「ジズーさん、これってエンシェントクロコダイルですよね?
 大丈夫なんですか!?」
 この門番の人は顔見知りだ。
 何度かこの街に来た際、いつもこの人は城門にいたのでお互いに自然と覚えた。
 オークのマモルさんだ。
「こんにちわマモルさん。
 大丈夫ですよ、ちゃんと死んでますから」
「そ、そうですか。
 ならいいんですけど。
 しっかしまぁ……、またすごいのを持ってきましたねー」
「ちょっとお金が必要になりまして。
 高値で売れそうなものを持ってきました」
「お金が必要って……。
 だからってエンシェントクロコダイルとは……。
 相変わらずめちゃくちゃな人ですねー」
「従業員がとても優秀ですからね」
「あぁ、確かに。
 とりあえず商会の方々は中へ入って下さい」
「え?今並ぼうとしてたとこですけど」
「あなたの荷物はいつも規格外すぎるんですよ!
 逆に混雑するのでさっさと入って下さい!」
「あ、はい。
 どうもすませんっす」
 俺たちは並んでいる人たちにペコペコ頭を下げながら街の中に入った。
 街に入ると、中心部に続く大通りと、通りに沿って建てられている店や家や屋台、それからたくさんの人が見える。
「これが街……。
 ここにたくさんのガイアの民が住んでるのね……」
 薫子さんがキョロキョロしまくりで忙しそうだ。
 ガイアの人たちに女神として敬われ、神界からガイアを見守ってきたけど、薫子さんが直接人々の暮らしに触れるのは今回が初めてだ。
 感慨深いものとかあるんだろうなぁ。
 本当なら薫子さんの興味の赴くままに観光といきたいところだけど、この大きな鰐があるから先に売りに行かなきゃいけない。
「薫子さん、先に用事を済ませちゃおう。
 用事が済んだら、いろいろ街を見て回ろうか。
 澪と雫もこの街は初めてだし、あとで観光ってことで」
「あ、うん、そうだね!
 ありがとう!」
「じゃあ、まずは商人ギルドに行こうか」

 というわけで商人ギルドにやってきた。
「黒猫商会といいます、ギルドマスターはいらっしゃいますか?」
「はい、少々お待ち下さい」
 受付嬢さんに取り次いでもらう。
「フラン。
 悪いんだけど、今のうちに冒険者ギルドのギルドマスターに、大事な話があるからこっちに来てもらうように伝えてきてくれない?」
「えー、あっしが?
 しゃーない、行ってくるし」
「ありがとねー」
「なんなのここ……。
 ここは天国なの~?」
 なんだか雫の様子がおかしい。
「どうしたの?雫ちゃん」
「もふもふだよ!もふもふ!
 澪ちゃんもステキだと思わない!?」
「えっ?あー、うん。
 思う思う」
 どうやら獣人さんのもふもふ具合にやられている様子。
「雫、ここのギルドマスターがたぶん、雫好みのラブリーな人だよ。
 だからとりあえずここでは落ち着いて!」
「えっ!そうなの?」
「お待たせしましたジズー様。
 どうぞこちらへ」
 戻ってきた受付嬢に案内されてギルドマスターの部屋に通してもらった。
「ようこそお越しくださいました、ジズー様。
 今日も何やら素晴らしいものをお持ち頂いたようですね」
「あ、もうご存知でしたか。
 今日はエンシェントクロコダイルを持ってきましたよ。
 先に冒険者ギルドで解体したほうがいいかとも思いましたけど、革についてはよくわからないので、一応解体前のものを持ってきました」
「そうでしたか、それはたす――」
「ほわあああああああああ!」
 アキナさんと話しているといきなり奇声が上がった。
 なんだ?この声はもしや……、雫か!
「ちょ、どうしたの雫!
 落ち着いて!」
「落ち着いてらんないよ~!
 澪ちゃん見てよ!
 なんて可愛らしいうさみみ……」
 アキナさんを見てウットリしている。
「え、えっ?」
 困惑するアキナさん。
 というより、若干怖がってる?
「ちょいちょい!
 雫落ち着いて!
 アキナさん怖がってるって!」
「めんこい……、めでたい……、めんこい……、めでたい……」
「うっそ!
 雫がバグってる!」
「落ち着けし!」
 ゴツンッ!
 ちょうど部屋に入ってきたフランが雫にげんこつを落とした。
「いっつ……、はっ!
 私は何を……!」
 良かった、正気に戻ったっぽい。
「怖がらせてしまってすみませんアキナさん。
 この子はちょっと、アキナさんが可愛らしすぎて興奮しちゃっただけなんです。
 すごく獣人が好きみたいでして」
「その言い方だと百合的な勘違いされちゃいそうで困るんだけど~。
 えっと、ビックリさせちゃってすみませんでした」
「あ、そうでしたか。
 わかりました、お気になさらないで下さい。
 それにしても人間の方が獣人を好きだなんて、とても珍しいですね」
「え、そうなんですか?」
「はい、人間は私たち獣人を見下していますので……」
「あー、そういえば城のやつらとかそうだったかも。
 獣人をというか、人間以外の種族を見下してる感じだったかも」
「あー、ファンタジーの人間族でありがちな設定はガイアでも適用されてるのね」
「おい、ジズー!
 そいつらの黒髪、そいつらは魔女と聖女ではないのか?」
 フランに呼ばれて後からやってきたコロさんが、固い声で声で聞いてきた。
「魔女と聖女って……、えっ!?
 人間の英雄の!?」
 アキナさんもまた怖がりだす。
「安心して下さい。
 澪も雫も人間の国とは関係がありません。
 今日はその辺りも含めて、大事な話があります」
 そう言って、コロさんとアキナさんに澪と雫が人間の国に強制召喚されたところから話した。
 コロさんとアキナさんはこれからも付き合いがあるだろうから、この際全部話しておこうということを事前にみんなで決めていた。
 不必要な隠し事は、信頼関係を築く上で良くないからね。
「というわけで、二人はガイアに戻ってきました。
 英雄の能力は持ったままですが、人間の国とは一切関係ありませんので安心して下さい」
「「な、なるほど……」」
 二人は驚きでちょっとおもしろい顔になっている。
「で、これからは黒猫商会の実質的トップはこの二人になりますので、これからよろしくお願いしますといった感じです」
「なるほど、わかった。
 まぁ最初は警戒しちまったが、よく考えればお前はドラゴンと天使を従えてるからな。
 お前が何かしでかそうとしても、元々俺たちは何もできなかったしな。
 それに魔女と聖女が加わったところで大差ないな。
 俺はコロという。
 これからよろしくな、お二人さん」
「確かに、言われてみればそうですね。
 私はアキナ・イスールと申します。
 澪様、雫様、今後ともよろしくお願いし致します」
「「こちらこそ、よろしくお願いします!」」
 よし、澪と雫の紹介はこれでオッケーだな。
「それで、ここからが本題なんですけど」
「「ええ!?今のが前座!?」」
「気持ちはわかりますけど、こっからが本題です。
 えーっと、薫子さん。
 帽子とマスクはずしちゃって」
「はーい」
 薫子さんがマスクをはずして帽子を取ると、コロさんとアキナさんの目がカッと開き、その瞬間二人は跪いた。
「ま、ま、まさか女神様でいらっしゃるとは……!
 お目にかかれて大変光栄です!」
「私ごときが直接お目にかかれるなんて、身に余る光栄です!」
 アキナさんにいたっては泣いている。
 うおお、すごい敬われてるな。
 とか関心しているとコロさんとアキナさんに睨まれた。
「おいジズー!
 こういうことは先に言えよ!
 驚いて死んじまうだろうが!」
「そうですよ!
 非常識にもほどがありますよ!」
「ええぇぇ?
 そんなに怒らなくても……」
「まぁまぁ、ジズーに悪気はないのです。
 許してあげてはくれませんか?」
「「はっ!女神様がおっしゃるならば!」」
 女神パワーで許された。
「で、こんなこと俺らにぶっちゃけてどうするんだ?」
「あ、えーっとですね。
 今まで薫子さんは外界を自由に動けなかったんだけど、その像を持ち歩くことで好きな所に行けるようになったんですよ」
「なんで女神様の像を持っているのか不思議ではあったが、そういうことだったんだな」
「ええ。
 それで、まぁなんと言いますか。
 これからも薫子さんが街に来ることはあると思います。
 その際に、何かトラブルに巻き込まれた時なんかのフォローをお願いできないでしょうか……と思ってるんですが。
 こちらにはクリスたちもフランもいますので、大丈夫だとは思ってるんですが念のために」
「なるほどな、そのへんは任せとけ」
「かしこまりました。
 私たちもご協力させて頂きます」
「あ、ちなみに澪と雫の出自のことと薫子さんのことは秘密でお願いしますね」
「ああ、もちろんだ。
 てかこんなこと誰かに言っても信じてもらえねーだろうよ」
「もちろん、秘密に致します。
 ご安心下さい」
「ありがとうございます。
 よろしくお願いします」
「にしてもお前が眷属とはなー。
 全然そう見えないな」
「まぁ、こんなナリですからねー。
 とりあえず、こちらの話はこれで終わりですので、次は鰐の買取りお願いしてもいいですか?」
「かしこまりました、では下の倉庫にエンシェントクロコダルをお持ちください」
「おお、またすごいのを持ってきたんだな。
 俺もちょい見学してってもいいか?アキナ」
「ジズー様がよろしければどうぞ」
「ええ、いいですよ」
「ありがとよ!」
 俺たちは部屋を出て下の倉庫に向かった。
 あの鰐、一体いくらになるかな。
 サッカー大会開催のために、高値で売れますように。
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