異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第三章 黒猫杯

大会前日

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「どうしたの?
 なんかドラゴン組の元気がないみたいだけど」
 朝食の時間、なんだかバハムル・クリス・レオ・ロナの四人が元気が無いので聞いてみた。
「あぁ……。
 昨日コロさんのチームと練習試合をしたんだけどね、負けはしなかったけど、私たちも点をとれずにドローだったのよ。
 それで四人は落ち込んでるの」
 澪が苦笑いで答えてくれた。
「あぁ、なるほど。
 四人ともポジションは前の方だもんねぇ」
「シュート、全部止められたのだ……」
 いつも元気なバハムルがすごくしょんぼりしている。
 ちなみにガイアでは、キーパーは地球と同じで手を使えるが、キャッチはしてはいけないというルールにした。
 ゴールポストは地球と同じサイズなのに、地球のトップ選手よりはるかに身体能力が高いガイアの人がキャッチありでキーパーをすると、ほとんどシュートをキャッチしてしまうだろう。
 そうなると、セカンドチャンスがほぼなくなってしまい、なかなか点が入らないスポーツになってしまう。
 それではつまらないし、つまらなければ人気も得られず普及できそうもない。
 なので、キーパーはパンチングで弾くのみOKとした。
「ボールがもろすぎるんすよ!
 絶対反応できないくらい強いシュート打とうと思って蹴っても、ボールが破裂するんすよ!」
「そりゃそうだよ。
 そうしないとドラゴン超有利じゃん」
 ドラゴンが思いっきり蹴っても大丈夫な強度のボールなんて使ったら、シュートの威力がとんでもないことになってしまう。
 ドラゴンは多種族と比べて圧倒的に力が強いから、さすがに不公平だ。
 なので、ボールの強度はそれなりに抑えて開発してある。
「全力で蹴れなくても、多種族より強いシュートには変わりないと思うんだけど。
 相手のディフェンスがすごかったの?」
「ディフェンスっていうより、ゴールキーパーがすごかったんだよ!
 みんなのシュートを全部弾いたんだよ!
 ゴールの隅っことか狙っても全部止めてたよ!」
 よっぽどすごかったのか、薫子さんが興奮気味に言う。
 てか薫子さん、最近影薄いですね。
 言えないけど……。
「へぇー、そんなにすごいキーパーなんだ」
「コロ様、かなりの実力者と思ってはいましたが、あれほどとは……」
 ロナが悔しそうに俯きながら言う。
「コロさんがキーパーだったんだ」
 確かにコロさんならすごそうだ。
 てっきりガンガンシュート打つような人かと思ってたけど、意外だなぁ。
 それともキーパーの重要性に気づいたんだろうか。
 しかし、やっぱり思ってた通り、ガイアの身体能力が高い人がキーパーをすると、簡単には点が入らないんだなぁ。
 超至近距離でシュートを打つとか、完全にキーパーの裏をかくとか、ドリブルでキーパーを抜き去るとか、難易度の高いプレイが要求されそうだ。
「今まではサッカーを楽しんでもらうことを優先して、やりたいプレイの練習を自由にやってもらってたけど、試合に勝ちたいのなら試合に勝つための、点をとるための練習や点を取られないようにするための練習をしないとだね」
「勝つための練習?」
「そう、どう攻めれば点を取れるのか、どう守れば相手の攻撃を防げるのか。
 そういうのを考えて必要な練習をしないと、いくらドラゴンと天使がいてもそう簡単には勝てないかもね」
「絶対負けたくないのだ!
 みんなで考えるのだ!」
「いいこと言ったし、バハムル。
 あっしらに敗北は許されないし」
「そうですね。
 私たちも、バハムート様の顔に泥を塗らないように、勝たねばなりません!」
 いやいや、ロナさんや……。
 そんな竜族の威信にかけて!みたいな空気にしなくても……。
 というわけで、朝食を食べ終えたらみんなでミーティングとなった。
 まぁ、あーちゃんはすぐに椅子に座ったまま寝ちゃったし、アスモにいたっては我関せずといった感じで部屋に戻って寝てたけど。
 そしてこの日以降、練習後に反省会をして次の日の練習メニューを考え、翌日また練習をして反省会をする。
 そんな日々を送った。
 そしていよいよ大会は明日に迫った。

「まぁ、とは言っても明日は組み合わせ抽選会だけで試合はないんだけどね」
「え?
 組み合わせ抽選会?
 全チームと戦うんじゃないんすか?」
 クリスがとんでもない勘違いをしていた。
「そんなことしたら大会が終わるまで何ヶ月もかかっちゃうよ。
 トーナメント……、わかりやすく言うと勝ち抜き戦?でいいのかな。
 今回は参加チームは六十一チームだから、六回勝ったら優勝だね」
「勝ち抜き戦というのは、負けたら終わりっていうことなのか?
 緊張するのだー……」
「大丈夫よバハムルくん!
 あんなに練習したんだもん!
 きっと勝てるよ!」
 薫子さんがバハムルを励ます。
 バハムルはけっこう繊細なのかな、すごく緊張してる感じだ。
「試合するからには勝ちにいくし、勝つと楽しいけど、勝つことよりもサッカーそのものを楽しむこと。
 その方が大事なことだよ。
 ベタな言葉かもしれないけど、大事なことだから言ってみました!」
「確かにベタだね~。
 サッカーマンガだとよくありそうなセリフだね~」
「そっか……、楽しむことが大事……。
 わかったのだ!
 楽しく試合するのだ!
 そして勝つのだ!」
「ただの遊びの大会なんだろ?
 気楽にやりゃーいいんだよ。
 その方がいい動きできるんじゃねーの?」
 そうかもしれないけど、言い方……。
「サッカーは遊びじゃないし!」
 フランがアスモの顔を鷲掴みにした。
 ほら、案の定フランの逆鱗に触れた。
 ガチな人の前で遊びとか言ったら戦争になるのが世の常だってのに。
「いでででででで!
 ちょっ!フラン!
 マジで痛いって!
 ギブギブギブ!」
「サッカーは聖戦だし。
 ちょっと一晩かけてそれをわからせてやるし」
「ごめんごめんごめん!
 悪気はなかったんだよ!
 オレはバハムルの緊張をほぐそうと!」
「だとしても言って良いことと悪いことがあるし」
「いでででででで!
 悪かったって!」
「ほらほらフラン、アスモも悪気はなかったんだしそのへんにしときなー」
「チッ!
 仕方ないし」
 澪に言われてしぶしぶ手を離す。
「あー、いってー……」
 俺は、掴まれた部分をさするアスモに小声で話しかけた。
「ダメじゃん、フランの前であんなこと言っちゃ。
 そりゃあーなるに決まってるよ」
「わかってんだけど、ついうっかりな……。
 ホントにバハムルの緊張をほぐそうとしただけなんだよ……。
 てかあいつとんでもない力だわ。
 天使超こえー……」
 さすがの魔神様も、暴走天使にはかなわないか。
「はいはい、ご飯できたよ~。
 みんな席について~」
 雫が夕食を運んできたので、みんな一斉に席についた。
「ホントはこういう時はカツ丼でも食べてゲン担ぎでもしたいとこなんだけどね~」
 雫がちょっと残念そうに言う。
「あー……、確かに。
 でも醤油がないからねぇ」
「そうだねー。
 大会が終わったら、またしばらく生活の質の向上を目指していろいろやりたいね。
 水路とかまだ手付かずだし、醤油とか味噌は絶対ほしいし」
「カツ丼ってなんすか?
 うまいんすか!?」
「うまいに決まってるだろ!
 雫さんたちが作るものがまずいわけがねえ!
 ですよね!?」
 早速クリスとレオがくいついた!
「美味しいけど、まだ作れるかわかんないよ~?
 醤油を作れるかどうかわかんないからね~」
「大丈夫っすよ!
 雫さんたちに不可能はないっしょ!」
「そうっすよ!」
 この二人、澪と雫に対する信頼が半端ない。
「まぁ、醤油づくりに成功したら作ってあげるから、期待しないで待っててよ」
「「うっす!!」」
「それじゃ、食べようか~。
 いただきま~す!」
「「「「いただきますっ!」」」」

 今日はみんな、夕食を食べたてお風呂に入ったらすぐに眠りについた。
 明日は朝早くからケモッセオに行くからだ。
 しっかしまぁ、いよいよサッカー大会が始まるんだなぁ。
 俺も、試合をするわけではないけど、なんだか緊張してきた。
 しばらく眠れなそうだ。
 結局俺は、思った通りなかなか寝付けなく、日が昇り始めた頃にようやく眠ったのだった。
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