異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

文字の大きさ
62 / 76
第三章 黒猫杯

アスモ、街を観光する

しおりを挟む
「あらみなさん、いらっしゃいませ」
 商人ギルドに入るとアキナさんが出迎えてくれた。
「こんにちわ~、アキナさん。
 調子はどうですか~?」
「ぼちぼちいい感じです。
 黒猫商会さんのおかげでこの街の経済が少し活発になってきてまして、喜ばしいことですね」
「それは良かったです。
 今日はですね~、新しくうちで一緒に暮らすことになった子がいるので紹介にきました~。
 お買い物なんかで困ってることがあったら助けてあげて下さいね~」
「おい、なんだよその紹介の仕方!
 オレは子供か!?」
「そちらの方ですか?
 始めまして。
 私は商人ギルドのギルドマスターをしております、アキナ・イスールと申します。
 どうぞ、よろしくお願い致します」
「あー、オレはアスモデウスだ。
 街に来ることはほとんどないとは思うが、まあよろしく頼むわ」
「アスモデウス……様ですか……?
 あの、もしや……、人魔大戦で一人で人間族の英雄六人を圧倒して奇跡の魔神と言われたあのアスモデウス様ですか?」
「え、オレってそんな風に言われてたのか?
 いやー、照れるなー、ふふふふふふ」
「何その照れ方。
 キモイし」
「キモイって言うなよ!」
 フランはアスモには厳しいなぁ。
「すでにすごい方々の集まりですから驚きはしませんが……。
 いや、やっぱ驚きますよ!」
「魔神とか呼ばれてたのは昔のことだ。
 今は国となんの関わりもないただの魔族だ。
 普通に接してくれればいいさ」
「か、かしこまりました……」
 さっきのコロさんの時もそうだったけど、魔神と聞いて怖がられるかなと思ってたけど、そんなことは全然なくてむしろ感激しているというかなんというか……。
 俺はいまいちわからないけど、もしかしたらアスモって今のガイアの人からすると、過去の偉人っていうカテゴリーに入るのだろうか。
 戦争で他国を圧倒したってことだから……、脳筋具合を考えると項羽とか呂布とかそんな感じかな?
 そう考えると、もっとアスモのこと丁重に接さなきゃって一瞬思ったけど、家ではフランと同じで基本何もしないで、ただフランとギャーギャー言い合ってるだけだしなぁ。
 うん、今のままでいいよね。
「ところで黒猫杯のことですが。
 最近は参加申し込みは落ち着きまして、この街の住人や滞在してる方で参加したい方々はもうほとんど申し込みを終えたのではないかと思います。
 子供の部は十チーム、大人の部は五十チームを超えたところですね」
「子供の部が思ったより少ないな~。
 逆に大人の部が思ってたよりかなり多いかも~」
「我が国は他国と比べると識字率が低いですからね。
 街でルールを配布致しましたが、文字が読めないと誰かに教えてもらうとかしないとルールを知る機会はありません。
 特に識字率の低い子供層にサッカーのルールが浸透するのは時間がかかりそうです」
「そうですか~。
 まぁ、そこはゆっくりと確実に、ですね~」
「大人の部の参加者は、大半が経済的に余裕のある冒険者です。
 一般市民の方は、今回は様子見といった感じでしょうか」
「なるほど~。
 もっといろんな人に参加してもらいたかったけど、しょうがないかな?
 今回の大会が盛り上がれば、いろんな人にサッカーに興味を持ってもらえるよね~」
「そうですね。
 私も参加しますので空いた時間に練習していますが、けっこう楽しんでますよ。
 グラウンドにいる竜族の方が審判をしてくれることもあり、たまに練習試合をすることもあります。
 見物している方々も結構楽しんでいるようです。
 何度か試合をしましたが、私のチームはまだ負けたことがないんですよ。
 本番で黒猫商会さんのチームと当たらなければ、結構いいところまでいけるかもしれませんね」
 そう言って上品に笑うアキナさん。
 練習試合なんてやってるんだなぁ。
 全然知らなかった。
 サッカーを広めるために練習試合をするのもいいかもしれない。
 まぁその辺はみんなに相談かな。
 てか、アキナさんがサッカーしてる姿って想像できないな。
 ここの商人ギルドは、アキナさんも含めほとんどの職員が小柄な事務のお姉さんって感じだ。
 それが練習試合で負けたことがないって……。
 うーん、だめだ。
 全然想像できない。
 OLが昼休みに屋上でキャッキャウフフな感じで食後の運動に戯れているようなビジョンしか思い浮かばない!
 ……今度アキナさんたちの練習見に行ってみようかな……。
 いや、やっぱりやめよう。
 本番の楽しみにとっておこう。
 雫とアキナさんが少し情報交換をしたあと、俺たちはギルドを出た。
「さて、アスモの紹介も済んだし、練習しに行く?」
 澪がそう問いかけると、
「練習するのだ!」
「もうすぐ大会っすからね!
 追い込みかけるっすよ!」
「モチのロンっす!」
「当然やるし」
 一部の連中が即答してきた。
「オレはサッカーとかいうの興味ねーから、適当に街ぶらついてから帰るわ」
 さすがはアスモ。
 みんなに合わせるとかいう概念はないようだ。
「じゃあ心配だから俺はアスモと一緒にいるよ。
 そっちは任せるね。」
 俺はアスモについていくことにした。
 一人にするのはやっぱ不安だしね。
 暴れたりするなんてことはすると思ってないけど、数百年間人里離れて生きてきたわけだし、何かトラブルはあるかもしれない。
 それなら誰かが一緒にいるべきだ。
 この街なら俺も随分と街の人たちに認知されてきていて、俺でも十分トラブルに対処できる。
「別に一人で大丈夫だって」
「いいからいいから、邪魔はしないからさ」
「子供じゃねーんだから心配いらねーのによ……」
「街なんて数百年ぶりっしょ?
 まぁ、俺は保険ってことで」
「はいはい、勝手にしろ」
 そう言ってアスモは歩きだした。
「じゃあみんな、また後でね。
 練習頑張って!」
 シュタッ!っと前足を上げて、俺はアスモを追いかけた。
 てかアスモもうすっごい遠くにいるし!
 俺を撒く気とか?
 そうはさせるかあああ!
「ちょ、待てよ!」
 俺がダッシュで追いつくと、アスモは呆れてるような顔で言った。
「オレについてきてもおもしれーことなんてねーぞ?
 本当にただブラつくだけなんだからな。」
「全然いいよそんなの。
 街をブラつくなんて久しぶりなんでしょ?
 何かわかんないこととか困ったこととかあったら、誰かいたほうがいいでしょ」
「はぁ……、物好きだなお前も」
 それから適当に街を歩いた。
 ちょっとお腹が減ったというので、屋台で適当に買い食い。
 一口食べて、アスモが顔をしかめる。
 まぁ、何を考えているかはわかるけど。
 少し歩いてからアスモが小声で言った。
「ダメだな、澪と雫のメシを知った後だとまずく感じるな……。
 まずくはないはずなんだよな、昔魔都で食ってたメシもこんなんだったしよ。
 やべーな……。
 オレ、あいつらから離れられなくなっちまうんじゃねーか……?」
「いいんじゃない?
 うちにいるみんなもそうだと思うよ?
 パレオとアレッサンドラなんか、仕事をお願いしにいった時に渡したおみやげのプリンを食べて、うちに住むって言って押しかけてきたくらいだよ」
「あー、プリンなー。
 気持ちはわかるわー」
「うちのご飯は使ってる食材もかなりの高級品らしいからね。
 まぁ、おかげでみんな澪と雫に逆らえないっていうか、怒らせないようにって思ってるね。
 やっぱり胃袋を掴まれると人は弱いね」
「なるほどな。
 ドラゴンやら天使やら、オレでもどうしようもないようなヤツらもあの二人には頭が上がらない感じだもんな。
 最初は不思議だったけど、今は納得だわ」
 その後も適当な店を見たりしながら歩き回った。
 昔なかったような物を見つけては珍しそうに見たり、なんか普通の観光だ。
 なんだかんだでアスモはケモッセオ観光をガッツリ楽しんで、俺たちは家路についた。
しおりを挟む
感想 21

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

身寄りのない少女を引き取ったら有能すぎて困る(困らない)

長根 志遥
ファンタジー
命令を受けて自らを暗殺に来た、身寄りのない不思議な少女エミリスを引き取ることにした伯爵家四男のアティアス。 彼女は彼と旅に出るため魔法の練習を始めると、才能を一気に開花させる。 他人と違う容姿と、底なしの胃袋、そして絶大な魔力。メイドだった彼女は家事も万能。 超有能物件に見えて、実は時々へっぽこな彼女は、様々な事件に巻き込まれつつも彼の役に立とうと奮闘する。 そして、伯爵家領地を巡る争いの果てに、彼女は自分が何者なのかを知る――。 ◆ 「……って、そんなに堅苦しく書いても誰も読んでくれませんよ? アティアス様ー」 「あらすじってそういうもんだろ?」 「ダメです! ここはもっとシンプルに書かないと本編を読んでくれません!」 「じゃあ、エミーならどんな感じで書くんだ?」 「……そうですねぇ。これはアティアス様が私とイチャイチャしながら、事件を強引に力で解決していくってお話ですよ、みなさん」 「ストレートすぎだろ、それ……」 「分かりやすくていいじゃないですかー。不幸な生い立ちの私が幸せになるところを、是非是非読んでみてくださいね(はーと)」 ◆HOTランキング最高2位、お気に入り1400↑ ありがとうございます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。

カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。 今年のメインイベントは受験、 あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。 だがそんな彼は飛行機が苦手だった。 電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?! あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな? 急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。 さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?! 変なレアスキルや神具、 八百万(やおよろず)の神の加護。 レアチート盛りだくさん?! 半ばあたりシリアス 後半ざまぁ。 訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前 お腹がすいた時に食べたい食べ物など 思いついた名前とかをもじり、 なんとか、名前決めてます。     *** お名前使用してもいいよ💕っていう 心優しい方、教えて下さい🥺 悪役には使わないようにします、たぶん。 ちょっとオネェだったり、 アレ…だったりする程度です😁 すでに、使用オッケーしてくださった心優しい 皆様ありがとうございます😘 読んでくださる方や応援してくださる全てに めっちゃ感謝を込めて💕 ありがとうございます💞

冒険者パーティから追放された俺、万物創生スキルをもらい、楽園でスローライフを送る

六志麻あさ
ファンタジー
とある出来事をきっかけに仲間から戦力外通告を突きつけられ、パーティを追放された冒険者カイル。 だが、以前に善行を施した神様から『万物創生』のスキルをもらい、人生が一変する。 それは、便利な家具から大規模な土木工事、果てはモンスター退治用のチート武器までなんでも作ることができるスキルだった。 世界から見捨てられた『呪われた村』にたどり着いたカイルは、スキルを使って、美味しい料理や便利な道具、インフラ整備からモンスター撃退などを次々とこなす。 快適な楽園となっていく村で、カイルのスローライフが幕を開ける──。 ●表紙画像は、ツギクル様のイラストプレゼント企画で阿倍野ちゃこ先生が描いてくださったヒロインのノエルです。大きな画像は1章4「呪われた村1」の末尾に載せてあります。(c)Tugikuru Corp. ※転載等はご遠慮ください。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

処理中です...