異世界で猫に転生した俺は、理想の飼い猫生活を目指す

にゃんこ先生

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第三章 黒猫杯

アスモ、いざ街へ

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 今日も今日とてケモッセオにサッカーの練習に行く。
 ちなみに俺は、監督というかコーチというか、まぁそんな感じのポジションだ。
 最初は、澪たちが日本から持ってきたサッカー関連の本を片っ端から読み漁って、自分なりに練習方法とか戦術とか、とにかくいろんな知識を頭に叩き込んだ。
 でも、練習方法はともかく、サッカー戦術なんかは日本……というより地球の戦術はここではそのまま使っても微妙だということがわかった。
 地球人とガイアの人では身体能力に差がけっこうあるのだ。
 ガイアでは、冒険者見習いをようやく抜けたっていうレベルの冒険者ですら、地球のトップアスリート級の身体能力があるんじゃないかって思う。
 地球のサッカーの常識では絶対無理なことでも、ガイアの人の身体能力だと可能になることがたくさんある
 それほどの差があるから、地球の知識を元にして、ガイアにあった戦術なんかを考える必要がある。
 そもそもガイアでは、これからサッカーを広めていこうという段階だ。
 まぁ、なんか偉そうに言ってるけど、いろいろ考えていろいろ試してみて楽しくやりましょうってことです。
 所詮は元サッカー好きの日本人の素人だからね。
 何から何まで手探りなわけです。
 そんなわけで、俺たちはケモッセオに向かっている。
 今日はアスモも一緒だ。
 ちなみにあーちゃんはすでにケモッセオデビューは終えていて、練習には毎日ついて行っている。
 サッカーに興味はないみたいだけど、うちのメンバーは全員練習に行くので、みんな行くからついて行くという感じだ。
 アスモもサッカーに興味を持たなかったので家で一人で留守番をしていたが、今回は街を見るために同行している。
 数百年ぶりに人がたくさんいる場所にいくからだろうか、どことなく緊張してるように見える。
 魔神と呼ばれた人でもこういう事で緊張することもあるんだなって思うと、ちょっと面白い。
 街が見えてきたので地上に降りた。
「今日はアスモもいるから、コロさんとアキナさんに挨拶してから練習に行こっか」
 澪がみんなにそう言って、俺たちはまずは冒険者ギルドへ向かった。
 冒険者ギルドに入ると、冒険者が数人だけいた。
 今はお昼時、冒険者ギルドはこの時間帯はいつも大体空いている。
 冒険者は基本、朝依頼を受けて出発するからだ。
「こんにちわ、コロさんいますか?」
「こんにちは澪さん、みなさんもこんにちは。
 今呼んできますね」
 今やすっかり顔なじみの受付嬢さんがコロさんを呼びに行った。
 最初の頃は俺が前に立って話をしていたが、今では澪と雫がメインで話をするようになった。
 黒猫の、しかもガイアでは小さな黒いモンスターだと認識されている俺が前面に立って話をする光景はやっぱり異常だったからなぁ。
 こうやって、とても自然な形になったのは良いことだ。
 俺は薫子さんの、というよりは薫子さんちの飼い猫だ。
 こうやって後ろで気楽に話を聞いてるくらいがちょうどいい。
「おう、お前らか。
 今日はどうした?」
 特に忙しくなかったのか、コロさんはすぐにやってきた。
「こんにちわコロさん。
 特に用という用はありませんけど、新顔がいるので顔見せにきました」
「数日前にそこの嬢ちゃんを紹介されたと思ったらまたかよ。
 龍の巣の住人がこんなに次々と出てくるなんて俺の常識じゃ考えらんねーぞ……。
 新顔ってのはそこの姉ちゃんか……、んんんん!?」
 急にコロさんがアスモを凝視して固まった。
 なんだなんだ、一体どうしたんだ?
「コロさん、どうしたんですか?」
 たまらず聞いた。
「どうしたってジズーおめぇ……。
 ちょっと待ってくれ」
 そう言うとコロさんは奥に引っ込んだ……と思ったらすぐに戻ってきた。
「新顔の姉ちゃん。
 俺はこの街の冒険者ギルドのギルドマスターのコロってもんだ。
 姉ちゃんの名前は?」
「ん、オレか?
 オレはアスモデウスだが?」
「やっぱりか……、マジかよ……」
 頭を抱えるコロさん。
「ほんとにどうしたんですか~?
 アスモちゃん早速何かやらかしちゃいました~?」
「んなわけねーだろ雫!
 てかオレを問題児みたいに扱うのいい加減やめろよ!」
「いや、実際問題児だし」
 フランがボソッと言った。
「んだとお!?」
 アスモとフランがギャーギャー騒ぎ出す。
「いや、何かしたとかそんなんじゃないんだがな。
 姉ちゃん、アスモデウスと言ったな?
 五百年前か六百年ほど前、正確な数字は知らねえがとにかく数百年前、魔国マゾックの元帥で魔神と呼ばれていた魔族もアスモデウスという名だ。
 見た目も、伝わってる絵と姉ちゃんはかなりそっくりだ。
 一応の確認だ。
 姉ちゃんは魔国の元帥だった魔神アスモデウスで間違いないな?」
 そう言ってコロさんは、アスモの似顔絵のようなものを俺たちに見せながら確認してきた。
「へぇ~、よく描けてるね~。
 そっくりじゃな~い」
「え、オレもっと美人じゃねーか?」
「いやいや、むしろ絵のほうが美人だし。
 ずいぶん盛ってるし」
「盛ってるって……」
 いつも思うが、フランって日本人のような言葉をちょくちょく使うんだよな。
「まぁ、アンタの言う通り、オレはその元帥の魔神アスモデウスだ」
「そうか……」
 コロさんがなにやら真剣に考え込む。
「何かまずいことでもあるんですか?」
「数百年前のことだから俺も詳しくは知らねーが、魔神アスモデウスの討伐命令やら捜索命令やら出てるぞ。
 当時の状況から予想するに、討伐命令は人間の王国経由で、捜索のほうは魔国経由の命令だろうと思ってるがな」
「マジか、そんなことになってんのか」
 面倒くさそうにアスモが嫌そうな顔をする。
「人間や魔族経由の命令をなんで獣人の国が受けるんですか?」
 素朴な疑問だったので素直に聞いてみた。
「獣人の国は人間と魔族の争いに関わっちゃいねーよ。
 でも、ギルドは国を超えた組織なんだ。
 だからギルド内でそういう命令が出てるんだ。
 おおかた莫大な報酬が出るんだろ」
「あぁ、そういうことですか……」
「ジズーたちのことだから今更驚きはしねーが、どういう経緯で魔神アスモデウスと一緒にいるんだ?」
「あ、それはですね、かくかくしかじかってわけでして」
「なるほど、封印されてたのか……。
 王国と魔国の戦争がそんな風に終わってただなんて知らなかったぜ」
 さすが魔法の言葉の「かくかくしかじか」
 八文字で全てを伝えてくれる最高の言葉だ。
「まぁ、そういうわけなので、できればそっとしといてもらえませんか?
 やっと自由になれたのに、また国のゴタゴタに巻き込まれるのはかわいそすぎるでしょ」
「あぁ、勘違いしないでくれ。
 はじめからどうこうしようとか考えてねーよ。
 ただ、今でもこういう命令が生きてるぞって教えとこうと思っただけだ。
 そもそもここは獣人の国だ。
 人間と魔族のゴタゴタにわざわざ首つっこみたくねーな。
 それ以前に、お前らを敵にまわすようなことはしたくねーわ」
「あ、そうなんですね。
 どうもありがとうございます。
 この件で何か上から無茶言われたりしたら教えてくださいね」
「おう。
 そん時は全力で頼るわ」
 そう言ってニカッと笑うコロさん。
「え、そんなんで済ませてもいいのか?
 オレの確保に動かないにしても、上に報告義務くらいはあると思うんだが……」
「普通ならそうだろうな。
 でもこの状況は普通じゃねーだろ?
 あんたと一緒にいるのは、この街でたくさん金を使ってくれて、この街に貴重な龍の巣産のモンスターやら素材を卸してくれる大事な商会だ。
 しかもその商会は女神様も関わっていらっしゃる。
 国と女神様を含む商会と、どっちにつくかって言われたら即答で商会側につくって答えるぞ」
「あー……。
 普段の様子からは全然そうは見えねーけど、こいつらってすげー肩書きのやつらばっかだったっけな。
 納得だ。
 まぁ、なんだ。
 見逃してくれてありがとよ、助かるわ」
「気にすんな。
 ジズーたちと一緒にいるのならこれからも顔を合わせる機会もあんだろ。
 これからよろしくな」
「ああ、こっちこそよろしくたのむ」
 うん、いい感じに収まってくれた。
 よかったよかった。
「じゃあ、アキナさんにもアスモを紹介してくるので、今日はこれで失礼しますね。
 あ、これマドレーヌっていう焼き菓子です。
 みなさんでどうぞ」
「おお、悪いね澪ちゃん!
 おいみんな!差し入れもらったぞ!」
「「「「どうもありがとうございます!」」」」
「いえいえ、どういたしまして。
 それでは失礼しますねー」
「おう、またな!」
 コロさんのその一言を合図に、ギルドの職員が一斉にマドレーヌに群がっていた。
 うめーうめーという言葉を聞きながら、俺たちは冒険者ギルドを後にした。



――――――――――

2~3日に1話ペースで更新していけたらと思っていましたが、想定以上に仕事が忙しくて厳しい状況です。
やれる範囲で更新していこうと思っています。
見捨てずにいてくれたら幸いです( *・ω・)*_ _))ペコリン
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