【完結】私たち白い結婚だったので、離婚してください

楠結衣

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 ܀ꕤ୭* ܀ꕤ୭* ܀ꕤ୭*

 

 魔王討伐の旅をする勇者一行の活躍は、新聞が大々的に伝える。私は、ヒューゴの活躍を見るたびに胸が熱くなり、心配で肝を冷やし、それからヒューゴにもらった指輪に話しかけていた。

 婚姻の儀を行ってから三年が経った頃、ヒューゴ達は無事に魔王討伐を成し遂げた。

 ヒューゴに会える……!

 そう思って胸を震わせていたのも束の間、新聞がヒューゴと聖女様の仲睦まじい様子を次々報道するように。聖女様は、この国の第一王女でとても愛らしい兎獣人。ふわふわな金色の髪に、赤い瞳、真っ白なうさ耳は見る者すべてを魅了する。

 最初は気にしていなかったのに、お互いを見つめあう姿や手を取りあう姿を見て、胸にもやもやが広がっていく。それも半月を超えた辺りから、命をかけて旅した二人に恋が芽生えても仕方ないのでは? と思うようになっていた。

 銀髪青目のオオカミ獣人で勇者のヒューゴと金髪赤目の兎獣人で王女かつ聖女様──お似合いすぎる、と。


「はあああ~やっぱり離婚だよね……」


 勇者と聖女の婚約を祝福する記事を読んで、机に突っ伏した。どうしよう……。私と結婚していることがヒューゴの幸せの邪魔をしている事実に気づいてしまったら、頭を殴られたみたいに目が覚めた。

 ヒューゴと離婚しよう。白い結婚のまま三年間過ごしたから結婚をなかったことにできる。うんうん、そうしよう。だって、田舎の村に住む茶髪桃目の平凡な薬師の私が、勇者のヒューゴと一瞬でも想いあえたことが奇跡なんだから。

 ウルーフ家で働く人たちは、平民の私にとてもよくしてくれている。素敵なドレスや心のこもった食事、薬草園と薬を作るための部屋まで用意してくださった。でも、聖女様と結婚するヒューゴの家に私が居ては困ってしまうだろう。良くしてくれていたからこそ迷惑をかけたくない。

「これからどうしようかな?」

 私は、私とヒューゴが結婚したことを知っている人がいないところに行きたい。この国を出れば、ヒューゴと聖女様の話も聞かなくていいし、薬師の資格があれば自分一人くらい食べていけるはず。折角だから見たこともない薬草の生えている国に行ってみようか?

 なんだかワクワクしてきた。よし、そうと決まれば善は急げ。鞄に詰めれるだけ薬を詰めて身支度を整えていると、外が騒々しくなってきた。



 

「奥様! 旦那様が、ヒューゴ様が戻られました……っ!」
「え?」

 

 慌てて外へ出ていくと、以前より精悍になったヒューゴと兎獣人の女性が一緒に立っていた。一枚の絵のような完璧な美しさの二人。誰なんて聞かなくても聖女様だって一目で分かった。

「ただいま、エリサ」

 柔らかく微笑まれて胸が苦しくなる。ああ、ヒューゴの隣にいたのは私だったのに。醜い嫉妬が私を黒く染めていく。

「おかえりなさい…………勇者様」
「えっ、エリサ、どうしたの?」

 困惑するヒューゴを心配そうに見つめる聖女様を見たら、もう駄目だった。これから結ばれる二人をこれ以上見ているなんて私には無理。もう終わりにしたくて、ヒューゴを見上げた。





「私たち白い結婚だったので、離婚してください」

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