80 / 95
恋を泳ぐ
聖女と朝
しおりを挟む甘やかな夜を越えて、小鳥のさえずりで目が覚めた。爽やかな朝日を浴びながら身支度を整え、お揃いのマントを揺らして三人のところに向かう。
「っ! えっ、えええ~~ど、ど、ど、どうしてっ?!」
ロズとラピスがノワルと同じくらいの背丈になっていて、大人になっている。あまりに驚きすぎて声を上げた後は、言葉が続かなくて鯉みたいに口をぱくぱくさせてしまう。
「花恋様、おはよう。二人が成長したのは、昨日の夜に聖女の力が溢れすぎた影響だね」
「ひゃあ……っ!」
昨夜のことを当たり前のように話題に出されてしまい、痛いくらい頬が熱くなった。
「よし。花恋様の準備もできたし、登龍門に出発しようか」
にこにことノワルに告げられるけれど、大人のラピスとロズに頭がまったく付いて来ない。風の止まった鯉のぼりみたいに動けなくなった私に大人のロズが近づいてきて、艶やかに見つめられた。
「カレン様、まだ出発は早いですよね?」
「えっ……?」
言葉のの意図が分からなくて首を傾げると、ロズの口元が弧を描く。
「──カレン様、次は私の番ですよ」
「ふえっ?」
「ノワルは良くて、私は駄目だと言うことでしょうか?」
「ふええっ? あ、あの、違うの、違うんだけど……あ、ああ、あ、朝だから! い、い、今は朝だから!」
赤い瞳を細めたロズが、すらりと長い指で私の顎を掬う。
「カレン様は仕方ないですね。今は我慢します──夜になったら覚悟して?」
「ひ、ひゃあ……っ」
私の声は、ロズの唇に食べられて意地悪なキスに頭が真っ白になった。
「かれんさまー、ぼくもいいよねー?」
「ふええ……っ?!」
「だめなのー? ぼくだけダメなのー?」
大人なのに天使のようなまっすぐな瞳に見つめられる。青色の瞳に見つめられれば、なんでも叶えてあげたくなってしまうけれど。
「あっ、ああ、あの、もちろん、駄目じゃないよ……! で、でもね、今は、朝だし、それに、登龍門昇らないといけないからっ!」
全身から汗が吹き出しながら、首をぶんぶん横に振って大人ラピスに伝えた。
「それならー今すぐに登龍門をのぼりにいこうよー!」
いつの間にか、大人ロズではなくて大人ラピスが目の前に立っている。ぐんっと背の伸びた長身のラピスを見上げると、大きな手で私の頬をむにっと挟んだ。
「おいしそうーいただきまーす」
「へっ、へあ……っ?!」
私の鳴き声はちゅうっと唇ごと奪われて、ただただ翻弄される。涙目でラピスを見上げたらぺろりと唇の端を舐めていた。
ど、ど、どうしよう、ロズもラピスも大人になっていて、どうしたらいいのかわからない。格好いいし、色気もあるし、天使だし、すごく素敵なんだけど、やっぱり大人の二人に戸惑ってしまう。
──ぽんっ
「あららなのーもどっちゃったなのー」
「戻ってしまいましたね」
可愛らしい音と共に大人なロズとラピスは、いつもの二人に戻っている。
「へあっ? な、な、なんでっ?!」
あまりにも驚いて目を見開いた。ぽかんと鯉のぼりみたいに大きく口がひらいたままになる。
間抜けな顔を晒した私に、聖女の魔力で変化できることを教えられた。私が望めば魔力の消費は少なくて済むけれど、望まない変化は魔力の消費が多いことを教えてもらう。
今は、突然のことで戸惑って驚いた私のキャパオーバーで魔力が途切れ、大人の姿ではなくなったらしい。
「カレン様が意地悪したお返しのつもりでしたけど、時間切れですね」
「ふええ?」
「まったく黒色と抜け駆けして、酷い聖女様ですね」
「あわわわ、ご、ごめんなさい……」
「いえ。わたしとも交わる約束をしてくださったので、気にしてませんよ」
「~~~~~~っ?!?!」
色気をたっぷり放つロズの瞳から、目を逸らすことができない。甘い眼差しに顔が痛いくらいに熱くなっていく。
「カレン様といちゃいちゃする時は、また大人の姿になりますので──覚悟してね」
「ぼくもおとなになるのーいちゃいちゃいっぱいするのー」
赤色と青色の鯉のぼりに笑顔で告げられて、私はただただ頷くことしか出来なかった。
2
あなたにおすすめの小説
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど
睦月はむ
恋愛
剣と魔法の国オルランディア王国。坂下莉愛は知らぬ間に神薙として転移し、一方的にその使命を知らされた。
そこは東西南北4つの大陸からなる世界。各大陸には一人ずつ聖女がいるものの、リアが降りた東大陸だけは諸事情あって聖女がおらず、代わりに神薙がいた。
予期せぬ転移にショックを受けるリア。神薙はその職務上の理由から一妻多夫を認められており、王国は大々的にリアの夫を募集する。しかし一人だけ選ぶつもりのリアと、多くの夫を持たせたい王との思惑は初めからすれ違っていた。
リアが真実の愛を見つける異世界恋愛ファンタジー。
基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。
気に入って頂けましたら、お気に入り登録etc.で応援を頂けますと幸いです。
連載中のサイトは下記4か所です
・note(メンバー限定先読み他)
・アルファポリス
・カクヨム
・小説家になろう
※最新の更新情報などは下記のサイトで発信しています。
https://note.com/mutsukihamu
※表紙などで使われている画像は、特に記載がない場合PixAIにて作成しています
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハーレム異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーレムです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです
白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。
ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。
「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」
ある日、アリシアは見てしまう。
夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを!
「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」
「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」
夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。
自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。
ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。
※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる