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メニー
Mボーイの会話
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(某お笑い芸人ネタを、テリーとメニーがしてみたようです(*'ω'*))
穏やかな昼下がり。ソファーでくつろぐテリーと、本を読むメニー。メニーの足元には猫のドロシーが丸くなり、大きな伸びをして、メニーのドレスを引っ張った。
「ん?」
「にゃー」
ドロシーが手を差し出し、メニーが受け取った。笑顔をテリーに向ける。
「ねえ、お姉ちゃん、ドロシーから本屋さんの名刺を貰った」
「ドレスの内ポケットに入れておきなさい」
「うん」
メニーが名刺を内ポケットにしまった。
「そういえばね、お姉ちゃん」
「ん?」
「お母様が好きな物語があるらしいんだけどね」
「ふーん。そうなの」
「その物語の名前を忘れちゃったんだって」
「まあ、物語って沢山あるものね」
「そうなんだよね」
「でもママくらいになってくると、どうせハーレクイン文庫辺りでしょ」
「それが違うみたいで」
「違うの?」
「うん。私も色々聞いたんだけど、どうも違うみたいで。思い出せないんだって」
「ママの好きな物語?」
「お姉ちゃん、一緒に考えてくれない? ドロシーも分からないんだって」
「いいわ。それでママの機嫌が良くなって、お小遣いが増えたらいいこと尽くしだもの」
「やった」
「で、どんな物語なの? 物語の特徴が分かればタイトルも分かると思うの」
「なんでもね、赤い頭巾を被った女の子の物語なんだって」
「ふーん……」
テリーがメニーを見た。
「赤頭巾よね。それ」
「んー」
「どう考えても、それは赤頭巾よ。簡単だったわね。すぐに分かっちゃったわ」
「うーん。それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。赤頭巾に決まってるでしょ。そんなの」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったの」
「思ったのじゃなくて、そうでしょ」
「でも、お母様が言うには、死ぬ直前に絶対に読みたい物語だって言うの」
「ふーん。……じゃあ赤頭巾じゃないわね」
「うん」
「赤頭巾は死ぬ直前に読むものじゃないわよね」
「食べられちゃうしね」
「赤頭巾の物語は、まだ命に余裕があるから読めるものであって、死ぬ直前に読む物語を赤頭巾にしてしまったら、赤頭巾だって荷が重いわよ」
「そうなんだよね」
「じゃあ、赤頭巾じゃないわね。もう少し詳しく教えてくれる?」
「どうしてお婆様が食べられてしまうのかって」
「ええ。それ赤頭巾よね」
「うん」
「お婆様を丸呑みしてしまう狼の口の大きさったらないわよね。一体何があったらお婆様を丸呑み出来る口があるのかしら。でもあたしは分かってるの。それは物語だから出来ることであって実際は人間一人丸呑みできる狼なんていないのよ。あたしは騙されないわよ。あたしを騙せたら大したものよ」
「うん」
「それであれの絵本とか見てみたら、大抵お婆様が小さめに描かれてるのよね。違和感を出さないように絵描きがそうしてるのよ。あたしは何でもお見通りなんだから。赤頭巾よ。そんなの」
「うーん。それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。それで」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったんだけどね」
「思ったんだけど、じゃなくてそうでしょ」
「お母様が言うには、食後の後に見ても全然いいって言うの」
「うん。……それじゃあ赤頭巾じゃないわね」
「うん」
「食後に音読なんかされたら思わずテーブルをひっくり返してしまうわ。あれはね、まだ昼間のお腹が空いてない時に誰かと一緒に見て、赤ずきんちゃんとお婆様が助かって良かったわねって見るものなんだから」
「そうなんだよね」
「そういうからくりだから。あれ」
「うん」
「じゃあ赤頭巾じゃないわね。他に何か言ってなかった?」
「子供の頃、よく見てたって」
「赤頭巾じゃないのよ。それ。灰被り姫と人魚姫と赤頭巾はセットで見るものなんだから」
「うん」
「あと白雪姫と不思議の国のアリスも見てたでしょ」
「うん」
「そんなの赤頭巾しかないじゃないのよ」
「うーん。それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。それで」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったんだけどね」
「いや、そうでしょ。どう考えても」
「お母様が言うには、神父様も祈る前に読んでるって」
「じゃあ赤頭巾ではないじゃない」
「そうなんだよね」
「神父様は祈る前にそんなもの読まないから」
「うん」
「赤頭巾はね、暇してる子供の教育のための教科書みたいなものなんだから」
「うん」
「じゃあ赤頭巾ではないじゃない。もう少し何か言ってなかった?」
「狼と狩人が出て来るって」
「赤頭巾じゃない。狩人が正義の味方になるってそれ赤頭巾しかないわよ。狩人って大抵悪者になるんだから。もし法律が狩人を平和の象徴として見るなら、あたしは動くわよ」
「うん」
「赤頭巾よ。そんなの」
「それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったんだけどね」
「いや、そうでしょ」
「お母様が言うにはね、ジャンルで言うならコメディだって」
「じゃあ赤頭巾じゃないわね。あれを近いジャンルで言うならホラーじゃない。狼が牙を剥きだして人を襲うのよ。壁中に血が飛び散るのよ」
「そうなんだよね」
「そんなの赤頭巾ではないじゃない。もっと他に何か言ってなかった?」
「物語の途中で、女の子からの質問が沢山あるって」
「赤頭巾じゃないのよ。女の子からの質問が沢山あるってそれ赤頭巾以外で見たことある? ヘンゼルとグレーテルだって質問攻めなんて馬鹿な真似はしなかったわ。赤頭巾よ。そんなの」
「それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。赤頭巾よ」
「いや、私も赤頭巾だと思ったんだけどね」
「そうでしょ?」
「お母様が言うには、漫画で例えると」
「漫画?」
「少年漫画だって言うの」
「じゃあ赤頭巾じゃないわね」
「そうなんだよね」
「あれのどこが少年漫画なのよ。少年は一切出てこない。あれは漫画で言うなら少し年齢層の高い少女漫画よ。それくらい小さな子供達にはショッキングな内容なのよ。あれ」
「うん」
「赤頭巾ではないじゃない。もう少し何か言ってなかった?」
「読んでる時に、知らない人には気を付けようと思ったって」
「赤頭巾じゃないのよ。赤頭巾はね、知らない人に声をかけられてもついて行かない。寄り道しないがテーマの物語なのよ」
「うん」
「それ赤頭巾よ。決まり」
「分からないんだよね」
「分からないことじゃない。ママの好きな物語は赤頭巾よ」
「お母様が言うには」
「そうでしょ?」
「赤頭巾じゃないって言うの」
「じゃあ赤頭巾ではないじゃない。ママが違うって言うならそれは赤頭巾じゃないということよ。じゃあ元々赤頭巾ではなかったってことじゃない」
「そうなんだよね」
「先に言いなさいよ」
「ごめん」
「あたしが延々と赤頭巾について語ってる間、あんた、どう思ってたの」
「申し訳ないよ。だから」
「本当に分からないじゃない。どうなってるのよ」
「アメリお姉様が言うにはね?」
「アメリ?」
「ボボボーボ・ボーボボじゃないかって」
「いや、絶対違う」
姉妹達は、大きな謎に眉をひそめていた。
Mボーイの会話 END
穏やかな昼下がり。ソファーでくつろぐテリーと、本を読むメニー。メニーの足元には猫のドロシーが丸くなり、大きな伸びをして、メニーのドレスを引っ張った。
「ん?」
「にゃー」
ドロシーが手を差し出し、メニーが受け取った。笑顔をテリーに向ける。
「ねえ、お姉ちゃん、ドロシーから本屋さんの名刺を貰った」
「ドレスの内ポケットに入れておきなさい」
「うん」
メニーが名刺を内ポケットにしまった。
「そういえばね、お姉ちゃん」
「ん?」
「お母様が好きな物語があるらしいんだけどね」
「ふーん。そうなの」
「その物語の名前を忘れちゃったんだって」
「まあ、物語って沢山あるものね」
「そうなんだよね」
「でもママくらいになってくると、どうせハーレクイン文庫辺りでしょ」
「それが違うみたいで」
「違うの?」
「うん。私も色々聞いたんだけど、どうも違うみたいで。思い出せないんだって」
「ママの好きな物語?」
「お姉ちゃん、一緒に考えてくれない? ドロシーも分からないんだって」
「いいわ。それでママの機嫌が良くなって、お小遣いが増えたらいいこと尽くしだもの」
「やった」
「で、どんな物語なの? 物語の特徴が分かればタイトルも分かると思うの」
「なんでもね、赤い頭巾を被った女の子の物語なんだって」
「ふーん……」
テリーがメニーを見た。
「赤頭巾よね。それ」
「んー」
「どう考えても、それは赤頭巾よ。簡単だったわね。すぐに分かっちゃったわ」
「うーん。それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。赤頭巾に決まってるでしょ。そんなの」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったの」
「思ったのじゃなくて、そうでしょ」
「でも、お母様が言うには、死ぬ直前に絶対に読みたい物語だって言うの」
「ふーん。……じゃあ赤頭巾じゃないわね」
「うん」
「赤頭巾は死ぬ直前に読むものじゃないわよね」
「食べられちゃうしね」
「赤頭巾の物語は、まだ命に余裕があるから読めるものであって、死ぬ直前に読む物語を赤頭巾にしてしまったら、赤頭巾だって荷が重いわよ」
「そうなんだよね」
「じゃあ、赤頭巾じゃないわね。もう少し詳しく教えてくれる?」
「どうしてお婆様が食べられてしまうのかって」
「ええ。それ赤頭巾よね」
「うん」
「お婆様を丸呑みしてしまう狼の口の大きさったらないわよね。一体何があったらお婆様を丸呑み出来る口があるのかしら。でもあたしは分かってるの。それは物語だから出来ることであって実際は人間一人丸呑みできる狼なんていないのよ。あたしは騙されないわよ。あたしを騙せたら大したものよ」
「うん」
「それであれの絵本とか見てみたら、大抵お婆様が小さめに描かれてるのよね。違和感を出さないように絵描きがそうしてるのよ。あたしは何でもお見通りなんだから。赤頭巾よ。そんなの」
「うーん。それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。それで」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったんだけどね」
「思ったんだけど、じゃなくてそうでしょ」
「お母様が言うには、食後の後に見ても全然いいって言うの」
「うん。……それじゃあ赤頭巾じゃないわね」
「うん」
「食後に音読なんかされたら思わずテーブルをひっくり返してしまうわ。あれはね、まだ昼間のお腹が空いてない時に誰かと一緒に見て、赤ずきんちゃんとお婆様が助かって良かったわねって見るものなんだから」
「そうなんだよね」
「そういうからくりだから。あれ」
「うん」
「じゃあ赤頭巾じゃないわね。他に何か言ってなかった?」
「子供の頃、よく見てたって」
「赤頭巾じゃないのよ。それ。灰被り姫と人魚姫と赤頭巾はセットで見るものなんだから」
「うん」
「あと白雪姫と不思議の国のアリスも見てたでしょ」
「うん」
「そんなの赤頭巾しかないじゃないのよ」
「うーん。それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。それで」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったんだけどね」
「いや、そうでしょ。どう考えても」
「お母様が言うには、神父様も祈る前に読んでるって」
「じゃあ赤頭巾ではないじゃない」
「そうなんだよね」
「神父様は祈る前にそんなもの読まないから」
「うん」
「赤頭巾はね、暇してる子供の教育のための教科書みたいなものなんだから」
「うん」
「じゃあ赤頭巾ではないじゃない。もう少し何か言ってなかった?」
「狼と狩人が出て来るって」
「赤頭巾じゃない。狩人が正義の味方になるってそれ赤頭巾しかないわよ。狩人って大抵悪者になるんだから。もし法律が狩人を平和の象徴として見るなら、あたしは動くわよ」
「うん」
「赤頭巾よ。そんなの」
「それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ」
「いや、私もね、赤頭巾だと思ったんだけどね」
「いや、そうでしょ」
「お母様が言うにはね、ジャンルで言うならコメディだって」
「じゃあ赤頭巾じゃないわね。あれを近いジャンルで言うならホラーじゃない。狼が牙を剥きだして人を襲うのよ。壁中に血が飛び散るのよ」
「そうなんだよね」
「そんなの赤頭巾ではないじゃない。もっと他に何か言ってなかった?」
「物語の途中で、女の子からの質問が沢山あるって」
「赤頭巾じゃないのよ。女の子からの質問が沢山あるってそれ赤頭巾以外で見たことある? ヘンゼルとグレーテルだって質問攻めなんて馬鹿な真似はしなかったわ。赤頭巾よ。そんなの」
「それが分からないんだよね」
「何が分からないのよ。赤頭巾よ」
「いや、私も赤頭巾だと思ったんだけどね」
「そうでしょ?」
「お母様が言うには、漫画で例えると」
「漫画?」
「少年漫画だって言うの」
「じゃあ赤頭巾じゃないわね」
「そうなんだよね」
「あれのどこが少年漫画なのよ。少年は一切出てこない。あれは漫画で言うなら少し年齢層の高い少女漫画よ。それくらい小さな子供達にはショッキングな内容なのよ。あれ」
「うん」
「赤頭巾ではないじゃない。もう少し何か言ってなかった?」
「読んでる時に、知らない人には気を付けようと思ったって」
「赤頭巾じゃないのよ。赤頭巾はね、知らない人に声をかけられてもついて行かない。寄り道しないがテーマの物語なのよ」
「うん」
「それ赤頭巾よ。決まり」
「分からないんだよね」
「分からないことじゃない。ママの好きな物語は赤頭巾よ」
「お母様が言うには」
「そうでしょ?」
「赤頭巾じゃないって言うの」
「じゃあ赤頭巾ではないじゃない。ママが違うって言うならそれは赤頭巾じゃないということよ。じゃあ元々赤頭巾ではなかったってことじゃない」
「そうなんだよね」
「先に言いなさいよ」
「ごめん」
「あたしが延々と赤頭巾について語ってる間、あんた、どう思ってたの」
「申し訳ないよ。だから」
「本当に分からないじゃない。どうなってるのよ」
「アメリお姉様が言うにはね?」
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「ボボボーボ・ボーボボじゃないかって」
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姉妹達は、大きな謎に眉をひそめていた。
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