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キッド
囚われ姫と冷酷王子(4)※
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朝になり、テリーが目を覚ました。キッドは隣で自分に背を向け眠っている。
(……朝……)
テリーがだるい体を起こし、部屋を見回すと――一ヶ所だけいつもと違った。
「え……?」
頑なに開けようとしても開かなかったドアが――開いていたのだ。キッドの部屋とつながり、そこからドアを開き、廊下に出れば――この城から抜け出せるだろう。
「……」
テリーはキッドを起こさないようにそっとベッドから抜け出し、ドアに近づく。ドアは開いている。
「……」
振り返る。キッドは眠っている。抜け出すなら今しかないだろう。
「……」
テリーはその場で立ち尽くし、動けず、目の前の部屋を見つめる。一歩。一歩前に出れば、この部屋から抜け出せる。けれど、――けれど、思うのだ。
キッドをこのまま置いていっていいのかと。
「……」
振り返ってみる。やはりキッドは背を向け眠っている。
「……」
テリーは眉を下げ、肩を落とし、うなだれ、目をつむった。
「……」
息を吸い込み、そして――自らの両手でドアを閉めた。
「……」
――これでいい。
テリーは覚悟を決める。
――これでいいのよ。
「……どうして?」
その声で、テリーがはっとした。振り返ると、眠っていたはずのキッドが上体を起こしていて、眉を下げてテリーを見ていた。
「外に出たいだろ?」
「……キッドさま、わざとドアを……」
「ここは君にふさわしくない」
キッドがベッドから抜け出し、大股で歩き、ドアを開けた。
「君は……ここから出るべきだ」
「キッドさま……」
「出ていくんだ。テリー。……おれが、君を引き留めない今のうちに」
キッドが唇を噛み、テリーに背を向けた。
「心配なことはない。……君は第一王子という偉大な人物に抱かれた女。君を傷物なんて言う奴はいないだろう。むしろ、……どんな女か、みんな興味を持って、君に笑顔で手を伸ばすはずだ」
「……」
「どうか……おれのことを忘れて……幸せになって」
拳を握り締め、つぶやく。
「テリー、……愛してる」
「……キッドさま……」
「頼む。出ていってくれ。そうしないと……おれは……君にひどいことをしてしまいそうなんだ……」
「……一つ、……訊いてもいいですか」
テリーは意を決して、質問を投げた。
「あなたは……なぜ……あたしをここに閉じ込めたのですか……?」
「……どこから話せばいいかな。……そうだな。……まずは、……これかな」
キッドが手をあげて、そこから炎を出して見せた。テリーはびっくりして目を丸くする。
「……おれは、生まれつき魔力を持ってるんだ」
だからこそ全てを完璧にこなした。王子に必要なことは全てやった。
「おれは魔力を持ってるが故に物事を完璧にこなした。でも、弟が生まれてから……不器用な弟を……みんな可愛がった」
キッドは大丈夫。あの子は完璧だから。
リオンは可哀想。大切に面倒見てあげないと。
「父上と母上は、確かに俺を愛してくれた。でも、……リオンと比べたら、……おれはただのお飾りだ」
リオンはキッドの欲しいものを手に入れる。
愛情。友情。仲間。心。……やはり愛情。
「愛されてるリオンを見ると……自分がすごく……みじめになった」
完璧だったのに。
完璧に、全てをこなしたのに。
「愛されたかった」
「リオンよりも」
「誰かに愛されたかった」
「だから城を出て、一般人に紛れ込んだ」
「地位なんか関係なく、おれを愛してくれる人をさがして」
「……テリーの笑顔を見た時に思ったんだ」
「魔力持ちの……呪われたおれなんかに、笑顔を向けてくれるこの子なら……おれを愛してくれるかもって……」
でも、
「昨晩、花の蕾に笑ってるテリーを見て……思った」
おれは愛に飢えて、愛にあふれたテリーに甘えてるだけだって。
「おれはテリーを愛してる」
幸せになってほしい。
このままじゃ、テリーもおれのように壊れてしまう。
「……大丈夫だよ。テリーの子宮にはおれの魔力で壁を作ってた。だから……おれの精子を流したところで……子どもは出来てない」
「……」
「君は他の男を愛する資格がある。おれを忘れて、幸せになる権利がある」
キッドが俯いた。
「元気でね。テリー」
「……キッドさま……、どうか顔を上げてください……」
「……っ、君が……出ていくところを……見たくないんだ……」
「……キッドさま」
「頼む、テリー。……出ていくなら……早く……」
「いいえ」
キッドがはっと目を見開いた。自分の背中に、テリーがしがみついてるのだ。
「あたしはここから出ません」
「……っ……! テリー……!?」
「どうか……そんなさびしそうなお顔をされないでください……」
テリーが腕を伸ばし、後ろから――キッドを抱きしめた。
「……あたしが……あなたの側にいます……」
「……テリー……」
「……あたし……不器用だし……いっつもぼんやりしてるなんて家族から言われてて……」
でも、
「こんな……あたしでいいのなら……」
テリーは笑顔を浮かべ、キッドに寄り添った。
「ふつつかものですが……」
「だ、だけど……おれは……魔力持ちで……」
「体内に魔力があるからなんですか? そんなの、……関係ない」
テリーの心はもう決まっている。
「愛してます。……キッドさま」
「……っ、テリー……」
「離さないで。どうか……このあたしを……あなたのものにしてください……」
「……っ……」
キッドが振り返り、思い切りテリーを自らの腕で抱きしめた。
「テリー、……ああ……、おれのテリー……!」
テリーはふふっと笑って、仕方のない人だと思って、その背中を優しく撫でた。
「もう離さない。おれは君に囚われた囚人。君がおれの主。おれは……永遠に君だけを愛すると誓おう」
「キッドさま……」
「……テリー……」
愛おしくてたまらない頬に手を添えると、自分に笑顔を浮かべるテリーがいる。
「……愛してる……」
身をかがませ口づけを交わすと、テリーも瞼を下し、素直に従った。強く抱きしめると、背中を撫でられた。唇を離して頬に唇を押し当てると、テリーがクスクス笑った。笑っている。テリーが笑っている。
「……テリー」
「……くすぐったいです。……キッドさま……」
その笑顔を見たら、キッドの理性が切れてしまった。もう二度と離したくなくなってしまった。ドアを閉め、テリーを腕に抱き上げ、歩きだす。
「きゃあ! キッドさま!」
ベッドにテリーを置き、その上に覆いかぶさる。
「「……」」
頬を赤らめたテリーがキッドを見つめる。テリーへの愛に溺れているキッドが夢中のテリーを見つめる。テリーが微笑み、両手を開いてみせた。
「来て……キッドさま……」
「……もう……後戻りはできないよ?」
「かまいません」
笑顔のテリーがキッドの頬に手を添わせ、優しくなでる。
「その代わり……あたしを幸せにしてくれますか?」
「誓うよ。……誰よりも幸せにする」
「……うれしいです。……キッドさま……」
キッドが身を沈ませた。テリーの耳にキスをする。
「んっ」
「ね、テリー……」
キッドの手がネグリジェ越しから、テリーの体を撫でた。
「子どもは何人欲しい?」
「そうですね……。……んっ、……三人……くらい……」
「大丈夫。まだ、んっ、先の話だから……」
「んっ……んっ……」
大きなキッドの手が体を撫でるたびに、テリーの体がぴくん、ぴくんと揺れた。今までは恐怖の対象だった。囚われの身であった。だけど、――今では……心から愛おしい人が、大切に自分に触れてくれているのだ。自然と体が熱くなっていく。自分にキスをしてくるキッドを見上げる。
「キッド……さま……」
「しばらくは……二人でいよう……? 君の愛が……おれ以外に向けられるなんて……嫉妬して……どうにかなってしまいそう」
「あたしも……まだ……キッドさまと……二人でいたいです……」
「……っ、な、なんで、そういうこと、言うかな……」
「へ? だ、だってキッドさまが……仰ったから……」
「……あまり可愛いこと言わないでくれる? ……おれの心臓が持たないよ……」
「……キッドさま……」
「……もう……調子が狂う……」
唇が重なる。テリーが瞼を下し、キッドの感触を味わう。キッドの匂いに包まれている。今までは怖かったのに、今ではひどく落ち着く。口が開き、テリーの口の隙間からぬるりと、キッドの舌が割り込んできた。
(あっ……)
好きな人の舌。熱くて、大きくて、しつこくて、……絡まるたびに、胸が高鳴っていく。
(キッドさま……)
キッドの手がテリーの手と重なり、指同士が絡まり合う。
「キッドさま……」
「テリー……」
同じように呼吸を乱し、同じように体に熱を放ち、同じように――体に触れていく。
「……はあ……」
テリーが震える息を吐いた。
キッドの手によって、ネグリジェが胸の上までたくし上げられていく。
「……キッド……さま……」
大きな背中にしがみつくように腕を回し、キッドから与えられる快楽にもだえる。
「あっ……んっ……」
「テリー……熱いね……」
いつもより心臓が揺れ動いている。ときめきを感じる。幸福を感じる。今までは愛を求めていただけだった。今は――愛が存在していると――まるで違う。
「あ、キッドさま……、待って。……っ、……当たって……ます……」
「……仕方ないだろ……? ……テリーの体を見たら、……たまらなくなるんだ」
「……ん……」
「……最後まで……していい?」
「……」
テリーがかすかに、小さく頷いた。それを見て、キッドが微笑み、彼女のレースのぱんつを人差し指で軽く引っ張った。
「……脱がしていい?」
「……優しく……してくれますか……?」
「うん。……優しくする……」
優しい手付きでゆっくりぱんつを下に下ろしていく。あらわになったテリーのツルツルした肌に、キッドが唾を飲み込み、そっと手で触れた。
「……キッドさま……?」
その手が、テリーの両脚を左右に開く。
「あっ……!」
はしたなく開かれて、ようやく見えるようになった蕾。ピンク色に染まり、ぷるぷると震えているように見えて……キッドは我慢できず、顔をそこへと埋めた。
「き、キッドさま!? そこは……!」
キッドの舌に舐められた瞬間、テリーは電気が体を走ったような感覚に陥った。
「っっっ……!!」
キッドの舌がまだ咲かない蕾にめがけて唾液をつけていく。唾液をつけるために舐めなければいけない。ぺろりと舐めて、べろりと舐めて、べろべろべろべろと下品に舌を動かせば、テリーの腰がヒクンッ! とひくついた。
「んんっ……! キッドさま、あっ、そんなとこ、汚いのに……! あぁっ……!」
キッドはペロペロと舐め、人差し指でもくりくりといじり始める。
「ああっ! あんんんんっ! そ、そんな、激しいの、らめぇ……!」
気持ちよくなってくれてるのか、テリーのあそこからどんどん溢れてくる。キッドは中指を向け、ゆっくりとテリーの中に入れてみた。
「ん、んん……!」
腰がひくついて、まるで誘っているかのよう。それに……なんて声を出すんだ。テリー。おれじゃなければ、無理やり犯されてるよ。
中指がクチュクチュと音を立てて、テリーの中で動いていく。
「あっ、キッドさま、そんな一辺に、されたら……!」
蕾は舌で転がされ、中は指でもてあそばれる。大きな快楽に襲われ、テリーは思わずキッドの頭を押さえた。
「あっ、キッドさまの、変態……!」
変態と言われて……余計に興奮してくる。さらに舐めると、テリーが目を見開いた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、だめ、だめ、だめだめだめだめだめ……! きもちいい! きもちいいぃぃいい!!」
キッドの中指の動きが早くなる。クチュチュチュチュチュ!
「あ♡ あ♡ あ♡ あ♡ おかしくぅ♡ おかしくなっちゃぅうう♡!」
中指が奥まで突いてきた。
「あっ――!」
テリーがキッドの中指をぎゅっとしめ付けた。この感触が……たまらない。まるでテリーが離さないでと言ってるようだから。キッドはにやけながら上体を起こし、テリーを見下ろした。
「……気持ちよかった?」
「……そんなところ……舐めないでください……」
「ぷにぷにしてて可愛かったよ」
「……ばか……」
ばかと言われたのにときめいてしまう。キッドはもうテリー以外見えない。テリーの全てに興奮してしまう。
「……おいで」
「あっ……」
体を起こされ、キッドがぱんつを脱いだ。そこには、すでに頭を天に向けた熱があった。キッドの上にまたがるように座らされ……キッドがテリーの蕾の位置を確認し……ゆっくりと腰を下ろさせた。
「あっ……」
自分の中に入ってくる異物を感じる。
「……ん……」
テリーがゆっくりと腰を下ろすと、全て入りきった。そしてゆっくりと呼吸し、キッドを見下ろすと、鎖骨にキスをされた。
「んっ……キッドさま……」
「痛かったらすぐに言ってね。テリー」
「は、はい……」
キッドが下から突いてくる。テリーの腰がビクンッ! と痙攣した。
「あっ」
小刻みで突いてくる感覚に――また体が敏感になっていく。
「はぁ……はあ……っ」
テリーがキッドに抱きつき、この快楽に堪えようとうずくまる。その仕草すら可愛い。愛おしい。キッドがテリーの腰に手を当て、耳元で囁いた。
「ねえ、テリー、テリーも……動いてみて」
「で、出来ません……!」
「ゆっくりでいい。……乱れたテリーが見たいんだ」
「……っ」
「ね?」
最愛のキッドに言われたら、テリーは従うしかない。ゆっくり自らの力で腰を上げ、また下ろしてみた。
「あっ」
思った以上の快楽に、けしからぬ声が出る。でもキッドは微笑みながら待ってる。テリーは再度腰を動かし、上下運動を始める。その場でぴょんぴょん飛び跳ねるように動けば……キッドの顔色も、テリーも……快楽から変化していく。
「あ、テリー、んっ、すごく、いい……」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「ん……気持ちいい……テリー……」
「ひゃっ……!」
テリーが突然驚きの声をあげた。
「急に……大きく……」
「だって、テリーがおれに乗って……自分から腰を振ってるんだよ……?」
興奮しないほうがおかしいよ。そんなの。
「テリー……」
「……キッドさま……」
「……ごめん。テリーの味がするかもしれないけど、……キスしていい?」
「……」
頷くと、キッドがテリーの口を塞いだ。変な味がする。しかし、唇を触れてるのが嬉しくて、テリーは無我夢中になる。……ふと、キッドの腰がテリーを突いた。
「っ」
「だめだよ。こっちを忘れたら」
「……あ……」
テリーが腰を動かす。しかし、上からキッドに至るところにキスをされて、それらも全て敏感に感じてしまう。
「はっ、あっ、あっ、んっ、あっ、あ」
「テリー……、綺麗だよ……。愛してる……」
「んっ、あっ、キッド、さま……っ、あっ」
水が弾ける音が響く。
はしたなく混じり合う音が耳に入ってくる。
しかし、それがとてつもなく良くて、お互いがお互いの目を見つめたまま、絶頂へと近づいていく。
「あっ、キッドさま、あたし……っ」
「いいよ。イって。テリーのタイミングで、ね」
「あっ、も、だめっ、キッド、さま」
「テリー、そんな、声、出されたら、おれっ」
「あ、だめ、イク、イク、イク……っ……!」
「……ぐっ……!」
その瞬間――天に登ってしまうような快楽が体を駆け巡り――中で温かな熱が吐き出されて感覚に体が震えて――テリーが脱力し、キッドに倒れ込んだ。キッドがそれを受け止め、テリーを強く抱きしめ、乱れた呼吸を繰り返し、彼女にキスをした。
「……キッドさま……」
「ずっと愛してる……。テリー……」
「……あたしも……」
微笑む。
「愛してます……。キッドさま……」
そう言って、今度はテリーから口づけを交わした。キッドが目を見開き、そっと瞼をおろして、……テリーの愛に身を委ねることにした。
後に、第一王子と男爵令嬢の婚約が発表された。地位の違いに皆は感心した。テリーの花が舞う結婚式で、キッドが隣に座るテリーに伝えた。
「一生幸せにする」
「……愛してます。キッドさま」
「……おれも……すごく愛してる……テリー」
どちらともなく顔を近づかせ、口づけを交わす。祝いの鐘が鳴り響く。城下町の皆が二人に祝いの声を上げる。
唇を離し、お互いの顔を見て、キッドとテリーは、幸せそうに笑いあった。
(*'ω'*)
笑顔のテリーがキッチン台に立つ二人に声をかけた。
「ねー、マッチってどこだっけ?」
「マッチ?」
「暖炉の上にないかい?」
「暖炉の上ね」
笑顔のテリーが暖炉の上を見た。マッチが置かれていた。
「ああ、あったあった」
マッチに火をつけ、暖炉にばらまいた紙に向かって投げた。たちまち薪ごと燃え始めて、紙の山でダンスをするように赤い姿を見せる。テリーが両手を差し出し、ほっとした。
「はあ。あったかい」
「ダーリン、お茶の準備ができたぞ。……ん? 暖炉に火なんかつけてどうした? 今日は結構あったかいのにっ……」
暖炉で燃える紙の束を見て、クレアがぞっと顔を青く染めた。テーブルを見る。ない。
「あああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「はあ。あったかい」
「貴様ぁぁあああああああああああ!!」
暖炉を覗く。メラメラと燃えている。それはそれは、テリーの怒りの炎のように。
「ぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「はあ。あったかい」
「ダーリン! ひどい! なんてことするの! せっかくの大作が!!」
「やったわね! てめえ、よくもやってくれたわね!! なにがポメテリーよ! なにが囚われた囚人よ! てめえは頭おかしいのか!!」
「ロマンチックなあたくしの小説が!!」
「なにがロマンチックよ!! どこがブラックジョークロマンチックファンタジーよ!!」
「愛に飢えた王子に囚われた姫! 徐々に理解しあって好きになっていく両者! 最後はハッピーエンド!! すごく素敵な物語だったのに! よくもあたくしの努力を炎の塵にしてくれたな!!」
「いーい!? クレアちゃん! イケメン補正でどうにかなってるけどね! デブでハゲでストーカーのシコザル男がこれをやったらどうなると思う!? ええ!! 立派な犯罪よ!! 誘拐された相手が誘拐犯に対して好意的になる!! これはね、極度のストレスから仲良くなっちゃう現象なの! ストックホルム症候群ってご存じかしらぁーーーー!?」
■ストックホルム症候群
誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床において、被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くことをいう。ただし臨床心理学における心理障害(精神障害)ではなく、心的外傷後ストレス障害として扱われる。
※ウィキピーディアは、あなたのご支援を必要としています。読者の98%は寄付をしてくださらず、見て見ぬふりをします。あなたがご希望の記事を読む前に私たちがお願いしているのは300ワドル。惑いはあなたがお支払いいただける金額のご負担です。どうぞスクロールせず、ご支援をお願いいたします。ぺえぺえ可能です(*'ω'*)
「別に現実の話なんてしてないではないか! あたくしはファンタジーの話をしてるの!!」
「うるせえ!! よくもあたしの名前を使ってくれたわね!! 背筋がぞわぞわするセリフ回しをなんべんもなんべんも言わせやがって! 名誉棄損! 名誉棄損! 名誉棄損!! 著作権保護法発動!! IPアドレス抜いてやるからね!! 訴えてやるから! 謝罪を求めるわ! 土下座を求めるわ!」
「あーーーー! すぐにそうやって謝罪を求める!! パワハラ! モラハラ! ダーリンのそういうところだ!!」
「だったら言わせてもらうけどね、てめえのそういうところよ!!」
「どういうところだよ!!」
「そういうところよ!!」
「テリー!」
「なによ!!」
「よくもおれの大作を!!」
「ふざけんじゃねえ! キッドのくせに!!」
「チビ!!」
「木偶の坊!」
「Cカップ!!」
「トリプルA!!」
「テリーーーーーーー!!」
「くらえ!! 膝蹴り!!」
「お前なんてこうしてくれる!!」
「ぎゃああああ!! なにすんのよ!! このバカたれーーー!!」
暖炉の前でぎゃあぎゃあ騒ぎ立てる二人を見て、ビリーは思った。
(……外が涼しくなってきたな。冬が近い……)
鼻にかすれる冬の匂いを感じながら、ビリーはゆっくりと紅茶を飲むのであった。
囚われ姫と冷酷王子 END
(……朝……)
テリーがだるい体を起こし、部屋を見回すと――一ヶ所だけいつもと違った。
「え……?」
頑なに開けようとしても開かなかったドアが――開いていたのだ。キッドの部屋とつながり、そこからドアを開き、廊下に出れば――この城から抜け出せるだろう。
「……」
テリーはキッドを起こさないようにそっとベッドから抜け出し、ドアに近づく。ドアは開いている。
「……」
振り返る。キッドは眠っている。抜け出すなら今しかないだろう。
「……」
テリーはその場で立ち尽くし、動けず、目の前の部屋を見つめる。一歩。一歩前に出れば、この部屋から抜け出せる。けれど、――けれど、思うのだ。
キッドをこのまま置いていっていいのかと。
「……」
振り返ってみる。やはりキッドは背を向け眠っている。
「……」
テリーは眉を下げ、肩を落とし、うなだれ、目をつむった。
「……」
息を吸い込み、そして――自らの両手でドアを閉めた。
「……」
――これでいい。
テリーは覚悟を決める。
――これでいいのよ。
「……どうして?」
その声で、テリーがはっとした。振り返ると、眠っていたはずのキッドが上体を起こしていて、眉を下げてテリーを見ていた。
「外に出たいだろ?」
「……キッドさま、わざとドアを……」
「ここは君にふさわしくない」
キッドがベッドから抜け出し、大股で歩き、ドアを開けた。
「君は……ここから出るべきだ」
「キッドさま……」
「出ていくんだ。テリー。……おれが、君を引き留めない今のうちに」
キッドが唇を噛み、テリーに背を向けた。
「心配なことはない。……君は第一王子という偉大な人物に抱かれた女。君を傷物なんて言う奴はいないだろう。むしろ、……どんな女か、みんな興味を持って、君に笑顔で手を伸ばすはずだ」
「……」
「どうか……おれのことを忘れて……幸せになって」
拳を握り締め、つぶやく。
「テリー、……愛してる」
「……キッドさま……」
「頼む。出ていってくれ。そうしないと……おれは……君にひどいことをしてしまいそうなんだ……」
「……一つ、……訊いてもいいですか」
テリーは意を決して、質問を投げた。
「あなたは……なぜ……あたしをここに閉じ込めたのですか……?」
「……どこから話せばいいかな。……そうだな。……まずは、……これかな」
キッドが手をあげて、そこから炎を出して見せた。テリーはびっくりして目を丸くする。
「……おれは、生まれつき魔力を持ってるんだ」
だからこそ全てを完璧にこなした。王子に必要なことは全てやった。
「おれは魔力を持ってるが故に物事を完璧にこなした。でも、弟が生まれてから……不器用な弟を……みんな可愛がった」
キッドは大丈夫。あの子は完璧だから。
リオンは可哀想。大切に面倒見てあげないと。
「父上と母上は、確かに俺を愛してくれた。でも、……リオンと比べたら、……おれはただのお飾りだ」
リオンはキッドの欲しいものを手に入れる。
愛情。友情。仲間。心。……やはり愛情。
「愛されてるリオンを見ると……自分がすごく……みじめになった」
完璧だったのに。
完璧に、全てをこなしたのに。
「愛されたかった」
「リオンよりも」
「誰かに愛されたかった」
「だから城を出て、一般人に紛れ込んだ」
「地位なんか関係なく、おれを愛してくれる人をさがして」
「……テリーの笑顔を見た時に思ったんだ」
「魔力持ちの……呪われたおれなんかに、笑顔を向けてくれるこの子なら……おれを愛してくれるかもって……」
でも、
「昨晩、花の蕾に笑ってるテリーを見て……思った」
おれは愛に飢えて、愛にあふれたテリーに甘えてるだけだって。
「おれはテリーを愛してる」
幸せになってほしい。
このままじゃ、テリーもおれのように壊れてしまう。
「……大丈夫だよ。テリーの子宮にはおれの魔力で壁を作ってた。だから……おれの精子を流したところで……子どもは出来てない」
「……」
「君は他の男を愛する資格がある。おれを忘れて、幸せになる権利がある」
キッドが俯いた。
「元気でね。テリー」
「……キッドさま……、どうか顔を上げてください……」
「……っ、君が……出ていくところを……見たくないんだ……」
「……キッドさま」
「頼む、テリー。……出ていくなら……早く……」
「いいえ」
キッドがはっと目を見開いた。自分の背中に、テリーがしがみついてるのだ。
「あたしはここから出ません」
「……っ……! テリー……!?」
「どうか……そんなさびしそうなお顔をされないでください……」
テリーが腕を伸ばし、後ろから――キッドを抱きしめた。
「……あたしが……あなたの側にいます……」
「……テリー……」
「……あたし……不器用だし……いっつもぼんやりしてるなんて家族から言われてて……」
でも、
「こんな……あたしでいいのなら……」
テリーは笑顔を浮かべ、キッドに寄り添った。
「ふつつかものですが……」
「だ、だけど……おれは……魔力持ちで……」
「体内に魔力があるからなんですか? そんなの、……関係ない」
テリーの心はもう決まっている。
「愛してます。……キッドさま」
「……っ、テリー……」
「離さないで。どうか……このあたしを……あなたのものにしてください……」
「……っ……」
キッドが振り返り、思い切りテリーを自らの腕で抱きしめた。
「テリー、……ああ……、おれのテリー……!」
テリーはふふっと笑って、仕方のない人だと思って、その背中を優しく撫でた。
「もう離さない。おれは君に囚われた囚人。君がおれの主。おれは……永遠に君だけを愛すると誓おう」
「キッドさま……」
「……テリー……」
愛おしくてたまらない頬に手を添えると、自分に笑顔を浮かべるテリーがいる。
「……愛してる……」
身をかがませ口づけを交わすと、テリーも瞼を下し、素直に従った。強く抱きしめると、背中を撫でられた。唇を離して頬に唇を押し当てると、テリーがクスクス笑った。笑っている。テリーが笑っている。
「……テリー」
「……くすぐったいです。……キッドさま……」
その笑顔を見たら、キッドの理性が切れてしまった。もう二度と離したくなくなってしまった。ドアを閉め、テリーを腕に抱き上げ、歩きだす。
「きゃあ! キッドさま!」
ベッドにテリーを置き、その上に覆いかぶさる。
「「……」」
頬を赤らめたテリーがキッドを見つめる。テリーへの愛に溺れているキッドが夢中のテリーを見つめる。テリーが微笑み、両手を開いてみせた。
「来て……キッドさま……」
「……もう……後戻りはできないよ?」
「かまいません」
笑顔のテリーがキッドの頬に手を添わせ、優しくなでる。
「その代わり……あたしを幸せにしてくれますか?」
「誓うよ。……誰よりも幸せにする」
「……うれしいです。……キッドさま……」
キッドが身を沈ませた。テリーの耳にキスをする。
「んっ」
「ね、テリー……」
キッドの手がネグリジェ越しから、テリーの体を撫でた。
「子どもは何人欲しい?」
「そうですね……。……んっ、……三人……くらい……」
「大丈夫。まだ、んっ、先の話だから……」
「んっ……んっ……」
大きなキッドの手が体を撫でるたびに、テリーの体がぴくん、ぴくんと揺れた。今までは恐怖の対象だった。囚われの身であった。だけど、――今では……心から愛おしい人が、大切に自分に触れてくれているのだ。自然と体が熱くなっていく。自分にキスをしてくるキッドを見上げる。
「キッド……さま……」
「しばらくは……二人でいよう……? 君の愛が……おれ以外に向けられるなんて……嫉妬して……どうにかなってしまいそう」
「あたしも……まだ……キッドさまと……二人でいたいです……」
「……っ、な、なんで、そういうこと、言うかな……」
「へ? だ、だってキッドさまが……仰ったから……」
「……あまり可愛いこと言わないでくれる? ……おれの心臓が持たないよ……」
「……キッドさま……」
「……もう……調子が狂う……」
唇が重なる。テリーが瞼を下し、キッドの感触を味わう。キッドの匂いに包まれている。今までは怖かったのに、今ではひどく落ち着く。口が開き、テリーの口の隙間からぬるりと、キッドの舌が割り込んできた。
(あっ……)
好きな人の舌。熱くて、大きくて、しつこくて、……絡まるたびに、胸が高鳴っていく。
(キッドさま……)
キッドの手がテリーの手と重なり、指同士が絡まり合う。
「キッドさま……」
「テリー……」
同じように呼吸を乱し、同じように体に熱を放ち、同じように――体に触れていく。
「……はあ……」
テリーが震える息を吐いた。
キッドの手によって、ネグリジェが胸の上までたくし上げられていく。
「……キッド……さま……」
大きな背中にしがみつくように腕を回し、キッドから与えられる快楽にもだえる。
「あっ……んっ……」
「テリー……熱いね……」
いつもより心臓が揺れ動いている。ときめきを感じる。幸福を感じる。今までは愛を求めていただけだった。今は――愛が存在していると――まるで違う。
「あ、キッドさま……、待って。……っ、……当たって……ます……」
「……仕方ないだろ……? ……テリーの体を見たら、……たまらなくなるんだ」
「……ん……」
「……最後まで……していい?」
「……」
テリーがかすかに、小さく頷いた。それを見て、キッドが微笑み、彼女のレースのぱんつを人差し指で軽く引っ張った。
「……脱がしていい?」
「……優しく……してくれますか……?」
「うん。……優しくする……」
優しい手付きでゆっくりぱんつを下に下ろしていく。あらわになったテリーのツルツルした肌に、キッドが唾を飲み込み、そっと手で触れた。
「……キッドさま……?」
その手が、テリーの両脚を左右に開く。
「あっ……!」
はしたなく開かれて、ようやく見えるようになった蕾。ピンク色に染まり、ぷるぷると震えているように見えて……キッドは我慢できず、顔をそこへと埋めた。
「き、キッドさま!? そこは……!」
キッドの舌に舐められた瞬間、テリーは電気が体を走ったような感覚に陥った。
「っっっ……!!」
キッドの舌がまだ咲かない蕾にめがけて唾液をつけていく。唾液をつけるために舐めなければいけない。ぺろりと舐めて、べろりと舐めて、べろべろべろべろと下品に舌を動かせば、テリーの腰がヒクンッ! とひくついた。
「んんっ……! キッドさま、あっ、そんなとこ、汚いのに……! あぁっ……!」
キッドはペロペロと舐め、人差し指でもくりくりといじり始める。
「ああっ! あんんんんっ! そ、そんな、激しいの、らめぇ……!」
気持ちよくなってくれてるのか、テリーのあそこからどんどん溢れてくる。キッドは中指を向け、ゆっくりとテリーの中に入れてみた。
「ん、んん……!」
腰がひくついて、まるで誘っているかのよう。それに……なんて声を出すんだ。テリー。おれじゃなければ、無理やり犯されてるよ。
中指がクチュクチュと音を立てて、テリーの中で動いていく。
「あっ、キッドさま、そんな一辺に、されたら……!」
蕾は舌で転がされ、中は指でもてあそばれる。大きな快楽に襲われ、テリーは思わずキッドの頭を押さえた。
「あっ、キッドさまの、変態……!」
変態と言われて……余計に興奮してくる。さらに舐めると、テリーが目を見開いた。
「あ、あ、あ、あ、あ、あ、だめ、だめ、だめだめだめだめだめ……! きもちいい! きもちいいぃぃいい!!」
キッドの中指の動きが早くなる。クチュチュチュチュチュ!
「あ♡ あ♡ あ♡ あ♡ おかしくぅ♡ おかしくなっちゃぅうう♡!」
中指が奥まで突いてきた。
「あっ――!」
テリーがキッドの中指をぎゅっとしめ付けた。この感触が……たまらない。まるでテリーが離さないでと言ってるようだから。キッドはにやけながら上体を起こし、テリーを見下ろした。
「……気持ちよかった?」
「……そんなところ……舐めないでください……」
「ぷにぷにしてて可愛かったよ」
「……ばか……」
ばかと言われたのにときめいてしまう。キッドはもうテリー以外見えない。テリーの全てに興奮してしまう。
「……おいで」
「あっ……」
体を起こされ、キッドがぱんつを脱いだ。そこには、すでに頭を天に向けた熱があった。キッドの上にまたがるように座らされ……キッドがテリーの蕾の位置を確認し……ゆっくりと腰を下ろさせた。
「あっ……」
自分の中に入ってくる異物を感じる。
「……ん……」
テリーがゆっくりと腰を下ろすと、全て入りきった。そしてゆっくりと呼吸し、キッドを見下ろすと、鎖骨にキスをされた。
「んっ……キッドさま……」
「痛かったらすぐに言ってね。テリー」
「は、はい……」
キッドが下から突いてくる。テリーの腰がビクンッ! と痙攣した。
「あっ」
小刻みで突いてくる感覚に――また体が敏感になっていく。
「はぁ……はあ……っ」
テリーがキッドに抱きつき、この快楽に堪えようとうずくまる。その仕草すら可愛い。愛おしい。キッドがテリーの腰に手を当て、耳元で囁いた。
「ねえ、テリー、テリーも……動いてみて」
「で、出来ません……!」
「ゆっくりでいい。……乱れたテリーが見たいんだ」
「……っ」
「ね?」
最愛のキッドに言われたら、テリーは従うしかない。ゆっくり自らの力で腰を上げ、また下ろしてみた。
「あっ」
思った以上の快楽に、けしからぬ声が出る。でもキッドは微笑みながら待ってる。テリーは再度腰を動かし、上下運動を始める。その場でぴょんぴょん飛び跳ねるように動けば……キッドの顔色も、テリーも……快楽から変化していく。
「あ、テリー、んっ、すごく、いい……」
「あ、あ、あ、あ、あ、あ」
「ん……気持ちいい……テリー……」
「ひゃっ……!」
テリーが突然驚きの声をあげた。
「急に……大きく……」
「だって、テリーがおれに乗って……自分から腰を振ってるんだよ……?」
興奮しないほうがおかしいよ。そんなの。
「テリー……」
「……キッドさま……」
「……ごめん。テリーの味がするかもしれないけど、……キスしていい?」
「……」
頷くと、キッドがテリーの口を塞いだ。変な味がする。しかし、唇を触れてるのが嬉しくて、テリーは無我夢中になる。……ふと、キッドの腰がテリーを突いた。
「っ」
「だめだよ。こっちを忘れたら」
「……あ……」
テリーが腰を動かす。しかし、上からキッドに至るところにキスをされて、それらも全て敏感に感じてしまう。
「はっ、あっ、あっ、んっ、あっ、あ」
「テリー……、綺麗だよ……。愛してる……」
「んっ、あっ、キッド、さま……っ、あっ」
水が弾ける音が響く。
はしたなく混じり合う音が耳に入ってくる。
しかし、それがとてつもなく良くて、お互いがお互いの目を見つめたまま、絶頂へと近づいていく。
「あっ、キッドさま、あたし……っ」
「いいよ。イって。テリーのタイミングで、ね」
「あっ、も、だめっ、キッド、さま」
「テリー、そんな、声、出されたら、おれっ」
「あ、だめ、イク、イク、イク……っ……!」
「……ぐっ……!」
その瞬間――天に登ってしまうような快楽が体を駆け巡り――中で温かな熱が吐き出されて感覚に体が震えて――テリーが脱力し、キッドに倒れ込んだ。キッドがそれを受け止め、テリーを強く抱きしめ、乱れた呼吸を繰り返し、彼女にキスをした。
「……キッドさま……」
「ずっと愛してる……。テリー……」
「……あたしも……」
微笑む。
「愛してます……。キッドさま……」
そう言って、今度はテリーから口づけを交わした。キッドが目を見開き、そっと瞼をおろして、……テリーの愛に身を委ねることにした。
後に、第一王子と男爵令嬢の婚約が発表された。地位の違いに皆は感心した。テリーの花が舞う結婚式で、キッドが隣に座るテリーに伝えた。
「一生幸せにする」
「……愛してます。キッドさま」
「……おれも……すごく愛してる……テリー」
どちらともなく顔を近づかせ、口づけを交わす。祝いの鐘が鳴り響く。城下町の皆が二人に祝いの声を上げる。
唇を離し、お互いの顔を見て、キッドとテリーは、幸せそうに笑いあった。
(*'ω'*)
笑顔のテリーがキッチン台に立つ二人に声をかけた。
「ねー、マッチってどこだっけ?」
「マッチ?」
「暖炉の上にないかい?」
「暖炉の上ね」
笑顔のテリーが暖炉の上を見た。マッチが置かれていた。
「ああ、あったあった」
マッチに火をつけ、暖炉にばらまいた紙に向かって投げた。たちまち薪ごと燃え始めて、紙の山でダンスをするように赤い姿を見せる。テリーが両手を差し出し、ほっとした。
「はあ。あったかい」
「ダーリン、お茶の準備ができたぞ。……ん? 暖炉に火なんかつけてどうした? 今日は結構あったかいのにっ……」
暖炉で燃える紙の束を見て、クレアがぞっと顔を青く染めた。テーブルを見る。ない。
「あああああああああああああああああああああああああああああ!!」
「はあ。あったかい」
「貴様ぁぁあああああああああああ!!」
暖炉を覗く。メラメラと燃えている。それはそれは、テリーの怒りの炎のように。
「ぴぎゃあああああああああああああああああああああああああああ!!」
「はあ。あったかい」
「ダーリン! ひどい! なんてことするの! せっかくの大作が!!」
「やったわね! てめえ、よくもやってくれたわね!! なにがポメテリーよ! なにが囚われた囚人よ! てめえは頭おかしいのか!!」
「ロマンチックなあたくしの小説が!!」
「なにがロマンチックよ!! どこがブラックジョークロマンチックファンタジーよ!!」
「愛に飢えた王子に囚われた姫! 徐々に理解しあって好きになっていく両者! 最後はハッピーエンド!! すごく素敵な物語だったのに! よくもあたくしの努力を炎の塵にしてくれたな!!」
「いーい!? クレアちゃん! イケメン補正でどうにかなってるけどね! デブでハゲでストーカーのシコザル男がこれをやったらどうなると思う!? ええ!! 立派な犯罪よ!! 誘拐された相手が誘拐犯に対して好意的になる!! これはね、極度のストレスから仲良くなっちゃう現象なの! ストックホルム症候群ってご存じかしらぁーーーー!?」
■ストックホルム症候群
誘拐事件や監禁事件などの犯罪被害者についての臨床において、被害者が生存戦略として犯人との間に心理的なつながりを築くことをいう。ただし臨床心理学における心理障害(精神障害)ではなく、心的外傷後ストレス障害として扱われる。
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「別に現実の話なんてしてないではないか! あたくしはファンタジーの話をしてるの!!」
「うるせえ!! よくもあたしの名前を使ってくれたわね!! 背筋がぞわぞわするセリフ回しをなんべんもなんべんも言わせやがって! 名誉棄損! 名誉棄損! 名誉棄損!! 著作権保護法発動!! IPアドレス抜いてやるからね!! 訴えてやるから! 謝罪を求めるわ! 土下座を求めるわ!」
「あーーーー! すぐにそうやって謝罪を求める!! パワハラ! モラハラ! ダーリンのそういうところだ!!」
「だったら言わせてもらうけどね、てめえのそういうところよ!!」
「どういうところだよ!!」
「そういうところよ!!」
「テリー!」
「なによ!!」
「よくもおれの大作を!!」
「ふざけんじゃねえ! キッドのくせに!!」
「チビ!!」
「木偶の坊!」
「Cカップ!!」
「トリプルA!!」
「テリーーーーーーー!!」
「くらえ!! 膝蹴り!!」
「お前なんてこうしてくれる!!」
「ぎゃああああ!! なにすんのよ!! このバカたれーーー!!」
暖炉の前でぎゃあぎゃあ騒ぎ立てる二人を見て、ビリーは思った。
(……外が涼しくなってきたな。冬が近い……)
鼻にかすれる冬の匂いを感じながら、ビリーはゆっくりと紅茶を飲むのであった。
囚われ姫と冷酷王子 END
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