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キッド

男爵令嬢と冷酷王子ーその後の物語ー(2)

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 本音を言えば、――もっと、くっつきたい。強く抱き締められたい。もっと気持ちよくしてほしい。恥ずかしい言葉で責められて、胸をときめかせて、キッドに全てを委ねてしまいたい。こんなこと、絶対に言えないけれど。

(キッド)

 あたしの身体と心を奪った困った人。

「……キッド……、……愛してます……」

 キッドの手がぴくりと揺れた。

「……いいですよ。……あたしを、好きにしてください……。……あたしはあなたの物なので……」

 あ、その、

「……あまり、痛くしないでくだされば……」

 ――ぞくりと体が反応する。魅力的な誘惑に手が疼き、震え出す。テリーを穢したいと本能が騒ぎ始める。自分無しでは生きていけなくしたい。自分が触れてないと不安になるようにしたい。依存されたい。ずっとその美しい瞳で自分だけを見ててもらいたい。

 ――壊シタイ――。

「あっ、ひゃっ、んっ……! あ、キッド……っ」

 耳も、首も、俺のものだ。この胸も、お腹も、足も、指先も、全て俺のものだ。

(焦るな、クソ、畜生、テリーが、あんなこと、言うから……!)

「あっ、キッド……!」

(あああ、クソ!! 落ち着け! 焦るなってば!!)

 震える指でテリーの濡れた割れ目を下着越しから指でなぞってみる。――あんっ! テリーがはしたない声を上げて、腰が揺れたのを見て、思う。わざとか? これ、無意識にやってるならどれだけの悪魔なんだ。この子。しかし、テリーは恥ずかしそうに口を押さえて目を逸らしている。……演技なの? 無意識なの? 試してみたくて、……抜き打ちテストをしてみる。下着越しから立体的に膨らんでいる箇所を見つけ、その形に沿うように指でゆっくりとなぞりながら……彼女に魔力を注いでみた。途端に、テリーの呼吸が激しく乱れていく。

「あ、ん、その、触り方、あっ、キッド、あぁっ!」
「すごいよ。テリー。こんなに溢れて、トロトロ……」
「や、やだ、言っちゃだめ!」
「そんなに俺と……えっち、したかったんだ?」

 キッドが訊くと、テリーの口が動いた。

「うん……! あたし、すごく、キッドとえっちがしたかったの……!」

(……え?)

 あたし……今なんて言った?
 テリーの顔が青ざめる。キッドはにんまりといやらしい笑みを浮かべた。

「……そっか。すごくえっち、したかったんだ……」
「え、なに、今の、き、キッド、今の、あのちが……」
「じゃあ、もう一つ、この指に、どうしてもらいたい?」

 キッドが訊くと、テリーが答えた。

「おまたの中、グリグリして、イジってほしい……!」

 ……。テリーが呆然として、キッドは恍惚と微笑んで――下着の中に手を入れた。

「あっ!」
「グリグリして、イジってほしいんだ?」
「だ、だめ、キッド、やだ、あたし、なんか、さっきからおかし……あぁっ!」
「テリー……! はあ……! すごい……! 俺の指、わかる? ね、簡単に入れた。くくっ、テリーの中、熱くて、きつい……」
「い、言わない、で、あっ、だめ!」

 濡れていく。イジればイジるほど溢れてくる。この感じがイイ。堪らない。汚れていく感じがいい。あえて脱がさず、下着の中に手を入れて触ってるところをわざと彼女に見せて、羞恥心を煽り立たせて、その愛しい心を支配する。

「テリー、この指でどうしてほしい?」
「中で、グチャグチャにしてほしい……!」

(あたし、何言ってるの!?)

「そっか。……いいよ」
「いやぁっ、あっ、だめっ! あぁ!」

 中をグチャグチャにするために、指が腟内で動き始める。その動きによって、卑猥で汚らしい水音が残酷にも外に漏れている。

「テリー、俺の指、テリーの中にいるんだよ。ほら、ここだよ。ね? 感じる?」
「あっ! やん! それ、以上、んん!」
「グリグリして、グチャグチャにしてほしいんだろ? くくっ、ああ、可愛い、テリー……!」
「あ、いやぁ! イクッ! イッちゃう! イッちゃうぅうう!!」

 ――指が止まった。絶頂していないのに。

「あっ、そんな、や、やだぁ……!」
「嫌って言われたから」
「あ、ぅう……!」
「ね、テリー、もしかして、俺に気遣って、気持ちよく見せた演技とかしてるんじゃない?」
「ち、違う! あたし、演技なんてしてない……! ほんとに……気持ちいいのぉ!」

 はっとして、テリーが口を押さえた。さっきから何なの、これ! しかしキッドはにやにや微笑んでいる。なんで笑ってるの? キッド様、何かお目々がおかしい気がするのですが。

「そっか。気持ちいいんだ……? じゃあ……さっきからえっちな声で喘いでるのは、俺とのえっちが気持ちいいから?」
「うん。キッドに触られると、胸がどきどきして、気持ちよくなっちゃうの……」
「そっか……。じゃあ嫌じゃないんだ?」
「うん。本当はもっと触って欲しい」

 心に秘めた想いが勝手に外へ出ていく。

「もっと、キッドとくっつきたい」

 恥ずかしくて絶対に言えない言葉が、口から抜け出していく。

「もっと……キッドに……めちゃくちゃにされたいの……」

 もうやめてぇええええええ!!

(止まってーー! あたしの口、止まってーー!)

「テリーの気持ちはよくわかったよ」

 キッドがにこやかな笑顔でテリーを見つめる。

「さあ、続きをしようね」
「き、キッド……あの、さっきから、あたしの口から、その、なんか、おかしな言葉が、あの……」
「おかしな言葉だなんて、何言ってるの? テリーが言ってたんじゃないか」

 俺に、めちゃくちゃにされたいって。

「……」
「……動かすよ。テリー」
「っ、あっ……!」

 指がゆるゆると動き始め、一度冷めようとしていた快楽が再び蘇る。

(あっ、だめ、気持ちいい、あっ、すごい、あっ、あっ……!)

「二ヶ月の間、自分でシテた?」
「シて……ない……けど、おっぱい、触ったことなら……あっ、もう、何なの、さっきから……!」
「おっぱい……触ったの……? ……どんな風に?」
「へ……」

 前に、キッドがいない夜に、彼を思い出してしまって、寂しくなって自分で胸に触れてみた。キッドならこうやって触れてくると思いながら――。

「ね、どんな風に触ったの?」

 キッドが囁く。

「見たいな」

 その瞬間、テリーの手が勝手に動き始めた。

(えっ!?)

 まるで操られているように、自分の手が自分の胸に触れ、揉んでいく。

(え、なに、これ、あたし、キッドの前で、なんてはしたないこと……!)

 しかし手は止まらない。小さな胸を揉み、乳首をつねり、つんと上に伸ばす。

(やだ、こんなの、あたし、ほんとにどうしちゃったの……!?)

「えっちな触り方するね。テリー。……可愛いよ」
「あっ、んっ、んんっ、やっ、んんっ!」
「わかった。あとでいっぱい触ってあげるから……今はこれで我慢して」

 キッドが口から伸ばした舌を見て、テリーが首を振った。だめ、それ、今舐められたら、あたし、どうにかなっちゃうから、駄目、キッド、そんなの、だめ、舐めたら……舐められたら……!

「……ああああ……っ!!」

 キッドの口がテリーの胸に吸い付き、ねったりと舐め回す。更に下からはキッドの指がピストン運動を繰り返す。

「だめっ、そんなの、あっ、イクっ、イクっ、イクっ、イッちゃ……あっ、あんっ! あっ、いやぁ、いやあああ! イクぅううう!」

 ――その瞬間、キッドの手をテリーが絞めつけた。指が千切れそうになり、その痛みにキッドが歓喜する。狂ったように体を反らせるテリーの美しい姿に溢れる愛が止まらない。目を虚ろにさせ、その場で脱力するテリーは乱れた呼吸を繰り返し、少しずつ呼吸を整えていく。呼吸が整えてくれば頭も冷静になってくる。

(……やってしまった……)

 とんでもない声を上げて絶頂してしまった。

(キッド……まだ……イッてないのに……)

 大きな溜め息を吐くと――キッドの手が動き出した。

(へ!?)

 ピストン運動が再開される。

「あ、まだ、待ってくださ……あっ、あたし、まだ、まだ……」
「俺まだイッてないから、付き合ってね。テリー」
「あっ、そんな……」

 指が抜けたり突いたり。

「あっ、あっ、あっ、あっ!」

 レース柄のぱんつがキッドの手で膨らんでずれていく。その光景を見れば、自分が犯されていることを自覚し、またあそこがきゅんきゅんして、愛の液が溢れてきてしまう。

「テリー、ほんと、可愛い。ここ、そんなに気持ちいいの?」
「ひんっ、やっ、そこ、ばっかり……! あっ!」
「ここ、グリグリされるのがいいの?」
「あっ!」
「ほら、さっき言ってたよね? ここ、グリグリされたいって、こんな風に、グリグリって!」
「あっ! だめっ! あっ! ひゃあ!!」
「ああああ! すごい! テリー! また締め付けられた! んんん!! そんなに俺を離したくないなんて! あははっ、いいよ。もっと、もっと……、っ、きつく締めてきて、イイよ……!」
「あっ、まって、キッド、あた、あたしぃ、まだ、イッてるの、イッて、イッてる、からぁ……!」

 指が中と外を滑るように往復する。

「あっ、はやいっ、キッド、だめ、またイッちゃう、あたし、また、イッちゃうからぁあああ……!」

 腟内が痙攣し、キッドの指をきつくきつく締め付ける。それにキッドは幸福を得る。堪えきれず、彼女の額、瞼、頬、鼻、顔にある全てのパーツに唇を落とす。

「テリー、俺の指咥えて、甘えたさんだね」
「はぅ、あっ、んんっ、ふう……」
「そろそろ……俺も甘えていい?」

 ジッパーを下げると、ようやく表に出てきたそれが、下着からはち切れんばかりに膨らんでいた。焦る気持ちを抑えながらキッドがテリーの下着を脱がし、隠すものがなくなったそこにめがけて、自分のものを取り出し、先端を当てた。

「あっ、キッド、そんな、大きいの、入らな……!」
「うん。頑張ってね。テリー」
「んっ……!」

 自分の愛液と、既に濡れている彼の熱が混ざり合い、ゆっくり中へと入ってくる。

「ひ、んん、ふう……!」
「テリー、っ、呼吸、して」
「あっ、む、り、です……!」
「深呼吸、して。俺に、合わせて……」
「はぁ、ふぅ、……はあ……」

 必死に呼吸する姿すら可愛いってどういうことだろう。キッドは本気で悩んだ。こんなに愛しい人がいて困っている。歯止めが利かなくなりそう。どうしよう。これ、動いたら、どうなるんだろう。

「……テリー、全部、入ったよ」
「はぁ、ふぅ、はぁ……ふぅ……」

 ああ、可愛い。キッドが震えるテリーにキスをする。

「んむっ……」

 唇を舐め回す。

「ん、んん、んむぅ……」

 可愛い。可愛い。テリーが好きで好きで堪らない。

「テリー、ゆっくり動いていくから、好きなだけ声出してね」

(ゆっくり……?)

 キッドが言葉の通り、ゆっくり動き出した。

「あっ……」

 ゆっくり、馴染ませるように。

(あ、いい、感じが、する。きも、ちいい……)

 とん、とん、とん。

(気持ちいい。ゆっくり、いい……)

 とんっ、とんっ、とんっ、

(奥まで、入って……きてる……)

 ――とん、とん、とん、とん、とん、とん、とん、とん。

「あっ、あっ、あっ、あっ! あっ!!」
「あ、っ、また、イッ、ちゃった?」
「はあ、ふう……!」
「でも、俺がまだ、イけてないから、ね、テリー……」
「やっ、も、むりぃ……」

 とんとんとんとんとん!

「あ、また、動いてっ!」

 キッドの腰が動けば、テリーの体も嫌でも一緒に揺れてしまう。

「あっ、あっ、あんっ! あっ! あっ!」
「んっ、可愛い……。テリー……。ここ、気持ちいいの? ね、ここ?」
「あっ、だめっ! そこ、やぁ!!」
「くひひ! 乱れたテリーはどんな花より綺麗だね。ここだね。気持ちいいの?」
「きもぢいいれすぅう! きもぢいいぃいい!」
「ああ……可愛い……! テリー、もっとちょうだ……っ、」
「ひんっ!」
「あ、やば、テリー、エロすぎて、俺も、あっ、これ、ん、……っ……!」
「あっ……!」

 ……互いに絶頂し、脱力する。しかしすぐに回復したキッドが、テリーの頬にキスをした。

(テリー。好き。テリー。可愛い。エロい。テリー……、……ん?)

 キッドがきょとんとした。テリーが白目を剥いてぐったりしていた。キッドがクスッと笑い、彼女の可愛い鼻をつまんで自らの唇でテリーの口を塞いだ。しばらくして、テリーの瞼が再び上げられる。

「ふぇ……」
「テリー、まだ寝ないで。ね?」
「あ、あたし……気絶……」
「もっと君を堪能したいから、頑張って」
「ちょっと、ん、待ってください。あたし、何がえっと、どうなって……」

 再び動き出す。

「ひゃっ!!」

 突然の快楽に、再び火が燃える。

「あっ、あっ、あっ、あっ! はっ! やっ! あんっ! あっ! あっ! ああっ!」
「いいよ、テリー……最高だよ……!」
「あっ、もぉ! もうイけないから、もぉ……だめぇーーー!!!」
「あっ!!」
「ひゃあっ!!」

 コンニャクのように震える腰を見て、キッドの胸にぞくぞくと興奮が駆け走る。絶頂し、目をとろけさせるテリーの色気にすっかり魅了されてしまったようだ。止まらない。キッドが再び腰を動かす。

「あっ、もっ、らめ、らめ、れす! キッド!」
「テリー……気持ちいいね……はぁ……おかしくなりそう……」
「あっ、とんとん、しちゃ、あっ、やなの! あっ、また、あっ、あんっ! あんっ! あんっ!」
「はぁああ……テリー……ほんとにっ……可愛くて……エロすぎ……」
「赤ちゃん、れきちゃう! キッドぉお!! これ以上はっ、あっ、れきちゃうからぁあああ!!」
「俺と君の子供か。いいね。……君を縛る鎖が増えるなんて、楽しみだよ……」
「あっ! あっ! あっ! あっ!」
「愛してる。テリー。……っ……あ……イク……」
「あっ、そんなっ、あっ、らめ、あっ……」

 キッドがテリーを強く抱きしめる。

(そんなに……抱きしめられたら……)

「――――……あっ……♡」

 中に出される感覚がわかる。しかし、子宮に壁がされ、そこまでには到達できない。結局精子たちの道はそこで終わり、キッドが自分の熱を抜けば、溢れた精子が漏れて垂れた。テリーの腰がぴくぴく痙攣している。

「……っ……♡」
「はぁ……」

 キッドが熱い息を吐き……再び興奮しきった熱をテリーの中に挿れこんだ。脱力していたテリーがぶるぶると震え始める。

「ああっ!!」
「まだ……終わらないよ?」
「キッド、も、もぉ、無理……!」
「ごめんね? 俺の愛はこんなもんじゃないんだ」

(いくらなんでもしつこすぎる!)

「ああ……テリー……なんて目で見てくるの……? もう……最っ……高……♡」
「あっ、キッド様、も……」
「こら、様って言った」
「あっ!」
「お仕置きだよ。テリー……」
「あっ、お許しを、あっ、また、あっ、あっ! あっ♡! キッド、あんっ! キッドぉ!!」
「テリー、もっと……君をちょうだい……?」

 まだまだ足りないんだ。

「テリー……!」
「あっ……キッド……」

 二人の手が無理矢理繋がれ、唇が重なり合い、また……深い夜が過ぎていく。


 朝起きると、テリーがベッドから抜け出せなくなっていた。

「……っ」
「テリー、昨日のシチュー、いい感じに味が染み込んで……とても美味しいよ」
「……ばか……」
「……今の、すごく可愛い……テリー……」
「……もう……」

 シーツの中から腕が出てくる。

「こ、腰が辛いので……起こして、ください……」

 キッドがテリーを抱えるようにして上体を起こした。そこでキッドが気付く。テリーがきょとんと見上げた。

「キッド……?」
「どうしよう。テリー。見上げてくる君が可愛すぎて……離れられないよ……」
「……またそんなこと言って……」

 そう言う自分はキッドから離れられない。唇が近づいていく。

「テリー……もっと触って……俺だけを見て……?」
「あたしは……もう貴方しか見えてません」
「だけど、もっと見てほしいんだ」
「……仕方ない人」
「愛してる。テリー」
「キッド……あたしも……」

 赤く染まった頬にキッドが優しく触れた。

「愛してます……」

 また唇が重なる。
 誰もいない家の中。
 夫婦水入らずの時間が、静かに過ぎていくのであった。




(*'ω'*)


 テリーがリビングを見て眉をひそめた。何やってんの。あの二人。

「ばかっ! ここはもっと心情入れたほうがいいって!」
「いんや! ここはエロテイストで行ったほうがあたくしはいいと思うね!」
「読者がエロばかり求めてると思ったら大間違いだ! いいから心情増やしとけって! もっとこう、お互いが思い合ってるところをさ!」
「いんや! もっと運動してる方が……」
「だったら動いてる時に攻めの心情を……」
(楽しそー。何見てるのかしら?)

 テリーがひょいと原稿を覗き込んだ。リトルルビィとクレアが真剣に話し合っている。テリーが1ページ目から全てを悟った。リトルルビィとクレアの決着がついた。

「これでどうだ! どちらの意見も取り入れた最高傑作の形だぞ!」
「これなら誰も文句ね……」

 マッチを持ったテリーを、二人が見た。青ざめるクレア。焦りだすリトルルビィ。そんな二人の様子を見て、テリーがマッチを落とした。

「ああああああああ!! あたくしの最高傑作ぅぅううううう!!!」

 クレアの悲鳴が森中に響き渡った。




 男爵令嬢と冷酷王子ーその後の物語ー END
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