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素敵な素材と魔獣
第435話 新しい村へお出かけ
しおりを挟む住民たちへの説明会が終わり、ある程度皆が理解し調理が出来るようになった頃、チアキさんから旅の提案をされた。
「前に抱き枕を使っていたと言っていただろう? 良い素材があってな、それを気に入ったら自分専用の抱き枕を作ればどうかと思うんだ」
何故そんな話になったかというと、(私にその記憶はないけど)未だに時々魘されているから。
そんな時には白雪さんが白熊化してくれてモフることで落ち着くようだけど、静かに魘されている時には自動で魔法をぶちかましていることもあるらしい。本当にご迷惑をおかけしております。
最近は寝る時に魔封じの腕輪を着けて寝るようにしているので、魔法の暴発は無くなったんだけど、魘されるのは定期的にあるようです。
「我は別に獣化するのは苦ではないぞ?」
白雪さんはそんな風に言ってくれたけど、流石に申し訳なさ過ぎる。
という事で、チアキさん宅にある座り心地が良いクッションの中身がある村に、素材を直接見に行くことになりました。
「ミケはどうする?」
「わ、わた、私は……」
ダンジョンでもお留守番だったミケさんだけど、今回行く村はミケさんのご実家がある村らしい。
という事はミケさんを捨てた人たちがいる村って事か……。そりゃその顔色になるよね。
素材を見て、買って、直ぐに帰ってくるならミケさんはお留守番で良いと思う。ただ、何らかの加工をするとか作業をするなら器用なミケさんがいてくれた方が、現場で色々調整が出来そうだから来てくれると非常に心強い。だけどトラウマのある場所に来てほしいとか言えないよね。
「わた、私はっ、もし、チャーキ様方のご迷惑にならないのであれば、い、行きたいです!」
しばらくミケさんの反応を待っていたチアキさん。
意を決したように顔を上げたミケさんが決めたのは『同行する』だった。
「ミケさんの事は私が守るからね!」
「ははっ、ヴィオが守るのであれば心強いな」
「ヴィオ様……、ありがとうございます」
フニャンと笑うミケさん、尻尾がピーンと伸びてピルピルしているのが、にゃんとも可愛らしい。絶対にこの可愛いにゃん様の笑顔を曇らせることが無いように頑張りますよ!
という事で、ミケさんの実家があった村に行きますよ。
移動を手伝ってくれるのは、ダンジョンでご一緒したダルスさんです。ルイスさんはベル君のお目付け役でもあるし、今回の旅にはベル君の同伴はないので、二人でお留守番です。
「俺も行きたかった……」
「ベル坊、猫獣人の村に竜人族が三人も行けば大騒動だぞ。モフッコを驚かせないためにも、俺だって村からそれなりに離れたところで野営する予定だしな。次のダンジョンに同行できるように勉強しておけ」
ションボリしながらお見送りしてくれるベル君ですが、今回行く村は猫獣人オンリーの村だそうで、ダルスさんも目的地からそれなりに離れたところで待機してくれることになってるくらいなのだ。
猫獣人は良いとしても、その良い毛を持っているモフッコという相手は家畜化されている訳で、ドラゴンが近くに来たらきっと恐慌状態になるだろうという事なのだ。
前回は一ドラゴンに一人が乗車……じゃなくて乗ドラしたけど、今回は四人で乗ドラです。ドラ化する時の大きさも多少調整が出来るらしく、前回乗った時よりも明らかに背中が広いです。
チアキさんが最初に背中に飛び乗り、ダルスさんのお背中に厚めの絨毯を敷いてくれています。ミケさんは白雪さんに抱っこされて、私は最後に飛び乗ります。おぉ、快適空間が出来上がっておりますよ。
幾つかのクッションが並べられている状態は、完全にくつろぎ空間です。ここ、ドラゴンの背中なんですけどね。
「じゃあ、ベル君、ルイスさん、行ってきまーす」
「早く帰って来いよ」
「では参りましょう」
背中の上から手を振れば、やっとベル君が顔をあげて手を振り返してくれました。行ってくるね。
絨毯を含めた全体をチアキさんの風魔法が包み込んでくれているから、結構な速度で飛んでいる筈なのに全く揺れないし風も感じることはない。
空に上がってから下を見てしまったミケさんは、現在白雪さんのお膝の上でお休み中です。飛行機や、フリーフォール体験をしたことが無い人からすれば、空の上って怖いのかもね。
「川が見えてきましたので、そろそろ下りますね」
「ああ、流石に早いな」
体感三時間くらいかな? 大陸の半分くらいを移動している筈なのに、凄い速さです。くびれの一番狭い場所は、川が海から海に繋がっているんだけど、その川の北にミケさんが生まれた集落がある。
まだかなり高高度なので集落は見えないけれど、村からドラゴンが見えても大変なので、私がダルスさんに気配隠蔽の魔法をかけています。
少しずつ地面が近くなり、村がポツンと小さく見えてきたところで、10キロメートルほど離れた地点に着地。この川よりも南側は拓けている場所が多いようだけど、この辺りはまだ森もそれなりに残っているみたいだね。
「この辺りでいいか」
「そうですね、周辺に危険な魔獣もおりませんし、チャーキ様達は村にお泊りになりますか?」
「いや、ミケの事もあるからな、まずは俺達だけで村に行ってくる。今夜は一度戻ってくるからミケはここで夕食の準備を頼めるか?」
「よろしいのですか?」
街道もないただの広場というか、道というか、広野にチアキさんが例の簡易建物を魔法で作り出す。
これは見たことがあったらしく、驚くことが無かったミケさん。まずは村にある商品と素材を確認して、明日ゆっくりそのモフッコとやらをゆっくり見学する予定なのだ。
寝台しかなかったダンジョンとは違い、屋根とリビングスペースのような場所も作られた建物内。土魔法で作られているので、広いリビングに調理場を私が追加で作りましょう。
「まぁ、ヴィオ様までそのように簡単に作られるのですね!」
チアキさんの非常識には慣れている筈なのに、私まで出来ると思っていなかったらしい。大丈夫、私のはあそこまで酷くない筈。
お留守番のダルスさんとミケさんに見送られ、三人で村まで歩きます。
「ミケが孤児になっていたのは言ったか?」
「はい、ヒトになれないから捨てられたと……」
「本当に下らん事をするもんじゃ。会話が出来、手足とて人のそれでなくともあれだけ器用に出来るなら、ヒト化する必要などないのに」
白雪さんは苦虫を嚙み潰したような顔でそんな事を言う。グロンディール大陸の獣人は洗礼以降に獣化することはないと聞いている。性質は元の獣によって『ハーレムを作りたがる』『お酒が好き』『お金が好き』『湿った暗い場所が好き』『強いものに絶対服従したがる』などあるらしいけど、耳と尻尾に特徴が出るくらいで、獣レベルは大分低いと思う。爬虫類の人達は瞳に特徴もあるし、鱗があるけどそれくらいだしね。ああ、だけどトカゲと蛇は尻尾を出し入れすることができるという事を思えば、あれも半獣化というやつなのかもしれないね。
ミケさんは成人の時に人化出来ないからという理由で家族から捨てられたけど、それ以前にも、洗礼以降人化出来ない事で虐められ、家でも迫害されていたという。だからチアキさんが見つけた時は成人しているとは思えない程小さくガリガリだったというから、その扱いが分かるよね。
そんな村に何故連れてこようと思ったのかを聞けば、村の素材を使って特産品を作ることが出来れば、見返すことができるかもしれないと思ったからだそうだ。
後は、数年離れた事で恋しく思っているかもしれないし、仕事を斡旋した事で儲けることが出来ているだろうから、懐が温まれば、気持ちにも余裕が生まれているかもしれないという希望的観測もあるみたい。まあ、確かにそうだとすれば、家族の和解が出来るかもだよね。
「今あるのはクッションぐらいでな。まあそれも人気はあるんだが、大型の獣人なんかは柔らかさよりも頑丈さを求めていたりするから、そこまで需要がないんだ。あとは、例の魔獣を実際に見てヴィオの感想を聞きたいって事だ」
成程、あの気持ちよいクッションは人気が出そうだけど、種族によってはそうでもないって事なのかな。大陸に輸出とかしないのだろうか。転移陣があるんだしって、大きさの制限があったね。
それなら飛べる人達と契約してとか、色々考えられそうなもんだけど、どうだろうね。
モフッコを見て欲しいと言われるけど、どんな魔獣なのかは見てのお楽しみということで教えてくれないチアキさん。素材からして羊っぽいと思うんだけど、あっちにも羊はいたし、種族がちょっと違うのかな? 楽しみだね。
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