ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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夏の訓練

第77話  武器屋さんに行くぞ


「おう、邪魔するぞ~」

「らっしゃ、ん?おお、アルクさんじゃねえか、久しぶりだな。鉈か鋸の磨きかい?」

井戸端会議にもなる広場の中には様々な生活に必要なお店が並んでいるんだけど、少しギルド方面に歩いた場所のお店?にお父さんは入っていく。
よく見てみると冒険者必須のお店はギルド側に、生活用品は住宅側にまとまっていたんだね。
扉を潜れば 確かにお店だったらしく、正面の壁にはハンマーと剣がクロスした看板が掲げられていた。だけど店内はとっても こぢんまりとしている。

想像していた武器屋さんと言えば 壁には沢山の武器が飾られてて、カウンターの後ろには伝説っぽい武器があったり、沢山の剣が無造作に刺し込まれている樽に、槍とかの長い棒が刺さっている樽、斧っぽい大きな頭が見えている武器が刺さった樽が 所狭しと置いているモノなのではないの?
これでは慣れていない人なら武器屋さんだとは思わない気がする。というかお店の並びではあったけど 外には看板なかったし。


「いや、今日は娘の武器を相談しに来たんじゃ」

「娘?」

カウンターから出てきた男の人は カルタに描かれていた人そのままで、ケーテさんの絵が上手であることがよく分かった。
白い手ぬぐいを頭に巻いたその人は お父さんの言葉に少し見回した後 足元に目を落とし、私と目が合ったらびっくりしたように目を見開いた。

「は? 娘ってこのちびっ子?
噂には聞いてたけど、この子人族だろう?武器なんて流石に早くないか?」

「儂も前は7歳になったらと思っとったんじゃがな、あと20ポイントもすれば銅ランクになるんじゃ。銅になれば討伐も行けるじゃろう?そろそろ作っとかんと、火の最後の月には間に合わんじゃろ。」

そっか、銅ランクまでもう少しだから、その前に武器を作っておこうってことだったんだね。お父さんありがとう!

「は?銅? え?この子もう青銅なの?」

さっきから驚きっぱなしのギレンさん、まあ人族のちびっこ女児だもん、驚くよね。

「はじめまして、アルクお父さんの娘、人族のヴィオ5歳です。今は青銅ランクです。あと11ポイントで銅ランクです」

「あ、おお、マジか。俺はこの店で武器職人やってるギレンだ、トカゲ獣人だな。学び舎行ってんだったらケーテと一緒か?」

トカゲ獣人さんなんだね。捲って見せてくれた腕には綺麗な青い鱗が少しあった。
ケーテさんとは親戚らしい。だからこそあれだけソックリな絵が描けたんだね、納得です。


◆◇◆◇◆◇


「ん~、アルクさん、この小ささじゃあ、武器っつっても難しいぜ?」

現在椅子に座った状態で ギレンさんに手をニギニギされています。ロリコンではありません。
どんな武器なら握れるか、持てるかの確認です。

「まあ、本格的な武器は成長と共に見つけるつもりなんじゃがな、ヴィオは魔法が得意じゃから基本は魔法で戦うことになるじゃろう。
じゃが、近接戦が全くできないんじゃあ魔法使いは危険じゃろ?
身を護れるだけの短剣と、解体も教えるから解体用のナイフも作りたいんじゃ」

「か~、アルクさん相変わらずっすね。トンガとルンガも洗礼後からメキメキ実力伸ばして、今は銀の中級でしたっけ?
ヴィオも実の娘じゃないのに 同じくらい冒険者として優秀になっちまうんですね?」

呆れたような、驚いたような、憧れているような、複雑な表情でお父さんを見つめている。
話の感じだと二人の息子さんの事かな?国外で冒険者しているんだよね?

「はっは、ヴィオは息子たちよりも既に優秀じゃ。人族でまだ5歳じゃから 体力なんかは年相応と言えるが、それ以外は身体強化なんかでカバーしておるし、頭がええ。」

「マジか。え? この年で身体強化使えんの?」

驚いたギレンさんの後半の呟きは私に向けられたようなので 頷いて肯定しておく。
マジか……。と呟くギレンさん、大丈夫ですか?

「まあ、この小ささならナイフが妥当でしょうね。
ヴィオ、お前は 他に使ってみたい武器とかはあるのか?まあ分からねえと思うけど……」

分からないと思うけど希望を聞いてくれるんですね?
それなら作れるか分からないけど希望を言ってみても良いですか?

「あのね、短剣だったら両手でシュピピって出来る様なのが使ってみたいの。
あとね、鞭も使ってみたい。大きな武器は重くて大変だけど、鞭だったらそんなに重たくないでしょう?
魔力が通しやすければ アイビーウィップみたいに使いやすくなるかなって思ってるの。森だと魔法だけで良いんだけど、ダンジョンって岩場なんでしょう?だから鞭で使えると便利かなって」

【アイビー】だけでも樹の枝葉から蔦を作り出すことが出来るんだけど、【グロウ】を付けると伸び縮みしてターザンロープとして使える。
【ウィップ】は鞭なんだけど、アイビーと組み合わせると蔦の鞭が使える。
森の中であれば自由に使えるけど、ない場所では魔力消費も増えるだろうし、それなら武器として鞭があった方が良さそうだと思ったんだよね。

「……この娘、アルクさんの実子じゃないんっすよね?」

「よく言われるが、儂の子供時代よりも 冒険者に憧れがあるようでな。ダンジョン制覇したいんじゃと」

「うん、あとドラゴン見たいの!」

目標は口に出した方が叶いやすいっていうよね?
大陸のダンジョン制覇とドラゴンに会いたいと言えば、ギレンさんに頭を撫でられた。


「んじゃ、どれが握りやすいか確認してみてくれ」

何か吹っ切れたようなギレンさんが立ち上がり、カウンターの裏から箱を持ってくる。
太さが色々の棒が入っていて、円柱の棒、扁平の棒、カクカクとした四角い棒など、種類も太さも色々だ。
渡される棒を次々握り、握りやすいものは左の箱へ、そうでないものは右の箱へ振り分けられる。
数本の棒が左の箱に入り、今度はその先に重りがつけられた。

「そしたらコッチに来てくれ。その棒を持ってこの的を狙って攻撃してみて 持ちやすさを確認してみてくれ」

ギレンさんの案内で通されたのはお店の裏庭のような場所。壁に囲まれているけど、訓練場のようにいくつかの的が置いてある。

「新しい武器を作る時には 使い勝手を確認するのにこうして実際に振り回せる場所が必要じゃろ?」

ああ、お洋服の試着と一緒だね。確かにあの店の中で武器を振り回すわけにもいかないもんね。
店内が狭かったのは 鍛治工房があるのと、この裏庭があるからだと聞いて納得した。あの場所は武器修理の受け渡しや、作成相談などをするだけなんだと。
理解した私は 重りが付いた棒を握って的に向かう。

「ヴィオ、腕の強化魔法はかけておけ。実際に外で使う時は常に強化しておる状態になるからな」

「うん、分かった」

そうだね、ちょっと重いかな?って思った棒だったけど、強化をかければ全く重さを感じなくなった。
両手に持って的を切り裂くように殴りつける。
丸い棒の重りが的に当たれば、スポンと手から棒が抜けてしまった。

「ああ、採集用のグローブを付けた方が良さそうじゃな」

「そうだね。忘れてた!」

素手だし、棒もツルンとしているから抜けてしまったね。お父さんが持ってきてくれていたグローブを受け取って再挑戦。
何度かやってみれば双剣だったらほんの少し扁平になっているのが握りやすかった。
鞭の方はちょっと細目の円柱の物が使いやすかったので、グリップはそれで決定したんだけど……。

「すげえな。ヴィオ、お前本当に5歳の人族か? ドワーフとかエルフとかじゃなくて?」

「うん、多分人だと思うよ。お母さんは人族だったけど、お父さんは分かんない。もしかしたら人じゃないかも。でも種族特徴が出てないから、あり得るならドワーフかな?」

エルフなら耳が尖がるし、獣人ならケモミミ&尻尾があるはずだ。小さい時の特徴がないのはドワーフくらいだから あり得るならドワーフだろう。
だとしたらあまり身長が伸びないのかな?

「くっくっく、いや、多分純粋な人族じゃと思うぞ。この数か月でも身長も伸びておるからな。ドワーフじゃったらもっと成長は遅いはずじゃ」

人族っぽいらしいです。多種族が嫌な訳じゃないけど、背が高くなれるなら嬉しいです。
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