ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
333 / 584
はじめての上級ダンジョン

第294話 出発延期

しおりを挟む

下調べも終わり、フリーズドライスープもお父さんとクルトさんの3人がかりで作ったから大量に準備が出来た。
時間遅延の鞄には下拵えまで終わらせた大量の肉、食肉工房ですか?というレベルの肉が投入されている。停止の方にしていないのは 味を染み込ませたいから。
停止だと 染み込みも停止しちゃうからね。

お野菜類は相当消費しているけど 11階以降にあるので そんなに買い込んでいない。
乾燥野菜はあるからね。
生野菜のいくつかと 回復薬は時間停止の鞄に入れるなど 色々考えて荷物整理をしている。
私のは元々時間停止だったし、お父さんもアランさんから借りているのが停止のだから 二人とも適当になんでも入れている。
ただ、見せかけ用のリュックは必須なので お父さんはテントなどの嵩張る系をリュックに入れて膨らませてるけどね。


そんな風に準備も整い 後はダンジョンへ!という事で合同パーティーの申請と 工程表の提出をするために冒険者ギルドに行った。

「申し訳ありませんが 皆様をゲルシイダンジョンへ入る許可は出せません」

「え? 俺たち2か月前に踏破してますけど?」

「〔サマニアンズ〕だけでしたら問題ありませんが 〔ヨザルの絆〕はそちらのお子様がご一緒という事ですよね?
当ダンジョンは上級ダンジョン、10階層までは罠がありますし 11階以降は広大な高原と森が続きます。普通の冒険者でも遭難者が出ることが少なくないダンジョンで そのような小さなお子様をお連れして安全に入れるとは思いません」

まあ このお姉さんの言いたい事もよく分かる。
そりゃランクで分けてるダンジョンだもの。銅ランクは何階までとか決められてるところも少なくないし、それ以降に勝手に行くなら自己責任というのも常識だ。
お姉さんとて意地悪で言ってるわけじゃないのは分かってる、分かってるけど入りたいよね。
実力があると分かればいいんだったら 証明できる人に証言してもらう?

「お父さん、ごにょごにょ ごにょごにょ」

「ああ、そうしてみようか」

お父さんに相談したら それでも駄目なら来年来ようと言われて お手紙を書くことにした。
お姉さんには それを渡して今日は大人しく宿に戻る。


「父さん、あの手紙は何だったの?」

「ギルマスたちに宛てた手紙じゃ。ヴィオは見た目がこうじゃけど 銀ランクの実力があるとギルマスの証言があれば行けるかもしれんともってな」

「あ~、それならいけそうかも。そっか、忘れてたけどヴィオってばまだ6歳だし 銅ランクなんだよね。
あの強さで銅ランクっておかしいけど、あ~~~、早くランク上げて一緒に色んなダンジョン行きたいね」

ふふっ、そう言ってもらえるのはすごく嬉しいです。
銀になってれば ドワーフという事で勘違いを助長させていく予定です。熊耳帽子は銅ランクの今 お父さんたちの家族ですをアピールするために被ってるけど、ドワーフ女子は成人しても130センチくらいしかないからね。
今の私がこないだリリウムさんに測ってもらったら125センチになってたからね!
栄養満点なお食事を3食しっかり食べてるし、ダンジョンの時以外はお昼寝もしているし、運動もしっかりしている事で 絶賛成長期です。


今着てる冒険者装備だと 来年以降はちょっときつくなる可能性があるという事で このダンジョン旅期間中に 新しい装備を作ってくれることになったんだ。
蜘蛛の糸の大量お土産を渡したから それで十分作れると喜んでくれた。
お土産なのに 装備依頼みたいになってしまって申し訳ない気もするけど 新しい装備は楽しみです。



さて、翌日の午後 空いている時間を狙って 再びギルドを訪れた。
お手紙はちょっとお金はかかるけど 速達便でお願いしたので 昨日のうちにサマニア村に到着している。ギルマスの事だから 多分すぐに返信をしてくれたと思うので 翌日だけど来てみました。

「あっ、昨日の!」

私たちに気付いた受付のお姉さんが 慌ててカウンターから出てきて 2階の会議室に案内された。
手紙の返信があったんじゃないの? 何この危険人物は隔離的な扱い……。
あまりの素早い対応に 何も言えないまま会議室で待っている現在。お姉さんは案内し終えた時点でどこかに行ってしまって不在です。

「俺 こんなにギルドの会議室に来ることなんて今までなかったけど、ヴィオといると 結構な頻度で 会議室になるな」

「まあ 外で話すと目立つしね。ありがたいことではあるけどビックリはするよね」

ノハシムの時は 確実にお兄ちゃんたちが採掘しすぎたのが原因ですけどね。
雑談をしていれば ノックの音がして 受付のお姉さんと おじさんが入ってきた。

「ゲルシイのギルドマスターをしておるゲランだ」

「同じく ゲルシイの副ギルドマスターをしております セシャと申しますわ」

「えぇっ!お姉さん受付のお姉さんだと思ってたのに サブマスさんなの?」

グレーっぽい髪から 羽がピョコピョコ跳ね出ているのはギルマスさん。
そして受付嬢だと思ってた人がまさかのサブマスとは、随分若いのに出世頭なのだろうか。

「うふふ、ありがとう。若く見られるから 時々ああして受付に立つようにして 新しい冒険者を見定めたりしているのよ。今回みたいなことがあっても すぐ対応できたから良かったわ」

パチンとウインクしてくれたお姉さん、美人のウインクは破壊力が凄いね。

「若いかどうかは微妙だが 受付がサボらんように見張りも兼ねておるんだわ」

ギルマスのツッコミに セシャさんがシャーっと吠える。もしかしてセシャさんは蛇か蜥蜴の獣人さんかな?尻尾がないからどっちか分からないね。

「失礼いたしました、本題に参りましょう。
昨晩 サマニア村のギルマスとサブマスお二人の連名で ヴィオさんには上級ダンジョン入りを許可できるだけの実力があるとの返答がございました」

「ああ、てことで昨日は断ったけど 入場許可を出すことにした。
ただ、中にいる冒険者連中から絡まれる可能性は十分にあることだけは理解してもらいたい」

おぉ、昨日の夜のうちに返信をくれたとか有難すぎる。

「有難いですけど 身内贔屓だとは思わないのですか? 俺たちサマニア村出身ですし 自分の村の奴らだから評価が甘いとか……」

私もちょっと思った。
ギルマスたちはそういうつもりが無くても 他のギルドから見たらそう思われてもおかしくないよね。
ゲランギルマスと サシャサブマスは お互いの顔を見合わせて 同時に笑った。

「ないですないです。自分のギルドに所属する冒険者を過大評価して死なせてしまったら 本末転倒ではないですか。
私たちは 出来るだけ長く 元気に活動してもらいたい、できれば上位ランクになって頂いて 将来戻ってきて後輩の育成をしてもらいたいと思ってますからね」

「ああ、それにこうして連名で署名があるという事は 二人ともがその実力を評価しているという事だ。
もしそれが過大評価だったとして その冒険者が依頼を失敗もしくは 今回だったら 低い階での踏破失敗や大怪我なんかを負った場合は 署名した二人が お前さんの実力を見誤ってたという事に他ならん。
そんな情報は直ぐに共有されるからな ギルマス会議で笑いものになるだけだ。
だから普通は こんな風にギルド員の能力云々についての手紙なんか書いてこない」

マジか。
お父さんも気軽に手紙を出したことをちょっとだけ反省しているっぽい。
そんな決断をさせてしまったなんて、絶対に踏破してこないとだね。

という事で、ギルマスたちからの後押しを頂いたことで ダンジョン入りが許可されました。
前回潜った時と同じように赤色のメダルを受け取り ギルドタグの紐に通して胸に下げておく。
ここでも受付で何か言われるだろうからという事で お手紙も一緒に渡されました、ありがとうございます。

ちなみにメダルの色は4種類。
私のもつ赤いメダルは 深層階まで入って良いという許可証
豊作ダンジョンのように 1階から2階は一般人も入れるので そういう人たちには木製の少し大きめのメダル。
低層階までなら大丈夫なら白いメダル、中層階もしくは中ボスで戻ってくるべき人たちは黄色いメダルだ。メダルは目立つところに付けることが必須なので 私はギルドタグと合わせて胸元に下げている。これが一般的。

白いメダルの人が低層階で襲われていたら 積極的に助けてあげて欲しいともいわれている。だけど中層階で遭難しているもしくは 魔獣に襲われていたら 見かけた冒険者の判断にはなるけど 助ける必要はないとされている。
許可は低層階なのに それを無視して潜ったそいつの自己責任という事だ。

赤いメダルだったら全ての階で助けてもらえるのかと言えばそうではない。
踏破を許可されている人なのだから 全ての階において自己責任という事である。ギルマスたちが信頼をしてくれてこの許可証が貰えたんだから、いつも以上に注意して しっかり踏破してきます!
しおりを挟む
感想 109

あなたにおすすめの小説

私を裏切った夫が、後悔しているようですが知りません

藤原遊
恋愛
政略結婚として、公爵家に嫁いだ私は 愛のない夫婦関係を「仕事」だと思い、正妻の役目を果たしてきた。 夫が愛人を持つことも、 その子を屋敷に迎え入れることも、黙って受け入れてきた。 けれど―― 跡取りを、正妻の子ではなく愛人の子にする。 その言葉を、人前で軽く口にした瞬間。 私は悟ったのだ。 この家では、息子を守れないと。 元々、実家との間には 「嫡子以外の子は実家の跡取りにする」という取り決めがあった。 ならば話は簡単だ。 役目を終えた私は、離縁を選ぶ。 息子と共に、この家を去るだけ。 後悔しているようですが―― もう、私の知るところではありません。

【書籍化決定】アシュリーの願いごと

ましろ
恋愛
「まあ、本当に?」 もしかして。そう思うことはありました。 でも、まさか本当だっただなんて。 「…それならもう我慢する必要は無いわね?」 嫁いでから6年。まるで修道女が神に使えるが如くこの家に尽くしてきました。 すべては家の為であり、夫の為であり、義母の為でありました。 愛する息子すら後継者として育てるからと産まれてすぐにとりあげられてしまいました。 「でも、もう変わらなくてはね」 この事を知ったからにはもう何も我慢するつもりはありません。 だって。私には願いがあるのだから。 ✻基本ゆるふわ設定です。 気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。 ✻1/19、タグを2つ追加しました ✻1/27、短編から長編に変更しました ✻2/2、タグを変更しました

婚約者チェンジ? 義理の妹は公爵令嬢の地位もチェンジされました』 ~三日で破談、家ごと褫奪の末路です~

ふわふわ
恋愛
「お姉様の婚約者、私がいただきますわ。だって“公爵令嬢”ですもの」 義理の妹コンキュはそう言って、王太子との婚約を奪いました。 父はそれを容認し、私は静かに受け入れます。 けれど―― 公爵令嬢とは“地位”ではなく、“責任”の継承者。 王宮で礼儀も実務も拒み、「未来の王太子妃」を名乗った義妹は、わずか三日で婚約破棄。 さらに王家への不敬と統治能力の欠如が問題視され、父の監督責任が問われます。 そして下されたのは――家ごとの褫奪。 一方で私は、領地を守り、帳簿を整え、静かに家を支え続ける。 欲しがったのは肩書。 継いだのは責任。 正統は叫びません。 ただ、残るだけ。 これは、婚約を奪われた公爵令嬢が “本当に継がれるべきもの”を証明する物語。

侯爵家の婚約者

やまだごんた
恋愛
侯爵家の嫡男カインは、自分を見向きもしない母に、なんとか認められようと努力を続ける。 7歳の誕生日を王宮で祝ってもらっていたが、自分以外の子供を可愛がる母の姿をみて、魔力を暴走させる。 その場の全員が死を覚悟したその時、1人の少女ジルダがカインの魔力を吸収して救ってくれた。 カインが魔力を暴走させないよう、王はカインとジルダを婚約させ、定期的な魔力吸収を命じる。 家族から冷たくされていたジルダに、カインは母から愛されない自分の寂しさを重ね、よき婚約者になろうと努力する。 だが、母が死に際に枕元にジルダを呼んだのを知り、ジルダもまた自分を裏切ったのだと絶望する。 17歳になった2人は、翌年の結婚を控えていたが、関係は歪なままだった。 そんな中、カインは仕事中に魔獣に攻撃され、死にかけていたところを救ってくれたイレリアという美しい少女と出会い、心を通わせていく。 全86話+番外編の予定

【完結】聖女になり損なった刺繍令嬢は逃亡先で幸福を知る。

みやこ嬢
恋愛
「ルーナ嬢、神聖なる聖女選定の場で不正を働くとは何事だ!」 魔法国アルケイミアでは魔力の多い貴族令嬢の中から聖女を選出し、王子の妃とするという古くからの習わしがある。 ところが、最終試験まで残ったクレモント侯爵家令嬢ルーナは不正を疑われて聖女候補から外されてしまう。聖女になり損なった失意のルーナは義兄から襲われたり高齢宰相の後妻に差し出されそうになるが、身を守るために侍女ティカと共に逃げ出した。 あてのない旅に出たルーナは、身を寄せた隣国シュベルトの街で一人の騎士と運命的な出会いをする。 【2024年3月16日完結、全58話】

取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので

モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。 貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。 ──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。 ……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!? 公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。 (『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)

恋は、母をやめてから始まる――正体を隠したまま、仮の婚約者になりました

あい
恋愛
両親を失ったあの日、 赤子の弟を抱いて家を出た少女がいた。 それが、アリア。 世間からは「若い母」と呼ばれながらも、 彼女は否定しなかった。 十六年間、弟を守るためだけに生きてきたから。 恋も未来も、すべて後回し。 けれど弟は成長し、ついに巣立つ。 「今度は、自分の人生を生きて」 その一言が、 止まっていた時間を動かした。 役目を終えた夜。 アリアは初めて、自分のために扉を開く。 向かった先は、婚姻仲介所。 愛を求めたわけではない。 ただ、このまま立ち止まりたくなかった。 ――けれどその名前は、 結婚を急かされていた若き当主のもとへと届く。 これは、 十六年“母”だった女性が、 もう一度“ひとりの女”として歩き出す物語。

王様の恥かきっ娘

青の雀
恋愛
恥かきっ子とは、親が年老いてから子供ができること。 本当は、元気でおめでたいことだけど、照れ隠しで、その年齢まで夫婦の営みがあったことを物語り世間様に向けての恥をいう。 孫と同い年の王女殿下が生まれたことで巻き起こる騒動を書きます 物語は、卒業記念パーティで婚約者から婚約破棄されたところから始まります これもショートショートで書く予定です。

処理中です...