ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

文字の大きさ
399 / 619
ウミユ遺跡ダンジョン 後半

第356話 ウミユ その23


私たちが10階のボスを倒したのが ウミユダンジョンに入って8日目の火の日だった。
あれから1週間がたった同じ火の日、待ちに待っていたテリューさん達が合流した。

実は11階をローリング中、襲撃者以外の冒険者たちが2組ほど11階に下りてきたのを確認している。
つまり 破落戸たちのボス戦はすでに終了していたのは間違いないという事。
冒険者たちの存在はキャッチしたけど、広いフロアで【索敵】をしていたからこそ気付けた距離。
こちらから聞きに行くのもおかしな話だし 結局関わることなく彼らは12階に下りて行った。

テリューさん達が10階のボス戦をしたときにはタグは無かったというので、多分彼らのどちらかが回収してくれたんだろうと思う。
踏破後にギルドに提出するんだろうけど 10枚ものタグ、パーティーも合同という訳じゃないだろう。
ギルドはどう思うんだろうね。


「いやあ、持たせてもらってた飯が 途中でなくなったらどうしようかと思って 結構走っただけあった」

「うん、1週間離れてただけなのに レスもシエナも随分料理の腕が上がってる。くやしい」

「あ、お鍋とかの調理道具も沢山買ってきたの。あとで見てもらっていいかしら?」

「うまい!パンも好きだったけど ポアレスも好きだ」

久しぶりに全員集合の昼食だったので リクエストされた 牛丼、かつ丼、親子丼の丼三兄弟を作りましたよ。
ちなみに 誰が牛丼で 誰が親子丼とかじゃないよ、1人3つの丼を食べるという事です。
私は牛丼の上に 粘り花オクラ粘り芋トロロを乗せてお醤油を少しだけ垂らして混ぜ混ぜしながら頂いてます。美味い。

「え~、どうだろうって思ってたけど そうやってヴィオが食べてるの見ると美味しそうだね。僕も2杯目はやってみようかな」

オクラを採集した時は 何か分かっていなかったけど、切った時に糸がミョーンとなったのを見てドン引きしていた皆さん。
日本でのオクラなんて スーパーで緑のネットに綺麗に揃えて入れられたあれしか見た事がないので どんな風に成長するのかは知らないけど、こちらでは花のように咲くらしい。
鑑定の結果【花になる直前の蕾、粘りがあるが食べられる】と書いてあった。
スーパーのものよりは大きいけれど、キュウリほどまで育ってはいない。
おろしたトロロと細かく切ったオクラは茶色い牛丼の上に乗せれば 色合いも綺麗になる。

「トンガお兄ちゃんもやってみる?」

嬉しそうに頷いたので 残っていたすり下ろしたトロロと 茹でたオクラを切ってあげれば、いそいそとお替りをよそってきたので 牛丼の上に乗せてあげる。
私の真似をしてオクラとトロロを先に混ぜてから 牛丼と一緒にパクリ。

「はにほへ、んま、んま」

牛丼は飲み物ですか?
カレーに対しては飲み物だと言う人はいたけど、私にとってはカレーも牛丼も食事です。ツルツルと食べれるから 豪快に 器に口をつけたまま ズルルっと幸せそうに食べてます。

「うわっ、マジか。兄貴がそんなになるほど? え~、俺も食ってみる」

「俺も試してみる」

俺も俺もと 男性陣が次々に牛丼をお替り。すりおろしたトロロはもうないので 自分たちでお願いしますね。茹でたオクラは鞄に入れたままだったので それは出しておくので 食べる分だけ切って下さい。
女性陣は 悩んでいたものの 既に3杯食べてますからね。
流石に今回は諦めたようです。次回は絶対に試したいとの事、牛丼は週に1回くらい登場しそうかな?



「あ~、幸せだった」

「みんなで一緒にこうしてテーブルを囲んでワイワイ食べるってのも美味しさが増すわね。急いでたからって事もあるけど、4人だとちょっと殺伐とし過ぎてたしね」

食堂によくあるような寸胴鍋、あれ2杯分の親子丼と牛丼が空っぽです。かつ丼は流石に1杯ずつ作る手間があったので一人一杯だったんだけど、他はお替り自由だったからね。健啖家がこれだけ揃うと 作り甲斐もあるというものです。

「さて、幸せ気分の後に嫌な報告だが、これを済ませとかねえと 残りのダンジョンも気になるだろうから報告しとく」

さっきまでのフニャフニャ気分から一転、真剣な表情になったテリューさん、それを見て皆も姿勢を正した。

「結論から言うと 依頼主……この場合破落戸共に対しての依頼者だが ヴィオを狙った理由について聞き出すことは出来なかった」

銀ランク上級の4人で聞きだせないって 凄い手練れだったってこと?

「あ~、強い弱いって事じゃ無くてな、まず3人組って話だったんだが 2人は既にいなかった。
逃亡したのか、別件でいなかったのか、戻ってくるのかも不明。
ただ、宿の女将からは 数日前に旅装をした二人が出て行ったって事だったから 別件でいなくなったんだろうと思う」

「ということは アジトには一人だけがいたってこと?」

「ああ、オトマンがいたから 武力抵抗は出来ないようにしたんだけどな、歯の奥に毒を仕込んでたらしくて 尋問前に自殺された」

マジか……。
一流の殺し屋とかってそういうことするイメージだね。なんだろう、変態貴族に売るための仲介者かと思ったけど、もしかしたら変態貴族の直属の飼い犬だったのかな?
事件の匂いがプンプンしますよ。
よくある物語の展開からすれば 実は私がやんごとない人の子供で 傀儡か政略結婚の駒にしたいと思った 現政権反対派の筆頭公爵とかが 犯人だったりするよね。

「え~っと、ヴィオはそういう物語をどこで読んでくるの? サマニア村には本屋さんがあったとは思わなかったんだけど……」

「あ、え~と、魔導学園とかドゥーア先生の図書室でも沢山本を読ませてもらったよ。
あとはお母さんに読み聞かせでいっぱい色んなお話を聞いてたから その記憶かな。どこで読んだかは覚えてないの」

お母さんごめんね。かなり色んなところで 都合よくお母さんを使ってますが、きっと天国からツッコんでいる事でしょう。私が死んだらDOGEZAするから許してね。

「まあ そっち側の専門家だったのは間違いないと思う。
身分証になるようなものは商業ギルドのカードだったけど、これはメネクセス王国とリズモーニ王国の2枚あったし 両方名前が違ってた。
冒険者ギルドのカードは魔力登録が必要だから偽造出来ないけど、商業だけのカードは書類の提出だけだから偽造しようと思えば出来るんだ。
とりあえず 2枚ともヘイジョーのギルマス宛に送って詳細を調べてもらう事を依頼したから ダンジョンが終わったら 何らかのことは分かってるだろうと思う」

オトマンさんの言葉に商業ギルドと冒険者ギルドの違いを知る。
私は最初に冒険者から登録したから このカードに商業ギルドの情報を上書きしたけど、商業ギルドだけの人はカードが違うらしい。
後から冒険者登録をした場合は 冒険者ギルドカードに統合されるらしいけど、一生冒険者にならない人もいるだろうしね。

そもそもそうなったのは 大店などは貴族がやっていることが多く、お貴族様の尊い身体を無暗に傷付けるなんて不敬である!的な事が理由らしい。
それで偽造され放題なんて わざとな気がするけど 権力者に関わるとろくなことがないから見ないふりをしておこう。

結局襲撃予定だった破落戸は 勝手にボス戦で全滅、指示をしていたらしい1人は自殺、2人は逃亡。
何だかスッキリはしない結果となってしまったけれど、まあこのダンジョンと ウミユの町でつけ狙われる可能性は無くなったという事だ。
憂いがなくなったのであれば スッキリした気分で後半も楽しめそうです。
感想 120

あなたにおすすめの小説

継子いじめで糾弾されたけれど、義娘本人は離婚したら私についてくると言っています〜出戻り夫人の商売繁盛記〜

野生のイエネコ
恋愛
後妻として男爵家に嫁いだヴィオラは、継子いじめで糾弾され離婚を申し立てられた。 しかし当の義娘であるシャーロットは、親としてどうしようもない父よりも必要な教育を与えたヴィオラの味方。 義娘を連れて実家の商会に出戻ったヴィオラは、貴族での生活を通じて身につけた知恵で新しい服の開発をし、美形の義娘と息子は服飾モデルとして王都に流行の大旋風を引き起こす。 度々襲来してくる元夫の、借金の申込みやヨリを戻そうなどの言葉を躱しながら、事業に成功していくヴィオラ。 そんな中、伯爵家嫡男が、継子いじめの疑惑でヴィオラに近づいてきて? ※小説家になろうで「離婚したので幸せになります!〜出戻り夫人の商売繁盛記〜」として掲載しています。

君といるのは疲れると言われたので、婚約者を追いかけるのはやめてみました

水谷繭
恋愛
メイベル・ホワイトは目立たない平凡な少女で、美人な姉といつも比べられてきた。 求婚者の殺到する姉とは反対に、全く縁談のなかったメイベル。 そんなある日、ブラッドという美少年が婚約を持ちかけてくる。姉より自分を選んでくれたブラッドに感謝したメイベルは、彼のために何でもしようとひたすら努力する。 しかしそんな態度を重いと告げられ、君といると疲れると言われてしまう。 ショックを受けたメイベルは、ブラッドばかりの生活を改め、好きだった魔法に打ち込むために魔術院に入ることを決意するが…… ◆なろうにも掲載しています

【完結】遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
【残り数話を持ちまして3月29日完結!!】 夫にも子どもにも、私は選ばれなかった。 長年の裏切りを抱え、離縁状を置いて家を出た――。 待っていたのは、凍てつく絶望。 けれど同時に、それは残酷な運命の扉が開く瞬間でもあった。 「夫は愛人と生きればいい。  今さら縋られても、裏切ったあなたを許す力など残っていない」 それでも私は誓う―― 「子どもたちの心だけは、必ず取り戻す」 歪で、完全な幸福――それとも、破滅。 “石”に翻弄された者たちの、狂おしい物語。

ガリ勉令嬢ですが、嘘告されたので誓約書にサインをお願いします!

荒瀬ヤヒロ
恋愛
成績優秀な男爵令嬢のハリィメルは、ある日、同じクラスの公爵令息とその友人達の会話を聞いてしまう。 どうやら彼らはハリィメルに嘘告をするつもりらしい。 「俺とつきあってくれ!」 嘘告されたハリィメルが口にした返事は―― 「では、こちらにサインをお願いします」 果たして嘘告の顛末は?

【完結】虐げられて自己肯定感を失った令嬢は、周囲からの愛を受け取れない

春風由実
恋愛
事情があって伯爵家で長く虐げられてきたオリヴィアは、公爵家に嫁ぐも、同じく虐げられる日々が続くものだと信じていた。 願わくば、公爵家では邪魔にならず、ひっそりと生かして貰えたら。 そんなオリヴィアの小さな願いを、夫となった公爵レオンは容赦なく打ち砕く。 ※完結まで毎日1話更新します。最終話は2/15の投稿です。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

【短編】「中身はいいけど顔がなぁ」と笑った侯爵令息。美人の姉目当てに地味ブスな私を利用したこと、謝られても手遅れです

恋せよ恋
恋愛
「……結局、男の人は、顔しか見ていないのね」 絶世の美女である姉エリザベスを狙う男たちから 「地味ブス」と蔑まれてきた伯爵家の養子アイリス。 そんな彼女に、幼馴染のアレンからの頼み事が。 友人レオナルドの「女嫌い」克服のため 彼と文通を重ね、アイリスは生まれて初めての恋を知る。 しかし、文通で育んだ絆は、すべて彼の「暇つぶし」と 「美貌の姉への足がかり」に過ぎなかった。 「アイリス? 中身はいいけど、顔がなぁ」 「俺、面食いなんだよ。あの子、おしゃれする気ないのかな」 冷めた令嬢と、後悔に悶える貴公子の、すれ違いロマンス! 🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。 🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。 🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。 🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。 🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!

愛さないと言われた妻、侍女と出て行く

菜花
ファンタジー
お前を愛することはないと夫に言われたコレットは、その日のうちに侍女のイネスと屋敷を出て行った。カクヨム様でも投稿しています。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!