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お祭りの準備
第396話 山の中
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※注:人死、残酷表現があります。ご注意ください!※
「ヴィオ~~~~!」
私の名を呼ぶ大きな声で目が覚めた。
だけど目の前は真っ暗で なんだか非常に揺れている。
「ヴィオ~~~~~‼」
「なんで追いついて来てんだよ!」
「騒動からだとしても速すぎない!?ありえないわよ。ここ山の中よ?確実にこっちに向かって来てるわ!」
自分の頭の近くで男女の焦った声が聞こえてきた事で 現状を考えてみる。
祭りの後、帰宅して寝てたらお色気姉さんに起こされた。
火事だから着替えろと言われて着替えたら リーダーからジュースを飲まされた。
その後スコンと寝た。
で、イマココ。ということは 攫われたんだろう。
あのメリテントの時にフルーツ盛を食べていたらこんな感じだったんだろうかと 懐かしいことを思い出してしまったけど、今回は成功したらしいね。
真っ暗という事は袋詰めされているんだろう。
ユサユサかなり激しく揺れているからちょっと気持ち悪い。とりあえず結界を纏って身体強化もしておこう。
完全無詠唱で出来るようになったのは マジでよかったと思います。
どうやらリュックは背負っているらしく、完全無防備でなかったことに安心する。
「ヴィオ~~~~~~~‼‼」
お父さんの声が確実に近づいてきている。【索敵】を展開すると そう遠くないことは分かるけど、自分のいる場所がオカシイ。
完全に山の中なのだ。
私たちが入るヒュージボアが多くいる場所より、ブラックウルフがいる場所よりもさらに奥、多分赤いリボンの場所は余裕で越えている筈。
「足止めしなさい!」
「影を生み出す闇よ 敵の動きを拘束せよ【シャドーバインド】」
「うおぉぉぉぉぉ‼」
「まじかよ!影を生み出す闇よ 敵の動きを拘束せよ【シャドーバインド】【シャドーバインド】【シャドーバインド】」
「くそったれ~~~~~‼」
女が誰かに命令して 男が影で拘束する魔法を使っている。
次は二人の男の声で拘束魔法が連続で唱えられているんだけど お父さん凄いね。
【索敵】の範囲が凄く狭い事を思えば まだ頭が上手く動いていないのだろう。普通の回復魔法は自分に使えないというけど、私のは違うから行ける筈。
体内の毒素を排出しないとね。
まずは飲んでしまった眠り薬を洗浄し、体内に吸収された毒素を排出しよう。
けど胃洗浄は辛いので もっと大きな括りでいけないかな。
あ、そっか。回復魔法じゃなくてもいけるじゃんね。
「【クリーン】からの【ファイア】」
自分の中の悪い成分を全て洗い流すことを考えて洗浄魔法を唱えてから 袋を燃やす。
「「「はっ!???」」」
突然燃えた袋に驚いて落とされてしまったけど大丈夫です。
「はじめましてこんにちは、そしてさようなら、【エアショット】」
「っぶね」
「ぐわっ!」
驚いて固まっている三人がどんな人かは知らないけど、人攫いである時点で悪者ですよね?
という事で問答無用の攻撃魔法を使ってみました。
だけど、二人には避けられて一人の男だけ足を打ち抜くことが出来て蹲っている。
真っ暗な夜の山の中、浄化したおかげで【索敵】の範囲が広がった。
何故かこの周囲に魔獣はいないけど、外側には見た事のない気配がチラホラと。ここの音を聞いてか 少しずつ近づいてきている。
「ヴィオ~~~!」
「お父さん!こっちだよ!」
「ヴィオ!今行くぞ!」
目の前の蹲っている男の拘束が緩んだのか お父さんが動き出している。もう一人の声も男だったよね、って事はコイツを無力化しないとね。
「ガキが調子に乗ってんじゃないわよ」
「調子には乗ってませんよオバサン【ウォーターウォール】【アースホール】【エアウォール】」
女の人が黒い針を飛ばしてきたので水の盾で防ぐ。って結界鎧をまとってるからいらなかったじゃんね。ついでに落とし穴を二人分作ったけど 男は避けてしまった。
チャライから弱いと思ったのに こっちの方が面倒なのかも。
とりあえず女が出てこない様に風の盾で蓋をしておく。
「無詠唱かよ、銀ランクってこいつの実力だったわけ?」
こっちも黒い短剣で攻撃してくるけど、どう見ても二人の武器って暗器って事だよね。ということはこの人たちって。
「王国の悪侯爵の子飼の人たち?」
「なに、俺らの事知ってんの?」
鞭と短剣は鞄の中だ、今それを取り出している暇はなさそう。
「お父さんから叱られて私の事は諦めたんじゃなかったの?【アースランス】」
「な~んだ、陛下の事も知ってんのかよ。っつ~かそうそう。
そのせいで俺たち侯爵閣下からクビって言われたんだよね~。んでジェーンがキレてお前を攫って陛下と閣下の目の前でどうにかしてやろうって事だったんだよな~」
女が穴の中で何かしてそうだったので穴の中四方八方から槍を出して串刺しにした。
男はヘラヘラ笑いながらも攻撃を絶え間なく繰り出してくる。
「ふ~ん、飼い主もあなた達も、どっちも屑なんだね。似た者同士」
「はぁ!?」
「【シャドーバインド】【ウォーターウォール】」
怒りで大振りになったところに拘束魔法をかける。
暗闇だから闇魔法が使い放題だ。大量に出した拘束の殆どは避けられたけど 数で勝負しているので 三本の触手が男の足を絡めとる。
動きが鈍ったところに水の壁で拘束すればもう逃げられない。
「ヴィオ!無事じゃったか」
「お父さん!」
拘束したのとほぼ同時にお父さんが来てくれた。
抱きしめられた瞬間に ホッとしたのか 涙が溢れてきた。
ヨシヨシと背中を擦る手は温かく もう絶対に大丈夫だという安心感で更に涙がこぼれる。
少し落ち着いたところで周囲を見渡す。
暗いからはっきりとは見えないけど 囲まれている。
「お父さん、ここって山の奥だよね」
「そうじゃ、ヴィオの魔力を追ってここまで来たが あともう少し追いつくのが遅かったら儂でも危険じゃった。エデルさんには麓で待ってもらっとる。
じゃが何故あれ以上に魔獣が近寄ってこんのじゃろうか……。
おい、お前は何か知っておるんじゃろう?
ギルドタグ?
ああ、お前があいつらの仲間じゃったんか」
最初に足を打ち抜いた男にお父さんが近寄って質問をしている。
どうやらあの男がスチーラーズの仲間だったらしい。ということは、私たちの動きをこいつらが知っていたのはあの三人が村で聞いた情報を流していたって事か。
そうか、あの三人は裏切り者だったんだね。
やっぱり簡単に人を信用しちゃ駄目って事だね。
普段なら人からもらった飲み物なんて飲まないのに、お祭りで同じものを飲んだからって簡単に飲んでしまった。
自宅に普段いない奴らがいるなんて非常事態だったのに、自分の迂闊さに腹が立つ。
お父さんが尋問しているところで残りの二人を確認してみようと振り返った時、水の盾の中でとらわれている男と目が合った。
ニヤリと嗤ったその顔にハテナが浮かんだ瞬間、私の身体は何かに掴まれ浮き上がる。
「え?」
私の身体に巻き付いているのは黒い紐(ああ【シャドーバインド】だね)と どこか冷静に考える自分もいるけど、ミョーンと伸びたその紐は 私の身体を持ち上げて ブ~ンと遠くに放り投げる。
今までのボス戦では壁を作れば魔法を使われることは無かった。
だけど今 私を掴んでいる影は 確実にあの男から発せられた魔法だ。
魔獣の頭脳レベルでは出来なかったけど、ヒトの頭があれば外の影を操作することは出来るのだろう。ああ、うっかりしていたね。
「ヴィオ‼」
全てがスローモーションで流れている。
放物線を描きながら飛ばされる私の身体は、見えない壁で遮られているような所に並んでいる魔獣たちのところに落ちるのだろう。
結界鎧がどこまで効果があるのか分からないけど、あの数からの攻撃に耐えられるのだろうか。
お父さんがとても驚いた顔で私を見つめているのが分かる。
ああ、そんなにショックを受けないで、だってこれは仕方がない。あの男を閉じ込めただけで放置した私が悪いのだから。
「【ウォーターランス】」
どんどん遠ざかっていくニヤケた男が串刺しになり、水の盾が真っ赤に染まるのを見つめているけど自分自身はどうしようもなさそうだ。
だけどお父さんは諦めていないらしく 尋問していた男を放置して私を追いかけてくる。
「お父さん危ないからきちゃだめだよ」
「馬鹿な事を言うな!絶対に助ける!」
見えない壁がもうそこに見える。
大きな魔獣たちは餌が飛んでくるのを待ち構えているようで 場所取りをするように争い始めている。恐竜大戦争かよって感じですよ。
ゆっくりと放物線を描いた私の身体が見えない壁を突き抜けそうになったその時、凄い速さで走ってきたお父さんがジャンプして私の身体をキャッチした。
そして私の身体は お父さんによって投げられて壁の内側へ飛んでいく。
「お父さん!」
お父さんは私をキャッチするために飛んだから、その身体は壁の外に流れて行く。
待って、待って!
「ヴィオ、幸せになれ!」
「やだ!お父さん!」
思いきり投げられた身体は自由が利かない。
「儂もヴィオが大好きじゃぞ」
いつもの優しい微笑でそんな事を言わないで。
見えない壁をすり抜けたお父さんは木魔法や火魔法を使って戦っている。
私も飛ばされながら【フレイムバレット】【エアバレット】【ウォータージェット】など魔法を使ってみるけど 後から後から魔獣が湧いているから効果が無い。
やっと地面に叩きつけられて 直ぐに駆けつけるけど興奮した魔獣たちによってお父さんの姿が見えない。
「お父さん!お父さん‼」
「もう死んでるさ!ここは皇国から持ってきた魔獣除けの結界があるから大丈夫だが お前の父ちゃんはもう死んだ」
壁の向こうに行こうとしたら体に影が纏わりついてくる。
後ろを見れば三人組の仲間だった男だ。
お父さんの魔力反応は【索敵】から消えている。
だけど、こいつらがいなければ、こいつらさえこんなことをしなければ!
「うるさい!お前も死ね!【フレイムバレット】」
青い火の玉が男に降り注ぎ 大量の火の玉は男を跡形もなく消してしまった。
お父さんを助けないと……。
壁の向こうはまだまだ沢山の魔獣たち。
そして奴らの頭上には見覚えのある洋服が空を飛んでいる。
シャチは アザラシを狩る時に遊ぶように放り投げるという。こいつらはお父さんで遊んでいるのだろう。
闇に生きる魔獣には聖魔法が効果的だった。なので自分の魔力全部を使うつもりで空から降らせるように想像する。
「許せない、赦さない、お前ら全部消えてしまえ!【セイクリッドアロー】」
白く輝く矢が空から幾千と降り注ぐ。
少し遠巻きにしていた魔獣たちは散り散りに逃げたが 壁の近くにいた奴らは矢の餌食となった。
何故か壁に当たったところで矢は吸い込まれるように消えるが 魔獣たちには覿面だった。
GUOOOOOOOO
GYAAAAAAAAA
自分自身の魔法だから大丈夫だとは思うけど、念のためを氷の盾を頭上に作り 降り注ぐ矢の中を駆けぬける。
空から落ちてくるお父さんを風の盾で柔らかく受け止めて 見えない壁の中へ戻る。
頭がガンガンするし めまいもしてる。あれだけ魔力を使ったのだから魔力切れなんだろうけど、そんなこと知ったこっちゃない。
「お父さんちょっと待っててね、直ぐに治してあげるから、痛いの痛いの飛んでいけ【ヒール】
腕と足生えてこい【ヒール】【ヒール】【ヒール】、ねえ、神様ってばいるんでしょ?
ピュアンクス?ミゼリコルディア?どっちでもいいからお父さんを戻してよ!
イビティマヌルは長寿の神様でしょ?お父さんお守りも持ってるのに護ってよ!ねえ!ダレカタスケテ‼」
身体から白い光が噴出したのが見えたところで意識が途絶えた……
~~~~~~~~~~
これにて《第一部 幼少期編》は完結です。
閑話をいくつか挟んでから 《第二部 別の島編》が始まります。
「ヴィオ~~~~!」
私の名を呼ぶ大きな声で目が覚めた。
だけど目の前は真っ暗で なんだか非常に揺れている。
「ヴィオ~~~~~‼」
「なんで追いついて来てんだよ!」
「騒動からだとしても速すぎない!?ありえないわよ。ここ山の中よ?確実にこっちに向かって来てるわ!」
自分の頭の近くで男女の焦った声が聞こえてきた事で 現状を考えてみる。
祭りの後、帰宅して寝てたらお色気姉さんに起こされた。
火事だから着替えろと言われて着替えたら リーダーからジュースを飲まされた。
その後スコンと寝た。
で、イマココ。ということは 攫われたんだろう。
あのメリテントの時にフルーツ盛を食べていたらこんな感じだったんだろうかと 懐かしいことを思い出してしまったけど、今回は成功したらしいね。
真っ暗という事は袋詰めされているんだろう。
ユサユサかなり激しく揺れているからちょっと気持ち悪い。とりあえず結界を纏って身体強化もしておこう。
完全無詠唱で出来るようになったのは マジでよかったと思います。
どうやらリュックは背負っているらしく、完全無防備でなかったことに安心する。
「ヴィオ~~~~~~~‼‼」
お父さんの声が確実に近づいてきている。【索敵】を展開すると そう遠くないことは分かるけど、自分のいる場所がオカシイ。
完全に山の中なのだ。
私たちが入るヒュージボアが多くいる場所より、ブラックウルフがいる場所よりもさらに奥、多分赤いリボンの場所は余裕で越えている筈。
「足止めしなさい!」
「影を生み出す闇よ 敵の動きを拘束せよ【シャドーバインド】」
「うおぉぉぉぉぉ‼」
「まじかよ!影を生み出す闇よ 敵の動きを拘束せよ【シャドーバインド】【シャドーバインド】【シャドーバインド】」
「くそったれ~~~~~‼」
女が誰かに命令して 男が影で拘束する魔法を使っている。
次は二人の男の声で拘束魔法が連続で唱えられているんだけど お父さん凄いね。
【索敵】の範囲が凄く狭い事を思えば まだ頭が上手く動いていないのだろう。普通の回復魔法は自分に使えないというけど、私のは違うから行ける筈。
体内の毒素を排出しないとね。
まずは飲んでしまった眠り薬を洗浄し、体内に吸収された毒素を排出しよう。
けど胃洗浄は辛いので もっと大きな括りでいけないかな。
あ、そっか。回復魔法じゃなくてもいけるじゃんね。
「【クリーン】からの【ファイア】」
自分の中の悪い成分を全て洗い流すことを考えて洗浄魔法を唱えてから 袋を燃やす。
「「「はっ!???」」」
突然燃えた袋に驚いて落とされてしまったけど大丈夫です。
「はじめましてこんにちは、そしてさようなら、【エアショット】」
「っぶね」
「ぐわっ!」
驚いて固まっている三人がどんな人かは知らないけど、人攫いである時点で悪者ですよね?
という事で問答無用の攻撃魔法を使ってみました。
だけど、二人には避けられて一人の男だけ足を打ち抜くことが出来て蹲っている。
真っ暗な夜の山の中、浄化したおかげで【索敵】の範囲が広がった。
何故かこの周囲に魔獣はいないけど、外側には見た事のない気配がチラホラと。ここの音を聞いてか 少しずつ近づいてきている。
「ヴィオ~~~!」
「お父さん!こっちだよ!」
「ヴィオ!今行くぞ!」
目の前の蹲っている男の拘束が緩んだのか お父さんが動き出している。もう一人の声も男だったよね、って事はコイツを無力化しないとね。
「ガキが調子に乗ってんじゃないわよ」
「調子には乗ってませんよオバサン【ウォーターウォール】【アースホール】【エアウォール】」
女の人が黒い針を飛ばしてきたので水の盾で防ぐ。って結界鎧をまとってるからいらなかったじゃんね。ついでに落とし穴を二人分作ったけど 男は避けてしまった。
チャライから弱いと思ったのに こっちの方が面倒なのかも。
とりあえず女が出てこない様に風の盾で蓋をしておく。
「無詠唱かよ、銀ランクってこいつの実力だったわけ?」
こっちも黒い短剣で攻撃してくるけど、どう見ても二人の武器って暗器って事だよね。ということはこの人たちって。
「王国の悪侯爵の子飼の人たち?」
「なに、俺らの事知ってんの?」
鞭と短剣は鞄の中だ、今それを取り出している暇はなさそう。
「お父さんから叱られて私の事は諦めたんじゃなかったの?【アースランス】」
「な~んだ、陛下の事も知ってんのかよ。っつ~かそうそう。
そのせいで俺たち侯爵閣下からクビって言われたんだよね~。んでジェーンがキレてお前を攫って陛下と閣下の目の前でどうにかしてやろうって事だったんだよな~」
女が穴の中で何かしてそうだったので穴の中四方八方から槍を出して串刺しにした。
男はヘラヘラ笑いながらも攻撃を絶え間なく繰り出してくる。
「ふ~ん、飼い主もあなた達も、どっちも屑なんだね。似た者同士」
「はぁ!?」
「【シャドーバインド】【ウォーターウォール】」
怒りで大振りになったところに拘束魔法をかける。
暗闇だから闇魔法が使い放題だ。大量に出した拘束の殆どは避けられたけど 数で勝負しているので 三本の触手が男の足を絡めとる。
動きが鈍ったところに水の壁で拘束すればもう逃げられない。
「ヴィオ!無事じゃったか」
「お父さん!」
拘束したのとほぼ同時にお父さんが来てくれた。
抱きしめられた瞬間に ホッとしたのか 涙が溢れてきた。
ヨシヨシと背中を擦る手は温かく もう絶対に大丈夫だという安心感で更に涙がこぼれる。
少し落ち着いたところで周囲を見渡す。
暗いからはっきりとは見えないけど 囲まれている。
「お父さん、ここって山の奥だよね」
「そうじゃ、ヴィオの魔力を追ってここまで来たが あともう少し追いつくのが遅かったら儂でも危険じゃった。エデルさんには麓で待ってもらっとる。
じゃが何故あれ以上に魔獣が近寄ってこんのじゃろうか……。
おい、お前は何か知っておるんじゃろう?
ギルドタグ?
ああ、お前があいつらの仲間じゃったんか」
最初に足を打ち抜いた男にお父さんが近寄って質問をしている。
どうやらあの男がスチーラーズの仲間だったらしい。ということは、私たちの動きをこいつらが知っていたのはあの三人が村で聞いた情報を流していたって事か。
そうか、あの三人は裏切り者だったんだね。
やっぱり簡単に人を信用しちゃ駄目って事だね。
普段なら人からもらった飲み物なんて飲まないのに、お祭りで同じものを飲んだからって簡単に飲んでしまった。
自宅に普段いない奴らがいるなんて非常事態だったのに、自分の迂闊さに腹が立つ。
お父さんが尋問しているところで残りの二人を確認してみようと振り返った時、水の盾の中でとらわれている男と目が合った。
ニヤリと嗤ったその顔にハテナが浮かんだ瞬間、私の身体は何かに掴まれ浮き上がる。
「え?」
私の身体に巻き付いているのは黒い紐(ああ【シャドーバインド】だね)と どこか冷静に考える自分もいるけど、ミョーンと伸びたその紐は 私の身体を持ち上げて ブ~ンと遠くに放り投げる。
今までのボス戦では壁を作れば魔法を使われることは無かった。
だけど今 私を掴んでいる影は 確実にあの男から発せられた魔法だ。
魔獣の頭脳レベルでは出来なかったけど、ヒトの頭があれば外の影を操作することは出来るのだろう。ああ、うっかりしていたね。
「ヴィオ‼」
全てがスローモーションで流れている。
放物線を描きながら飛ばされる私の身体は、見えない壁で遮られているような所に並んでいる魔獣たちのところに落ちるのだろう。
結界鎧がどこまで効果があるのか分からないけど、あの数からの攻撃に耐えられるのだろうか。
お父さんがとても驚いた顔で私を見つめているのが分かる。
ああ、そんなにショックを受けないで、だってこれは仕方がない。あの男を閉じ込めただけで放置した私が悪いのだから。
「【ウォーターランス】」
どんどん遠ざかっていくニヤケた男が串刺しになり、水の盾が真っ赤に染まるのを見つめているけど自分自身はどうしようもなさそうだ。
だけどお父さんは諦めていないらしく 尋問していた男を放置して私を追いかけてくる。
「お父さん危ないからきちゃだめだよ」
「馬鹿な事を言うな!絶対に助ける!」
見えない壁がもうそこに見える。
大きな魔獣たちは餌が飛んでくるのを待ち構えているようで 場所取りをするように争い始めている。恐竜大戦争かよって感じですよ。
ゆっくりと放物線を描いた私の身体が見えない壁を突き抜けそうになったその時、凄い速さで走ってきたお父さんがジャンプして私の身体をキャッチした。
そして私の身体は お父さんによって投げられて壁の内側へ飛んでいく。
「お父さん!」
お父さんは私をキャッチするために飛んだから、その身体は壁の外に流れて行く。
待って、待って!
「ヴィオ、幸せになれ!」
「やだ!お父さん!」
思いきり投げられた身体は自由が利かない。
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いつもの優しい微笑でそんな事を言わないで。
見えない壁をすり抜けたお父さんは木魔法や火魔法を使って戦っている。
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やっと地面に叩きつけられて 直ぐに駆けつけるけど興奮した魔獣たちによってお父さんの姿が見えない。
「お父さん!お父さん‼」
「もう死んでるさ!ここは皇国から持ってきた魔獣除けの結界があるから大丈夫だが お前の父ちゃんはもう死んだ」
壁の向こうに行こうとしたら体に影が纏わりついてくる。
後ろを見れば三人組の仲間だった男だ。
お父さんの魔力反応は【索敵】から消えている。
だけど、こいつらがいなければ、こいつらさえこんなことをしなければ!
「うるさい!お前も死ね!【フレイムバレット】」
青い火の玉が男に降り注ぎ 大量の火の玉は男を跡形もなく消してしまった。
お父さんを助けないと……。
壁の向こうはまだまだ沢山の魔獣たち。
そして奴らの頭上には見覚えのある洋服が空を飛んでいる。
シャチは アザラシを狩る時に遊ぶように放り投げるという。こいつらはお父さんで遊んでいるのだろう。
闇に生きる魔獣には聖魔法が効果的だった。なので自分の魔力全部を使うつもりで空から降らせるように想像する。
「許せない、赦さない、お前ら全部消えてしまえ!【セイクリッドアロー】」
白く輝く矢が空から幾千と降り注ぐ。
少し遠巻きにしていた魔獣たちは散り散りに逃げたが 壁の近くにいた奴らは矢の餌食となった。
何故か壁に当たったところで矢は吸い込まれるように消えるが 魔獣たちには覿面だった。
GUOOOOOOOO
GYAAAAAAAAA
自分自身の魔法だから大丈夫だとは思うけど、念のためを氷の盾を頭上に作り 降り注ぐ矢の中を駆けぬける。
空から落ちてくるお父さんを風の盾で柔らかく受け止めて 見えない壁の中へ戻る。
頭がガンガンするし めまいもしてる。あれだけ魔力を使ったのだから魔力切れなんだろうけど、そんなこと知ったこっちゃない。
「お父さんちょっと待っててね、直ぐに治してあげるから、痛いの痛いの飛んでいけ【ヒール】
腕と足生えてこい【ヒール】【ヒール】【ヒール】、ねえ、神様ってばいるんでしょ?
ピュアンクス?ミゼリコルディア?どっちでもいいからお父さんを戻してよ!
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身体から白い光が噴出したのが見えたところで意識が途絶えた……
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