ヒロインは始まる前に退場していました

サクラ マチコ

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閑話

〈閑話〉尋問 ※R15

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※R15:性暴力シーンがあります。超絶胸糞ですので読むときはご注意ください※

~〔スチーラーズ〕インラン視点~


 あたしの母親は貴族令嬢だったらしい。
 ホントか嘘か分かんないけど、本人はよく酒に酔っては「あたしはね~、男爵れ~じょ~だったのよ。この美貌で色んな男からモテてモテて、大変だったのよ」が口癖だった。

 魔法の才能があったからリズモーニの魔導学園に通ってたらしく、そこでいい男を見つけて仲良くなったんだって。当時母さんが住んでた国はまだ小国で、共和国って形にはなってなかったらしい。だから自分の国で見た事のある高位貴族よりもっとずっと素敵な貴族が多くて、リズモーニで結婚するために頑張ったんだって。

「だけどさ、婚約者がいる相手に手を出すなって言われてさ、だったら婚約者がいますって名札でもつけてろってんだ。んなこと分かる訳ねえし、だったら靡いて手出して来てんじゃねえっつーの」

 そう、母さんは注意をされたにも関わらず何度も高位貴族の男に手を出して退学処分を受けたらしい。しかも手を出した男の婚約者の家から罰金迄支払わされたらしく、男爵家から除名処分、母さんは男爵家から金を借りた事になって娼館で働いて金を返す羽目になったんだって。
 その時にできた子供の一人があたしで、誰が父親かは分からないっていうんだから滅茶苦茶だと思う。

 娼館で売れるのは若い子だけで、借金分は返せたって事で母さんは下町の酒場で働くようになった。だけど娼館の方が稼ぎが良かったらしく、酒場の客を捉まえては安宿で躰を売って酒代を稼いでた。
 お陰であたしも母さんの子だからって声をかけてくる奴らが多くて、何度も犯されそうになって逃げてきた。おかげで逃げ足だけは早くなった。

 母さんが死んだのはあたしが12歳の時だった。
 酒場でひっかけた客と安宿でやってるときに首を絞められて殺された。恨みがあったとかそういうのじゃなく、そういう性癖を楽しんでたら加減が効かなくて死んだんだろうって噂になってた。
 母さんが死んだ時に成人してなかったあたしは、孤児院に行くか、売られるか、冒険者になって自活するかの三択しかなかった。
 母さんに似たのか魔法の才能はあったから冒険者になることを選んだ。

 冒険者は男所帯が多い。登録に行ったその日に男三人組に誘われてパーティーを組んだ。
 リーダーの男に抱かれたけど、下町で犯されそうになったオッサンよりはずっといい男だったし、そのお陰で魔獣から守ってもらえるなら問題なかった。
 仲間内であたしを取り合って険悪になってパーティーが解散することもあったけど、そうなれば新しいパーティーから声がかかるから、あたしが困ることはなかった。

 そうやって男に寄生しながら、より強い相手を見つけてはパーティーを移って生きてきた。パーティーの一番強い相手のオンナになることで、他の奴らから手を出されないという安心感もあった。


 クズと知り合ったのはいつのことだったか、銀ランク上級のパーティーで羽振りが良い奴らが町に滞在するようになって、ギルドで声をかけられたのが初めだったと思う。

「よぉ、女のソロじゃ大変じゃねえか? 銀ランクの白じゃあ碌な依頼も受けれねえだろ? うちにいた女が結婚するとかで辞めちまって空きがあるんだ。俺らんトコに来るか?」

 新しい寄生先を探していたのもあるけど、自分達といれば銀の中級までは直ぐに上がれるという言葉が決め手だった。今までの奴らは依頼を受けるよりも宿で過ごすことの方が多く、碌に金もポイントも稼げなかったから。
 スチーラーズに所属してひと月もしないうちに、このパーティーが真っ当なパーティーじゃない事には気付いた。だけどあたしがすることは変わらない。
 ゲスたちが闇ギルドとの仲介役をして悪事の下準備をしている間に、取引先の貴族から報酬を上乗せさせるために接待をして貴族に抱かれるだけだ。
 時々見た目が良い当たりを引くこともあるけど、そういう奴は変な性癖を持ってて無茶苦茶されることが多かった。脂ぎったオッサンの方が余程若くて美人なあたしを抱けると喜んで優しくしてくれたくらいだ。
 そうして貴族の接待を受けた翌日には必ずクズに抱かれた。

「オラっ、おれの方が良いだろ? あんな金だけしかねえ貴族より俺の方がお前の良いところをよく知ってるだろ? お前は俺のオンナだ! 忘れんな! ほら、言えよ、どっちがいい?」
「クズの方が良いに決まってる」
「そうだろ! ははっ、お前を買いたいって言ってたがザマァねえな! お前は俺のオンナだ」

 馬鹿の一つ覚えみたいに激しく腰を振るしか能のない糞男は、必ず毎回これを言わせたがる。言い淀んだ時には首を絞められて気を失ったことがあり、母さんと同じ目に合うかと思った。そういう時には他のパーティーメンバーに聞こえるようにやるから本当に嫌だった。



 そんな生活に変化があったのは2年前の春、皇国で初めてクズが暗殺依頼を受けてきた。あたしは貴族との交渉しかやってきた事がなく、それこそ現場には出たことがなかったのに今回はそうはいかなかった。

「依頼主が旦那の浮気相手を殺してくれってやつだからな。そこにお前が行ったら危険だろ? 前衛は別口の破落戸共がやるからお前は後方から魔法で相手を攪乱すればいい」

 そう言われて向かった現場はそんな事を考えている余裕もなかった。たった一人の女に次々にやられていく破落戸、隠れている筈の子供を探せと命令した直後、クズの首が飛んで私は腰を抜かしてしまった。

「逃げるぞ!」

 そう言って私の腕を掴んだのはディス、一緒に転がるようにその場から逃げたのはゲス。そこからは一目散に走って逃げて気が付けばリズモーニに到着してた。

「あの襲撃で俺たちは死んだようなもんだ。俺はここから真っ当な冒険者になりたい」

 3人でそう誓ったのは辺境の村で子供達から刺激を受けたから。
 子供達は素直で結構胸に刺さる事をグサグサ言ってくる。だけど私たちが強くなりたいって言ったことを馬鹿にせず、どうしたらいいか一緒に付き合ってくれた。
 この村で頑張ればあたしたちは変われる、そう思ってた。――あの日までは。




「よう、探したぜ」

 ゴールデントラウトに再戦する為にダンジョン巡りをしていたある日、メリテントの街でまさかの人と再会してしまった。

「な、なんで……」
「なんでってのはどういう意味だ? なんで生きているのかって事か? それともなんでここにいるのかって意味か?」

 ニヤリと口角だけが上がるけど、目が笑っていない。あの時の襲撃で死んだと思ってたのに、何でここにいるの……?

「げ、ゲドゥ……」
「よぉ、ディスにゲスも元気そうで安心したぜ。久しぶりの再会だ、一緒に飯でも食おうぜ」

 その誘いを断る事など出来そうもなく、あたしたちはゲドゥが先導するままに宿に向かった。

「やめてくれ、もう止めてやってくれよ……」
「はぁ~、あの時からコイツを一回抱いてやりてえって思ってたんだよなぁ。お前らもこの2年コイツと一緒にいたならそれなりに楽しんだんだろ? スキモノのコイツの事だ、3人で楽しんだんじゃねえの?」
「ちがっ、俺らはっ……、そんなことしてねぇ、グハッ!」

 宿に入るなり私たちの身体は自由が利かなくなった。自分たちの身体を見れば黒い布のようなもので縛られており、ゲドゥの闇魔法で拘束されたのが分かった。
 ディスとゲスは膝をついた状態で拷問され、あたしは全裸にされて2人の目の前でゲドゥに犯された。
 ゲスが言うように、あたしたちに身体の関係はなかった。
 最初はそれどころじゃなかったって言うのもあるけど、サマニア村に行ってからは強くなるのが楽しくて、訓練を繰り返していれば疲れ果てて眠る日々、それどころじゃなかったのだ。

 ある日はディスたちのそれを悦ばせろと言われ、嫌がる2人に謝りながらゲドゥに後ろから犯されながら彼らを果てさせた。
 ある日は黒い布で天井から吊り下げられ、延々攻められた。
 変態貴族にすらされたことのないような事をされてあたしの心は壊れかけていたけど、その前に2人が折れてしまった。


 ゲドゥがあたしたちを見つけたのはパーティー名からだった。
 同じパーティーに所属しているままだったゲドゥだから、ギルドで〔スチーラーズ〕の現在地を調べることが出来たらしい。ディスがあの後泣いて謝ってきたけど、改名を不要だと言ったのはあたしたちなんだから運が悪かったとしか言いようがない。だって、ゲドゥが生きてるなんてあの状況で思うはずがなかったんだから。

 ゲドゥがこの国に来ることが出来たのはメネクセス王国の偉い人と関係がある裏家業の人達のお陰だった。そいつらが捜している子供の特徴がヴィオちゃんに似ていた事で、あたしたちはヴィオちゃんの情報をゲドゥに流す役割を与えられた。
 時々村に帰っては子供達と訓練を一緒にして、探し人がヴィオちゃんなのかを確認するのと同時に、現在地を聞き出すという事だった。

 ナチ君やルン君は警戒心が強いから、彼らが村を出て依頼をしている間に年下の子供たちに的を絞って聞き出せば、案外簡単に裏を取ることが出来た。
 
 あの襲撃事件があった直後くらい、水の季節に川で溺れているところをアルクさんに拾われた。
 村に来た当初は綺麗な髪色だったけど、悪者に見つからないように色を変えているけど、色は内緒だからなと言われた。
 悪者が集まるかもしれないからトラウトの季節は村を離れている等々。

 そして早く帰ってきてほしいねという風に話を振れば、彼らが知っている情報を教えてくれるのだ。

「すげえ広いダンジョンに行くらしいぞ」
「ウミユっていうらしい、アンテッドが出るらしいけど、ヴィオだったら喜びそうだよな」
「トンガ兄ちゃんたちも一緒なんだろ? 次は一緒に帰ってきてくれるかな? そしたらまた一緒に訓練してくれるかな」
「兄ちゃんたち、あの後そのままメネクセスに行くんだって……。ちえっ、一緒に訓練できると思ったのになぁ」

 あたしたちがギルドの受付でヴィオちゃんの事を聞いても「いつ帰ってくるのでしょうね」くらいしか教えてもらえないけど、訓練場での練習中には子供達からこうして情報が集まる。それをゲドゥに伝えるのがあたしたちの仕事だった。

 ディスとゲスが走り回っている時も、あたしはゲドゥの腕の中にいることがある。人質なのか、自分のオンナだと思ってるのかは分からない。
 でも2人だけの時には、例の裏家業の連中の話を愚痴混じりで聞かされていた。

 それによると皇国が魔獣を寄せ付けないようにするために教会に置いてある結界の魔道具を盗んできた事、その道具があるからあの魔の山を越えて皇国からリズモーニに来ることが出来た事、ヴィオちゃんは裏家業の奴らの上司というかボスを経由して本当のお父さんに会わせるつもりな事を聞かされた。

 それならこんな回りくどいやり方をしなくても、普通に村に来て事情を説明して連れて行けばいいじゃないかと言ったんだけど、そうはできない理由があるらしい。

「自分の娘だと思って可愛がってるその親父が素直に渡すのか? 下手な事を吹き込まれても困るだろうが。まだ6歳のガキだぞ、今一緒にいる奴らが一番だと思わされてる可能性が高いだろうが」

 そんなことないと思うけど、そんな事をこいつに言っても仕方がない。
 あたしたちはヴィオちゃんがお父さんに会えるならその方が幸せになれる筈だからと自分たちに言い訳をしながら祭りの日を迎えたんだ。


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