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本編のアイリス
聖女はビッチ(アイリス過去SS)
しおりを挟むニチェの港町と大教会は近くありませんでしたので、そのうち聖女の事は忘れていつもの生活に戻れると思っていたのですが、そうなりませんでした。
聖女が召喚された時に宣言した「悪を討伐する」という目的を達成するために、各地から力自慢、腕自慢の騎士たちが大教会へ集められることになったのです。そして集められた騎士達で腕試しが行われるのだそうです。
「伯爵家の名前に泥を付ける訳にはいかねえし、ある程度はやるけど適当なところで負けて帰ってくるから心配すんな」
そう言って出かけて行ったアダームでしたが、彼が帰ってくることはありませんでした。アダームの他、複数名の騎士が旅の供として選ばれてしまったからです。
彼らが旅に出てからは定期的に大教会へ連絡があったそうで、アダームの後ろ盾でもある伯爵家には知らせをもらっていました。
大陸に渡ってからは数名の新たな仲間が参加したそうです。そして聖女と共に旅に出た彼らですが、アダーム以外の騎士達は魔の物の牙により死亡したという連絡もありました。
一年後には大量発生していた魔の物の氾濫を抑えた成果を讃えてアダームが勇者と呼ばれるようになっているという連絡がありました。
二年後には、さらに別の国でも数件の氾濫を抑えて、彼らは我が国だけでなく大陸でも素晴らしい功績と名声を得るようになったようでした。
彼らが旅に出て三年の後、やっと帰ってくると知り父と迎えに行きましたところ、聖女の隣にいたのは見知らぬ男性が一人だけでした。
旅の間に仲間になったという人たちも、アダームの姿もありません。ですが、聖女と共にいる男性は皆から勇者だと呼ばれて、それに手を振って応えていたのです。
アダームがあの時に言っていたように、良くない事を企む悪女だったのでしょうか。それを直接確認しに行ったのですが、聖女と会った後の記憶はなく起きた時には知らない部屋でした。
ガシャン
「なに……これ、誰か、誰かいませんか?」
気付いた時には自分の両手が釣り上げられており、その手首には鉄枷が嵌められ鎖が繋がれていました。どういう状況なのでしょうか。アダームの詳細を聞きに聖女に会いに行っただけだったはずなのに。
カツン カツン カツン カツン
ガチャリ
階段を下りる足音の後、扉が開く音がしたと思えば誰かが私のいる場所に近付いてくるのが分かります。
助けを求めようと声を上げた私でしたが、姿を見せたその人に驚くしかありませんでした。
「聖女……」
「あらぁ、怖いわぁ。罪人の貴女からそんな風に呼ばれるなんてぇ。
私今はこの国の王様よりも偉いの。この国ね、私の威光が欲しいからって教会をトップにして神国っていう名前に変えるんだって。
私が王様の娘になったから今は王女兼聖女なのね、だからもっと傅いて欲しいわぁ。もうちょっとしたら勇者が私と結婚して、聖女と勇者がこの国のトップになるの。だから、あの男の存在を知ってる貴女達がいるのは困るのよねぇ」
聖女の隣には勇者と名乗っていた金髪の優男が侍っており、彼女の腰を抱いて時々頭に口づけをしながら乳房を触っている。
それを私の前でやる意味も分からないし、アダームの事を知っている人がいるという意味は? まさか?
「私の家族に何かしたの……?」
「ヤダぁ、怖いわぁ」
「貴様! 聖女様を脅す気か!」
ガシャンと私の手枷から繋がっている鎖を掴み上げて中吊りにしてくる男、これが勇者ですって? こちらの意見も何も聞かず、自分が言いたい事だけ言って攻撃をしてくるような野蛮な男が勇者だなんてありえない!
「私は何もしてないわ。ただ今の王様、私の義父にお願いして、他国からの危険な思想を持ち込んでいる家があるかもしれないって言っただけ」
「我が家がそうだと言いたいの? そんなわけないじゃない!」
「言葉使いに気を付けろ!」
突然足に燃える様な熱さを感じたと思えば、それは熱ではなく、勇者と名乗る男に斬りつけられたことによる痛みによるものだったようで……。
「あら、【サイレント】」
〈きゃあぁぁぁ!〉
「もう、消音してからじゃないと流石に声が漏れてしまうでしょう? 今日はオハナシアイをしに来ただけなんだから」
「すまない、あまりにもこの女の目が好戦的だったから……」
「うん、守ってくれてありがと♡
私の一番は貴方しかいないわ。あのクサレイ〇ポ勇者も、枯草爺エルフも、私の魅力に気付かない馬鹿共なんてどうでもいい。私のハーレムに入れてあげようとしたのに、この何処にでも居そうな女に操を立てるとか、何時代だっつーの。
ああ、これから貴女にはこの国の為に沢山頑張ってもらうからよろしくね♡
大丈夫、一応死なないようにはしておいてあげるから。じゃあね~」
血が流れ出る足に回復魔法をかけられて痛みは無くなり出血も止まったようだけど、先程かけられた魔法の影響か声が出ない。父は? 母は? 使用人の皆は? アダームはどうなったの? そして私はこれからどうなるというの?
とんでもない悪女に掴まった事だけは確かで、ここから数年間、毎日拷問と回復を繰り返されて、それは「やり過ぎちゃったかも」と言われたあの日まで続くこととなる。
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