ヒロ退 こぼれ話 SSなど

サクラ マチコ

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本編のアイリス

魔力訓練と亡命(アイリスSS)

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 記憶を思い出した時にここが神国(元アルゴルリア)だったと知って絶望しそうになった。
 だけどよく考えれば、今の私はまだ4歳で、あのクソビッチが聖女をあぶりだす為に始めた洗礼式があるのは7歳、しかもあのクソビッチ、ハーレム要員にならなかったエルフにこっぴどく振られた腹いせに、この国では聖属性以外の属性魔法は魔の物からの由来があり危険だと、属性魔法を使うのは野蛮だとこの国に広めたらしい。

 当時の生活でもそんなに魔法を使う人はいなかったけれど、普段の生活では火魔法や水魔法、風魔法などを使っていた筈なのに、それすらも使うものは野蛮だとか、危険思想の持ち主だなんて言掛りをつけて使わせないようにしていったみたい。聖属性魔法を持っている人もそれなりにいて、排泄物の浄化魔法を使える人は平民でも稼ぎ頭だったけど、どうやらそれらは教会を増やして囲うようにしたみたいだね。

 お陰で130年が経過した今は属性魔法を使う人がいない。焚火ですら火おこしをしていて驚いたし、排泄物をそのまま穴に捨てているのを見て驚愕したもの。
 クソビッチはアダームと同じニホンという世界から来たと言っていた。旅の最中はそういう話もしていたらしく、顔で選んだ旅の供だったけれど、その記憶があるという事で執着していたみたい。だからこそ手に入らないと知って怒り狂ったみたいだけど……。

 だけど、その時の話は時々聞かされていた。
 他の世界の話をすると「帰りたいのか?」と周囲に悲しい顔をされるから話せないけど、喉を潰されて声を発せない私は誰かに告げられる心配も無くて良かったのだろう。ああ、あとアダームとの事を話して私の心を揺さぶりたいという思惑もあったのかもしれない。
 その時の話ではかなり便利な世界だったと聞いていたのに、現在のこれを見れば随分退化していると言わざるをえないのではないだろうか。

 両親に聖属性魔法と聖女について聞けば、聖女となれば修行をして教会に派遣されるし、そうなれば普段は高額すぎて受けれない回復魔法などの恩恵も受けやすくなるから、皆自分の子供に聖属性が出ることを願っていると言われた。

 それを聞いてこの家族を捨てて国を出ることを決めた。
 幸い属性魔法を使う人はいないようだし、この日から体内にある魔力を動かす練習をはじめ、両親が居ない時には掃除や洗濯などで水魔法を使えるように練習をし始めた。

 この国は島国で、大陸に渡るには確実にあの海を渡る必要がある。
 あの拷問の日々で良かったのは、冒険者という事について聞けたこと、海にも魔獣がいると知れたことかもしれない。
 泳いで渡るのは無謀だから、どうにかして渡る方法を考える必要がある。今居る場所も海沿いだけど、ニチェのように先端ではないようだし、ニチェがまだあるのかも分からない。
 だけど、逃げるにはまずニチェがあった港町までは行く必要があるし、大陸に渡ってからもしばらく移動が必要になる。
 そう思って体力と筋力をつけるようにし、魔力も使い果たして眠るように繰り返した。


 ◆◇◆◇◆◇


 5歳を過ぎてからは排泄物を森の穴に捨てに行く役目を率先して行うようにして、遠回りをしながら筋力をつけた。
 勿論そのまま持っていくのは悪臭が酷いから、排泄物の桶には聖魔法の【ピュリフィケーション】を使って浄化し、こぼれないように水魔法の【ウォーターウォール】で蓋をしておくことも忘れない。纏めて捨てる為の穴は複数個あり、敢えて遠い他の村用の穴まで歩くことで体力と持久力もついた。移動する時には風魔法の【ウインド】を背中に当てて歩く速度を上げる事で両親にも怪しまれずに帰ることが出来ている。
 両親がいる時以外は魔法をずっと使っているから魔力も増えるし、魔力操作が上手くなった。風魔法が一番得意になり、水魔法と聖魔法も使えるようになった。
 この3つはクソビッチがよく使っていたからだけど、こんなところであの女の恩恵を受けることになるとは思わなかった。


 そして前世の記憶を思い出してから二年半、6歳も半分を過ぎた頃に村からの脱出を決行する日が来た。

 昨日父が足を怪我して帰ってきたのだ。

 大きな網を海に放り投げて魚を獲るのだけれど、その中に混じっていた刃物のような嘴を持っていた魔魚に刺されたらしい。
 高価な回復薬を使うほどではないからと、すり潰した薬草を塗りつけて布切れを巻いただけという応急処置。あの頃の平民ですらもう少しマシな処置をしていただろうに、これが今のこの国の現状なのだろう。
 父を心配するべきなのだろうけど、走って追いかけられる心配はなさそうだと思った私は翌日、排泄物を廃棄しに行くと言ってそのまま逃げだした。
 この数年、廃棄物を捨てに行くふりをして地形や場所を確認しておいて良かった。
 私の育ったアクスネ村は地形を見るにニチェからそう遠くない場所だった。
 海を右手に走り続ける。勿論桶は家の裏に置いたまま、あれが無くなれば残された2人が困るだろうからね。
 自分に追い風となるように風魔法を当てればスピードが上がる。これは気を付けないと小さな私の体は吹き飛んでしまう事もある。だけど何度も練習したおかげで海を渡る事も風魔法があれば可能だと分かった。




※アイリスが使う『クソビッチ』は《悪女》という意味だと思って使っています。
『ビッチナクソ』と、とある聖女に直談判した結果「誰がクソビッチだと」と言い返された事で『ビッチナクソ』ではなく『クソビッチ』が正式な言葉なのだと思っています。
この作品はR15ですが、良い子の皆さん、良い大人の皆さんは使わないように気を付けましょうね(*‘∀‘)
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