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308 賑やかな夕食
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「ハァ~……! いっぱい買いましたね~!」
「ふふ! 何だか仕入してるみたいになっちゃったわね?」
買い物を全て終え漸く帰宅……。
キッチンでトーマスさんの魔法鞄の中から買った食材を取り出し、トーマスさんとオリビアさん、ユランくんとレティちゃんの五人で冷蔵庫と食糧棚に詰め込んでいく。
肉屋さんで買い物した後も、卵に牛乳、パンを買ったりと馬車の中は既にパンパンの状態で、ドラゴンは身動き取れずにオロオロと戸惑っていた。
幌を全部下ろし、こっそりとトーマスさんの魔法鞄の中に入れていったんだけど、本当に魔法鞄って有り難いなと改めて実感したよね……。
「ユランくん、さっきはありがとう。助かったよ」
「ん? いいよ。ユウマくん、ぐっすりだったね」
「うん。ユウマもハルトも、かなりはしゃいでたからなぁ~」
二人は帰りの馬車の中、ドラゴンを背もたれにいつの間にか寝入ってしまった様で……。家に着いたはいいけど、あまりにも気持ち良さそうに寝ているため起こすのも憚れるとユウマはユランくんに抱えられ、ハルトは僕が抱えて寝室へ。以前よりも少し重くなった体重に、成長してるんだなぁと嬉しくなった。
メフィストも一緒に寝かせ、三人の寝顔を見ていたら少しだけ片付けるのが遅れてしまった。
「ユイト、これは何処に置く?」
「あ、このレンジの横にお願いします!」
「パスタはここでいいかしら?」
「そこなら倒れないし、いいですね!」
トーマスさんが抱えているのは、あの譲ってもらったパスタマシン。
これがお店にあったらどれだけ助かるか……! これなら包丁も使わないし、手伝ってもらう時にも安全だ。
オリビアさんが片付けているのは乾燥パスタ。
瓶詰めじゃないのもあったんだけど、次に買う時にこの瓶を持って行けば、少しだけ安くなるんだって。オリビアさんも、今はこんな便利な物がって乾燥パスタを繁々と観察していた。
村に帰る前にアイヴィーさん達にはまたお礼に行かなきゃ。
《 はぁ~! おうちついた~! 》
《 ゆっくりできる~! 》
《 やっぱり、おうちがいちばんね~! 》
《 《 《 《 わかる~! 》 》 》 》
ノアたちは隠れているのに飽きたのか、五人でソファーに座りだらんと足を伸ばしている。何だか僕たちとやってる事が同じだなと、それを見て皆で笑ってしまった。
「夕食までもう少し時間掛かるんだけど、何か食べる?」
《 ん~。ぼく、ちょっとねてくる…… 》
《 わたしもねようかな? 》
「本当? じゃあ、ご飯出来たら起こしに行くね?」
《 《 《 《 うん! 》 》 》 》
どうやら皆疲れたみたいで、ニコラちゃん以外はふわふわと寝室へ飛んでいく。
「ニコラちゃんは眠くない?」
《 うん! だいじょうぶ! わたしもおりょうりてつだう! 》
「きょうはおきゃくさん、いっぱいだもんね?」
《 ね! あれくもくるんでしょ? たのしみ~! 》
「がんばろうね!」
《 うん! 》
レティちゃんとニコラちゃんはすっかり料理に嵌ってしまった様で、新しい食材を興味津々に眺めている。もしかしたら、本当に“妖精のお菓子屋さん”が実現するんじゃないかと楽しみになってきた。
「トーマスさんもユランくんも、本当に良いんですか?」
「あぁ、オレも手伝うよ」
「ボクも足手纏いにならない様に頑張るね」
二人とも夕食の準備を手伝ってくれる様で、腕捲りをしてやる気十分だ。ん~、今夜は焼き肉がメインだから、他のは簡単なものにしようと思ってたんだけど……。
ちょっとお願いしようかな……?
*****
「オリビア、これくらいでいいのか?」
「ん~、あともう少しね! ピンとツノが立つくらいになれば大丈夫よ」
「ピンとか……。よし!」
「ふふ、頑張って!」
「レティちゃん、これくらいでいいかな?」
「ん~。ゆぅくんもはるくんも、もうすこしじゃむ、いれたほうがいいかも……」
「そっか。甘めの方がいいのか……」
「うん! あまくってね、おにくもおやさいも、もっとおいしくなるの!」
トーマスさんはオリビアさんに、ユランくんはレティちゃんに教えてもらいながら夕食の手伝い。トーマスさんにはフルーツサンド用の生クリームを泡立ててもらっている。ユランくんには焼き肉用のタレを。
オリビアさんもレティちゃんも、二人に教えながらも自分の作業はテキパキと進め、頼もしい限りだ。
《 ゆいと~! こおってきたよ~! 》
「ありがとう! もう一回かき混ぜるから、また凍らせてもらえるかな?」
《 うん! まかせて~! 》
僕はニコラちゃんと一緒に練乳入りのミルクアイスを作っている途中。疲れないかと訊いても、このくらい何ともないと自信満々。
ニコラちゃんのおかげで、ほんの少しの時間でアイスが完成してしまった。これは夕食後のお楽しみだ。
「あ、いい感じ!」
《 いっぱいういてきた~! 》
僕はアイスの合間に餅粉で団子作り。鍋の中でぷくぷくと浮いてくる団子を掬い冷水に浸け、このまま暫く置いておく。これはオリビアさんも気に入ってくれる筈……!
「お米もそろそろかな~?」
やっぱり焼き肉には白米は欠かせないと、現在お鍋三つで炊飯中。残ってもおにぎりにして明日食べればいいもんね。残念ながらツナは無かったけど、他の食材で色々おにぎりの具を作れるし。
「あ、おにぃちゃん! おとうふ、ちっちゃくなってる!」
「どれどれ~? あ、ホントだ。水分抜けたみたいだね。レティちゃん、それが終わったら一緒に揚げ出し作ってみる?」
「え! いいの?」
「油に入れるのは僕がするけど、出汁はレティちゃんにお願いしようかな」
「おだし……? わたし、がんばる……!」
美味しかった揚げ出し豆腐の出汁と聞いて、レティちゃんはやる気が漲っている。隣にいたユランくんも、楽しみにしてるねと応援していた。
*****
「よし! 準備出来たわね~!」
「今夜も旨そうだな」
「お腹空いてきました……」
「ふふ! ユランくん、もう少しの辛抱よ~!」
テーブルに完成した料理をトーマスさんとユランくんと協力して並べていく。
トーマスさんが頑張ってくれたサンドイッチに、ユランくんが作ってくれた焼き肉のタレとサラダ。オリビアさんが作った揚げ物にパスタと、レティちゃんの力作の揚げ出し豆腐!
「とっても、おいしそうです……!」
「おぃちちょ!」
「あ~ぃ!」
起きてきたハルトたちも、ご馳走を見てソワソワしている。
テーブルに完成した料理を並べ終わると、コンコンとドアノッカーの音が聞こえてきた。タイミングもバッチリだ!
「「「こんばんは!」」」
「やぁ、いらっしゃい」
「皆さん、どうぞ」
「「「お邪魔します!」」」
トーマスさんと一緒に扉を開けると、そこにはブレンダさんとエレノアさん。そしてステラさんの姿が。
アレクさん達は? とステラさんの後ろを見ると、門扉の方から大きな人影が……。
「こんばんは! 御招き頂きありがとうございます!」
「こんばんは」
「遅くなってすみません!」
「ようこそ、皆。しかし、随分と大きいな……?」
リーダーのエイダンさんとマイルズさんが担いできたのは、米俵程もありそうな大きなお肉の塊。確かに肉は任せろと言っていたけど、こんなに持ってくるとは予想外だ……。魔法鞄はワザと使わなかったのかな?
「ユイトくん、こんばんは。この肉は美味いから、きっと気に入ると思うよ」
「エイダンさん、こんばんは! お肉ありがとうございます! ……えっと、キッチンまで運ぶのお願いしてもいいですか……?」
「あぁ、任せてくれ!」
ニコニコと笑顔のエイダンさんとは対照的に、マイルズさんは物静か……。こんなに近くで見た事が無かったから、耳にこんなにピアスを付けているなんて知らなかった……。
それに、まだ一言しか声を聞いてない……。
「えっと……、あの、マイルズさん! 今夜は料理をいっぱい用意してるんで、遠慮なく食べていってくださいね!」
「……ありがとう」
マイルズさんにそう言うと、柔らかい笑みを浮かべ頭を深々と下げられる。
一緒にお肉を担いでいたエイダンさんが傾いたお肉に焦っていたけど、そんな事お構いなしだ。トーマスさんに案内され、お二人はキッチンへと向かう。
「ユイト、あの肉スゲェ美味いから!」
「そうなんですか? 楽しみです! 僕もお腹空いちゃったんで、早く行きましょう!」
「だな!」
玄関だけど、アレクさんの左指を二本だけ軽く掴み、僕の指をそっと絡める。ちょっと照れ臭いけど、少しだけならいいよね?
アレクさんは少し驚いた表情で振り返ったけど、すぐに笑顔を見せてくれた。
「えぇっ!?」
すると、エイダンさんの大きな声が玄関まで響いてくる。
何だろうかと、慌ててアレクさんとリビングへと向かった。
「よ、妖精……!?」
「こんなに……」
リビングの真ん中で、エイダンさんとマイルズさんが固まっている。ノアしか見た事がない筈だから、目の前に五人もいて驚いたみたいだ。
トーマスさんよりも大きいお二人が立っているだけで、あんなに広かったリビングが少しだけ狭くなった気がした。
《 あ、ゆいと~! このひと、おっきいね! 》
《 おにく、すご~い! 》
《 ちからもち~! 》
エイダンさんとマイルズさんの周りをふわふわと飛び、お二人の様子を観察しているノアたち。エレノアさんとステラさんも既に驚いた後の様で、オリビアさんとメフィスト、ブレンダさんは楽しそうに笑っていた。
リュカとテオは、なぜかマイルズさんの頭に掴まって遊び始め、トーマスさんが慌てて止めに入っている。それを見たレティちゃんとユランくんが肩を震わせ、笑いを堪えているのが見えた。
「あっ! にぃに、おててちゅなぃでる……!」
「あっ! ほんとです……!」
僕たちの後ろから聞こえたユウマとハルトの声に、トーマスさん達が一斉にこちらを振り返る。どうやらキッチンに置いたお肉の塊を見ていたらしい。
マイルズさんも振り返ったせいで、リュカとテオが落ちそうになって必死にしがみ付いている。それを見て、ユランくんはとうとう我慢出来ずに窓の方を向いてしまった……。
「アレク……。ユイトくんが可愛いのは分かるが……」
エイダンさんが呆れた表情でアレクさんを見ている。
繋いだのは僕からなんだけど、ちょっと言い辛い……。すると、アレクさんが後ろ手で僕の手をぎゅっと握り返してくれた。
「リーダー、別にいいのでは? 私も繋ぎたいくらいだ」
「エレノア!」
エイダンさんの言葉に、エレノアさんが助け船を出してくれた。
その隣でブレンダさんが焦っている。
「そうね、エレノアちゃんもブレンダちゃんも仲良いものね?」
オリビアさんも、うんうんと頷いている。メフィストも真似して頷き、ステラさんが可愛いとはしゃいでいる。
「そうですね! 私も出来れば繋ぎたいです!」
「もう! 何故二度も言うんだ!」
「やぁ~ん……! 羨ましいですぅ~……!」
「あら、ステラちゃん、そう言う相手が出来たの……?」
「えっ!? ち、ちがいますよぉ~!」
「怪しいわね……! 後でたっぷり聞かせてちょうだい!」
オリビアさんはステラさんの横に座り、話を聞く気満々だ。メフィストもステラさんをジッと見つめている。
「ほら、皆! 早くおいで!」
「そうよ~! お腹空いちゃったわ! 早く食べましょ!」
「「は~い!」」
トーマスさんは駆けてきたハルトを椅子に座らせ、ユウマを膝へ。
オリビアさんもレティちゃんとユランくんを呼び、仲良く皆で席に着く。
「さ、皆! いっぱい食べてね! いただきま~す!」
「「「「「いただきます!」」」」」
皆で手を合わせ、少し遅めの夕食が開始した。
今夜は何だか、賑やかになりそうな予感がする。
「ふふ! 何だか仕入してるみたいになっちゃったわね?」
買い物を全て終え漸く帰宅……。
キッチンでトーマスさんの魔法鞄の中から買った食材を取り出し、トーマスさんとオリビアさん、ユランくんとレティちゃんの五人で冷蔵庫と食糧棚に詰め込んでいく。
肉屋さんで買い物した後も、卵に牛乳、パンを買ったりと馬車の中は既にパンパンの状態で、ドラゴンは身動き取れずにオロオロと戸惑っていた。
幌を全部下ろし、こっそりとトーマスさんの魔法鞄の中に入れていったんだけど、本当に魔法鞄って有り難いなと改めて実感したよね……。
「ユランくん、さっきはありがとう。助かったよ」
「ん? いいよ。ユウマくん、ぐっすりだったね」
「うん。ユウマもハルトも、かなりはしゃいでたからなぁ~」
二人は帰りの馬車の中、ドラゴンを背もたれにいつの間にか寝入ってしまった様で……。家に着いたはいいけど、あまりにも気持ち良さそうに寝ているため起こすのも憚れるとユウマはユランくんに抱えられ、ハルトは僕が抱えて寝室へ。以前よりも少し重くなった体重に、成長してるんだなぁと嬉しくなった。
メフィストも一緒に寝かせ、三人の寝顔を見ていたら少しだけ片付けるのが遅れてしまった。
「ユイト、これは何処に置く?」
「あ、このレンジの横にお願いします!」
「パスタはここでいいかしら?」
「そこなら倒れないし、いいですね!」
トーマスさんが抱えているのは、あの譲ってもらったパスタマシン。
これがお店にあったらどれだけ助かるか……! これなら包丁も使わないし、手伝ってもらう時にも安全だ。
オリビアさんが片付けているのは乾燥パスタ。
瓶詰めじゃないのもあったんだけど、次に買う時にこの瓶を持って行けば、少しだけ安くなるんだって。オリビアさんも、今はこんな便利な物がって乾燥パスタを繁々と観察していた。
村に帰る前にアイヴィーさん達にはまたお礼に行かなきゃ。
《 はぁ~! おうちついた~! 》
《 ゆっくりできる~! 》
《 やっぱり、おうちがいちばんね~! 》
《 《 《 《 わかる~! 》 》 》 》
ノアたちは隠れているのに飽きたのか、五人でソファーに座りだらんと足を伸ばしている。何だか僕たちとやってる事が同じだなと、それを見て皆で笑ってしまった。
「夕食までもう少し時間掛かるんだけど、何か食べる?」
《 ん~。ぼく、ちょっとねてくる…… 》
《 わたしもねようかな? 》
「本当? じゃあ、ご飯出来たら起こしに行くね?」
《 《 《 《 うん! 》 》 》 》
どうやら皆疲れたみたいで、ニコラちゃん以外はふわふわと寝室へ飛んでいく。
「ニコラちゃんは眠くない?」
《 うん! だいじょうぶ! わたしもおりょうりてつだう! 》
「きょうはおきゃくさん、いっぱいだもんね?」
《 ね! あれくもくるんでしょ? たのしみ~! 》
「がんばろうね!」
《 うん! 》
レティちゃんとニコラちゃんはすっかり料理に嵌ってしまった様で、新しい食材を興味津々に眺めている。もしかしたら、本当に“妖精のお菓子屋さん”が実現するんじゃないかと楽しみになってきた。
「トーマスさんもユランくんも、本当に良いんですか?」
「あぁ、オレも手伝うよ」
「ボクも足手纏いにならない様に頑張るね」
二人とも夕食の準備を手伝ってくれる様で、腕捲りをしてやる気十分だ。ん~、今夜は焼き肉がメインだから、他のは簡単なものにしようと思ってたんだけど……。
ちょっとお願いしようかな……?
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「オリビア、これくらいでいいのか?」
「ん~、あともう少しね! ピンとツノが立つくらいになれば大丈夫よ」
「ピンとか……。よし!」
「ふふ、頑張って!」
「レティちゃん、これくらいでいいかな?」
「ん~。ゆぅくんもはるくんも、もうすこしじゃむ、いれたほうがいいかも……」
「そっか。甘めの方がいいのか……」
「うん! あまくってね、おにくもおやさいも、もっとおいしくなるの!」
トーマスさんはオリビアさんに、ユランくんはレティちゃんに教えてもらいながら夕食の手伝い。トーマスさんにはフルーツサンド用の生クリームを泡立ててもらっている。ユランくんには焼き肉用のタレを。
オリビアさんもレティちゃんも、二人に教えながらも自分の作業はテキパキと進め、頼もしい限りだ。
《 ゆいと~! こおってきたよ~! 》
「ありがとう! もう一回かき混ぜるから、また凍らせてもらえるかな?」
《 うん! まかせて~! 》
僕はニコラちゃんと一緒に練乳入りのミルクアイスを作っている途中。疲れないかと訊いても、このくらい何ともないと自信満々。
ニコラちゃんのおかげで、ほんの少しの時間でアイスが完成してしまった。これは夕食後のお楽しみだ。
「あ、いい感じ!」
《 いっぱいういてきた~! 》
僕はアイスの合間に餅粉で団子作り。鍋の中でぷくぷくと浮いてくる団子を掬い冷水に浸け、このまま暫く置いておく。これはオリビアさんも気に入ってくれる筈……!
「お米もそろそろかな~?」
やっぱり焼き肉には白米は欠かせないと、現在お鍋三つで炊飯中。残ってもおにぎりにして明日食べればいいもんね。残念ながらツナは無かったけど、他の食材で色々おにぎりの具を作れるし。
「あ、おにぃちゃん! おとうふ、ちっちゃくなってる!」
「どれどれ~? あ、ホントだ。水分抜けたみたいだね。レティちゃん、それが終わったら一緒に揚げ出し作ってみる?」
「え! いいの?」
「油に入れるのは僕がするけど、出汁はレティちゃんにお願いしようかな」
「おだし……? わたし、がんばる……!」
美味しかった揚げ出し豆腐の出汁と聞いて、レティちゃんはやる気が漲っている。隣にいたユランくんも、楽しみにしてるねと応援していた。
*****
「よし! 準備出来たわね~!」
「今夜も旨そうだな」
「お腹空いてきました……」
「ふふ! ユランくん、もう少しの辛抱よ~!」
テーブルに完成した料理をトーマスさんとユランくんと協力して並べていく。
トーマスさんが頑張ってくれたサンドイッチに、ユランくんが作ってくれた焼き肉のタレとサラダ。オリビアさんが作った揚げ物にパスタと、レティちゃんの力作の揚げ出し豆腐!
「とっても、おいしそうです……!」
「おぃちちょ!」
「あ~ぃ!」
起きてきたハルトたちも、ご馳走を見てソワソワしている。
テーブルに完成した料理を並べ終わると、コンコンとドアノッカーの音が聞こえてきた。タイミングもバッチリだ!
「「「こんばんは!」」」
「やぁ、いらっしゃい」
「皆さん、どうぞ」
「「「お邪魔します!」」」
トーマスさんと一緒に扉を開けると、そこにはブレンダさんとエレノアさん。そしてステラさんの姿が。
アレクさん達は? とステラさんの後ろを見ると、門扉の方から大きな人影が……。
「こんばんは! 御招き頂きありがとうございます!」
「こんばんは」
「遅くなってすみません!」
「ようこそ、皆。しかし、随分と大きいな……?」
リーダーのエイダンさんとマイルズさんが担いできたのは、米俵程もありそうな大きなお肉の塊。確かに肉は任せろと言っていたけど、こんなに持ってくるとは予想外だ……。魔法鞄はワザと使わなかったのかな?
「ユイトくん、こんばんは。この肉は美味いから、きっと気に入ると思うよ」
「エイダンさん、こんばんは! お肉ありがとうございます! ……えっと、キッチンまで運ぶのお願いしてもいいですか……?」
「あぁ、任せてくれ!」
ニコニコと笑顔のエイダンさんとは対照的に、マイルズさんは物静か……。こんなに近くで見た事が無かったから、耳にこんなにピアスを付けているなんて知らなかった……。
それに、まだ一言しか声を聞いてない……。
「えっと……、あの、マイルズさん! 今夜は料理をいっぱい用意してるんで、遠慮なく食べていってくださいね!」
「……ありがとう」
マイルズさんにそう言うと、柔らかい笑みを浮かべ頭を深々と下げられる。
一緒にお肉を担いでいたエイダンさんが傾いたお肉に焦っていたけど、そんな事お構いなしだ。トーマスさんに案内され、お二人はキッチンへと向かう。
「ユイト、あの肉スゲェ美味いから!」
「そうなんですか? 楽しみです! 僕もお腹空いちゃったんで、早く行きましょう!」
「だな!」
玄関だけど、アレクさんの左指を二本だけ軽く掴み、僕の指をそっと絡める。ちょっと照れ臭いけど、少しだけならいいよね?
アレクさんは少し驚いた表情で振り返ったけど、すぐに笑顔を見せてくれた。
「えぇっ!?」
すると、エイダンさんの大きな声が玄関まで響いてくる。
何だろうかと、慌ててアレクさんとリビングへと向かった。
「よ、妖精……!?」
「こんなに……」
リビングの真ん中で、エイダンさんとマイルズさんが固まっている。ノアしか見た事がない筈だから、目の前に五人もいて驚いたみたいだ。
トーマスさんよりも大きいお二人が立っているだけで、あんなに広かったリビングが少しだけ狭くなった気がした。
《 あ、ゆいと~! このひと、おっきいね! 》
《 おにく、すご~い! 》
《 ちからもち~! 》
エイダンさんとマイルズさんの周りをふわふわと飛び、お二人の様子を観察しているノアたち。エレノアさんとステラさんも既に驚いた後の様で、オリビアさんとメフィスト、ブレンダさんは楽しそうに笑っていた。
リュカとテオは、なぜかマイルズさんの頭に掴まって遊び始め、トーマスさんが慌てて止めに入っている。それを見たレティちゃんとユランくんが肩を震わせ、笑いを堪えているのが見えた。
「あっ! にぃに、おててちゅなぃでる……!」
「あっ! ほんとです……!」
僕たちの後ろから聞こえたユウマとハルトの声に、トーマスさん達が一斉にこちらを振り返る。どうやらキッチンに置いたお肉の塊を見ていたらしい。
マイルズさんも振り返ったせいで、リュカとテオが落ちそうになって必死にしがみ付いている。それを見て、ユランくんはとうとう我慢出来ずに窓の方を向いてしまった……。
「アレク……。ユイトくんが可愛いのは分かるが……」
エイダンさんが呆れた表情でアレクさんを見ている。
繋いだのは僕からなんだけど、ちょっと言い辛い……。すると、アレクさんが後ろ手で僕の手をぎゅっと握り返してくれた。
「リーダー、別にいいのでは? 私も繋ぎたいくらいだ」
「エレノア!」
エイダンさんの言葉に、エレノアさんが助け船を出してくれた。
その隣でブレンダさんが焦っている。
「そうね、エレノアちゃんもブレンダちゃんも仲良いものね?」
オリビアさんも、うんうんと頷いている。メフィストも真似して頷き、ステラさんが可愛いとはしゃいでいる。
「そうですね! 私も出来れば繋ぎたいです!」
「もう! 何故二度も言うんだ!」
「やぁ~ん……! 羨ましいですぅ~……!」
「あら、ステラちゃん、そう言う相手が出来たの……?」
「えっ!? ち、ちがいますよぉ~!」
「怪しいわね……! 後でたっぷり聞かせてちょうだい!」
オリビアさんはステラさんの横に座り、話を聞く気満々だ。メフィストもステラさんをジッと見つめている。
「ほら、皆! 早くおいで!」
「そうよ~! お腹空いちゃったわ! 早く食べましょ!」
「「は~い!」」
トーマスさんは駆けてきたハルトを椅子に座らせ、ユウマを膝へ。
オリビアさんもレティちゃんとユランくんを呼び、仲良く皆で席に着く。
「さ、皆! いっぱい食べてね! いただきま~す!」
「「「「「いただきます!」」」」」
皆で手を合わせ、少し遅めの夕食が開始した。
今夜は何だか、賑やかになりそうな予感がする。
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