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第二章 転生するにしても、これは無いだろ!
第三十五話
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王立学園は、厳しい入学選抜を通過したガラリア国内の12歳以上のエリート子女たちが入学し、3年間かけて、優れた教養を身に付けた若者を育成する教育機関だ。
王族や貴族の子女もここに入学し、周囲と親交を深めつつ、各自の将来の為に必要な勉強をする。
一応第一王子で、王族である俺も例にもれず、この王立学園に入学するはずだ。
俺はまだ薬師になって田舎でスローライフを諦めたわけではない。だから、薬師になるためには必須な「王立学園卒業認定」を手に入れるためにも、どんなに辛かろうが学園には絶対行くと決めていた。
の、だが。
「ほら、ご覧になってくださる? 陛下! この子は酷い頭痛持ちで、私がついていてあげないと食事も喉を通らない日があるんですのよ? こんな状態で全寮制の学園になど入学させられるものですか! この子はとても優秀ですし、私も付いておりますから、学園など通わずとも家庭教師で充分です!」
今朝この母親の訪れが無くて絶望しながらベッドで丸くなっていたら、何やらそんな金切り声が聞こえてきた。
普通、頭痛で苦しんでる息子が寝てる傍でそんなデケエ声出すかよ……。まあこの人に普通の神経を求めても無駄だが。
てかどの口でそんなこと言ってんだよ……! 頭痛は全部アンタのせいだろ……! わざわざそんなことを言うためにウルラッド父さんに来てもらったの!?!?
まともに顔を合わせるのは一緒に乗馬したあの時ぶりだというのに。それ以降はこの母親の厳重なブロックによって全く言葉を交わす機会を失ってしまったから。
「う“……お、お父さま……」
伝えろ、伝えろ、俺は学園に行きたいんだ……! 頭がどんなに痛くてどんなに物が考えられなくても、これだけは絶対に伝えるんだ……!
ああ、自分でも鼻で笑っちゃいそうなくらい掠れた老人みたいな声だったけど、聞こえてくれたみたいだ。傍に寄ってきてくれた気配がする。
常時眩暈がしてるみたいに視界が白い砂嵐に覆われててまともに顔も見れない。久しぶりだし滅茶苦茶顔見たいのに……!
「ベルラッド、どうした」
「お、お父さま……ぼく、は……学園、行きたい……。頭痛は、大丈夫、だから……」
頬を、汗か涙か分からない何かが伝う感覚。大丈夫の根拠は皆無だが、この人が出す食事や飲み物から完全に離れることが出来たなら、あるいは。
「大丈夫なものですか……っ!! 貴族諸侯の子供や国民の目もあるのです! 次期国王がこんなザマでは、周囲に示しもつきません!」
「では聞くが、王子である無しに関わらず、学習の意思がある子供に、困った体質があるからその自由を取り上げてもいいなどと、君は思うのか、シレーヌ王妃」
「王子だからこそです! そんなこともお分かりにならないと!?」
「本人に学園へ進学する意思があり、その権利も同様にある。頭痛で床に伏せってしまうのは仕方がない。だが、それと、学園へ行くか行かないかは別問題として扱うべきだ。本人が望む限り、上手く体質との兼ね合いを探りつつ、本人の意思を尊重してやるのが、国王以前に、父として、親として果たすべき義務だ。母親だからと、この子の未来を勝手に決めるなど、出過ぎたマネとしか言いようがない」
もっと言って!! もっと言って!!
出来れば俺もジルラッドも、出過ぎたマネの権化みたいなこの母親から速やかに隔離してほしい。
いやまあ、王宮にいる時点でこの母親の魔の手から逃れるのは結構難しい事なんだけど。
なんてったって、王妃の息がかかった使用人や侍女や官僚ばっかだからねココ!! 最悪!!
心底、ウルラッド父さんの苦労がしのばれる。よくこんな環境でちゃんと国を治めていられるよ。
「この子は、すぐ無理をするんです……! 母親として、心配するのは当然でしょう」
は? アンタ俺の心配なんて欠片もしてねぇだろ……アンタの心配事は自分の操り人形が余計な知識を学園でつけてきて、好きに動かしにくくなることだろ!?
「心配するのは親の勝手だ。存分にすればいい。だが、干渉となると話は別だ。子は親の所有物ではない。自分の心配を癒すために、子どもに不都合を強いるのは我儘というものだ。親ならば、この子が学園に行きたがっている以上は、学園に行かせてやれるように、頭痛への対策を立てるべきだと言っている。これ以上何か言い募るなら、頭痛とは別にこの子を学園へ行かせたくない理由があると邪推することになるが?」
邪推じゃないよお父さん!! 事実事実!! ご名答!!
本当はヘドバンしまくってやりたかったのだが、頭痛持ち()にとってそれは自殺行為に他ならないので、呻きながらダンゴムシみたく丸まることしか出来ない。
正直さっきウルラッド父さんに必死で伝えた言葉も、マジで頑張ってひねり出した声なんだ。自分の発声で頭に響く声ですら頭痛を増幅させる要因だからさ。
事実、外界からの刺激全部が敵よ、敵。特に、あの母親の声なんかもう不俱戴天の敵。
あの声が響くたび、脳みそに有刺鉄線巻きついて締め上げられてるのかなってくらい痛みが増幅するから、不愉快にもほどがある。
「陛下はこの子を育てることに一つも関わってらっしゃらないから、そんな綺麗事が言えるのですわ……! 時には、我が子の意思を曲げてでも、我が子を守らねばならない時があるのです!!」
ああ、反吐が出る。もっともらしい事言うのだけはガラリア王国一なんじゃないか? この母親。
言葉の説得力と人心掌握にかけては右に出るものがないと思う。勿論褒めてはない。その能力がこの母親に搭載されているというだけで、最悪の一言に尽きる。
「この子ももう12だ。あと5年で一人前の人間として自立しなければならない。いつまでも親が子についてやれるわけじゃない。頼むから、自分の心配でベルラッドを縛ってやるな」
やっぱり滅茶苦茶いい人だ、お人好しだウルラッド父さんは。まさか、我が子に毎日毒を盛って思い通りにさせる親がいるなんて思いもしないのだろう。
この母親が俺を縛っているものは心配なんて上等な縄じゃない。
毒の有刺鉄線でギチギチに縛り付けて、マリオネットの糸が馴染むまでは、躾用の首輪付き。
この人は、従順な傀儡ではない息子のことなんか、どんなに苦しめても構わないと思っているような、理解の及ばない毒婦なんだよ。
「へえ、そんなことを仰るのね。貴方は端女の子に夢中で、この子のことなんて一つも知りやしないくせに、この子の為を思ってるみたいな顔をする権利がどこにあって?」
「この子に関わらせようとしなかったのは一体? 私がこの3年間余り、この子にひとときも会えず、どんな思いでいたと……!」
「まあ、言いがかりはよしてくださる? 私が一体何をしたと? 証拠はあるのですか?」
「……ハァ。場所を変えよう、シレーヌ王妃。体調の悪いこの子の前でこれ以上言い争えばこの子の気がいつまでも休まらない」
「いいえ。もうお話することはありません。陛下に私の思いが伝わらないことはよく分かりました」
あの母親はスックと立ち上がり、足早に部屋から出ていった。滅茶苦茶デカい音立てて扉閉めていったぞあの母親。感じ悪すぎ。
仮にも息子想いの母親面でいるなら、体調悪い息子の部屋で大きな音立てんな。
「すまない、ベルラッド。必ず、学園へ行かせてやるからな」
そう言って、俺の頭をひと撫でし、ウルラッド父さんもあの母親の後を追って部屋から出ていった。
どうかどうか、何卒よろしくお願いします……あの母親に負けないでウルラッド父さん……。
さて、散々日中頭痛に苦しんで目玉飛び出るんじゃないかと本気で思ったその日の晩。
あの母親はいつもよりずっと遅い夜更けに再び俺の部屋にやってきた。いつもは、精神汚染まっしぐらな言葉を、しこたま耳に流し込んでくるところだが、珍しく無言で。
それが嫌に不気味だった。
「飲みなさい」
そう言って、俺の前に差し出した盃は2杯。どちらも同じような色で、この人の真意が分からず、俺は固まったままその盃を見つめる事しか出来なかった。
「どちらも飲むの。どちらか一方では頭痛が収まらないどころか酷くなるだけよ」
そう言われたら、意志の弱い俺は逆らうことなんて出来なくて。両方一気に喉に流し込んだ。
すると、この母親はケタケタ愉快そうに笑い始めた。シンと静まり返った部屋にキンキンと反響し、嫌な予感と共に強烈な吐き気が襲い掛かってくる。
「フフ、今飲んだものにはね、明日から、その日一日あったことは全て次の日起きた時には忘れているように脳の機能を麻痺させる、とっておきの薬が入っていたのよ。次第に、一日のことだけじゃなく、今までの記憶もゆっくりゆっくり消し去ってくれるの。貴方、意外に頑固なんだもの。3年間も私に屈しないし、まだまだ人格もしっかりしてるし。思い通りにならなくて、いやね、全く。学園を卒業するころには、赤ちゃんくらいの頭しか残ってないだろうから、色々手間も増えるし世話が面倒くさくなっちゃうけど。マ、いつまでも思い通りにならないよりはずっとマシよね」
貴方も嬉しいでしょ、これからあの頭痛に苦しむことはもうないんだから。辛くなったら、いつでも退学して私の下に戻ってきていいのよ? 呆然とすることしか出来ない俺の耳元で、じっとりと、甘く、そう囁く。
一応、今までは、生活に困らない程度に自律できる人格は残しておくつもりだったらしいが、いよいよ肉人形化に舵を切ったらしい。
最早他人事だ。あまりに現実感がなさすぎる。
あー、これ、いよいよ詰みかな?
まあでも、あの子に殺されるとき、何も感じない、何も覚えてない、何も分からないってんなら、結構楽かもね。ナハハ。
ああでも、あの子のことを、あの子との思い出を、忘れるのだけはなんかいやだわ。どうしたもんかな……。
王族や貴族の子女もここに入学し、周囲と親交を深めつつ、各自の将来の為に必要な勉強をする。
一応第一王子で、王族である俺も例にもれず、この王立学園に入学するはずだ。
俺はまだ薬師になって田舎でスローライフを諦めたわけではない。だから、薬師になるためには必須な「王立学園卒業認定」を手に入れるためにも、どんなに辛かろうが学園には絶対行くと決めていた。
の、だが。
「ほら、ご覧になってくださる? 陛下! この子は酷い頭痛持ちで、私がついていてあげないと食事も喉を通らない日があるんですのよ? こんな状態で全寮制の学園になど入学させられるものですか! この子はとても優秀ですし、私も付いておりますから、学園など通わずとも家庭教師で充分です!」
今朝この母親の訪れが無くて絶望しながらベッドで丸くなっていたら、何やらそんな金切り声が聞こえてきた。
普通、頭痛で苦しんでる息子が寝てる傍でそんなデケエ声出すかよ……。まあこの人に普通の神経を求めても無駄だが。
てかどの口でそんなこと言ってんだよ……! 頭痛は全部アンタのせいだろ……! わざわざそんなことを言うためにウルラッド父さんに来てもらったの!?!?
まともに顔を合わせるのは一緒に乗馬したあの時ぶりだというのに。それ以降はこの母親の厳重なブロックによって全く言葉を交わす機会を失ってしまったから。
「う“……お、お父さま……」
伝えろ、伝えろ、俺は学園に行きたいんだ……! 頭がどんなに痛くてどんなに物が考えられなくても、これだけは絶対に伝えるんだ……!
ああ、自分でも鼻で笑っちゃいそうなくらい掠れた老人みたいな声だったけど、聞こえてくれたみたいだ。傍に寄ってきてくれた気配がする。
常時眩暈がしてるみたいに視界が白い砂嵐に覆われててまともに顔も見れない。久しぶりだし滅茶苦茶顔見たいのに……!
「ベルラッド、どうした」
「お、お父さま……ぼく、は……学園、行きたい……。頭痛は、大丈夫、だから……」
頬を、汗か涙か分からない何かが伝う感覚。大丈夫の根拠は皆無だが、この人が出す食事や飲み物から完全に離れることが出来たなら、あるいは。
「大丈夫なものですか……っ!! 貴族諸侯の子供や国民の目もあるのです! 次期国王がこんなザマでは、周囲に示しもつきません!」
「では聞くが、王子である無しに関わらず、学習の意思がある子供に、困った体質があるからその自由を取り上げてもいいなどと、君は思うのか、シレーヌ王妃」
「王子だからこそです! そんなこともお分かりにならないと!?」
「本人に学園へ進学する意思があり、その権利も同様にある。頭痛で床に伏せってしまうのは仕方がない。だが、それと、学園へ行くか行かないかは別問題として扱うべきだ。本人が望む限り、上手く体質との兼ね合いを探りつつ、本人の意思を尊重してやるのが、国王以前に、父として、親として果たすべき義務だ。母親だからと、この子の未来を勝手に決めるなど、出過ぎたマネとしか言いようがない」
もっと言って!! もっと言って!!
出来れば俺もジルラッドも、出過ぎたマネの権化みたいなこの母親から速やかに隔離してほしい。
いやまあ、王宮にいる時点でこの母親の魔の手から逃れるのは結構難しい事なんだけど。
なんてったって、王妃の息がかかった使用人や侍女や官僚ばっかだからねココ!! 最悪!!
心底、ウルラッド父さんの苦労がしのばれる。よくこんな環境でちゃんと国を治めていられるよ。
「この子は、すぐ無理をするんです……! 母親として、心配するのは当然でしょう」
は? アンタ俺の心配なんて欠片もしてねぇだろ……アンタの心配事は自分の操り人形が余計な知識を学園でつけてきて、好きに動かしにくくなることだろ!?
「心配するのは親の勝手だ。存分にすればいい。だが、干渉となると話は別だ。子は親の所有物ではない。自分の心配を癒すために、子どもに不都合を強いるのは我儘というものだ。親ならば、この子が学園に行きたがっている以上は、学園に行かせてやれるように、頭痛への対策を立てるべきだと言っている。これ以上何か言い募るなら、頭痛とは別にこの子を学園へ行かせたくない理由があると邪推することになるが?」
邪推じゃないよお父さん!! 事実事実!! ご名答!!
本当はヘドバンしまくってやりたかったのだが、頭痛持ち()にとってそれは自殺行為に他ならないので、呻きながらダンゴムシみたく丸まることしか出来ない。
正直さっきウルラッド父さんに必死で伝えた言葉も、マジで頑張ってひねり出した声なんだ。自分の発声で頭に響く声ですら頭痛を増幅させる要因だからさ。
事実、外界からの刺激全部が敵よ、敵。特に、あの母親の声なんかもう不俱戴天の敵。
あの声が響くたび、脳みそに有刺鉄線巻きついて締め上げられてるのかなってくらい痛みが増幅するから、不愉快にもほどがある。
「陛下はこの子を育てることに一つも関わってらっしゃらないから、そんな綺麗事が言えるのですわ……! 時には、我が子の意思を曲げてでも、我が子を守らねばならない時があるのです!!」
ああ、反吐が出る。もっともらしい事言うのだけはガラリア王国一なんじゃないか? この母親。
言葉の説得力と人心掌握にかけては右に出るものがないと思う。勿論褒めてはない。その能力がこの母親に搭載されているというだけで、最悪の一言に尽きる。
「この子ももう12だ。あと5年で一人前の人間として自立しなければならない。いつまでも親が子についてやれるわけじゃない。頼むから、自分の心配でベルラッドを縛ってやるな」
やっぱり滅茶苦茶いい人だ、お人好しだウルラッド父さんは。まさか、我が子に毎日毒を盛って思い通りにさせる親がいるなんて思いもしないのだろう。
この母親が俺を縛っているものは心配なんて上等な縄じゃない。
毒の有刺鉄線でギチギチに縛り付けて、マリオネットの糸が馴染むまでは、躾用の首輪付き。
この人は、従順な傀儡ではない息子のことなんか、どんなに苦しめても構わないと思っているような、理解の及ばない毒婦なんだよ。
「へえ、そんなことを仰るのね。貴方は端女の子に夢中で、この子のことなんて一つも知りやしないくせに、この子の為を思ってるみたいな顔をする権利がどこにあって?」
「この子に関わらせようとしなかったのは一体? 私がこの3年間余り、この子にひとときも会えず、どんな思いでいたと……!」
「まあ、言いがかりはよしてくださる? 私が一体何をしたと? 証拠はあるのですか?」
「……ハァ。場所を変えよう、シレーヌ王妃。体調の悪いこの子の前でこれ以上言い争えばこの子の気がいつまでも休まらない」
「いいえ。もうお話することはありません。陛下に私の思いが伝わらないことはよく分かりました」
あの母親はスックと立ち上がり、足早に部屋から出ていった。滅茶苦茶デカい音立てて扉閉めていったぞあの母親。感じ悪すぎ。
仮にも息子想いの母親面でいるなら、体調悪い息子の部屋で大きな音立てんな。
「すまない、ベルラッド。必ず、学園へ行かせてやるからな」
そう言って、俺の頭をひと撫でし、ウルラッド父さんもあの母親の後を追って部屋から出ていった。
どうかどうか、何卒よろしくお願いします……あの母親に負けないでウルラッド父さん……。
さて、散々日中頭痛に苦しんで目玉飛び出るんじゃないかと本気で思ったその日の晩。
あの母親はいつもよりずっと遅い夜更けに再び俺の部屋にやってきた。いつもは、精神汚染まっしぐらな言葉を、しこたま耳に流し込んでくるところだが、珍しく無言で。
それが嫌に不気味だった。
「飲みなさい」
そう言って、俺の前に差し出した盃は2杯。どちらも同じような色で、この人の真意が分からず、俺は固まったままその盃を見つめる事しか出来なかった。
「どちらも飲むの。どちらか一方では頭痛が収まらないどころか酷くなるだけよ」
そう言われたら、意志の弱い俺は逆らうことなんて出来なくて。両方一気に喉に流し込んだ。
すると、この母親はケタケタ愉快そうに笑い始めた。シンと静まり返った部屋にキンキンと反響し、嫌な予感と共に強烈な吐き気が襲い掛かってくる。
「フフ、今飲んだものにはね、明日から、その日一日あったことは全て次の日起きた時には忘れているように脳の機能を麻痺させる、とっておきの薬が入っていたのよ。次第に、一日のことだけじゃなく、今までの記憶もゆっくりゆっくり消し去ってくれるの。貴方、意外に頑固なんだもの。3年間も私に屈しないし、まだまだ人格もしっかりしてるし。思い通りにならなくて、いやね、全く。学園を卒業するころには、赤ちゃんくらいの頭しか残ってないだろうから、色々手間も増えるし世話が面倒くさくなっちゃうけど。マ、いつまでも思い通りにならないよりはずっとマシよね」
貴方も嬉しいでしょ、これからあの頭痛に苦しむことはもうないんだから。辛くなったら、いつでも退学して私の下に戻ってきていいのよ? 呆然とすることしか出来ない俺の耳元で、じっとりと、甘く、そう囁く。
一応、今までは、生活に困らない程度に自律できる人格は残しておくつもりだったらしいが、いよいよ肉人形化に舵を切ったらしい。
最早他人事だ。あまりに現実感がなさすぎる。
あー、これ、いよいよ詰みかな?
まあでも、あの子に殺されるとき、何も感じない、何も覚えてない、何も分からないってんなら、結構楽かもね。ナハハ。
ああでも、あの子のことを、あの子との思い出を、忘れるのだけはなんかいやだわ。どうしたもんかな……。
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