クールな義兄の愛が重すぎる ~有能なおにいさまに次期当主の座を譲ったら、求婚されてしまいました~

槿 資紀

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第十五話 我慢

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 全身がこわばって、上手く動かせません。ベッドに突っ伏して、尾てい骨に感じる、あまりに凶悪な存在感に、ただ怯えることしかできないのです。

 僕の考えが正しければ、おにいさまのソレが、僕の――まともに考えると、たちまち眩暈が襲い掛かってきて、涙が込み上げました。

 おにいさまは、それこそ、異名に違わぬ、獰猛な獅子のように呼吸を荒げては、僕の態勢が整うのを、辛うじて待っておいでです。せめてもの温情に違いありません。

 ですが、僕はもう、これ以上恐怖の時間が長引くことのほうが耐えられませんでした。

 どうせ、僕の態勢が整うことなど、少なくとも今晩じゅうはあり得ないでしょうから。

「おに、おにい、さま……っ、はや、くっ、どうか、もう、ぼくは、構いません、からっ」

「っ、あなたに痛い思いをさせたいわけではない……」

「いたい、のなんか、慣れてますっ、痛くても、いいからっ、いいから早く……!」

 どうなるか分からないから怖いだけ。早く始めて、いち早く終わらせてほしい。

 その一心で、僕はめちゃくちゃな気分にまかせて叫びました。

 おにいさまさえ満足なさるなら、それでいいはずです。

 発作の苦しみに比べたら、破瓜の痛みなどあってないようなもののはず。

 僕はただ、自分がどうなってしまうか分からない恐怖で、身を竦ませているに過ぎないのです。

「ふふ……僕のからだ、ほんとうに鈍くって、全然思い通りになってくれないんですよ。きっと、痛いくらいが、いい躾になりますから、ね? ああもう、嫌になっちゃうな、なんでこんなに要領悪いのかな、あはは……」

 殆ど破れかぶれになって、泣き笑いしながら喚く僕はさぞ滑稽だろうと思います。

 気の利いた誘い文句もちゃんと勉強しておけばよかったでしょうか。

 ユリウスさまなら愉快そうに笑いながら教えてくださったかもしれません。

「あなたの身体だけ、思い通りになっても、仕方がないんだ……分かってほしい、俺が、どれだけ、あなたを必要としているか。苦痛に耐えんとするあなたには、きっと通じない」

 おにいさまは、またもよくわからないことをおっしゃいます。

 こんな行為、鬱憤を晴らす以外にどんな目的があるのでしょう。

 おにいさまの苦悩やストレスを、この身体でもって受け入れる……それこそ、いま僕が必要とされている理由ではないのでしょうか。

「貴方が、受け入れてほしいとおっしゃるから、僕は……もう、わかりません、どうすれば、貴方は満足なさるのですか? 貴方は、僕の何をお望みなのですか……?」

「――すべてを」

「すべ、て……?」

 身震いがして、たちまち、燃え上がるような心地がしました。込み上げたのは、確かな興奮と、甘い劇毒のような恍惚。

 なら、どうして、あの時……そんな不可解も、脳裏にこびりついて離れませんが。

 どうあれ、そこまで強く、おにいさまに僕を望んでいただいたという事実は、僕にとって、これ以上ない甘美でした。

 我ながら、おにいさまを相手にすると、どこまでも都合がいい頭をしているなと呆れてしまいます。

 ゆっくりと、全身から力が抜けていきました。

 おにいさまに……というより、僕が抱いている、おにいさまへのどうしようもない思慕に、ついぞ身体が屈服してしまったようです。

「リエル……?」

「納得は、まだ、できません……自分が、どう必要とされているのかも、わからない。でも、もう、なんでもいいかなって……どんな形でも、貴方の役に立てるなら、僕は幸せなんです。貴方が望んでくださる僕を、今は信じることにします……」

 生きることすらどうしようもなくままならなかった僕ですら、おにいさまは救ってくださった。

 そんなおにいさまは、誰よりも、尊い国民の命を守ることができる方のはず。

 おにいさまは、奇跡を起こすことができる方です。

 そんなおにいさまの役に立てるということは、我が国の存続のために、この身を役立てることができるのと同義なのです。

「っ、すまない、リエル……あなたを守るために在りたいと願って生きてきたのに、こんなにも穢れた欲望を、あなたに向けずにはいられないんだ……どうか、許して」

「……っ、あっ、んぅ……っ、ふっ、うぅ……!」

 さっきまでは、到底入る気がせず、怯えるでしかなかったソレですが、拍子抜けするほどあっけなく、僕のナカに入って来ました。

 しかし、凄まじい圧迫感に、電圧を流されたような強烈な痺れが押し寄せて、下半身が陸に打ち上げられた魚のように震えます。

「痛みはないか」

「ぁっ、ひゅ、だい、じょうぶ……れす、はぁっ……あぁ……」

 僕の呼吸に合わせるようにして、おにいさまは少しずつ僕のナカを押し拓いていきます。

 強引さこそありませんが、どこか頑なで、張り詰めたような空気感が背後からひしひしと伝わってきました。

 学院時代、おにいさまから感じていたものと、同じような雰囲気です。我慢、でしょうか。

『俺の気も知らないで』と、いつかおにいさまはそうおっしゃいました。

 今までの努力を僕なんかに無駄にされて、憤っていらっしゃるのだとばかり思っていましたが……。

 僕はいったい、どんな思い違いをしていたのでしょうか。おにいさまはずっと、何を思っていらしたのでしょう。

「ぅぐ、んっ、フー……、ふうぅ、ふ、ヒュ、はぁ……おにい、さま」

 ビクリと、脈打つような振動が、おにいさまから伝わってきました。

 そして、次の瞬間、奥まで一気に突き立てられるように、おにいさまのモノがボクのナカにずっぽりと埋まりました。

 僕は声にならない悲鳴を上げて枕に突っ伏しました。

 腰のあたりに凄まじい熱が迸り、渦のようになって込み上げてくるのです。

 今までに感じたことのない、想像を絶する感覚でした。

「どうして、この期に及んで……ッ」

「っあ、はぁ……ッ、ひゅ、ひぐ……ごめ、なさっ、あぁ!」

「俺はあなたの何になれる? なんでもいい、もう、なんでもよかった、あなたの傍にいられるなら。でももう、こうなっては、兄になど戻れない……! どうすればいい、俺は、どうしたらっ!」

「はっ、はッ、ぁふっ、あああ! ううっ、ふぅ……ッ、んあっ!」

「リエル……リエル……っ、俺は、あなたがいないと駄目なんだ、あなたに捧げるための人生なんだよ……! あなたの兄に戻れないのなら、どんな過ちを犯しも、何を捻じ曲げてでも、あなたの隣を手に入れようと思った……それなのに、どうして今更、俺をそう呼ぶんだよ……」

 自暴自棄になったように、おにいさまは僕の身体に覆いかぶさり、押しつぶすみたいにしてナカを甚振りました。

 濁流にのまれたような心地で、僕は嗚咽混じりの呻き声を上げることしか出来ませんでした。

 でも、それならなぜ、おにいさまは、学院時代、僕をあのように遠ざけたのでしょうか。

 必死で考えようとしますが、おにいさまから流れ込む感情の奔流にのまれ、ただでさえ平静とは程遠い僕の頭は、さらに錯乱をきたしました。

「ふふっ、ぅふ……んぁっ、あはっ、はっ、は、あぁ、も、めちゃくちゃだ……うふふ、ふふっ、ううぅっ……」

 どうにでもなれ、という気持ちでした。あんまりに退廃的で、いっそ清々しいほどの感慨が沸き起こります。

 投げやりになってしまえば、案外この背徳も気持ちのいいもののように思えてくるのでした。

 そうして、おにいさまから齎される刺激に、呆然と感じ入っているうち、奥のほうに熱いものが迸るのを感じました。

 終わったかと脱力したのも束の間でした。おにいさまはふたたびご自身を固くし、また腰を動かし始めました。

 圧倒的なまでの体力の違いを思い知らされました。気の遠くなるような思いで、何度も同じ流れを味わっているうち、いつのまにか、僕は意識を失っていたのでした。
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