限界社畜、異世界に連れ去られてよしよしされる

海野ことり

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【12】想定外の出来事-②

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「あなたの一番の仕事は俺の抱き枕だから、そっちを疎かにしちゃ駄目だよ?」
「あ。あのさあ、それ、最初からその気だったのか?」
「えっ?」
「だから、対価が身体って……」
日影は出会ってすぐ、折原から対価はあなただと言われて吃驚したし、信じられなかった。でも本当にキスや抱擁やそれ以上のこともしてきて、日影はつい流されてしまったけれど折原は? 彼はどうして自分に手を出そうなんて思ったのか。
追求するのが怖くて考えないようにしていたが、やはり気になる。

「あ~、気紛れに見えた、よね? それか、遊びで手を出す軽いヤツ」
バツが悪そうに言った折原に、日影は黙って頷く。

「うっわ、ショック! そう思われるのはしようがないけど、俺は本気だよ。本気であなたを手に入れたくて、優しくしたいし、大事にしたいのに、あなたは可愛いし、俺を惑わすしさ。割と最初から夢中だったけど、気付かなかった?」
日影は折原の話を聞いて呆然とし、ぎこちなく頷いた。
それを見て、折原がガックリと項垂れる。

「まだまだ言葉もえっちも足りなかったか……」
「翔太っ!」
「まあ、いいよ。これから時間はたっぷりあるし――あ、呼び出しだ」
折原が空を見つめて唐突に呟いた。

「呼び出し?」
「うん。メールみたいなものだよ。俺に用があるヒトからの連絡」
どうやら能力の一部らしい。
呼び出しと聞いて日影は不安になったが、思わぬことを言われる。

「日影さんも、一緒に行く?」
「えっ、いいのか?」
だって自分は監禁されているのではないか、仕事の邪魔ではないかと焦る日影に、折原は気負った様子もなく言った。

「相手は常連さんだし、簡単な依頼だからね。時間もそれほど掛からないし」
「行って、何をするんだ?」
「それは行ってからのお楽しみ」
「なんでだよっ!」
日影は抗議したけれど、結局、折原は教えてくれなかった。身体のコンディションを整えるのが先だと言って、より一層手厚く世話を焼いた。
そして三日後、日影がまともに歩けるようになってから、バイクを召喚した。

「俺の相棒。後ろに乗せるのは、由紀彦が初めてだよ」
そう言って笑った顔は、年相応に明るい。
日影は、なんだよそんな風に笑えるんじゃないか、と思って胸がドキドキした。
いつもの大人っぽい笑みもいいが、こう開けっぴろげな笑顔もとてもいい。

(つまり、翔太なら何でもいいってことだ)
そう思って日影は頬を赤く染めた。
促されるままバイクに跨がり、ギュッとしがみついたらふわりと身体が浮かんだ。

「なんでっ!」
「この方が早いからね!」
そう叫び返すと折原は空を蹴ってバイクで螺旋状に駆け上がった。
日影はギャーギャーと盛大に叫び、折原にしがみついているうちに草原に着いた。
大人の膝まである草が、緑の海原のように風に波打っている。
日影はふわふわと足が地に着いてない心地で辺りを見回し、大きな石造りの家に目を留める。

「ワットさ~ん、箒を持ってきたよ~」
折原の大きな声に、石造りの家のドアが開き、緑がかった白髪の男が顔を出した。
それを見て、日影が思わず叫ぶ。

「ヒトって、エルフじゃん! そんなの狡い!」
「えっ、なんで?」
「美形エルフが知り合いだなんて、聞いてないよ!」
顔を真っ赤にして怒る日影を見て、折原もエルフも途方に暮れた。
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