限界社畜、異世界に連れ去られてよしよしされる

海野ことり

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【12】想定外の出来事-①

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「田んぼ!?」
こんな所にまさかある訳が無い。そもそも昨日までは確実に無かったのだ。
呆然とする日影の横で折原がぽつりと呟く。

「ねえ、これって日影さんの能力じゃない?」
「えっ、イッツ・ア・スモールワールド?」
「うん」
確かに、米を欲しがったのは日影だし、これまで無かったことが起きたのだから原因は新しいもの、つまりは日影だろう。

「あ、じゃあシーツも? シーツも俺が欲しがったから現れたのか? 欲しいものが現れる能力なんて、チート過ぎだろ」
「欲しいものが現れるっていうか、小さな世界を創れる能力なんじゃないかな。ほら、箱庭とかクラフト系のゲームみたいな」
「ああ!」
そう言われると、腑に落ちる。箱庭に生き物を連れてきたから能力が解放された。そこから住処の設備が充実するとか、畑が拡充されるとか、多分、環境を整えられる能力なんだろう。

「えっ、引きこもりにピッタリ過ぎるだろ」
「ぷはっ! 日影さん、異世界に引きこもるの?」
「異世界っていうか、お前がいる場所にだけど」
「由紀彦……」
急に下の名前で呼ばれてドキリとする。

「由紀彦を攫ったのは俺だから、不自由はさせないよ?」
「いや、不自由とかじゃなくて……」
世話になりっぱなしが心苦しい。
甘やかされるのは嬉しいし、面倒を見られるのも好きだ。でも、自分だって少しは役に立てる。全くの役立たずだと思われたくない。折原に凄いね、やるじゃないかと褒められたい。

(褒められたいなんて、俺は子供か)
余りにも子供っぽいその気持ちを、日影は素直に言うことが出来なかった。

「不自由とかじゃなくて、とにかく俺は米が食いたいだけだから」
「でも、刈り入れとか精米とかどうすんの?」
「あ……」
日影は料理をしないので、そこまで気が回らなかった。あんな小さな粒を食べるには、それ相応の手間がかかる。

「どうしよう?」
情けない顔で見上げた日影を見て、折原がふわりと笑う。その優しげな表情にしばし見惚れる。

(そうだ、この笑顔だ。こいつだけ、最初から俺のことを馬鹿にしなかった)
モッサリとして冴えない日影を見て、大抵の人が馬鹿にした表情を浮かべる。
失望される度に人の視線がどんどん怖くなって、鏡やガラスなど自分が映る物も苦手になった。でも彼の視線には、嘲弄めいたものなど一切なかった。
髪を切らせたのは、折原の目に映るのが怖くなかったからかもしれない。

「もしこれがゲームなら、米俵に姿を変えられるんじゃない? きっと何か方法があるよ」
「そうだな、探してみる」
時間はタップリとあるし、そういう謎解きは嫌いじゃない。
日影は張り切って拳を握ったけれど、その手を折原に包み込まれた。

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