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【28】これからの為にすべき事-①
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折原は落ち着いて話したいからと、日影を安全地帯に連れ帰った。そして変わった匂いのするお茶を淹れ、即席で甘くないスフレのようなものを作って日影に出した。
「ハムのしょっぱい味が旨い。あと、口の中でクシュッて潰れる感触が面白い」
ムグムグと出されたものを夢中で頬張る日影を見て、折原が満足気に笑う。
どう考えてもこういう生活の方が自分には合っているが、会社の創業者一族として沢山の従業員が路頭に迷うのを手をこまねいて見ている訳にはいかない。
勿論、だからといって日影を犠牲にするつもりもないのだけど。
「あなたが休みを取ってから、システム部がメッタメタでね。さすがに部長が無能すぎると降格されたけど、代わりが直ぐに用意できなくてインフラチームの課長が兼務してるけど……仕事の割り振り先がない」
「あ……うん」
日影がいる時から既にシステム部の仕事はパンクしていたので、割り振ろうにも空きはない。そのことはシステムソリューション課の課長だった日影が一番よく理解している。しかも日影が抜けた穴も大きい。
「緊急避難的に外注しようってなったんだけど、その金額的負担が大きい。あと、時間がかかり過ぎる」
「そうだな」
当たり前だけれど、外部に任せると利益を上乗せされるので高くなる。おまけに、一日十八時間くらい働いていた日影と違い、普通の人は八時間しか働かない。雑務と休憩を除いたら、実質は六時間だ。
「三人がかりでも、あなたの穴が埋まらないんだよ。質も量もスピードも、全く敵わない。さらに前部長が新しい仕事を考えなしに取ってきてしまったから、断るのに違約金も発生してる」
「せめて、締め切りを延ばしてもらうことは出来ないのか?」
「勿論、延ばせる所はギリギリまで延ばしてもらった。それでもどうにもならないものだけを、システムソリューション課で仕上げたんだけど――」
「満足してもらえなかったんだな?」
「うん」
折原が頷くのを見て、日影は拳を握りしめた。
自分が後進を育てなかったから、好き勝手に仕事だけしていたからこうなった。課長なんて名ばかりで、役に立てない。
「……ごめん」
「ちょ、なんで由紀彦が謝るの? あなたはこれだけ負担を掛けられてたんだから、怒っていいんだよ?」
折原の言葉に日影は緩く頭を横に振る。
「確かに、長時間労働は身体を酷使した。精神的にもちょっとおかしくなってたと思う。でも、環境を変えるのが面倒臭かった。戦うのが嫌だった。話し合う労力を惜しんで、流された俺も悪かったんだ」
「由紀彦……ああもう、自分に厳し過ぎだよっ!」
ガシッと両腕を掴まれて日影が吃驚する。
珍しく興奮した折原が掴みかかってきたのだ。
「あのねえ、人がいいのもいい加減にしなね? 上から見たら、由紀彦みたいに真面目で思い詰める性質は丁度いい鴨よ?」
「カ、カモ……」
「自分から社畜になるのは会社の思う壺だから、酷使されるのは止めなって。日本人の悪い癖でさ、こちらが誠意を見せれば誠実に対応してもらえるだろうとか、仕事には真面目で真摯であるべきだとか、自分から縛られ過ぎなんだよ。それは立派だし、尊敬するよ。でも世の中の悪意をもっと警戒した方がいい。正直者は馬鹿を見るって、知ってるでしょ?」
滔々とまくし立てられて、日影は眉を情けなく下げた。
「お前の言ってることはわかる。自分から人に馬鹿にされる態度を取ってるのに、被害者面するなって言われたこともあるし」
「誰がっ! 誰がそんな事を言うのさ!」
鬼のように怒る折原を見て、日影は思わず笑う。
(こんなに怒ってくれなくていいのに。こいつだって相当なお人好しじゃないのか?)
「ハムのしょっぱい味が旨い。あと、口の中でクシュッて潰れる感触が面白い」
ムグムグと出されたものを夢中で頬張る日影を見て、折原が満足気に笑う。
どう考えてもこういう生活の方が自分には合っているが、会社の創業者一族として沢山の従業員が路頭に迷うのを手をこまねいて見ている訳にはいかない。
勿論、だからといって日影を犠牲にするつもりもないのだけど。
「あなたが休みを取ってから、システム部がメッタメタでね。さすがに部長が無能すぎると降格されたけど、代わりが直ぐに用意できなくてインフラチームの課長が兼務してるけど……仕事の割り振り先がない」
「あ……うん」
日影がいる時から既にシステム部の仕事はパンクしていたので、割り振ろうにも空きはない。そのことはシステムソリューション課の課長だった日影が一番よく理解している。しかも日影が抜けた穴も大きい。
「緊急避難的に外注しようってなったんだけど、その金額的負担が大きい。あと、時間がかかり過ぎる」
「そうだな」
当たり前だけれど、外部に任せると利益を上乗せされるので高くなる。おまけに、一日十八時間くらい働いていた日影と違い、普通の人は八時間しか働かない。雑務と休憩を除いたら、実質は六時間だ。
「三人がかりでも、あなたの穴が埋まらないんだよ。質も量もスピードも、全く敵わない。さらに前部長が新しい仕事を考えなしに取ってきてしまったから、断るのに違約金も発生してる」
「せめて、締め切りを延ばしてもらうことは出来ないのか?」
「勿論、延ばせる所はギリギリまで延ばしてもらった。それでもどうにもならないものだけを、システムソリューション課で仕上げたんだけど――」
「満足してもらえなかったんだな?」
「うん」
折原が頷くのを見て、日影は拳を握りしめた。
自分が後進を育てなかったから、好き勝手に仕事だけしていたからこうなった。課長なんて名ばかりで、役に立てない。
「……ごめん」
「ちょ、なんで由紀彦が謝るの? あなたはこれだけ負担を掛けられてたんだから、怒っていいんだよ?」
折原の言葉に日影は緩く頭を横に振る。
「確かに、長時間労働は身体を酷使した。精神的にもちょっとおかしくなってたと思う。でも、環境を変えるのが面倒臭かった。戦うのが嫌だった。話し合う労力を惜しんで、流された俺も悪かったんだ」
「由紀彦……ああもう、自分に厳し過ぎだよっ!」
ガシッと両腕を掴まれて日影が吃驚する。
珍しく興奮した折原が掴みかかってきたのだ。
「あのねえ、人がいいのもいい加減にしなね? 上から見たら、由紀彦みたいに真面目で思い詰める性質は丁度いい鴨よ?」
「カ、カモ……」
「自分から社畜になるのは会社の思う壺だから、酷使されるのは止めなって。日本人の悪い癖でさ、こちらが誠意を見せれば誠実に対応してもらえるだろうとか、仕事には真面目で真摯であるべきだとか、自分から縛られ過ぎなんだよ。それは立派だし、尊敬するよ。でも世の中の悪意をもっと警戒した方がいい。正直者は馬鹿を見るって、知ってるでしょ?」
滔々とまくし立てられて、日影は眉を情けなく下げた。
「お前の言ってることはわかる。自分から人に馬鹿にされる態度を取ってるのに、被害者面するなって言われたこともあるし」
「誰がっ! 誰がそんな事を言うのさ!」
鬼のように怒る折原を見て、日影は思わず笑う。
(こんなに怒ってくれなくていいのに。こいつだって相当なお人好しじゃないのか?)
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