【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

海野ことり

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⑨持ち運び自由−2

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「おお、武器とか食糧があるんだね」
「ちょっと待て。様子がおかしい」
 ロクが俺を引き止めて眉間を寄せた。

「誰かに侵入された形跡がある」
「え? 俺たちみたいな物好きが他にもいたってこと?」
「違う。ここを何かに利用したんだ」
 え、それってヤバイんじゃないの?
 部外者の俺をロクの一存で入れたことからもわかるように、それほど重要な施設ではないのかもしれないけど、それでも軍事施設を不正利用なんてされたら大事だよね?
 そういうのって誰かの責任問題になったりするんだよね?

「チヤ、辺りに手を触れるなよ」
「わかった。でも、足元にこんなもんが落ちてるんだけど?」
 床にこんな物が落ちていたら躓いちゃうよね、と拾った黒い石をロクに見せたらサッと掻っ攫われて外に放り投げられ、覆い被さるように床に引き倒されて物凄い爆発音が外から響いてきた。

「……今のはっ!?」
「トラップだろう。怪我はないか?」
「ないっ! ロクは?」
「大丈夫だ。行くぞ」
 入って来た経路を逆に辿って注意深く外へ出た。それからロクだけがもう一度施設内に戻り、軽く室内を調べて戻ってきた。

「他に罠はないようだが、通信設備は使わない方が良いだろう。このまま施設を閉鎖して、一旦街に戻ってから城へ知らせる」
「でも街までは何日も掛かるだろう?」
「荷物を此処へ捨て、お前を背負って走る」
「俺も置いて行けよ!」
 もしも爆発に気付かれたとしたら、仕掛けた者がどう動くかわからない。
 少しでも早く城に知らせた方が良いだろう。

「いいから乗れ!」
 半ば無理矢理にロクに背負われ、凄い速さで走り出されて慌てて首にしがみつく。

「ロク! 幾らあんただって無理だ!」
 物凄く速いけれど、体力だって俺とは比べ物にならないんだろうけど、それでも人一人を背負って走り通せる距離じゃない。

「俺を置いて行け!」
「それは出来ない! お前を敵の手に渡す訳にはいかない!」
「敵?」
 そんなものがいるとは聞いていない。

「正体はわからないが、あんな物騒なものを置いていく連中にお前が見つかったら……」
 それは売られちゃうか利用されるか、酷い目にしか遭わないよね。
 俺は悪党にとったら毛色の変わった商品にしか過ぎないんだと気付いて背筋がゾッとした。
 相手を自分と同じ人だと思わなければ、どんな酷い事でも出来る。
 人は幾らでも残酷になれると、歴史を習った俺は知っている。

「ごめん……」
 リアル足手まといになってしまって申し訳ない。
 そもそもあそこに入ろうと言い出したのも俺だし、トラップに引っ掛かったのも俺だ。

「ずっと見つからない方が拙かった。チヤのお手柄だ」
 嘘だよ。ロクは俺に優しすぎる。
 俺の気持ちを軽くする為の嘘だとわかっていたけど、これ以上ロクに負担を掛けたくなくて口を噤んだ。
 全身から物凄い汗を掻き始めているし、この熱はきっと身体を拭いて冷やさないと拙い。
 ロクは限界を超えた無茶をしている。

(クソッ、俺に出来る事は無いのか。足手まとい以外になれないのか)
 召喚されてきた異世界人だと言うのに何も特別な力を持っていなくて悔しい。
 舐めたら甘い味がするだなんて、そんなふざけた能力しか無くて申し訳ない。

(俺に戦う力があったら良かったのに)
 唇を噛み締めた俺の耳にロクの物騒な声が聴こえてきた。

「街に、着いたら……喰うッ! 噛んで、身体中を舐め回して……脇の下も……」
(なに言ってんだよ。甘い物なんて嫌いな癖に)
 俺はロクが錯乱状態にあって途中で倒れるだろうと思ったが、奴はとうとう街まで走り通して役場に駆け込んで軍部へ連絡を取った。
 そして床にぶっ倒れて、おろおろする俺の首を引っ掴んで口に噛み付いた。


「ロクッ!」
 こんな事をしている場合じゃないだろう、と咎める俺にロクが他の人に聞こえないように小さな声で囁く。

「お前の身体には増強剤みたいな、回復薬みたいな効果がある」
「回復薬?」
 なにそれ。俺ってば栄養ドリンクみたいな体質だったの?

「あとで説明するから、もう少し寄越せ」
 ロクにグチグチと口腔内を掻き回されて床に付いた腕が震えた。

 人前でこんな事をする奴じゃないのに。
 自分から熱心な口付けなんてしなかったのに。
 それほど切羽詰まっているのかと心配になった。

「ロク、足りなければ……少し切ろうか?」
 唾液よりも、汗よりも、血の方が確実に体液を摂取できると思ってそう提案した。
 しかしロクはびくりと身体を硬くして、それから首を横に振った。

「必要ない。これで十分だ」
 そう言って少し穏やかになったキスは、俺にはなんだか物足りないのだった。 
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