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⑩栄養ドリンク−1(R−15)

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「それで、俺はなんで滋養強壮剤みたいに扱われているんだ?」
 宿で落ち着いてからそう訊ねた俺に、すっかり体調を取り戻したロクが気遣いながらも教えてくれる。

「後からわかったのだが、チヤの体液には獣人を興奮させるだけでなく、気力や体力を上げる効果もあった。おまけに怪我や病気を治す事も出来るかもしれない」
「えっ。エリクサーみたいじゃん」
 まるでゲームに出てくる万能薬みたいでそう言ったら、重々しく頷かれてしまった。

「私が頑強だからなかなか変化に気付かなかった。それにチヤが自覚していない所為か、最初はそれほど強い効果じゃなかったんだ。段々とチヤの味が濃くなっていき、それと共に私の肉体も変化していった」
 味が濃いとか言われると恥ずかしいんだけど。それに俺がロクの肉体に惹かれていったのも、その変化が関係しているのか?

「これで益々お前の身が危険になってしまった」
 ロクに溜め息を吐かれて、危機感を持っていなかった俺は俄に焦りだす。

「え、高く売れそうって事?」
「違う。獣人にとって頑強な肉体は一種のステイタスで強者の証だ。お前を摂取し続けたら神のような肉体が手に入るとしたら……こぞって手に入れたがるだろうな」
 そう言われて、毎晩ベッドでヒヒジジイに貪り食われる俺を想像してしまった。
 うわぁ、一生飼い殺しなんてゾッとしない。

「そこで、天馬に乗った王宮からの調査団が間もなく到着するが、チヤには隠れていて欲しい」
「隠れる? どうして?」
「些か厄介な獣人が同行されているからだ」
「厄介な獣人?」
「陛下の従兄あに君に当たられる、マキシム卿が同行されると聞いた」
「陛下の? じゃあもしかして……」
「武闘派の鷲型獣人だ」
「うわぁ~、ムリムリムリィッ! 俺は鳥型の獣人は苦手なんだって」
「マキシム卿はお前が召喚された時、遠征に出掛けられていて留守にしていた。恐らく、面倒事を嫌ったモリスがタイミングを図ったのだとは思うが、レオポルトの騒ぎなどもありお前の存在がバレたのだろう」
 厄介な獣人に存在を知られたと聞いて胸がドキドキする。
 召喚された異世界人という俺の立場は微妙だ。
 自国民じゃないから陛下と言えども無茶は言えないし、けれどなんでも聞いてやる義理もない。
 つまり一応客人ではあるが、厄介払いをしたくなったらいつでも放り出せるという事だ。それが嫌ならモリスが言っていたように、王家に後ろ盾を頼むという手もある。

「お前を他国が狙っている、国で庇護する必要があると言われたら――私では庇い切れない」
「国って、マキシム卿? 俺は庇護される代わりに、そいつの物になるの?」
「……そうだ」
 苦々しげなロクの顔を見てちょっと笑ってしまった。

「まだ出頭を命じられる程のネタは掴まれてないよね?」
「ああ。だが私を見て、何か気付くかもしれない」
 俺といる事で益々雄々しく猛々しい身体つきになったロク。
 身体能力も上がっているみたいだし、彼が輝けば輝く程たんこぶみたいにくっついている俺の価値も上がってしまう。
 今回の無茶だって懸念材料になるかもしれない。

「済まない」
 後悔を滲ませて謝ったロクの頬を、両手で挟み込むように軽く叩く。

「あんたの事だから、キスを断れなかった自分が悪いーとか、一緒にいたら迷惑なんじゃないかーとか思ってんだろ?」
「……」
「言っておくけど、無駄だからな」
「……無駄とは?」
「俺はあんたの側を離れない。この世界にいる間はずっとあんたに引っ付いてキスを強請って、それで最後までして貰うんだ」
「……無理だな。お前を最後まで抱いたら、きっともう隠せない」
「そんなのしてみなくちゃわからないよ」
 スルリと腰を抱かれて腕をロクの首に回す。
 キスも身体を撫でる手も、甘くて優しいのにそれだけじゃもう物足りない。

「ロク、もっと……」
 クンッと腰を後ろに突き出し、開いた谷間に手を誘導する。
 ロクの長い指が尻の間をなぞって、柔らかな肉を擦るのが気持ちいい。
 もっと、全部。
 内側も、濡れた中身も。

「あんたに啜られたい……」
 柔らかな耳を食むように囁いたらグオッと喉の奥で吼えるような音がして、爪が硬く閉じた蕾に食い込んだ。

「んうッ!」
 入って来たものに物凄く感じてしまい、呻いたらパアッと俺から甘い匂いが拡がった。
 そのバラの花が一斉に咲いたような艶やかな匂いにロクが慌てる。

「匂いが外にまで漏れるっ!」
「あっ、抜かないでよっ!」
 後ろから指が抜かれてしまって俺は物凄くがっかりした。
 だってやっとロクを教えて貰えると思ったのに!

「マキシム卿が来る前に噂になっては困る。宿を分けるべきか――」
「いやだよっ! あんたと別行動なんて絶対にやだ! だったら我慢するからっ!」
「甘いものも想像しては駄目だぞ?」
「うぅぅ……我慢する」
 デザートもロクの舌も無しだなんて本当に辛いと思ったけど、同じ宿にもいられないのはもっと嫌だ。
 ロクの声を聴いて、動いている姿を見て、たまに微笑んだり呆れたり怒っているのを見るだけでも俺は幸せなんだ。殆ど推しに対する感情だってのは気付いているけど、憧れてんだからしようがないじゃん!

「俺はもう、あんたから離れられないよ」
 そう言うと調査団に会う準備をした。
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