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⑱偽装関係−2(R−18)
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「食べられる? お前が私を食べるのだろう?」
臀部を撫でられてカッと頬が焼けた。
確かに後ろでロクの指を食んでもっとと強請るのは俺の方だ。
二本の指をもっともっとって、自分から腰を下ろすように貪欲に飲み込もうとするのは俺だ。
だってそこで感じちゃうんだから仕方がない。
奥の方に気持ちの良い所があるってわかってるんだからしようがない。
本当はロク自身を飲み込みたいって思ってるんだからどうしようもないじゃないか。
「一番、食べたいものは……くれないじゃん」
詰るように囁いたら触れ合っているロクの身体がドクンと脈打ったのがわかった。
互いに熱くなっている。シたいと思っている。
(ああもう、このまま情熱のままに貪り合えたらいいのに)
グッとロクの身体に回した手に力を入れたら、無粋な声が割って入った。
「お前らはオス同士だろうがよ?」
何をしているんとハヌマーンに訊かれて、ぶすっと唇が尖る。
男同士でいちゃついてたら何かいけないんですかぁ?
「俺は――」
「私たちは恋人同士だ。つまり男と女でするような事をしている」
俺の言葉を奪うようにロクがそう言った。
(え? どうしたの?)
目を丸くする俺の前でロクは堂々と嘘を吐く。
「獣人も人間も決まった一人の相手としかしないから、お前は手を出すなよ」
あ、なるほど。俺たちがそういう関係にあると思わせる事で性欲に支配された堕神を牽制し、かつ奴の前でもキスをしてもおかしくないようにしたって訳だ。
頭が良いな。
「俺は千年以上生きているが、男に手を出した事はないぞ」
「それならいい。私たちの事は放っておけ」
「わかった。黙って見ているから続けろ」
「人前でする趣味はない。続きはお前と別れてからする」
(エエッ! もしかして、ハヌマーンがいるうちは軽いキス以外はお預け?)
俺はロクの言葉にガーンとショックを受ける。
街道沿いを進むならきっと夜も野宿だよな? ロクに抱きかかえられて眠るにしても、それ以上の接触なんて出来ないよね?
(俺だって、見られながらする趣味なんてないけどさぁ……)
ガッカリして思わず溜め息が出た。
「人間?」
「イチヤだよ。気にしないで、恋人との夜を邪魔されてお前を置いていこうかと思っただけだから」
「こらっ、邪魔などせぬから連れて行け!」
「存在自体が邪魔だよ」
ぼそりと毒を吐きつつ俺は諦めた。
仕方がない、こうなったら少しでも早く領地に着いてハヌマーンを閉じ込めよう。
それまでに精々天界の情報でも聞き出して――。
「済まん、街へ寄る必要が出来た」
急なロクの宣言に目をパチクリとさせる。
確かハヌマーンは街には連れて行けないって言ってたよな?
「ヨカナーンから緊急で連絡を取りたいと言ってきた」
「何か伝達方法があるの?」
「緊急時に報せるだけのものだが、リアルタイムで伝えられる」
「それは夜になるまで待つ訳にはいかないんだね?」
「ああ」
俺たちは決断を迫られた。
夜ならばハヌマーンを宿に連れ込む事も出来るだろうが、昼間は難しい。
ロクだけ街に行ってヨカナーンと連絡を取ってくるか、それとも一旦ハヌマーンとは別れて俺も一緒に行くか。
緊箍児があるから大丈夫だろうとは思うが、まだハヌマーンをそこまで信用できない。
どうしよう?
「チヤ、街には私一人で戻る」
「……え?」
「嫌な予感がする。安全を確かめてからチヤを迎えに――」
「やだよっ!」
俺は理屈でなくそう叫んでいた。
「俺、あんたと離れ離れなんて嫌だよ! 街が危険でも、荒れ果てても、例え戦場になっていたとしても一緒に行くからね!」
「しかし――」
「置いていったとしても追い掛けるから!」
「……」
ロクが難しい顔で黙り込み、俺は自分が酷い我が侭を言っているとわかっていた。
それでも置いていかれるのは嫌だ。
ロクと離れ離れになる事が何よりも怖い。
「……わかった。ではハヌマーンと街の外れで待っていてくれ」
きっとそれがロクの最大の譲歩だろう。
そう思ったから俺も頷いた。
直ぐに駆け付けられる場所にいるならいい。
「イチヤ、心配するな。お前はこの俺様が守ってやろう。大事な情報源――いや、協力者だからな」
悪相を歪めて笑うハヌマーンの言葉に無言で応える。
信用できるものか。
そして案の定、街へ行ったらハヌマーンが真っ先に飛び出していった。
「不死薬を返せぇえええっ!」
そう叫びながらハヌマーンが突っ込む先には、鷲の獣人が兵を並べていたのだった。
臀部を撫でられてカッと頬が焼けた。
確かに後ろでロクの指を食んでもっとと強請るのは俺の方だ。
二本の指をもっともっとって、自分から腰を下ろすように貪欲に飲み込もうとするのは俺だ。
だってそこで感じちゃうんだから仕方がない。
奥の方に気持ちの良い所があるってわかってるんだからしようがない。
本当はロク自身を飲み込みたいって思ってるんだからどうしようもないじゃないか。
「一番、食べたいものは……くれないじゃん」
詰るように囁いたら触れ合っているロクの身体がドクンと脈打ったのがわかった。
互いに熱くなっている。シたいと思っている。
(ああもう、このまま情熱のままに貪り合えたらいいのに)
グッとロクの身体に回した手に力を入れたら、無粋な声が割って入った。
「お前らはオス同士だろうがよ?」
何をしているんとハヌマーンに訊かれて、ぶすっと唇が尖る。
男同士でいちゃついてたら何かいけないんですかぁ?
「俺は――」
「私たちは恋人同士だ。つまり男と女でするような事をしている」
俺の言葉を奪うようにロクがそう言った。
(え? どうしたの?)
目を丸くする俺の前でロクは堂々と嘘を吐く。
「獣人も人間も決まった一人の相手としかしないから、お前は手を出すなよ」
あ、なるほど。俺たちがそういう関係にあると思わせる事で性欲に支配された堕神を牽制し、かつ奴の前でもキスをしてもおかしくないようにしたって訳だ。
頭が良いな。
「俺は千年以上生きているが、男に手を出した事はないぞ」
「それならいい。私たちの事は放っておけ」
「わかった。黙って見ているから続けろ」
「人前でする趣味はない。続きはお前と別れてからする」
(エエッ! もしかして、ハヌマーンがいるうちは軽いキス以外はお預け?)
俺はロクの言葉にガーンとショックを受ける。
街道沿いを進むならきっと夜も野宿だよな? ロクに抱きかかえられて眠るにしても、それ以上の接触なんて出来ないよね?
(俺だって、見られながらする趣味なんてないけどさぁ……)
ガッカリして思わず溜め息が出た。
「人間?」
「イチヤだよ。気にしないで、恋人との夜を邪魔されてお前を置いていこうかと思っただけだから」
「こらっ、邪魔などせぬから連れて行け!」
「存在自体が邪魔だよ」
ぼそりと毒を吐きつつ俺は諦めた。
仕方がない、こうなったら少しでも早く領地に着いてハヌマーンを閉じ込めよう。
それまでに精々天界の情報でも聞き出して――。
「済まん、街へ寄る必要が出来た」
急なロクの宣言に目をパチクリとさせる。
確かハヌマーンは街には連れて行けないって言ってたよな?
「ヨカナーンから緊急で連絡を取りたいと言ってきた」
「何か伝達方法があるの?」
「緊急時に報せるだけのものだが、リアルタイムで伝えられる」
「それは夜になるまで待つ訳にはいかないんだね?」
「ああ」
俺たちは決断を迫られた。
夜ならばハヌマーンを宿に連れ込む事も出来るだろうが、昼間は難しい。
ロクだけ街に行ってヨカナーンと連絡を取ってくるか、それとも一旦ハヌマーンとは別れて俺も一緒に行くか。
緊箍児があるから大丈夫だろうとは思うが、まだハヌマーンをそこまで信用できない。
どうしよう?
「チヤ、街には私一人で戻る」
「……え?」
「嫌な予感がする。安全を確かめてからチヤを迎えに――」
「やだよっ!」
俺は理屈でなくそう叫んでいた。
「俺、あんたと離れ離れなんて嫌だよ! 街が危険でも、荒れ果てても、例え戦場になっていたとしても一緒に行くからね!」
「しかし――」
「置いていったとしても追い掛けるから!」
「……」
ロクが難しい顔で黙り込み、俺は自分が酷い我が侭を言っているとわかっていた。
それでも置いていかれるのは嫌だ。
ロクと離れ離れになる事が何よりも怖い。
「……わかった。ではハヌマーンと街の外れで待っていてくれ」
きっとそれがロクの最大の譲歩だろう。
そう思ったから俺も頷いた。
直ぐに駆け付けられる場所にいるならいい。
「イチヤ、心配するな。お前はこの俺様が守ってやろう。大事な情報源――いや、協力者だからな」
悪相を歪めて笑うハヌマーンの言葉に無言で応える。
信用できるものか。
そして案の定、街へ行ったらハヌマーンが真っ先に飛び出していった。
「不死薬を返せぇえええっ!」
そう叫びながらハヌマーンが突っ込む先には、鷲の獣人が兵を並べていたのだった。
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