【完結】俺の身体の半分は糖分で出来ている!? スイーツ男子の異世界紀行

海野ことり

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㉟自炊料理に似ている−1

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 鬼は身体の色によって性質が違うのだと聞いた事がある。
 赤鬼は貪欲で欲望に支配されている。
 青鬼は悪意や憎しみに満ちて攻撃的。
 黄色い鬼は自己中心的で我が侭。
 他にもまだいたと思うんだけど、取り敢えず俺が目にしているのはその三種類なので思い出さなくてもいい。
 赤、青、黄色の鬼が俺たちを追い回している。

「ちょっとぉおおお! 針山とかっ! 登らされるほど悪いことはしてないんだけどっ!」
 なんだよなんだよ、まさか地獄巡りをするなんて思わなかったよ!

「チヤッ! 掴まっていろ!」
 ロクに背負われて針の間を駆け抜ける。
 ハヌマーンは懐かしい訓練だと言いながらバキバキと針を踏み折って進んだ。
 もしかして、俺以外にはそう過酷な修行でもないのか?

「ハヌマーン! 鬼に捕まったらどうなるっ?」
「最初からやり直しだ! 此処を通り抜ける試練だからな!」
 それって単なる鬼ごっこ?
 通り抜けさえすれば手段は問わないって事?
 例えばロクに背負われていたって……。

「なんか釈然としない!」
「だったら自分で走れ!」
 思わず叫んだ俺にハヌマーンが叫び返したが、それは無理な話だ。
 俺が自力で針山を登ったり、血の池を泳げる筈がない。
 しかも俺たちは度々ズルをしている。
 俺とロクは鬼の目を盗んでは慌ただしく体液交換をしていた。

「お前たちは何処にちょいちょい姿を消すんだ!」
 そうハヌマーンに言われながらも岩陰で擦りっこをしたり、口で慰めて貰ったり、キスもいっぱいしている。
 霞なんて食べて腹が膨れる筈もないから、俺にとっては食事代わりでもある。

「でもさぁ、折角天界にいるんだから、修行なんてしなくても仙桃とか甘露を口にすれば神格が得られるんじゃないの?」
「そんな物よりお前を啜る方がいい」
「そう言ってくれるのは嬉しいけどさ」
 でもこいつの甘い物嫌いは変わっていないので、今でもちょっと苦しそうな顔をしている時があって俺は悪いなって思う。
 俺が甘くなければ良かったんだけど、そうすると他の召喚者たちみたいに直ぐに帰っていただろうし、ロクと知り合うことだって無かった。
 だからそれも巡り合わせだって事になるんだろうけど――。

「最後まで、したいな」
「……」
 わかってるよ、世間一般的には俺たちは最後までしている。
 もしかしたらそれ以上にマニアックな行為だってしてる。
 でも俺はロクにとっての交尾――つまり中出しをして欲しいし、子供が出来ないのはわかってるけどそう錯覚するくらいしつこく深く交わりたい。
 もうお前のものだって言えるくらいマーキングして、ゴリゴリと擦り付けて欲しい。

「最後までしたら、きっとお前は甘いと感じる。そう感じるよう、抱くつもりだ」
 ロクに困ったように微笑みながらそう言われ、俺はとても嬉しい。
 嬉しいけど、どうやってその問題をクリアすればいいのかわからなくて困る。
 互いに甘いと感じるのは確実で、多分、そうしたら俺は元の世界に帰されてしまう。

「お師匠様に訊けたらいいんだけど……」
「そうしたら異世界召喚の事を話さねばならない。流石に国の秘密を話すのは躊躇われる」
 だよねぇ。神様にも何かしら咎められそうな気がするし。
 そんな風に悩んでいたら後方から声が上がった。

「いたぞ!」
「あっ、見つかっちゃった」
 いつものように鬼たちから逃げつつサボっていたんだけど、見つかってしまった。
 俺は慌ててロクに背負われてその場から逃げ出す。

「今日こそ捕まえてやる! 喰わせろ!」
「やだよっ!」
 鬼に捕まっても最初からやり直しになるだけだと聞いていたのに、何故だか赤鬼だけは俺を喰いたがっている。もしかしたらロクといる時の甘い匂いを嗅ぎ付けられたのかもしれない。

「甘い物が食べたかったら、仙桃を食べればいいのに」
「鬼には毒になると聞いた事がある。というか、何処に行っていた! お前たちがいないと、全員が俺を追うのだぞ!」
「ご苦労さま!」
 俺はいつの間にか横に並んで走っていたハヌマーンに、明るく声を掛けた。
 ハヌマーンは要領が悪いのか、此処に来てから休み無く走り回っていた。
 そしてただ走っているだけなのに、身体が一回り大きくなって毛艶が良くなっている事に驚く。
 神気みたいなものまで満ちているのを感じる。

「ハヌマーンはそろそろ神格を取り戻したんじゃないの?」
「いいや、まだだ。だが神に戻るつもりはないから、こんなもので十分だろう」
 そろそろ修行をおしまいにすると言って、ハヌマーンが脚を止めた。

「おいっ、鬼に捕まったら最初からやり直し――」
「捕まらなきゃいい」
 そう言うとハヌマーンは腕を大きく振り被って、突っ込んできた青鬼をぶっ飛ばした。

「ちょっ、そんな事していいのぉおおお!?」
 時間差で突っ込んできた黄鬼も倒し、こちらに向かってきた赤鬼はロクが仕留めた。

「うわ、ロクまで……」
「しつこくチヤを狙われて、我慢の限界だった」
 珍しく嫉妬めいたセリフを漏らしたロクに喜び、背中から降りたら子象に乗ったお師匠様がのんびりと現れた。
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