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㉟自炊料理に似ている−2
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「ハヌマーンは真面目に修行をする事だけが取り柄だったのに、勝手におしまいにしたりして困りましたね」
「お師匠様、俺は神には戻らない」
「わかっています」
お師匠様は薄っすらと笑うと俺たちに目を向けてきた。
「ロクサーン侯はだいぶ神性を帯びましたが、そなたは全くですね」
淡々とお師匠様に言われ、わかってはいたけどガッカリする。
「だって俺の脚じゃあ無理だもん」
「そうでしょうね」
だったらなんで此処にぶっこんだ、とは思っても流石に言えなかった。
大神に会わせてくれだなんて無茶を言っているのは俺の方だし、その為に神格を得るのが必要だというのも嘘じゃないだろう。例え無理な事でも俺は誠意を見せる必要があった。
まあ、ロクにおぶさりっぱなしで誠意を示せたかはちょっと謎だけど。
「では不死――とはいきませんが、下界にある材料で作れる万能薬を教えましょう」
まるで冷蔵庫にある野菜で作れる料理を教えましょう、とでもいう口調でお師匠様がそう言った。
「お師匠様、それは俺たちにも作れますか?」
もしもハヌマーンにしか作れないならハヌマーンに作って貰おうと思いつつそう訊ねたら、あっさりと俺たちにも作れると言った。
「効能は落ちるでしょうが、そなた達なら作れるでしょう」
「万能薬の効能って?」
「大抵の病に効く薬です」
「大抵の病」
「そうです」
ってことは、怪我や外傷には効かない。
風邪とか熱病とか白血病なんかの病気には効くって事?
「ハヌマーンが服用すれば、体調が良くなり気分爽快になれるでしょう」
「ブフォッ!」
気分爽快って、それはどうなの?
俺は恐る恐るハヌマーンを見たが、奴も微妙な顔をしていた。
「お師匠様、それも良いが俺は不死薬が作りたい」
「不死薬は駄目です」
「ならば他の薬を!」
「万能薬を覚えてから教えましょう」
一向に折れる気配のないお師匠様に、ハヌマーンが渋々と諦めた。
きっと昔もこうやって鼻の先に人参をぶら下げられて、一つずつ覚えさせられていったんだろうなぁ。
目に浮かぶよ。
「ロク、万能薬を覚えたらきっと高値で売れるね」
「ああ。まずは王家へ献上だろうが、後は自由に売れるだろう」
「一応、攫われたりする危険は少ないよね?」
俺みたいに本人が薬と同じじゃなければ、とコッソリと囁いたらそうだなと頷かれた。
ついでに恐怖を感じていると役に立たない俺と違って、薬なら誰でも服用出来るので俺の価値が少し下がる。
良いものを教えて貰えると俺はホクホクした。
「イチヤ? 言っておくが、薬の調合を覚えるのは難しいぞ」
ハヌマーンが八つ当たりのように俺にそう言ったが、お師匠様の教えてくれた手順はそう難しくもなかった。
何故なら料理と手順が似ていて、分量も明確だし俺には覚えやすかったからだ。
「何故、始めっから手慣れている!」
「まあ、このくらいならね」
そう言いながら俺は鍋をくるりと回して中の液体を揺らした。
お師匠様の言うように、湯気が出て少しトロミが付いて色が変わりかけたところで火から下ろす。
「お師匠様、出来ました」
「いいですね。後は何回か練習すれば上手くなります」
俺は万能薬の作り方をあっさりと身に付けたが、ロクは器用な癖に何故だか上手くいかずにまだまだ練習が必要だと言われてしまった。
ハヌマーンに至っては、何百回も、何千回もの練習がいるだろうって。
「お師匠様! そんなに作ったら禿げちまいます!」
「大丈夫。毛はまた生えます」
「……」
俺はにこりと笑ってそう言ったお師匠様を見て、本当にいい性格をしていると思った。
万能薬を作るには下界にある材料だけで済むんだけど、作る人の毛がひとつまみいる。
一回に使うのは大した量じゃないけど、何百回も何千回も抜いたら流石に禿げそうだ。
この容量制限があることも、ハヌマーンや俺たちに作り方を教えても良いと思った理由かもしれない。
俺はロクにコツを教えつつ、何度も万能薬を作った。
そして、とうとう俺が完璧な万能薬を作り上げたら、お師匠様が次の段階に進むと言った。
「お師匠様! 俺はまだ作れるようになってない!」
「ハヌマーンは練習を続けなさい。私は二人を連れて果樹園に行ってきます」
お師匠様の言葉にハヌマーンがピクリと悪相を歪めた。
「あそこは神しか入れない筈」
「許しは貰っています」
「……イチヤ、食べても一口までにしておけよ」
ハヌマーンは俺に真顔でそう忠告し、一人薬作りに戻った。
俺はもっと詳しく聞きたかったけれど、話し掛けられるのを拒む空気があったので諦めた。
それに果樹園というのが仙桃の生えている所なら、例え危険であっても見ておきたい。
ひょっとしたら、仙桃の種でも手に入ったら下界にコッソリと持ち込めるかもしれない。
そうまでしても、甘い物が欲しかった。
「チヤ、先走って物騒なことをするなよ」
「うん。わかった」
俺は小声で注意してきたロクの腕をそっと握った。
「お師匠様、俺は神には戻らない」
「わかっています」
お師匠様は薄っすらと笑うと俺たちに目を向けてきた。
「ロクサーン侯はだいぶ神性を帯びましたが、そなたは全くですね」
淡々とお師匠様に言われ、わかってはいたけどガッカリする。
「だって俺の脚じゃあ無理だもん」
「そうでしょうね」
だったらなんで此処にぶっこんだ、とは思っても流石に言えなかった。
大神に会わせてくれだなんて無茶を言っているのは俺の方だし、その為に神格を得るのが必要だというのも嘘じゃないだろう。例え無理な事でも俺は誠意を見せる必要があった。
まあ、ロクにおぶさりっぱなしで誠意を示せたかはちょっと謎だけど。
「では不死――とはいきませんが、下界にある材料で作れる万能薬を教えましょう」
まるで冷蔵庫にある野菜で作れる料理を教えましょう、とでもいう口調でお師匠様がそう言った。
「お師匠様、それは俺たちにも作れますか?」
もしもハヌマーンにしか作れないならハヌマーンに作って貰おうと思いつつそう訊ねたら、あっさりと俺たちにも作れると言った。
「効能は落ちるでしょうが、そなた達なら作れるでしょう」
「万能薬の効能って?」
「大抵の病に効く薬です」
「大抵の病」
「そうです」
ってことは、怪我や外傷には効かない。
風邪とか熱病とか白血病なんかの病気には効くって事?
「ハヌマーンが服用すれば、体調が良くなり気分爽快になれるでしょう」
「ブフォッ!」
気分爽快って、それはどうなの?
俺は恐る恐るハヌマーンを見たが、奴も微妙な顔をしていた。
「お師匠様、それも良いが俺は不死薬が作りたい」
「不死薬は駄目です」
「ならば他の薬を!」
「万能薬を覚えてから教えましょう」
一向に折れる気配のないお師匠様に、ハヌマーンが渋々と諦めた。
きっと昔もこうやって鼻の先に人参をぶら下げられて、一つずつ覚えさせられていったんだろうなぁ。
目に浮かぶよ。
「ロク、万能薬を覚えたらきっと高値で売れるね」
「ああ。まずは王家へ献上だろうが、後は自由に売れるだろう」
「一応、攫われたりする危険は少ないよね?」
俺みたいに本人が薬と同じじゃなければ、とコッソリと囁いたらそうだなと頷かれた。
ついでに恐怖を感じていると役に立たない俺と違って、薬なら誰でも服用出来るので俺の価値が少し下がる。
良いものを教えて貰えると俺はホクホクした。
「イチヤ? 言っておくが、薬の調合を覚えるのは難しいぞ」
ハヌマーンが八つ当たりのように俺にそう言ったが、お師匠様の教えてくれた手順はそう難しくもなかった。
何故なら料理と手順が似ていて、分量も明確だし俺には覚えやすかったからだ。
「何故、始めっから手慣れている!」
「まあ、このくらいならね」
そう言いながら俺は鍋をくるりと回して中の液体を揺らした。
お師匠様の言うように、湯気が出て少しトロミが付いて色が変わりかけたところで火から下ろす。
「お師匠様、出来ました」
「いいですね。後は何回か練習すれば上手くなります」
俺は万能薬の作り方をあっさりと身に付けたが、ロクは器用な癖に何故だか上手くいかずにまだまだ練習が必要だと言われてしまった。
ハヌマーンに至っては、何百回も、何千回もの練習がいるだろうって。
「お師匠様! そんなに作ったら禿げちまいます!」
「大丈夫。毛はまた生えます」
「……」
俺はにこりと笑ってそう言ったお師匠様を見て、本当にいい性格をしていると思った。
万能薬を作るには下界にある材料だけで済むんだけど、作る人の毛がひとつまみいる。
一回に使うのは大した量じゃないけど、何百回も何千回も抜いたら流石に禿げそうだ。
この容量制限があることも、ハヌマーンや俺たちに作り方を教えても良いと思った理由かもしれない。
俺はロクにコツを教えつつ、何度も万能薬を作った。
そして、とうとう俺が完璧な万能薬を作り上げたら、お師匠様が次の段階に進むと言った。
「お師匠様! 俺はまだ作れるようになってない!」
「ハヌマーンは練習を続けなさい。私は二人を連れて果樹園に行ってきます」
お師匠様の言葉にハヌマーンがピクリと悪相を歪めた。
「あそこは神しか入れない筈」
「許しは貰っています」
「……イチヤ、食べても一口までにしておけよ」
ハヌマーンは俺に真顔でそう忠告し、一人薬作りに戻った。
俺はもっと詳しく聞きたかったけれど、話し掛けられるのを拒む空気があったので諦めた。
それに果樹園というのが仙桃の生えている所なら、例え危険であっても見ておきたい。
ひょっとしたら、仙桃の種でも手に入ったら下界にコッソリと持ち込めるかもしれない。
そうまでしても、甘い物が欲しかった。
「チヤ、先走って物騒なことをするなよ」
「うん。わかった」
俺は小声で注意してきたロクの腕をそっと握った。
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